築30年の中古戸建ては、全国の中央値でいうと新築の半額で買えます。ただしその「半額」は、あなたが買おうとしている街に当てはまるとは限りません。東京都文京区では、築21〜30年の中古が新築の99%の坪単価で取引されています。一方で岐阜県可児市と兵庫県三木市は19%です。
Yahoo!知恵袋に、こういう質問があります。
「新築住宅は実に高いのに中古住宅は極端に安くなるのはなぜですか?」
Yahoo!知恵袋(2022年3月12日)の質問より
この質問への回答で、すでに答えの半分は出ています。回答者が挙げていたのは需給バランスでした。人気のある街では新築と中古の差が小さく、そうでない街では大きく落ちる。つまり「新築か中古か」という問いには全国共通の答えがなく、住む街ごとに答えが違うということです。
国土交通省が公開している不動産取引価格情報から、戸建ての取引71,365件を市区町村ごとに分けて集計しました。以下はその結果です。
先に結論
- 築21〜30年の中古戸建ての坪単価は、同じ街の新築の49%(319市区町村の中央値)
- ただし街ごとの幅が大きく、99%の街から19%の街まである。319市区町村のうち167は半額以下、23は7割以上
- 2026年1月以降に入居するなら、住宅ローン控除の借入限度額と控除期間は、省エネ基準を満たした中古と新築で同じになった
- ただし省エネ性能を書類で証明できない中古は、これまでどおり2,000万円・10年のまま
- 引渡しから10年の保証が法律で義務づけられているのは新築だけ。ここは制度上どうやっても埋まらない
同じ「築21〜30年」でも、新築の99%の街と19%の街がある
まず街ごとの差から見ます。新築(築0〜1年)の坪単価を100として、同じ街の築21〜30年の中古が何%かを出しました。条件を満たした319市区町村の結果を抜粋します。

東京都文京区は99%です。築30年近い家でも、新築とほとんど変わらない坪単価で売買されています。新宿区94%、豊島区90%、さいたま市大宮区88%と続きます。
反対側を見ると、三木市19%、可児市19%、島田市21%、呉市21%。ここでは築30年の中古は新築の5分の1です。三木市の数字を実額にすると、新築が坪94万円(総額3,150万円)に対して、築21〜30年は坪18万円(総額700万円)でした。
この差が意味するのは、「中古は安い」という言葉が指す割引率が、街によって1%から81%まで振れるということです。神戸市の中古戸建てが実際にいくらで売れているかは神戸市の中古戸建ては実際いくらで売れたかにまとめてあります。明石市・西宮市はこちらの定点観測です。
中古の値段は、築年数で階段のように落ちる
次に、街の差をいったん脇に置いて、築年数だけを見ます。市区町村ごとに「新築を100としたときの割合」を出し、その中央値を並べたものです。

築6〜10年でまだ81%あります。5年落ちの家を「中古だから安い」と思って見に行くと、思ったほど安くないと感じるはずです。値段がはっきり動くのは築10年を過ぎてからで、築11〜20年で67%、築21〜30年でちょうど半分の49%になります。
築31〜40年は35%、築41年以上は28%。ただしここから先は、価格の大部分が土地の値段になっていきます。建物にいくら残っているかではなく、その土地がいくらかの話に変わるということです。
この落ち方には、もう一つ特徴があります。築11〜20年から先を10年ごとに追うと67→49→35→28で、下がり幅は18、14、7ポイントと後半になるほど縮んでいきます。マンションはそうなりませんでした。同じやり方で中古マンションを集計すると、10年ごとの落ち幅は20.5→19.1→19.6ポイントとほぼ一定で、下げ止まる築年数が出てきません(「築20年を過ぎれば下げ止まる」は172市区町村のどこでも起きていませんでした)。基準の取り方が違うので割合そのものを並べて比べることはできませんが、戸建ては古くなるほど価格が土地の値段に近づいて下げ止まり、マンションは一戸あたりの土地の持ち分が小さいぶん落ち続ける——この差が出ていると私は見ています。
知恵袋には、こういう質問もありました。
「築10年ほどの中古住宅と、注文住宅とでどのくらいの差があればおとくでしょうか。立地や間取り違いをあげればキリがないですがリフォームや修繕費用で新築と大差ない金額になったと言う話も聞きます。」
Yahoo!知恵袋(2022年7月4日)の質問より
築10年前後を狙うと値引きが2割ほどしかない、というのは上の数字と合っています。リフォーム費用の平均額は、国の統計から出典を確認できる数字を見つけられなかったので、ここでは金額を出しません。かわりに言えるのは、築6〜10年の中古を選ぶなら、値段で得をする作戦は成立しにくいということです。
神戸市の中では、同じ市内でも34%から61%まで開く
街の差は、都道府県どころか市の中でも起きます。神戸市の8区について、築21〜30年の中古が新築の何%かを出しました。
| 区 | 新築の何%か | 新築の坪単価 | 築21〜30年の坪単価 |
|---|---|---|---|
| 灘区 | 61% | 183万円 | 112万円 |
| 東灘区 | 58% | 197万円 | 113万円 |
| 西区 | 53% | 120万円 | 63万円 |
