家を売ると決めて不動産会社に相談すると、最初の面談で「専任と一般、どちらにしますか」と聞かれます。ここで選んだ契約によって、その会社があなたに負う義務の量が変わります。義務が増えるほうを選べば早く売れる、という話ではありません。
選び方が分からないまま迷っている人は、実際にこう書いています。
一般媒介がいいと聞きますが、専属媒介以上の方がいい気がします。理由は、一般だと不動産屋の気合いが入らないのでアピールしない、専任より売れなさそう。実際どうなのでしょうか。
Yahoo!知恵袋
この「気合い」で選ぼうとすると決まりません。気合いは測れないからです。測れるのは、それぞれの契約で会社に何の義務がつくかと、あなたが自分で何をやることになるかの2つです。この記事はそこだけで比べます。
先に結論
- 違いは「他社にも同時に頼めるか」と「会社に義務がつくか」の2点です。どちらが早く売れるかを比べた公的な統計はありません
- 専任は会社を義務で縛る契約です。レインズへの登録が7日以内、売主への報告が2週間に1回以上と決まっています
- 一般は縛らない代わりに、動いているかを売主が自分で追う契約です。登録も報告も法律上の義務がありません
- 専任の弱点だった囲い込みは、2025年1月から取引状況の登録が義務になり、売主が自分で確認できるようになりました
- 専任・専属専任の契約期間は3か月以内と法律で決まっています。一般には法律上の期間の決まりがありません
違いは「他社にも頼めるか」と「会社に義務がつくか」
媒介契約は3種類あります。名前は似ていますが、中身は他社に同時に頼めるかどうかで分かれます。
| 他社にも頼めるか | 自分で買主を見つけたら | レインズ登録 | 売主への報告 | |
|---|---|---|---|---|
| 一般媒介 | 頼める | 直接契約できる | 義務なし | 法律上の義務なし |
| 専任媒介 | 頼めない | 直接契約できる | 契約日の翌日から7日以内 | 2週間に1回以上 |
| 専属専任媒介 | 頼めない | できない(会社を通す) | 契約日の翌日から5日以内 | 1週間に1回以上 |
ここで見てほしいのは右の2列です。専任にすると、会社に期限つきの義務が発生します。一般には、その義務がありません。頼む会社を増やせる代わりに、どの会社も「いつまでにレインズへ載せる」「何週間に1回報告する」という縛りを負わないということです。
レインズというのは、不動産会社だけが見られる物件のデータベースです。ここに載って初めて、あなたが契約していない会社も買主に紹介できるようになります。仕組みそのものはSUUMOに同じ物件が4件も載ってるのはなぜ?に書きました。
売りに出た家の3件に1件は一般媒介です
どちらが多いのかは、実際の数字が出ています。公益財団法人 不動産流通推進センターが2026年1月に公表した「指定流通機構の活用状況について(2025年分)」によると、2025年にレインズへ新規登録された売り物件1,458,084件の内訳はこうなっていました。
| 取引の形 | 件数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 専任媒介 | 498,622件 | 34.2% |
| 売主(会社が自分で売っている物件) | 496,943件 | 34.1% |
| 一般媒介 | 301,208件 | 20.7% |
| 専属専任媒介 | 136,654件 | 9.4% |
| 代理 | 24,657件 | 1.7% |
媒介契約の3つだけを取り出して比べると、専任が53.2%、一般が32.2%、専属専任が14.6%。個人が媒介で売りに出した家のおよそ3件に1件は一般媒介ということになります。少数派ではありません。
ただし、この数字の読み方には注意がいります。一般媒介にはレインズへの登録義務がありません。つまり20.7%というのは「レインズに載った一般媒介」の数であって、載せずに売り出された一般媒介はここに入っていません。実際の一般媒介はこれより多い可能性があります。
「一般だと不動産屋の気合いが入らない」と思っていた人へ
そう言い切れる根拠は見つかりませんでした。冒頭の質問に答えた回答者は、逆のことを書いています。
一般で頑張る会社を選ぶことが重要。「専任は頑張らないけど一般は頑張る会社」はほぼいない。
Yahoo!知恵袋 ベストアンサーより
つまり、頑張るかどうかは契約の種類ではなく会社と担当者で決まる、という見方です。これも一意見であって、業界の総意ではありません。専任のほうが売れると言う業者もいます。
ここが割れているせいで、気合いを基準にすると決められなくなります。代わりに使えるのが、割れていないほうの事実です。専任にすると義務が3つつきます。
専任を選ぶと、会社に3つの義務がつきます
1つめがレインズへの登録。契約した日の翌日から7日以内(会社の休業日とレインズの休止日を除く)に登録しなければなりません。専属専任なら5日以内です。
2つめが売主への報告。専任は2週間に1回以上、専属専任は1週間に1回以上、文書か電子メールで状況を伝える義務があります。「問い合わせが何件あったか」を待たずに知れるのはここです。
3つめが期間の上限。専任と専属専任の契約期間は3か月以内と決まっています。宅地建物取引業法第34条の2第3項の制限です。合わなければ3か月で切り替えられます。
一方、一般媒介にはこの期間の制限が法律上ありません。国土交通省の解釈・運用の考え方にも、一般媒介については法律上の規制はないと明記されています(実務では標準の契約書が3か月以内と定めています)。契約書の期間欄は自分で見てください。
業者側がこの7日・5日・2週間をどう管理しているかは、実務者向けに書いた記事があります。媒介契約を結んだ後の期限管理。報告が来ないときに「忘れられているのか、そういうものなのか」を判断する材料になります。
一般媒介を選ぶと、自分の手元に来る仕事
一般を選んだ場合、上の3つが全部なくなります。裏返すと、次のことを売主が自分でやることになります。
まず、頼む会社を自分で1社ずつ回ることです。専任から一般に切り替えようとしている売主が、そこを心配して質問していました。
その場合、扱って頂く不動産屋にはこちらからお願いしに行くんですよね?売り出し前に査定が今の売り値より低かった不動産屋には、頼むの難しいですよね?
