福島市で相続した土地を売るとき、地価公示の坪単価から見込み額を出しても、市全体で見るかぎり大きくは外れません。国土交通省のデータで福島市の成約184件を集計すると、土地の坪単価の中央値は17.2万円/坪で、住宅地の地価公示42地点の中央値17.0万円/坪との差は1.2%でした。
ただしこれは、市をまるごと1つの数字にまとめたときの話です。町の単位まで下ろすと、八木田は24.1万円/坪、松川町は8.3万円/坪。同じ福島市のなかで2.9倍の開きがあります。公示価格から計算した金額は、市の平均としては合っていても、あなたの土地の値段としては合いません。
先に断っておくと、成約が公示より1.2%高いことは「福島市の土地が値上がりした」という意味ではありません。地価公示は国が選んだ住宅地の標準地、成約価格は実際に売れた宅地で、数えている土地そのものが違います。この記事では、2024年4Qから2025年4Qまでに福島市で売れた土地184件の実データで、町別の坪単価・1区画の広さ・公示価格との差の中身を並べます。
先に結論
- 実際に売れた土地の坪単価の中央値は17.2万円/坪(184件)。住宅地の地価公示42地点の中央値17.0万円/坪との差は1.2%です
- 差が小さいことは値動きの話ではありません。公示は住宅地の標準地、成約は実際に売れた宅地で母集団が違うため、値上がり・値下がりの判断には使えません
- 町別は、件数が5件以上ある町どうしで八木田24.1万円/坪 ÷ 松川町8.3万円/坪=2.9倍。市の数字と町の数字は別物です
- 1区画の面積の中央値は260㎡(78.7坪)。坪単価の中央値と掛け合わせた概算は1352.0万円で、実在する1件の価格ではありません
- 飯坂町平野の2.5万円/坪は農地や市街化調整区域が混ざっている疑いがあります。住宅地の最安値としては読まないでください
福島市の土地は町ごとにいくらで売れたか
成約が3件以上あった町は23町ありました。そのうち件数が7件以上ある9町を抜き出し、比較のために市全体の中央値と公示価格の中央値を並べています。件数が3件や4件の町は、条件のよい1件が入るだけで中央値が跳ねるため、グラフからは外しました。
福島市の土地の坪単価(中央値・2024年4Q〜2025年4Q・成約7件以上の町を抜粋。薄い色は市全体と公示価格)
自分の町の相場を調べる
この記事の数字は市全体の中央値です。町ごとの相場は住所を入れるとその場で出ます。
このツールは農地や山林が混ざった極端な取引も除かずに集計します。そのため市全体の数字はこの記事より低く出ます。町ごとの傾向を見るのに使ってください。
グラフの読み方を順に書きます。まず、いちばん上の八木田は9件で24.1万円/坪、下から2番目の松川町は8件で8.3万円/坪。どちらも件数の裏づけがあり、この2町の差が2.9倍です。市の中央値17.2万円/坪は、この幅のちょうど内側にあるだけで、どの町にもそのまま当てはまる数字ではありません。
件数3件の町まで含めると、いちばん高い南矢野目は25.5万円/坪、いちばん低い御山は7.6万円/坪で、倍率は3.3倍まで開きます。ただしどちらも3件です。3件の中央値は、条件のよい1件が入るか抜けるかで順位ごと入れ替わります。この記事で見出しに使ったのは、件数がそろっている側の2.9倍のほうです。
グラフのいちばん下、飯坂町平野の2.5万円/坪は住宅地の相場として読まないでください。市の中央値17.2万円/坪の1/4を大きく下回る水準で、農地や山林、市街化調整区域の取引が混ざっている疑いがあります。9件あるので、たまたま1件安いものが売れたという話ではなく、その地域で売買されている土地の性格そのものが宅地と違うと考えたほうが実態に近いはずです。
市全体で見ると、坪単価は1.8万円から59.5万円まで散らばっていました。しかもこれは、坪単価が極端な9件を外したあとの幅です。同じ「福島市の土地」という名前で、これだけ性格の違うものがひとまとめに集計されています。
公示価格との差が1.2%でも、自分の土地には当てはまらない
数字を並べます。住宅地の地価公示は42地点で17.0万円/坪、実際の成約は184件で17.2万円/坪。成約のほうが1.2%高い位置にあります。
この1.2%を「福島市の土地が1年で少し上がった」と読むと間違えます。2つの数字は、測っている対象が違うからです。
地価公示は、国が土地の値段の目安を示すために、住宅地として代表的な地点を選んで鑑定評価するものです。選ばれるのは道路に接していて、形が整っていて、住宅地として普通に使われている土地です。毎年同じ地点を同じ条件で見続けるための地点なので、極端な土地はそもそも選ばれません。