| 須磨区 | 50% | 139万円 | 69万円 |
| 垂水区 | 50% | 141万円 | 70万円 |
| 兵庫区 | 45% | 128万円 | 58万円 |
| 北区 | 40% | 117万円 | 47万円 |
| 長田区 | 34% | 142万円 | 48万円 |
灘区で中古を選んだ場合の値引きは4割弱ですが、長田区なら3分の1の値段で買えます。中央区は新築の取引件数が足りず、集計から外しました。
兵庫県内の他の市も並べると、西宮市61%、伊丹市57%、尼崎市56%、明石市53%、宝塚市46%、川西市39%、姫路市38%、加古川市33%、三木市19%でした。同じ兵庫県の中で、中古の値引き幅が4割弱から8割まで開いています。
あなたの街がどちら側かを調べる方法
ここまでの数字は「その街で中古を選ぶと、どれだけ安く買えるか」を示しています。買う側から見ると、値引きが大きい街は初期費用を抑えられ、値引きが小さい街は買ったあとに値段が落ちにくいということです。どちらが良いかは、その家に何年住むつもりかで変わります。
10年以内に住み替える予定があるなら、値段が落ちにくい街のほうが手放すときに残ります。逆に30年住み続けるつもりなら、売るときの値段より、買うときにいくら借金を減らせるかのほうが効きます。
自分の街の相場は、下のツールで市区町村を入れると出せます。土地・中古戸建て・中古マンションの実際の取引価格を、国土交通省のデータから引いています。
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2026年に入居するなら、住宅ローン控除の新築と中古の差はほとんど消えました
値段の話はここまでです。ここからは制度の話に移ります。そしてこの節の内容は、去年までに書かれた比較記事と食い違います。
住宅ローン控除は長いあいだ「中古は不利」でした。2025年(令和7年)入居までは、中古住宅は住宅の種類にかかわらず控除期間が10年で、借入限度額も新築より低く設定されていました。
これが変わりました。国土交通省が2025年12月26日に公表した令和8年度税制改正の内容によると、2026年1月1日から2030年12月31日までに入居した場合、中古住宅の控除期間が13年間に拡充されます。借入限度額も引き上げられました。
| 住宅の種類 | 新築の借入限度額 | 中古の借入限度額 | 控除期間 |
|---|---|---|---|
| 長期優良住宅・低炭素住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | 13年 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 3,500万円 | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円 | 2,000万円 | 13年 |
| その他の住宅 | 2,000万円 | 2,000万円 | 10年 |
国土交通省「住宅ローン減税」および報道発表(令和7年12月26日)より。子育て世帯・若者夫婦世帯には上乗せがあり、長期優良・低炭素は新築5,000万円/中古4,500万円、ZEH水準は両方4,500万円、省エネ基準適合は両方3,000万円になります。控除率は年末残高の0.7%、合計所得金額2,000万円以下が条件です。
色を付けた2行を見てください。ZEH水準省エネ住宅と省エネ基準適合住宅では、新築と中古の借入限度額も控除期間も同額・同期間です。差が残るのは長期優良住宅・低炭素住宅の1,000万円(子育て世帯・若者夫婦世帯は500万円)だけになりました。
床面積の条件も緩みました。同じ報道発表に、40㎡以上への緩和措置を既存住宅にも適用すると書かれています。ただし合計所得金額1,000万円超の人と、上乗せ措置を使う人は50㎡以上のままです。
私はこの改正を、中古を選ぶ人にとって今年いちばん大きい変化だと見ています。それにもかかわらず、「新築 中古 どっち」で検索して出てくる上位10本の記事は、2026年8月時点でどれもこの変更に触れていませんでした。去年までの「中古は10年・2,000万円」の前提のまま置かれています。
なお、住宅ローン控除については土地の側にも変更があります。2028年入居の新築から、土砂災害の危険がある区域は対象外になります。詳しくは住宅ローン控除が使えない土地ができますにまとめました。
ただし、省エネ性能を証明できない中古は控除が10年のままです
ここで喜ぶ前に、上の表のいちばん下の行を見てください。「その他の住宅」は中古も新築も2,000万円・10年です。
「省エネ基準適合住宅」として13年の控除を受けるには、住宅省エネルギー性能証明書などの書類を出す必要があります。新築なら売主が用意しているのが普通ですが、築20年、30年の中古で、この証明が最初から付いている物件はほとんどありません。取ろうとすれば、建築士に調査と証明を依頼することになります。
つまり実務では、相当数の中古住宅が「その他の住宅」の枠に落ちます。「2026年から中古も新築と同じ13年」は、正確には「省エネ性能を証明できた中古なら同じ」です。物件を見に行ったときに、証明書が取れる建物かどうかを不動産会社に確認してください。ここを確認せずに資金計画を立てると、当てにしていた控除が3年分足りなくなります。