Yahoo!知恵袋
次に、各社が実際に動いているかを自分で確かめることです。報告義務がないので、待っていても状況は届きません。ポータルサイトに自分の物件が出ているかを自分で検索して見る、という作業が発生します。
3つめが、写真や資料の使い回しの調整です。1社が撮った写真を他社にも使ってもらうのか、各社に撮り直してもらうのか。ここは会社によって対応が違うので、頼むときに1社ずつ確認することになります。
専任の弱点は、2025年1月に制度側で塞がれました
専任が避けられてきた理由のひとつが囲い込みです。1社が売主と買主の両方から手数料を受け取りたいために、他社からの問い合わせを断ってしまう状態のことをいいます。専任は1社に絞る契約なので、これが起きると売主は気づけませんでした。
国土交通省は2024年6月に宅地建物取引業法施行規則を改正し、2025年1月1日から、不動産会社にレインズへ取引状況を登録することを義務づけました。あわせて、売主に渡される登録証明書に2次元コードが載るようになり、売主が自分の物件の状態を画面で確認できるようになっています。
手順はスマホだけで終わります。
登録証明書の2次元コードから、売主本人が3つの区分を見る手順です
ここで会社側を一方的に悪者にしないために書いておくと、囲い込みは意図的なものだけではありません。申込みが入ったのに取引状況の更新が漏れていた、という形でも同じ状態になります。線引きは囲い込みは「わざと」だけじゃないにまとめました。両手・片手という考え方そのものは不動産用語の「両手」って、売主と買主の両方からお金をもらうこと?で説明しています。
どちらを選ぶかは、自分がどこまでやるかで決まります
ここは私の見方です
私は、この選択は「どちらが売れるか」ではなく「自分が売却にどれだけ時間を使えるか」で決めるものだと考えています。専任は、状況の把握を義務という形で会社に肩代わりさせる契約です。仕事や介護で動けない人、遠方の家を売る人には、報告が定期的に届くこと自体に値打ちがあります。逆に、自分で各社に連絡して掲載状況を見て回れる人なら、一般で複数社に持たせたほうが選択肢は広がります。この見方を裏づける法令や公的な統計はありません。
もうひとつ、契約を切り替えるときに知っておくと損をしない決まりがあります。国土交通省の解釈・運用の考え方によると、媒介契約の有効期間が終わってから2年以内に、その会社の紹介で知った相手と直接取引をした場合、会社には契約の成立に寄与した割合に応じた報酬を請求する権利が認められます。契約が切れたから手数料は関係ない、とはなりません。
契約書に署名する前に見る3か所
1. 期間の欄
専任・専属専任なら3か月以内になっているかを見ます。一般の場合は法律上の制限がないので、何か月と書いてあるかを自分で読んでください。
2. 報告の頻度と方法の欄
専任は2週間に1回以上、専属専任は1週間に1回以上です。方法は文書か電子メールと決まっています。口頭で構わないと言われたら、それは決まりと違います。
3. 広告費や実費の扱い
通常の広告や物件調査の費用は、会社の負担です。売主が特別に依頼した広告や遠方への出張だけが別扱いで、その場合も事前に見積りの説明があるべきものとされています。手数料以外の名目でお金を受け取れる範囲には線引きがあり、仲介手数料のほかにお金を受け取ると違反になるパターンに整理しました。
まとめ
専任と一般の違いは、熱心さではなく義務の有無です。専任は会社に登録期限と報告頻度を負わせる契約、一般はそれを負わせない代わりに売主が自分で追う契約。どちらが早く売れるかを比べた公的な統計はありません。
2025年1月から取引状況の登録が義務になったことで、専任を避ける最大の理由だった囲い込みは、売主が自分で確認できるようになりました。判断の材料はそろっています。あとは、自分が売却にどれだけ手をかけられるかです。
売り出す値段そのものが妥当かどうかは、実際の取引価格から確かめられます。
全国1,525市区町村・5種別の実データから調べられます
出典
- 指定流通機構の活用状況について(2025年分)2026年1月20日公表/公益財団法人 不動産流通推進センター
- 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(第34条の2関係・第46条第1項関係)/国土交通省
- 媒介契約制度/公益財団法人 東日本不動産流通機構(レインズ)
- レインズの機能強化について(令和6年12月24日 不動産・建設経済局不動産業課)/国土交通省
- 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号/令和6年6月21日改正)/国土交通省
- 読者の声の引用元:Yahoo!知恵袋(質問ID q11281344616/q13307177628)


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