洲本市で相続した土地を売ろうとして、地価公示の坪14.0万円を見込み額の根拠にすると、実際に売れている値段には届きません。国土交通省のデータで洲本市の土地の成約50件を集計すると、坪単価の中央値は4.6万円でした。公示価格より67.0%低い水準です。
兵庫県内の市を同じ方法で並べてきましたが、ここまで開いた市は他にありませんでした。ただしこれは「洲本市の土地が値下がりしている」という話ではありませんし、「洲本市は割安だ」という話でもありません。公示価格と成約価格は、そもそも数えている土地が違います。
地価公示に選ばれるのは住宅地の標準地で、洲本市では6地点です。一方の成約50件には、郊外の土地も、住宅を建てる前提ではない土地も、広すぎる土地も混ざります。同じ「坪単価」という名前が付いているだけで、中身の違う数字です。この記事では、その67.0%がどこから来ているのかを分解します。
先に結論
- 洲本市の土地の成約は坪4.6万円(中央値・50件)。地価公示の住宅地6地点の中央値14.0万円より67.0%低い数字です
- この差は値下がりではありません。公示は条件のそろった標準地、成約は実際に売れた土地で、数えている対象が違います
- 1区画の面積の中央値は290㎡(87.7坪)。坪単価の中央値と掛けた概算は406.0万円です
- 町別は、件数が5件以上ある宇原(5件・5.0万円)と納(6件・4.4万円)で1.1倍。町を変えても坪単価はあまり動きません
- 戸建ては中古11件・新築4件しか成約がありません。相場として読める件数ではありません
洲本市の土地は、町ごとにいくらで売れているか
取引が3件以上あった7つの町を、坪単価の高い順に並べました。
洲本市の土地の成約価格(坪単価の中央値・2024年4Q〜2025年4Q・取引3件以上の町)
自分の町の相場を調べる
この記事の数字は市全体の中央値です。町ごとの相場は住所を入れるとその場で出ます。
このツールは農地や山林が混ざった極端な取引も除かずに集計します。そのため市全体の数字はこの記事より低く出ます。町ごとの傾向を見るのに使ってください。
このグラフには読む順番があります。まず、件数が5件以上ある町は宇原(5件・5.0万円)と納(6件・4.4万円)の2つだけです。この2町の差は1.1倍で、町を変えても坪単価はほとんど動きません。件数の裏づけがある比較は、この1.1倍のほうです。
いちばん高い上加茂の17.9万円と、五色町鳥飼浦の1.9万円を比べれば9.6倍になります。ただし上加茂は3件、五色町鳥飼浦は4件しかありません。3件の中央値は、たまたま条件のよい1件が入るだけで跳ね上がります。9.6倍は町の格差というより、件数の少なさを見ている数字だと考えたほうが安全です。
グラフのいちばん下、由良町の0.2万円は住宅地の相場として読まないでください。市全体の中央値4.6万円の1/4を大きく下回る水準で、農地や山林、市街化調整区域の取引が混ざっている疑いがあります。「洲本市でいちばん安い町」ではなく「宅地として売買されたものが少ない町」と読むほうが実態に近いはずです。
市全体では、坪単価は0.6万円から39.7万円まで散らばっていました(坪単価が極端な4件を除外したあとの幅です)。同じ市内の土地でも、これだけ性格の違うものが「洲本市の取引」としてひとまとめに集計されています。
公示価格より67%低いのは、値下がりしたからではない
数字を並べます。地価公示(住宅地)は6地点で坪14.0万円、実際の成約は50件で坪4.6万円。差は67.0%です。
これを「洲本市の土地が下がった」と読むと間違えます。2つの数字は、比べる前提が違うからです。
地価公示は、国が土地の値段の目安を示すために、住宅地として代表的な地点を選んで鑑定評価するものです。選ばれるのは道路が付いていて、形が整っていて、住宅地として使われている土地です。目安として使うための地点なので、条件の悪い土地はそもそも選ばれません。
成約価格のほうは、選びません。売買が成立した土地をそのまま全部数えます。住宅を建てられる土地も、建てにくい土地も、農地に近い使われ方の土地も、相続して持て余して手放した土地も、区別なく入ります。由良町の0.2万円が集計に入っているのは、その表れです。
条件のそろった6地点の中央値と、売れたもの50件の中央値を比べれば、後者が低く出るのは当たり前です。洲本市の67.0%は、土地の値打ちが下がったことの証拠ではなく、2つの数字が別のものを数えていることの証拠です。
売る側にとって困るのは、この違いが値段の話ではなく、期待の話として効いてくることです。地価公示は毎年ニュースになるので目に入ります。「この辺は坪14万円らしい」と思っている状態で査定を受けると、提示された金額が不当に低く見えます。実際には、公示の地点と同じ条件の土地を持っている人だけが、公示に近い金額に届きます。
1区画87.7坪。公示の地点とは、土地の性格が違う
洲本市で売買された土地は、1区画の面積の中央値が290㎡、坪でいうと87.7坪でした。
坪単価の中央値4.6万円と、面積の中央値87.7坪を掛けると406.0万円になります。ただしこの2つは別々に取った中央値なので、406.0万円はあくまで概算であって、実在する1件の値段ではありません。
87.7坪は、住宅を建てる区画としては広い部類に入ります。土地は広くなるほど坪単価が下がりやすい、という値段の付き方があります。総額が上がって買える人が減るぶん、単価を下げないと決まらないからです。ただし洲本市でその通りのことが起きているかどうかは、このデータでは確かめられません。面積と坪単価を結び付けた集計を持っていないので、ここは可能性として書いておきます。
はっきり言えるのは、公示の6地点が「住宅地の標準地」として選ばれているのに対して、実際に売れた50件の真ん中は87.7坪だということです。物差しと、測られる側の土地が、大きさの点でもそろっていません。
戸建ての数字は、件数が足りていない
