結論からいうと、「禁止用語さえ避けておけば広告文は大丈夫」とは言い切れません。AIが書いた物件コメントは、禁止用語のチェックを通しても、そのまま掲載できないことがあります。
理由はAIの精度ではなく、チェックが見ている語と、AIが実際に貼ってくる語がずれていることにあります。ただし「だからAIを使うな」という話でもありません。使い方を1か所変えるだけで、この問題は消えます。
この記事でわかること
- ✓ ATBB(アットホームの業者間流通サイト)のコメント生成が、ただのトイレに何と書いたか
- ✓ 表示規約の禁止用語を43語ぶん検査しても、その言葉が残る理由
- ✓ 掲載した文章の責任は、書いたAIではなく掲載した会社が負うこと
- ✓ 掲載前に潰すための3つの手順
ただのトイレの写真に、AIはこう書いた
実際に出た文章です。物件写真は、変哲のないトイレ1枚でした。
清潔感がありラグジュアリーなお手洗い空間家族も笑顔
おかしい点が3つ同時に起きています。
1つ目は日本語です。「お手洗い空間」と「家族も笑顔」のあいだに助詞がなく、2つの文が癒着しています。読み上げると意味が取れません。
2つ目は、写真を見ていないことです。ラグジュアリーの根拠になるものは、その写真に何も写っていません。設備の記載もありません。
3つ目が、この記事の本題です。「ラグジュアリー」と「清潔感」の根拠を求められたとき、掲載した側は何も出せません。
読者
手直しすればいいだけでは?
手直しできる人がいる会社なら、そうです。問題は、生成された文をそのまま貼れると思って導入する場合です。
禁止用語を43語チェックしても、この文は通ってしまう
不動産の広告には、不動産の表示に関する公正競争規約で定められた使用禁止・制限用語があります。おもなものを並べます。
- 断定的表現 — 完全、完璧、絶対、万全
- 優位性・比較 — 日本一、業界一、当社だけ、抜群
- 選別 — 特選、厳選
- 最上級 — 最高、最高級、極上、トップクラス
- 価格 — 格安、激安、破格、掘出
- 人気・売行き — 完売、大人気、予約殺到
ここまでで43語ほどになります。広告チェックの機能を持つツールは、たいていこの範囲を見ています。
そして「ラグジュアリー」も「清潔感」も、この43語のどこにも入っていません。規約の明文に無いからです。だから機械にかけても引っかからず、そのまま掲載画面まで届きます。
2026年8月時点で確認できる範囲の話です。規約の運用は改定されることがあります。
読者
明文に無いなら、書いてもいいのでは?
そこが分かれ目です。禁止語かどうかではなく、根拠を出せるかどうかで判断されます。
責任を負うのは、AIではなく掲載した会社
公正取引協議会の説明では、広告の表示責任について過失の有無を問わないという考え方が取られています。「AIが勝手に書いた」「気づかなかった」は、責任を軽くする理由になりません。
私はこの点を、AI導入の可否より先に決めておくべきことだと考えています。生成の速さで得た時間より、1件の指摘に対応する時間のほうが長いからです。
ここで効いてくるのが、さきほどの3つ目です。「ラグジュアリー」の根拠を聞かれたとき、答えられる材料が物件資料のどこにもありません。写真にも、図面にも、設備欄にもない言葉を、機械が足しているからです。
なぜ、物件と関係のない言葉が出てくるのか
ATBBのかんたんコメント生成は、文体2種類×イメージ3種類×アピールポイント6種類の組み合わせから文章を作ります。掛け合わせると36通りです。対象は居住用(賃貸居住用・売戸建・売マンション)で、土地と事業用は対象外です。
そして、生成のもとになるのはATBBに登録済みの項目です。マイソクや現地写真にしか無い情報は、最初から材料に入っていません。リフォームの箇所、窓から見えるもの、学校までの実際の距離。書けば効く材料ほど、機械の手元にありません。
材料が足りないまま100文字ぶんの文章を作ろうとすれば、埋めるものは印象語しか残りません。トイレが「ラグジュアリー」になるのは、精度の問題というより、材料がないまま枠を埋めさせた結果です。
一括登録システム経由で登録した物件は、この機能の対象外です。入稿代行を使っている会社ほど、そもそも生成できない物件が混ざります。
掲載前に潰す3つの手順
ここからが実務です。3つとも、今日から手を動かせます。
手順1:禁止用語チェックに「根拠を出せない言葉」を足す
規約の43語だけでは足りません。次の12語を自社のチェックリストに足してください。生成AIが物件と無関係に貼りやすい語です。
ラグジュアリー/高級感/清潔感/開放感/贅沢/洗練/上質/癒し/くつろぎの/こだわりの/圧巻/悠々
逆に、「明るい」「広々」「ゆったり」はリストに入れません。帖数や開口部の向きという確定した数値と照らせば根拠を出せるからです。写真の明るさだけを根拠にした「明るい室内」は落とし、確定値のある「南向き・約10.2帖」から導いた表現は残す。この線引きが実務では効きます。
読者
12語を消したら、書くことが無くなりませんか?
