仲介手数料のほかにお金を受け取ると違反になるパターン|AD・事務手数料・コンサル料の線引き
宅建業者が媒介で受け取れる報酬には、告示による上限があります。そして行政処分や返還請求の事例を見ると、上限そのものを超えたケースより、「報酬とは別の名目」で受け取ったお金が実質報酬と判定されたケースが目立ちます。
名目を変えても、実質が媒介の対価なら報酬です。この記事では、危険な受領パターンを4つ整理します。
前提:報酬の上限と「実費」の関係
売買の媒介報酬は速算式(400万円超なら価格の3%+6万円+消費税)、賃貸の媒介報酬は貸主・借主あわせて賃料1か月分+消費税が上限です。
例外的に報酬と別に受け取れるのは、依頼者の依頼に基づいて行う広告の料金などの実費に限られます。「依頼に基づく」「実費」の2条件がそろって初めて別枠になる、というのが出発点です。
危険パターン1:賃貸のAD(広告料)
賃貸実務で慣行化しているADですが、法的な位置づけは冷静に見る必要があります。貸主からのADが適法な「広告料」であるためには、貸主からの依頼に基づく広告で、金額が実費相当であることが必要です。
依頼書もなく、実際の広告出稿と対応しない「賃料1〜2か月分のAD」を受け取っていれば、それは実質的な報酬の上乗せであり、報酬上限超過と評価されるリスクを常に抱えています。慣行の広がりは違法性を消しません。行政処分は「みんなやっている」慣行の中から、通報や紛争をきっかけに個別に発生します。
危険パターン2:事務手数料・契約事務費・書類作成料
借主や買主から「契約事務手数料」「書類作成費」の名目で数万円を受け取るパターン。媒介に通常伴う事務は報酬の範囲内であり、別名目での徴収は報酬上限超過の典型として、返還を命じられてきた定番です。重説や契約書の作成は媒介業務そのものなので、「作成料」を別に取る理屈は立ちません。
危険パターン3:実体のないコンサルティング料
「コンサルティング料」「業務委託料」の名目なら別、という理解も危険です。報酬と別に受け取れるコンサル報酬は、媒介業務とは区別された独立のコンサル業務(別契約・独立した成果物・媒介と切り離しても成立する内容)がある場合に限られます。
媒介の付随作業(相場の説明、資料の収集、条件交渉)に名前を付けただけのコンサル料は、実質報酬として合算され、上限超過になります。
危険パターン4:無免許の紹介者への支払い・受領
逆方向のお金にも規制があります。宅建業免許のない知人・業者に「紹介料」を支払う、あるいは免許のない者が反復して紹介料を受け取る構図は、無免許事業の助長として問題になります。支払う側も「名義貸し・無免許営業への関与」を疑われる入口です。
例外の正しい使い方:低廉な空家等の特例
800万円以下の宅地建物の売買では、通常の上限に代えて依頼者それぞれから33万円(税込)まで受領できる特例があります(2024年7月改正)。これは「言い値で取れる」制度ではなく、媒介契約締結前にあらかじめ説明して合意することが要件です。詳しくは:低廉な空家等の仲介手数料特例とは?
最悪の想定
- 退去した借主が、契約時の「事務手数料2.2万円」と礼金の性質に疑問を持ち、県の宅建業担当窓口と宅建協会に相談
- 協会経由の苦情解決で過去の受領分の返還。行政庁からは報告徴収
- 帳簿を遡って確認され、同じ名目で受け取っていた全契約分が指摘対象に
- 是正報告と返還対応に追われ、悪質と判断されれば指示処分・業務停止、処分は公表される
1件あたり数万円の上乗せが、数年分まとめて返還と処分リスクに化けるのがこの類型の怖さです。
受領前チェックリスト
報酬まわりチェック
☐ 報酬以外に受け取るお金の名目一覧を作り、それぞれ法的根拠を言えるか
☐ 広告料は依頼者からの依頼の記録と実費の根拠(出稿実績)がセットになっているか
☐ コンサル料は別契約・独立した成果物があるか(媒介の付随作業に名前を付けただけではないか)
☐ 低廉空家特例を使う場合、媒介契約前の説明と合意を記録したか
☐ 紹介料の支払先・受領元に宅建業免許があるか
まとめ
報酬規制の実務は「名目ではなく実質」で判定されます。受け取っているお金の一覧を作り、1行ずつ「依頼はあるか・実費か・独立した業務か」を確認する。それだけで、この類型の処分リスクはほぼ潰せます。
※本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。個別の判断は行政庁・弁護士等にご確認ください。


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