土地以外の種別も出しておきますが、先に断っておきます。洲本市は戸建ての成約件数が少なく、相場として読める水準にありません。
| 種別 | 成約価格(中央値) | 件数 |
|---|---|---|
| 土地 | 4.6万円/坪 | 50件 |
| 中古戸建て | 50.9万円/坪 | 11件 |
| 新築戸建て | 件数が少ないため出していません | 4件 |
| 賃貸 | 1,576円/㎡ | 3,610件 |
単価の分母は種別ごとに違います。土地は土地面積(坪)あたり、戸建ては建物の延床面積(坪)あたり、マンションは専有面積(㎡)あたりです。縦に並んでいますが、種別をまたいだ引き算はできません。
中古戸建ての11件は、坪24.1万円から92.3万円のあいだに真ん中の半分が収まっています。中央値は50.9万円ですが、上下にこれだけ幅があると、自分の家がどのあたりに来るかは中央値からは分かりません。11件のうち上位の何件かが条件のよい家だった、という程度の説明でも成り立ってしまう規模です。
新築戸建ては4件です。4件の中央値を金額として出すと、それが相場のように読まれてしまうので、この記事では出しません。件数が1桁の中央値は、相場ではなく事例です。
件数がそろっているのは賃貸だけで、3,610件で1㎡あたり1,576円でした。売買の判断にそのまま使える数字ではありませんが、貸すという選択肢を残すなら、こちらは件数の裏づけがある側の数字です。
相続した土地を、公示価格の感覚のまま持たない
相続で受け取った土地は、値段を確かめないまま何年も持ち続けることになりがちです。固定資産税の通知は毎年届きますが、売ったらいくらになるかは誰も教えてくれません。
そこに地価公示の数字だけが記憶に残ると、判断が止まります。「坪14万円なら急いで手放さなくていい」と考えて置いたまま、いざ売るときになって成約の水準を知る、という順番です。洲本市の場合、その落差が67.0%あります。
土地の値段だけの問題でもありません。建物が残っていれば片付けと解体の話が付いてきますし、相続人が複数いれば全員の合意が要ります。売ると決めてから動き出すと、決めるまでにかかった時間が、そのまま持ち続けた時間になります。実家をどうするかの順番は実家じまいの進め方に整理しました。
売る・貸す・持ち続けるを決める前に、今の値段を確かめるところからです
私はこう見ています
事実と分けて書きます。ここまでの数字は集計結果で、ここから先は私の解釈です。
私は洲本市の67.0%を、「洲本の土地が安い」という話ではなく、公示価格という物差しが、この市の売買の実態を代表しきれていない印だと見ています。根拠は3つあります。公示の住宅地が6地点しかないこと。成約50件の1区画が87.7坪と広いこと。町別に見ると、市の中央値の1/4を切る町が実際に混ざっていることです。
同じ集計方法で他の市も見てきましたが、公示と成約が近い市もあれば、成約のほうが上に出る市もありました(神戸市の土地は区によって坪単価が違う)。公示価格を予算や見込み額の基準に使える市と使えない市があり、洲本市は使えない側だ、というのが今の見立てです。
正直に書いておくと、この記事の土地の数字は50件、町別に出せたのは7町だけです。1町あたり3件から6件しかありません。町ごとの順位や倍率は、幅を持って読んでください。件数の裏づけがあるのは、市全体の中央値4.6万円と、公示との差67.0%のほうです。
売却の見込み額を出す前にやる3つのこと
1. 公示価格を見込み額の根拠にしない。 洲本市の成約は坪4.6万円、公示は坪14.0万円です。ニュースで見た数字のまま計算していると、査定を受けたときに話が合いません。合わないのは査定のせいではなく、物差しのせいです。
2. 面積を先に確認する。 売れている土地の真ん中は290㎡、87.7坪です。持っている土地がこれより広いなら、坪単価を当てはめる前に、その広さで買い手が付くかどうかから考えることになります。狭い場合も同じで、市全体の中央値がそのまま使えるとは限りません。
3. 町名まで下ろして相場を見る。 市全体の中央値は、市内のどの町にもそのまま当てはまりません。件数が5件以上ある町どうしでも1.1倍の差があり、宅地以外が混ざっている町もあります。住所が決まっているなら、市の数字ではなく周辺の数字で確かめてください。
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洲本市の学区を町名から調べる
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この記事の数字の出どころ
- 成約価格:国土交通省「不動産情報ライブラリ」の不動産取引価格情報。集計期間は2024年第4四半期から2025年第4四半期。土地50件(うち坪単価が極端な4件を除外)、中古戸建て11件、新築戸建て4件
- 地価公示:国土交通省の地価公示。洲本市内の住宅地6地点の中央値です
- 地価公示と成約価格は母集団が違います。公示は住宅地の標準地、成約は実際に売れた土地で、条件の悪い土地・郊外の土地・広すぎる土地も含まれます。この記事では、この差を値上がり・値下がりの判断には使っていません
- 町別の集計は取引3件以上の町のみ。1町あたり3件から6件なので、順位も倍率も幅を持って読んでください。見出しに使ったのは件数が5件以上の町どうしの倍率です
- 由良町のように市の中央値の1/4を下回る町は、農地・山林・市街化調整区域の取引が混ざっている可能性があります
- 坪単価の中央値と面積の中央値は別々に取った値です。掛け合わせた406.0万円は概算で、実在する1件の価格ではありません
- 中古戸建ては11件、新築戸建ては4件です。新築戸建ての中央値は、件数が少ないため金額として掲載していません
- 賃貸:洲本市の3,610件について、1㎡あたりの賃料の中央値です


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