🗨️「石川県で起きた「ニセ社長詐欺」は、どういう手口ですか?」
社長になりすまして業務命令を装ったメールを企業に送り、従業員に指定の口座へ送金させる手口です。石川県内の企業が1億5千万円をだまし取られたことが9月16日、県警への取材で分かりました。県内では3例目で、被害額は過去最高です。県警が注意を呼びかけています。国際的にはビジネスメール詐欺(BEC・ビーイーシー)と呼ばれ、情報処理推進機構(IPA・アイピーエー)が2015年から国内の事例を確認しています。だまされるのは経理の担当者ですが、狙われているのは個人の注意力ではなく、社長の一声で送金が動いてしまう会社の仕組みのほうです。
[事件・事故] この記事の要点
2026年9月17日 発表
- 経理や総務で振込の実務をしている人
- 社長・役員が少人数で、決裁が口頭で通る会社
- 高齢の家族がいて、電話やメールでお金の相談を受けることがある家庭
社長をかたったメールが、従業員に送金させました
発表されている内容を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手口 | 社長をかたり、業務命令を装ったメールを企業に送る |
| だました相手 | その企業の従業員 |
| させたこと | 指定した口座への送金 |
| 被害額 | 1億5千万円 |
| 石川県内での件数 | 3例目(被害額は過去最高) |
| 分かった日 | 2026年9月16日(県警への取材) |
3例目で、最高額が出ました
ここが今回いちばん気になる点です。
石川県内で3例目。そしてその3例目が過去最高額でした。初めての手口が県内に入ってきて、回を追うごとに額が小さくなっているのではなく、大きくなっています。
1億5千万円は、中小企業なら会社の資金が丸ごと動く額です。1回で、です。取り返せる保証はありません。送金先はすぐに別の口座へ動かされるのが通例で、気づいたときには残っていないことがほとんどです。
この手口には、国際的な名前があります
「ニセ社長詐欺」というのは、新しい詐欺ですか。
呼び方は日本のものですが、手口自体は以前からあります。国際的にはビジネスメール詐欺と呼ばれていて、国内でも10年以上前から確認されています。
情報処理推進機構(IPA・アイピーエー)は、この手口をビジネスメール詐欺(BEC・ビーイーシー)と呼び、「巧妙な騙しの手口を駆使した、偽の電子メールを組織・企業に送り付け、従業員を騙して攻撃者の用意した口座へ送金させる詐欺の手口」と説明しています。
IPAは2015年からビジネスメール詐欺の事例を確認しています。つまり、10年以上この手口は日本で動き続けています。米国の当局が公開している情報でも、被害は年々増加傾向にあるとされています。
\この記事は2ページ構成/

破られたのは、従業員の注意力ではありません
この種の事件が報じられると、「なぜ気づかなかったのか」という話になりがちです。私は、そこを責めても再発は止まらないと考えています。
理由は単純です。従業員がしたのは「業務命令に従うこと」だからです。社長から急ぎの送金指示が来て、それに従うのは、その会社ではむしろ正しい行動として教えられています。日ごろ「指示は早く」と言われている会社ほど、確認で止まる人は出にくくなります。
だから破られたのは、個人の注意力ではなく社長の一声で送金が最後まで動いてしまう決裁の仕組みのほうです。ここを直さないかぎり、担当者が代わっても同じことが起きます。
止めるのに要るのは、1行の決まりだけです
大がかりなシステムは要りません。次の2つで、この手口はほぼ通らなくなります。
- 送金の指示が来たら、そのメールに返信せず、別の手段で本人に確認する。電話でも、その場へ行ってでもかまいません。同じメールの流れで確認すると、返事をするのは相手です
- 一定額を超える送金は、2人の承認が要る。金額は会社の規模で決めてかまいません。大事なのは「1人では完了しない」という一点です
そのうえで、迷ったときの合図を覚えておくと早いです。
| 合図 | なぜ危ないか |
|---|---|
| 急ぎ(今日中に、至急) | 確認する時間を奪うために付けられている |
| 内密に(他の人には言わないで) | 2人目の目が入ることを防ぐために付けられている |
| いつもと違う口座 | 取引の実体がないことの、いちばん分かりやすい印 |
この3つがそろったら、それだけで手を止める理由になります。
同じ構造は、家庭のお金にもあります
会社の話として読み流さないでほしい理由があります。
相手をかたる。急がせる。いつもと違う経路で連絡が来る。これはオレオレ詐欺とまったく同じ3点セットです。かたる相手が社長か息子かの違いしかありません。
だから家庭で決めておくことも、会社と同じで足ります。お金の話がメールや電話で来たら、その経路では返事をせず、こちらから本人の番号にかけ直す。それだけです。番号は登録済みのものを使い、届いたメッセージに書かれている番号は使いません。
かけ直したときに本人が出なかったら、どうすればいいですか。
出るまで送りません。本当に急ぎの用件なら、相手はもう一度こちらに連絡してきます。連絡が途絶えるなら、それが答えです。
生活・仕事にどう効くか
- 1億5千万円は、石川県内では過去最高額です。3例目で最高額が出たということは、額が回を追って大きくなっているということです。
- だました相手は経理の担当者ですが、破られたのは個人の注意力ではなく、社長の指示ひとつで送金が完了してしまう決裁の仕組みのほうです。
- 同じ構造は家庭にもあります。相手をかたる、急がせる、いつもと違う経路で連絡が来る。オレオレ詐欺とまったく同じ3点セットです。
結局どうすればよいか
- 送金の指示が来たら、そのメールに返信せずに、電話など別の手段で本人に確認する
- 「急ぎ」「内密に」「いつもと違う口座」の3つがそろったら、いったん止める
- 一定額を超える送金は2人の承認が要る、という決まりを1行でいいので作る
公式出典
- 北國新聞社 ニセ社長詐欺で石川県内企業1億5千万円被害(報道)(2026年9月17日発表)
- 情報処理推進機構(IPA)ビジネスメール詐欺(BEC)について(2026年9月17日発表)
更新履歴
- 2026年9月17日 初版を公開。被害額・件数は報道に基づく。被害企業名は公表されていないため記載していない。捜査中の事案のため、犯人像や送金先については書いていない。
※本記事は2026年9月17日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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