断熱や窓の性能そのものを上げたい場合は、国の補助金が使えることがあります。制度ごとの締切と対象は住宅省エネ補助金3制度、まだ間に合うのはどれかで比べています。
保証は、どうやっても埋まらない差です
ここまで中古に有利な話が続いたので、逆側も書きます。新築と中古で制度上どうしても埋まらない差が、保証です。
新築住宅は、住宅品質確保促進法によって、売主や請負人が引渡しから10年間の瑕疵担保責任を負います。対象は構造耐力上主要な部分(基礎、柱、土台、床版、屋根版、横架材など)と、雨水の浸入を防止する部分(屋根、外壁、開口部の建具など)です。これは法律上の義務で、契約で短くすることはできません。
中古住宅にこれはありません。かわりに既存住宅売買瑕疵保険という任意の保険があり、宅建業者が売主のタイプで保険期間は2年または5年、保険金額は500万円または1,000万円です。個人間の売買なら1年・2年・5年から選ぶ形になります。
並べるとこうなります。新築は10年・法律で義務。中古は最長5年・任意・上限1,000万円。中古を買うときは、この保険が付いている物件かどうかが、値段と同じくらい効いてきます。
昭和56年までに建った家は、別の枠で考えてください
もうひとつ、中古を見るときに区切りになる年があります。1981年(昭和56年)12月31日です。
国税庁の説明によると、住宅ローン控除の対象になる中古住宅は「昭和57年1月1日以後に建築されたものであること」が条件です。それより前に建った家でも、取得の日前2年以内に耐震基準に適合すると証明されていれば使えますが、その証明を取るには調査費用がかかり、通らないこともあります。
この記事で使った取引データも、1982年以降に建てられた家だけを集計対象にしています。それより古い家の値段はここには入っていません。築45年、築50年の家を見に行く場合は、この記事の数字はそのまま当てはまらないと考えてください。
では、どちらを選べばいいのか
知恵袋で、こう書いている人がいました。
「新築だろうと中古だろうと、『住みたい土地』一択です。建物は、自分が住んだ時から中古で、価値が下がります。」
Yahoo!知恵袋(2025年6月19日)の回答より
私も、順番はこれで合っていると考えます。ここまで見てきた数字が示しているのは、中古の値引き幅がその街の人気で決まっているということでした。文京区で築30年が新築の99%で売れるのは、建物が良いからではなく、その場所に住みたい人が途切れないからです。三木市で19%になるのも、建物の質の話ではありません。
だから決める順番は、まず住みたい場所を絞り、次にその場所の値引き幅を見て、新築と中古のどちらで入るかを決める、になります。逆はうまくいきません。「中古のほうが安いから」で場所を後回しにすると、値引きが小さい街で中古を買って新築との差がほとんど無かった、という結果になりえます。
別の質問には、こう書かれていました。
「夫婦共に仕事・育児をしながら家のことを考えるのに疲れてきております。」
Yahoo!知恵袋「新築が中古かで迷っています」(2025年4月14日)の質問より
この人は、注文住宅4,000万円で立地が劣る案と、築5年の中古3,600万円で立地が良い案の二択で迷っていました。上の順番で言えば、答えは後者です。築5年なら値引きはもともと2割程度しか付かず、その差額400万円で立地を買っている形になります。
家を売る側に回ったときの話は一般媒介より専任媒介のほうが早く売れる、とは限りませんに書きました。買うときに「売りやすい街かどうか」を見ておくと、そのときに効いてきます。
この記事の数字の出どころと、読むときの注意
集計の条件を書いておきます。
- 出典は国土交通省「不動産情報ライブラリ」の不動産取引価格情報です
- 期間は2024年10〜12月期から2025年10〜12月期までの5四半期。対象は種類が「宅地(土地と建物)」で、用途に住宅を含み共同住宅を含まない取引、計71,365件です
- 坪単価は、取引総額を建物の延床面積(坪換算)で割った値です。土地代を含んだ総額を建物の面積で割っているので、広い土地に小さい家が建っていると坪単価が高く出ます。新築は土地が小さく建物が大きい傾向があるため、この計算方法自体が新築を割安に見せる方向に効いています
- 築年数は「取引された年 − 建てられた年」です。新築は築0〜1年として扱いました
- 街ごとの割合は、その市区町村の中で新築が10件以上、その築年数帯が10件以上あるものだけを集計しています。築21〜30年で条件を満たしたのは319市区町村でした
- 1982年(昭和57年)以降に建てられた家だけを対象にしています
読むときの注意がひとつあります。ここに出した数字は、同じ家を何年も追いかけたものではありません。2024年から2025年のあいだに売れた「新築」と「築30年」を、別々の物件として比べたものです。今日買った新築が30年後にこの割合になる、という予測ではありません。
それでも、その街で今まさに築30年の家がいくらで取引されているかは、これから中古を買う人が実際に払う値段です。比較の材料としては、全国平均より自分の街の数字のほうが役に立つはずです。


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