「SUUMO(スーモ)の掲載料は高い」。そう感じている会社に先に結論を言うと、高いかどうかは金額では決まりません。同じ50件枠・同じ月83,600円(税込)でも、東京都港区で賃貸を扱う会社は月0.74件、青森市の会社は月2.81件決めないと枠代が出ません。3.8倍の差です。
理由は単純で、枠の値段は全国どこでも同じなのに、仲介手数料の元になる家賃が街ごとに違うからです。宅地建物取引業者が受け取れる報酬は国土交通省の告示で上限が決まっていて、そこにポータルの掲載料を上乗せすることはできません。回収は成約報酬の中からになります。
この記事では、出所を示して引ける枠料金の実額と、報酬告示の上限、レインズの成約データを突き合わせて、「何件決めれば掲載料が消えるのか」を賃貸と売買の両方で出します。2026年10月から順次始まる成約課金への移行は別の話なので、SUUMOの成約課金のほうに分けてあります。
この記事でわかること
- ✓ 出所を示して引ける賃貸の枠料金は5件枠10,000円〜100件枠144,000円(税別・2020年・全宅連ハトマークサイト経由)。リクルートの公式な料金表は公開されていない
- ✓ 同じ50件枠で必要な月間成約数は港区0.74件・青森市2.81件。家賃データのある1,189市区町村の中央値の街なら2.59件
- ✓ 売買は月では数えられない。中古戸建はレインズ登録から成約まで平均100.9日で、1件が枠代3.32か月分をふさぐ
枠料金は2020年に全宅連(全国宅地建物取引業協会連合会)のハトマークサイト経由で公表された賃貸居住用の価格です。現在の価格でも、リクルートとの直接契約の価格でもありません。報酬の上限は令和6年7月1日施行の告示、成約データは東日本不動産流通機構の2025年集計に拠っています。
賃貸の掲載枠で、いま出所を示して引ける料金表は1つだけ
SUUMOの掲載料を調べると、どのページにも「賃貸は月300〜1,500円/物件、売買は月1,000〜5,000円/物件」という数字が並んでいます。ただしこの数字は、どこを開いても出所が書かれていません。誰が、いつ、どの契約形態で払った金額なのかが辿れないので、この記事では計算に使いません。
出所を示して引けるのは、2020年に全宅連のハトマークサイト経由で告知された賃貸居住用の枠料金です。宅建協会の2つの支部サイトに同じ表が残っていて、金額が一致します。
| 物件枠数 | 月額(税別) | 1枠あたり | 月額(税込に換算) |
|---|---|---|---|
| 5件枠 | 10,000円 | 2,000円 | 11,000円 |
| 10件枠 | 20,000円 | 2,000円 | 22,000円 |
| 20件枠 | 37,500円 | 1,875円 | 41,250円 |
| 50件枠 | 76,000円 | 1,520円 | 83,600円 |
| 100件枠 | 144,000円 | 1,440円 | 158,400円 |
枠を増やすほど1枠あたりは下がり、5件枠2,000円に対して100件枠は1,440円。28%安くなります。
この表を読むときに落とせない条件が3つあります。2020年時点の金額であること、税別であること、そしてハトマークサイト経由で新規に参画する会社向けの価格であって、リクルートとの直接契約と同じとは限らないことです。連動できるのも居住用の賃貸物件だけで、売買物件は対象外と明記されています。

この表が対象にしているのは居住用の賃貸物件だけで、売買物件は入っていません(写真:Pexels)
読者
いまの価格が知りたいのに、2020年の表を見て意味がありますか?
