「まだ間取り図しかできていないけど、先に問い合わせを集めたい」——新築分譲や大規模リノベーション物件の販売現場で、こう言われた経験のある担当者は多いはずです。売主の意向に応えて広告を早めに出した結果、宅建業法違反として指摘される「広告開始時期の制限」は、悪質さの自覚なく踏んでしまう典型パターンです。
この記事では、宅建業法33条・36条が定める広告・契約時期の制限を、実務でよくある勘違いと合わせて整理します。
何が制限されているのか|33条と36条
宅建業法33条は、宅地の造成または建物の建築に関する工事の完了前は、その工事に必要な開発許可(都市計画法29条1項・2項)や建築確認(建築基準法6条1項)など、法令に基づく処分を受けた後でなければ、その宅地・建物についての売買その他の業務に関する広告をしてはならないと定めています。
さらに36条は、契約の締結や媒介・代理も同じタイミング制限を受けると定めています。つまり広告は許可・確認前に出せず、契約もその後でなければ結べないという二段構えの規制です。
重要なのは、この規制の対象は「自ら売主となる業者」に限らないという点です。売主から依頼を受けて広告を出す媒介業者・代理業者にも同じく33条がかかります。「うちは仲介だから関係ない」は通用しません。
実務でやりがちな勘違い3つ
勘違い1:「価格未定」「近日公開」なら広告扱いにならない
物件を特定できる情報(所在地・区画番号・間取り・完成予定時期など)を含んでいれば、価格や契約条件が未定でも広告に当たります。「Coming Soon」的な予告ページも例外ではありません。
勘違い2:SNS投稿やチラシの下書き段階なら大丈夫
不特定多数が見られる状態になった時点で広告です。社内の確認用と思って先行公開したSNS投稿・LINE公式アカウントの配信も、外部から見える以上は対象になります。
勘違い3:売主(デベロッパー)の指示だから広告主の自分は免責される
広告を実際に出した宅建業者が責任を負います。売主から「早く出してくれ」と言われても、それを理由に免責されるわけではありません。
事例:モデルルーム案内を先行させたケース
建築確認申請中の新築マンションで、売主から「反響を早めに取りたい」と言われた媒介会社が、自社サイトとポータルサイトに「間取り公開・見学予約受付中」のページを掲載。建築確認が下りる前に問い合わせと見学予約を受け付け始めたところ、行政庁の定期監査で発覚し、指導文書が交付されました。
このケースでは実際の契約はまだ結んでいなかったため36条違反にはならなかったものの、33条の広告時期制限には明確に抵触していました。
最悪の想定:指示処分と公表
行政庁は違反に対して指示処分を行うことができ、指示に従わない場合は業務停止処分に進みます。指示処分・業務停止処分はいずれも行政庁のウェブサイトで公表されます。
処分歴が公表されると、以後の売主(とくにデベロッパーや大手売主)からの案件受託で不利になります。「あの会社は行政処分を受けたことがある」という事実は、一度ネットに載ると消せません。ポータルサイト側の自主基準に抵触すれば、掲載自体を一時停止されることもあります。
公開前チェックリスト
広告・契約時期チェック
☐ 対象物件の開発許可・建築確認の処分年月日を担当者が把握しているか
☐ 「価格未定」「近日公開」等の表現でも、物件を特定できる情報を含めていないか
☐ 自社サイト・SNS・チラシ・ポータル、すべての媒体の公開日を一元管理しているか
☐ 売主から先出しを求められたときに、広告主は自社であり免責されないと共有できているか
☐ 見学予約・問い合わせ受付の開始日も、契約締結等の時期制限(36条)の対象と理解しているか
まとめ
広告開始時期の制限は、売主の「早く反響が欲しい」という要望と正面から衝突しやすい規制です。だからこそ、許可・確認の処分日を確認してから公開する運用をルール化しておく必要があります。買取再販で自ら売主になる場合の規制は、こちらの記事で整理しています:仲介会社が買取再販に走るリスクと最悪の想定
※本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。個別の判断は行政庁・弁護士等にご確認ください。


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