成約データのほうは、選びません。売買が成立した土地をそのまま数えます。184件のなかには、間口の狭い土地も、傾斜のある土地も、家を建てる前提になっていない土地も混ざります。飯坂町平野の2.5万円/坪が集計に入っているのは、その表れです。
つまり17.0万円と17.2万円は、同じ土地を2つの方法で測った数字ではありません。条件のそろった42地点の真ん中と、売れたもの184件の真ん中が、たまたま近い位置に来ているだけです。公示価格は市の平均には近くても、あなたの土地が売れる値段ではありません。
実家を相続した人が、地価公示を調べて坪単価に自分の土地の坪数を掛け、紙にメモする。ここまでは誰でもできます。困るのは、その紙の金額を「最低ライン」だと思い込むことです。松川町の土地を持っている人が市の平均で計算すれば、その町で実際に売れている水準からかけ離れた金額が紙に載ります。査定額がそれを下回った瞬間に、買い叩かれていると感じて話が止まります。
私は、福島市の1.2%という小さな差を「公示価格が使える証拠」ではなく、「市全体の真ん中どうしが近い位置に来ている」だけの状態だと見ています。根拠は3つあります。成約184件の坪単価が1.8万円から59.5万円まで散らばっていること。件数がそろった町どうしでも2.9倍の開きがあること。公示の地点が市内に42しかないことです。市の平均が合っていることと、あなたの土地に使えることは別の話です。
福島市で売れた土地は1区画78.7坪。総額はいくらか
福島市で売れた土地の面積の中央値は260㎡(78.7坪)でした。坪単価の中央値17.2万円と掛け合わせると1352.0万円になりますが、これは概算です。面積の中央値と坪単価の中央値は別々に取った数字なので、1352.0万円という価格で売れた土地が実在するわけではありません。
78.7坪という広さは、住宅を建てる区画としては広い部類に入ります。坪単価が同じでも、面積が大きければ買い手が用意する現金と借入は増えます。福島市の土地は坪17.2万円と派手な水準ではありませんが、78.7坪ぶんを掛けた概算は1352.0万円です。坪単価が控えめでも、総額で見たときに手が届く人はそこまで増えません。
売る側にできるのは、まず自分の土地が78.7坪より広いのか狭いのかを確かめることです。広ければ、坪単価の相場観だけで値段を置くと総額が跳ね上がって買い手が離れます。狭ければ総額は下がりますが、そのぶん「その広さで家が建つか」が値段を決めます。分けて売れる広さなのか、分けられない形なのかも効いてきます。
家が残ったままの土地は、片付けと解体の費用が値段から引かれる
相続した土地に古い家が建っている場合、買い手は「壊す前提」でその土地を見ます。78.7坪の敷地に建っている家なら、建物も相応の大きさで、解体の見積もりもそのぶん大きくなります。解体と片付けの費用は、売主が出すか、買主が値引きとして飲むかの違いだけで、必ず誰かの財布から出ます。
もう一段やっかいなのが、家財です。実家に長く住んでいた家ほど、家具も仏壇も衣類も残ります。内見に来た買い手が玄関で立ち止まり、「この荷物はどうなるんですか」と聞く場面があります。ここで「そのままです」と答えると、買い手は自分の頭のなかで片付け費用を高めに見積もって、その分を値引き交渉に持ち込みます。
先に見積もりを1枚持っているだけで、この会話の位置が変わります。金額が分かっていれば、片付けてから売るのか、費用ぶんを価格に織り込んで現況のまま売るのかを、自分で選べるようになります。順番としては、売り出す値段を決める前です。
金額が分かってから、片付けて売るか現況で売るかを決めます
実家をどうするか全体の順番は実家じまいの進め方に整理しました。売らずに置いておく選択をするなら、その間に何が起きるかは空き家を放置したときのリスクのほうにまとめています。
福島市の戸建てとマンションはいくらで売れたか
土地以外の種別も出しておきます。単価の分母が種別ごとに違うので、表の右側に何で割った数字かを書きました。
| 種別 | 中央値 | 件数 | 単価の分母 |
|---|---|---|---|
| 土地 | 17.2万円/坪 | 184件 | 土地の面積(坪) |
| 中古戸建て | 88.7万円/坪 | 118件 | 建物の延床面積(坪) |
| 新築戸建て | 99.2万円/坪 | 71件 | 建物の延床面積(坪) |
| 中古マンション | 17.8万円/㎡ | 43件 | 専有面積(㎡) |
| 賃貸 | 1,735円/㎡ | 34,910件 | 専有面積(㎡) |
縦に並んでいますが、種別をまたいだ引き算はできません。土地の17.2万円は土地の広さで割った値、戸建ての88.7万円は建物の延べ床の広さで割った値です。「戸建てのほうが坪単価が高いから、差が建物のぶん」という読み方は成立しません。