金額そのものより、枠数と月額の関係を見るために使います。1枠あたりいくらで、それを何件の成約で割るのか。この構造は価格が変わっても同じです。
現在の実額として公になっているものもあります。神奈川県相模原市のサンライトホームは、新築戸建と中古戸建を扱う売買仲介の会社です。自社ブログで「現在弊社は5枠を『購入』してるんだけど、今までオプションを含めて月額が69,300円(税込)だったのが来年4月から88,000円(税込)って事で18,700円の値上げ」と書いています。上の表は賃貸の枠なので、この会社が払っている額はそこには載っていません。
同じ投稿には、もう1つ金額が出てきます。「そして『レポート』掲載ってやつにだと『1コマ』88,000円だよ」。物件を目立たせる掲載に切り替えると、5枠ぶんと同じ額が1件で出ていきます。5枠88,000円は基本の枠代であって、支払いの上限ではありません。
大阪の三共コスモスは「当社の場合は約1.5倍程度の負担増となる見込みです」としています。どちらも自社の金額であって、料金表そのものではありません。
リクルートの事業者向けサイトは、2026年9月5日時点でドメイン名の解決ができませんでした。公式の料金表は、いま外から見える場所にはありません。
掲載料を仲介手数料に上乗せできない 告示が別途認めているのは1つだけ
損益分岐を考える前に、確かめておくことがあります。掲載料は経費なのだから、その分を手数料に乗せればいい——これはできません。
報酬の上限を定めた告示の第十一の①に、こう書かれています。
別に受け取ってよいと書かれているのは「依頼者の依頼によって行う広告の料金」だけです。会社の判断で買っているポータルの枠は、依頼者が頼んだ広告ではありません。つまり掲載料は、成約したときの報酬の中から出すしかない。だから「何件決めれば消えるのか」という問いが成り立ちます。
報酬の上限は告示の第二と第四にあります。売買の媒介は依頼者の一方につき、200万円以下の部分が5.5%、200万円超400万円以下が4.4%、400万円を超える部分が3.3%。400万円を超える物件なら「代金×3.3%+6.6万円」と一致します。賃貸の媒介は依頼者の双方から受け取る合計が借賃1か月分の1.1倍以内で、居住用の建物は、依頼を受けるにあたって承諾を得ている場合を除き、一方から受け取れるのは0.55倍以内です。
この記事の賃貸の計算は、借主から0.55倍を受け取る前提で置いています。貸主から受け取る取次業務委託料などは告示の報酬とは別の議論になるため、計算に入れていません。入れれば分岐点はその分だけ手前に来ます。
同じ50件枠をまかなうのに必要な成約数 港区0.74件、青森市2.81件
ここからが本題です。50件枠の月83,600円(税込)を、その街の家賃で決まる手数料で割ります。
Yahoo!知恵袋に、2025年12月に立った質問があります。「賃貸仲介不動産屋さんって、仲介手数料の家賃0.5ヶ月+税で利益はあるのですか?赤字ではないですか。SUUMOとか掲載料金も別途必要です」。これに実務者が付けたベストアンサーの1行目が、この記事の答えとほぼ同じでした。
まず、ベースになる家賃がいくらか? てのがありますし
「ベースになる家賃がいくらか」を、全国1,189市区町村の実データで引いたのが次の図です。

枠代は全国同じでも、家賃が違えば必要な件数が変わります
50㎡の部屋で、借主から家賃の0.55倍を受け取る前提です。港区は家賃205,300円・手数料112,915円で0.74件、青森市は家賃54,100円・手数料29,755円で2.81件。家賃データのある1,189市区町村の中央値は1㎡あたり1,173円(埼玉県久喜市)で、この水準の街だと2.59件になります。いちばん低い北海道歌志内市は281円で、50㎡なら家賃14,050円です。
読者
50㎡というのは、どこから出てきた数字ですか?
