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AIが作った不動産会社リスト、その会社は本当にありますか? 国が132,291社を無料で公開しています

「兵庫県の不動産会社を100社、社名と住所と電話番号つきで表にして」とAIに頼むと、数十秒で表が返ってきます。この表の怖いところは、実在しない会社が混ざっていても画面の上では何も起きないことです。

気づくのは、宛名ラベルを100枚刷って投函し、宛先不明で戻ってきた封筒を開けたときです。切手代と印刷代は戻ってきません。この記事は、その前に1社ずつ確かめる方法と、正解の名簿がどこにあるかを書きます。

先に結論

  • AIが返す社名・住所・電話番号は、名簿を引いた結果ではなく、学習した文字の並びから組み立てた結果です
  • 宅建業者に限れば、正解の名簿は国が公開しています。国土交通省の検索システムは登録もログインも要らず、免許証番号で1社ずつ確かめられます
  • 免許を受けている宅建業者は132,291業者(令和6年度末・国土交通省)。11年連続で増えています
  • 名簿は毎日動きます。2026年8月19日に数え直したところ、東京都内の事務所は32,246件で、当方が8月上旬に取得したファイルより533件増えていました
  • 受け取ったリストにFAX番号の列があれば、出どころは公的な名簿ではありません。宅地建物取引業者名簿にFAXという項目が存在しないからです

AIの出力をそのまま業務に流す話はAIが書いた物件紹介文はそのまま掲載できる?にも書きました。この記事は営業リストだけを扱います。

目次

AIは会社を探しているのではなく、それらしい文字列を組み立てている

「AIが作ったリストは、ネット上の会社情報を集めてきたものだ」と考えている人がいますが、そうとは限りません。総務省の令和6年版情報通信白書は、生成AIが学習に使ったデータに存在しない情報を作り出すことがあると書き、これをハルシネーションと呼んでいます。集めているのではなく、作っている場面があるということです。

社名も住所も電話番号も、AIから見れば同じ「文字の並び」です。神戸市中央区の住所は無数に学習しているので、それらしい番地はいくらでも作れます。市外局番078で始まる10桁の番号も同じです。出てきた表は形式が完璧に整っているので、目で見て見抜くことはできません。

Yahoo!知恵袋には2025年2月、1,000社ぶんの電話番号をChatGPTで整理しようとした人の質問が残っています。10件ずつ区切って公式サイトをもとに整理するよう頼んでも、返ってくるのは「情報なし」ばかりだった、という内容です。この質問には2日後の追記があり、30件ずつに変えたら番号を出してくれた、と書かれています。

危ないのは「情報なし」と返ってきた側ではなく、頼み方を変えたら出てきた側です。

「情報なし」は、少なくとも正直な出力です。プロンプトを工夫して出させた番号のほうが、どこから来たのか分からないまま表に収まります。私は、AIに営業リストを作らせること自体を否定しません。ただ、AIが向いているのは集めたあとの整形であって、集めることそのものではないと考えています。

間違っていてもエラーは出ない、が最悪のパターン

「間違っていたら空振りするだけで、こちらに損はない」と考えたくなりますが、そうではありません。宅建業者名簿の電話番号は実在する番号です。AIが1桁ずらした番号は、たいていはどこかの誰かにつながります。空振りではなく、無関係の相手への営業電話になります。

エラーが出ないことが、この作業を難しくしています。表計算なら数式が壊れた瞬間に画面が赤くなりますが、リストは全部それらしく揃ったまま出てきます。

海外では、生成AIが作った存在しない判例を裁判所に提出した弁護士に、1万5000ドルの制裁金が勧告された事例が報じられています。別の件では、弁護士4人が判事に指摘されるまで自分の書面の判例が実在しないことに気づいていませんでした。日本の制度の話ではありませんが、専門家が本業の書類で、指摘されるまで気づかなかったという構図はそのまま参考になります。

宅建業者は、正解の名簿が国から公開されている

宅地建物取引業法10条は、国土交通大臣または都道府県知事が宅地建物取引業者名簿を一般の閲覧に供しなければならないと定めています。見せてもよい、ではなく義務です。

オンラインで確かめるなら、国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムが最短です。会員登録もログインも要りません。都道府県と商号で検索すると一覧が出て、そこから各社の詳細画面に入れます。

当方は兵庫・東京・大阪・愛知の4都府県ぶんをこのシステムから全件取得しているので、詳細画面に何が入っているかを実データで確認しています。

詳細画面から取れる項目 中身
免許証番号・免許の有効期間 括弧内の数字は更新回数。有効期間は5年
最初の免許年月日 業歴を推定ではなく実年数で出せる
商号(カナ付き)・所在地・電話番号 兵庫5,905社では電話番号・郵便番号とも欠損ゼロ
法人・個人の別 社名の字面からの推測ではなく登録上の区分
総従事者数・専任取引士数・資本金 会社の規模が分かる
兼業・所属団体・保証協会 全宅連(ハト)か全日(ウサギ)か無所属か

このシステムには公式の注意書きがあり、新規の免許取得や内容の変更が反映されるまで概ね1か月程度かかると書かれています。公的なデータにも時間差はあります。それでも、AIが作った表よりは確実に元をたどれます。