比べてよいのは、分母が同じもの同士です。福島市の中古戸建ては88.7万円/坪(118件)、新築戸建ては99.2万円/坪(71件)。中古は真ん中の半分が69.9万円から105.4万円のあいだ、新築は85.6万円から117.7万円のあいだに収まっていました。新築のほうが幅が狭く、中古は同じ市内でも上下に開きます。築年数と傷み方で、値段の付き方が家ごとに変わるからです。
中古マンションは43件で17.8万円/㎡でした。築年帯で分けると、築21〜30年が8件で25.7万円/㎡、築31〜40年が27件で14.7万円/㎡です。この築年帯はデータを作った2026年を基準にしているので、築21〜30年は1996〜2005年ごろに建った建物、築31〜40年は1986〜1995年ごろに建った建物にあたります。1982年より前の建物は元データから外れているため、この集計には入っていません。
面積帯で見ると、30〜50㎡が7件で15.7万円/㎡、50〜70㎡が17件で16.5万円/㎡、70〜90㎡が13件で25.3万円/㎡。広い部屋のほうが㎡単価も高く出ています。ただし8件や7件という件数は、相場というより事例の並びです。町の数字も築年帯の数字も、件数とセットでしか読めません。
賃貸だけは件数の桁が違い、34,910件で1㎡あたり1,735円でした。売買の判断にそのまま使える数字ではありませんが、貸すという選択肢を残すなら、こちらは件数の裏づけがある側の数字です。
売り出す前に確認する3つの数字
- 自分の町の坪単価と、その町の件数。 市の中央値17.2万円/坪は、八木田の24.1万円と松川町の8.3万円の内側にあるだけの数字です。町名まで下ろして、その町で何件売れたのかとセットで見てください。件数が3件しかない町なら、その数字は目安にもなりません。
- 自分の土地の坪数。福島市で売れた土地の真ん中は260㎡(78.7坪)です。これより広ければ総額が上がって買い手が絞られ、狭ければその広さで家が建つかどうかが値段を決めます。
- 建物を残すか壊すか、家財をどうするか。費用は売主が出しても買主が飲んでも、最終的な手取りから引かれます。金額を知らないまま売り出すと、値引き交渉の場で相手の見積もりに合わせることになります。
この記事の数字の出どころ
- 成約価格:国土交通省「不動産情報ライブラリ」の不動産取引価格情報。集計期間は2024年第4四半期から2025年第4四半期。土地184件(うち坪単価が極端な9件を除外)、中古戸建て118件、新築戸建て71件、中古マンション43件
- 地価公示:国土交通省の地価公示。福島市内の住宅地42地点の坪単価の中央値です
- 地価公示と成約価格は母集団が違います。公示は住宅地の標準地、成約は実際に売れた宅地で、条件の悪い土地や住宅地以外の使われ方をする土地も含まれます。この記事では、この差を値上がり・値下がりの判断には使っていません
- 町別の集計は成約3件以上の町のみ(23町)。グラフは件数7件以上の9町に絞って抜粋しました。見出しに使った2.9倍は、件数が5件以上ある町どうし(八木田9件・松川町8件)の比較です
- 飯坂町平野のように市の中央値の1/4を下回る町は、農地・山林・市街化調整区域の取引が混ざっている可能性があります
- 坪単価の中央値と面積の中央値は別々に取った値です。掛け合わせた1352.0万円は概算で、実在する1件の価格ではありません
- 単価の分母は種別ごとに違います。土地は土地面積(坪)あたり、戸建ては建物の延床面積(坪)あたり、マンションは専有面積(㎡)あたりです
- マンションの築年帯はデータ生成時(2026年)が基準です。1982年より前に建てられた物件は元データから除外されています
- 賃貸:福島市の34,910件について、1㎡あたりの賃料の中央値です
- 数字はすべて中央値です(平均値は一部の高額・低額の取引に引っ張られるため使いません)
福島市で土地を売るときに覚えておく数字
福島市で実際に売れた土地184件の坪単価の中央値は17.2万円/坪、面積の中央値は260㎡(78.7坪)、掛け合わせた概算は1352.0万円。住宅地の公示価格の中央値17.0万円/坪との差は1.2%しかありません。市全体で見れば、公示価格は実際の取引から遠くない位置にあります。
それでも、公示価格を自分の土地の見込み額に使えるとは限りません。同じ市内で八木田と松川町のあいだに2.9倍の開きがある以上、市の平均が当たっていることと、あなたの町で当たることは別の話です。値段を決める前に、数字を自分の町と自分の広さまで下ろします。
このサイトのページです。登録も入力も要りません


コメント