こちらで置いた仮定です。家賃は住宅・土地統計調査の1㎡あたりの中央値なので、面積を決めないと総額が出ません。面積を変えても街どうしの比は変わらないので、3.8倍という差はそのまま残ります。
この家賃は募集賃料ではなく、いま住んでいる人が払っている家賃の中央値です。だから「港区で50㎡を募集すれば20万円で決まる」という意味ではありません。街と街を比べるための物差しとして使っています。
同じ枠を買い、同じ広告を出し、同じ手数料率で働いても、月に決めなければならない件数が3.8倍違う。これは営業力の差ではなく、扱っている街の家賃の差です。掲載料が高いかどうかは、金額ではなく立地で決まっています。
物件ページに「このあたりはどんな街か」を、入力ゼロで置けます
自社サイトにタグを1行貼るだけで、住所から相場・災害リスク・土地の高さ・町ごとの成約価格が出る窓を置けます。周辺施設を手で入力する必要はありません。
売買は「月いくら」では数えられない 枠が1件でふさがるのは平均100.9日
売買に移ると、計算の形が変わります。月額を月の成約数で割る、という数え方が合わなくなるからです。

在庫が増えても枠は増えません。決まるまでのあいだ、1件が1枠を占め続けます(写真:Pexels)
枠は物件が決まるまでふさがり続けます。東日本不動産流通機構が集計した2025年の首都圏の実測では、レインズ登録から成約に至るまでの日数は中古マンションで82.5日、中古戸建住宅で100.9日でした。

日数を枠代の月数に換算すると、1件あたり約3か月分になります
中古戸建の100.9日は3.32か月です。1枠が1年に回せるのは3.62件で、これは全部決まった場合の理論値になります。決まらなかった物件も同じだけ枠を占めるので、実際の回転はこれより落ちます。
つまり売買の掲載費は、月あたりで見るのではなく1件あたり枠代の3か月分として数えたほうが実態に合います。50件枠を持っていても、年に180件流せるわけではありません。
私は、掲載料の議論が「月額が高いか安いか」に寄りすぎていると見ています。効いているのは金額ではなく、枠が1件で3か月ふさがることのほうです。同じ88,000円でも、1件を82.5日で回す会社と180日抱える会社では、成約1件あたりの掲載費が倍以上変わります。値上げに反応して枠数を削ると、回転の悪い在庫だけが残って1件あたりの単価がかえって上がる、という順序になりかねません。
年に何件決めればペイするのか 3つの水準で計算する
売買は年単位で数えます。相模原の売買仲介会社が公表している5枠88,000円(税込)は年額1,056,000円です。これを片手の報酬で割ります。基本の枠代だけの金額で、「レポート」掲載を足すと1コマごとに同じ額が乗ります。
| 成約価格 | 片手の上限(税込) | 5枠88,000円 | 月30万円 | 月50万円 |
|---|---|---|---|---|
| 5,200万円(中古マンション平均) | 1,782,000円 | 年0.59件 | 年2.02件 | 年3.37件 |
| 3,917万円(中古戸建平均) | 1,358,610円 | 年0.78件 | 年2.65件 | 年4.42件 |
| 2,000万円 | 726,000円 | 年1.45件 | 年4.96件 | 年8.26件 |
| 1,000万円 | 396,000円 | 年2.67件 | 年9.09件 | 年15.15件 |
5枠なら、首都圏の平均的な中古戸建を年に1件決めれば枠代は消えます。値上げで増えた月18,700円のほうは、年224,400円。2,000万円の物件なら年0.31件ぶんです。
ここまでは基本の枠代だけの話です。「レポート」掲載を1コマ足せば月額は176,000円になり、必要な成約数もそのまま倍になります。安く見えるのは、目立たせるための費用をまだ数えていないからです。
数字が変わるのは、月30万円・月50万円という水準に上がったときです。集客コンサルタントが「都内の売買仲介会社の場合、SUUMOだけで月30万〜50万が中央値でしょう」と書いている水準で計算すると、2,000万円の物件だけを扱う会社は年8.26件、1,000万円の帯なら年15.15件が必要になります。この30万〜50万という数字は著者の見立てであって実測ではないので、そう書かれている水準で計算した結果として読んでください。
低い価格帯を扱う会社ほど分岐が遠いことは、実数でも裏が取れます。2025年に首都圏で成約した中古戸建21,632件のうち、2,000万円以下は5,961件で27.6%。中古マンションは2,000万円以下が11,241件で22.9%です。4件に1件は、片手726,000円以下の世界で回っています。
読者
両手なら倍になるのでは?