名簿は2週間で546件動いた

当方が7月末から8月上旬に取得したファイルと、2026年8月19日に同じ条件で数え直した件数を並べます。数えたのは事務所の件数で、本店と支店・営業所の両方を含みます。

都府県 当方の取得時(7月末〜8月上旬) 2026年8月19日
東京都 31,713件 32,246件 +533
大阪府 17,268件 17,301件 +33
愛知県 8,244件 8,226件 -18
兵庫県 6,437件 6,435件 -2
4都府県計 63,662件 64,208件 +546

増えるだけでなく、愛知と兵庫のように減る県もあります。免許の更新をせずに失効した会社や廃業した会社が抜けるためです。全国では令和6年度の1年間に1,708業者(1.3%)増えました。

古いリストがどれくらい効かないかは、業歴の内訳を見ると分かります。兵庫県に本店を置く5,658社の内訳は、開業5年未満が1,146社、5年から10年が937社、10年から20年が1,228社、20年以上が2,347社でした。開業5年未満が20.3%を占めます。

5社に1社は、直近5年に免許を取った会社です。学習データが数年前で止まっているAIには、この2割がそもそも存在しません。

買ったリストの出どころを見分ける3つの列

自分で取らずに買う場合も、届いたファイルの列を見れば出どころの見当がつきます。

1つ目はFAX番号です。 宅地建物取引業者名簿には、FAX番号という項目がありません。当方は検索システムの一覧・概要・事務所の各画面と、賃貸住宅管理業・建設業の画面まで全部を検査しましたが、「FAX」「ファックス」「ファクシミリ」という語が1つも出てきませんでした。免許の申請書にFAXを書く欄が無いためです。つまり、FAX番号入りの不動産会社リストは、公的な名簿以外のどこかから集めたものです。売り手に出どころを聞いて、答えられないファイルは使わないほうが安全です。

2つ目は代表者名です。 個人情報保護委員会は公式のQ&Aで、法人の代表者の情報は個人情報保護法上の個人情報にあたるとしています。代表者名入りのリストを売り買いすると個人データの第三者提供にあたり、本人の同意か、個人情報保護委員会へのオプトアウト届出(法27条2項)が要ります。当方が売っているCSVに代表者名を入れていないのはこのためです。郵送物は「代表者様」「ご担当者様」宛で届くので、実務上の支障はほとんどありません。

3つ目は文字のきれいさです。 これは私見ですが、判定材料としては使えます。国交省のシステムの元データはWindows-31Jで、ユーザー定義外字領域の文字がそのまま入っています。兵庫の6,437行では468行、7.3%に外字が混ざっていました。本物の名簿データは字が汚いのです。全行が変換ミスひとつなく整っているファイルは、どこかで人かAIが清書しています。

自分で取るか、買うか

自分で取る場合、必要なのは検索システムを開く時間だけです。1社2社を確かめるなら、これがいちばん早くて確実です。数千社を1件ずつ開くとなると話が変わり、兵庫県の詳細取得だけで約3時間20分かかりました。

買う場合の相場も見ておきます。2026年8月19日にココナラで「営業リスト」を検索すると2,672件の出品がありました。1ページ目に並ぶ60件の価格は、中央値が5,000円、最安2,000円、最高75,000円です。

見るところは総額ではなく、1件あたりの単価と出どころです。同じ検索結果には「不動産会社の営業リスト61091件」を5,000円で売っている出品があります。1件あたり0.08円で、価格としては安い部類です。ただ、この61,091件はポータルサイトの掲載件数で、免許を受けている132,291業者の半分以下です。単位も時点も違うので厳密な比較にはなりませんが、ポータルに載っていない会社が相当数あることは分かります。

当方は、国土交通省の検索システムから取得した宅建業者リストを都道府県別に販売しています。兵庫・東京・大阪・愛知の4都府県が対象で、価格は1都道府県あたり3,000円です。代表者名は入れず、電話番号・郵便番号・業歴・従業員数・所属団体まで入れてあります。

宅建業者リストを1都道府県ぶん受け取る(3,000円) ▶
収録項目を見る(兵庫県6,437件の例)

ご購入後すぐにダウンロードいただけます。ご依頼・お支払いはココナラ経由です。

確かめる順番

営業リストを手にしたときの順番は、次の3つです。

  1. FAX番号の列があるか見る。あれば、公的な名簿が出どころではない
  2. 代表者名の列があるか見る。あれば、個人データを受け取ったことになる
  3. 上から10社を国土交通省の検索システムで引く。1社でも出てこなければ、そのファイルは通しで疑う

10社引くのに5分もかかりません。100通のDMを刷って投函する前に済ませておく作業としては、割に合うほうだと思います。

出典:国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」(https://etsuran2.mlit.go.jp/TAKKEN/ )を加工して作成/国土交通省「令和6年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果」(令和7年10月3日)/総務省「令和6年版情報通信白書」/個人情報保護委員会「よくある質問」。宅建業者の件数は2026年8月19日に同システムで確認した値で、日々変動します。ココナラの出品件数と価格は同日の検索結果1ページ目60件を集計したもので、変動します。

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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