そこで手順2です。消すのではなく、根拠のある言葉と入れ替えます。
手順2:印象語の枠を、数字で埋める
周辺環境は、書ける材料が公的統計にそろっています。市区町村の成約価格の中央値、地価公示とその変化率、標高、家賃相場。いずれも出典を示せます。
たとえば大阪府箕面市の物件なら、こう書けます。
「箕面市の戸建の成約価格は中央値で坪あたり約115万円(63件)。土地30坪なら約3450万円が目安です。公示地価は坪あたり約70.3万円で、前年比2.2%上昇、3年で6.9%上昇しています。箕面市の標高は中央値85.4メートルです」
地味です。ですが、この文なら根拠を聞かれても全部答えられます。「ラグジュアリー」と書いた100文字より、こちらのほうが問い合わせの電話で話せることが多くなります。
出どころは国土交通省の不動産取引価格情報と地価公示、国土地理院の標高データ、総務省の家賃統計です。どれも無料で取得できます。
手順3:生成した文を「そのまま」使わない工程を1つ置く
生成の速さを消さずに事故を止めるには、確認の工程を人の記憶に頼らせないことです。具体的には、掲載画面に入れる前にチェックを1回通す運用にします。
禁止用語、文字数、文字種。at homeのおすすめコメントなら100文字までで、半角文字は登録できません。全角に直し忘れて弾かれる例は、生成AI以前からある事故です。
空欄のまま出すと、検索の対象から外れる
「変な文が出るくらいなら空欄でいい」と考える手もあります。ただし、at homeでは有料契約の場合、おすすめコメントが検索結果の一覧にも表示されます。そして検索条件の「おすすめコメントあり」で絞り込んだとき、対象になるのは有料契約の物件だけです。
掲載料を払っていて、コメント欄が空のままなら、その絞り込みでは自社の物件が出てきません。埋めないという判断にも、失うものがあります。
数字で書ける材料はそろっています。埋める言葉を印象語から数字に替えるだけで、規約の心配をせずに欄が埋まります。
まとめ
- AIが書いた物件コメントは、規約の禁止用語43語を検査しても「ラグジュアリー」「清潔感」が残る
- 規約の明文に無いだけで、根拠を求められれば答えられない。責任は掲載した会社が負う
- 材料が足りない状態で文字数を埋めさせると、印象語しか出てこない
- 周辺環境は公的統計から数字で書ける。地味だが根拠を全部示せる
- at homeは100文字・半角不可。空欄だと「おすすめコメントあり」の検索から外れる
出典
- 不動産の表示に関する公正競争規約(特定用語の使用基準・表示責任の考え方)
- ATBB操作マニュアル(かんたんコメント生成の仕様・おすすめコメントの文字数と文字種・掲載範囲)
- 国土交通省 不動産取引価格情報(成約価格の中央値。対象期間2024年4Q〜2025年4Q)
- 国土交通省 地価公示
- 国土地理院 標高データ
- 総務省 住宅・土地統計調査(家賃相場)
at homeのおすすめコメントの文字数・文字種のルールは、アットホーム(ATBB)おすすめコメントは100文字|半角不可・手数料NGにまとめています。


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