なります。告示の第二は「依頼者の一方につき」なので、売主と買主の双方から受け取れば上限は2倍です。必要件数は半分になります。仕組みは両手と片手の記事のほうに書いてあります。
反響が月10件の会社は、この計算のどこで止まるか
ここまでの計算は「決まったら」の話です。反響から成約までの歩留まりを掛けないと、実際に払える金額にはなりません。ところが、この最後の1段だけが公表されていません。
不動産会社のミカタが実施した調査では、回答した会社の96.2%が売買仲介を主業務としていて、月間の平均反響件数は10件以下が58.5%。通電率は10%以下が34%、来店率も10%以下が35.8%で最多でした。初回対応は94.4%が物件の営業担当者本人です。
月10件の反響に来店率10%を掛けると、来店は月1件。年12件です。ここから成約に落ちる率は、この調査にも他のどこにも公表値がありません。各社のコラムに出てくる「成約率およそ10%」という数字は、出所が示されていないので使えません。

ここまで来た件数だけが、掲載料を回収します(写真:Pexels)
つまり、反響が月10件の会社について「掲載費を回収できる」とも「できない」とも、公表データからは言えません。言えるのは、回収できる保証がどこにも無いということだけです。自社の数字で埋めるしかない部分になります。
その1段を自社で埋めるなら、必要なのは3つの数字だけです。掲載費の年額、直近1年の成約件数、そして成約1件あたりの平均手数料。年額を件数で割れば成約1件あたりの掲載費が出て、平均手数料と並べれば、この記事の表と同じ形になります。反響数や来店率は、その後で原因を探すときに使う数字です。
なお、この計算で分岐が遠いと分かったとき、枠を減らす前に見る場所があります。同じ枠でも選ばれる率が変わるからで、契約者が不動産会社を選んだ理由の1位は写真の点数でした。そちらはSUUMOの反響が落ちたのは掲載順位のせいではありませんに分けてあります。
出典
- 不動産の宅建協会中信支部「【全宅連】ハトマークサイト『SUUMO』新規利用企業向け賃貸掲載枠料金キャンペーンを実施中!」2020年1月1日(中信支部のお知らせ)/埼玉県宅地建物取引業協会 彩央支部のお知らせ「【全宅連】ハトマークサイト『SUUMO』(賃貸)キャンペーンを実施!」2020年7月1日(彩央支部のお知らせ)。100件枠は後者にのみ記載
- 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」昭和45年建設省告示第1552号(最終改正 令和6年6月21日国土交通省告示第949号・令和6年7月1日施行)(告示の本文)
- 公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」2026年1月20日(レインズの集計)。登録から成約に至る日数、成約価格、価格帯別成約件数
- 総務省統計局「住宅・土地統計調査」令和5年 表122-5-1(統計表ID 0004021510)共同住宅の延べ面積1㎡当たり家賃・中央値(2023年10月1日時点)。1,189市区町村ぶんを当サイトで集計
- 株式会社サンライトホーム 公式ブログ 2025年12月11日(値上げについての投稿)/三共コスモス株式会社 ブログ 2026年1月23日(改定についての投稿)
- Yahoo!知恵袋の質問と回答(2025年12月14日投稿・該当の質問)
- 不動産会社のミカタ「不動産売買の来店率が上がらない理由とは?ミカタ社独自調査で見えた課題と対策」2025年5月12日公開・2026年8月6日更新(調査の記事)
- 月30万〜50万の水準は note「不動産会社の集客改善②|SUUMOに月50万払い続ける前に知っておくべきこと」(marketinglab kawaikikaku・2026年4月1日)の記述に拠るもので、実測値ではありません
- リクルートの事業者向けサイト(business.suumo.jp)は2026年9月5日時点でドメイン名の解決ができず、公式の料金表は確認できませんでした
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