たつの市で相続した土地を売るとき、公示価格から逆算した金額を頭に置くと、ほぼ高いほうに外れます。国土交通省に登録された成約60件を集計すると、たつの市の土地の坪単価の中央値は9.9万円/坪。住宅地の地価公示(17地点)の坪単価の中央値11.4万円/坪と比べて、13.0%低い位置にあります。
これは「たつの市の土地が値下がりした」という話ではありません。公示価格と成約価格は、そもそも数えている土地が違います。この2つを同じ物差しだと思って売り出すと、値下げを繰り返しながら時間だけが過ぎていきます。
この記事では、2024年4Qから2025年4Qまでにたつの市で売れた土地60件の実データで、1区画の広さ・町別の坪単価・公示価格との差の正体を並べます。
先に結論
- 実際に売れた土地の坪単価の中央値は9.9万円/坪(60件)。住宅地の地価公示の中央値11.4万円/坪より13.0%低い
- 差の正体は値動きではなく、数えている土地の違い。公示の標準地は条件のよい住宅地から選ばれ、成約のほうには条件の悪い土地も混ざる
- 1区画の面積の中央値は265㎡(80.2坪)。坪単価の中央値と掛け合わせた概算は795.0万円で、実在する1件の価格ではない
- 町別に3件以上の成約があったのは5町だけ。町の数字は件数とセットで読む
たつの市の土地は町ごとにいくらで売れたか
成約が3件以上あった町だけを並べます。3件に満たない町は1件の取引で中央値が跳ねてしまうため、表から外しました。
色の薄い「公示価格」と「市全体」の2本は町名ではなく、比較のために置いた市全体の数字です。町のほうは、いちばん高い龍野町中村で22.1万円/坪、いちばん低い御津町苅屋で14.2万円/坪でした。
ただし、この5町の件数は3件から4件しかありません。3件以上売れた町が市内に5つしかなかった、というのがたつの市の土地取引の実情です。町ごとの数字は「その町の相場」というより「その町でその期間に売れた3〜4件の真ん中」で、1件入れ替われば順番も変わります。自分の土地の値段を、町の数字ひとつで決めないでください。
同じ方法で姫路市の土地も町別に集計しています(姫路の土地の記事)。町ごとの差の出方は市が変われば変わるので、近隣の市の記事も並べて見ると、数字の振れ幅の感覚がつかめます。
自分の町の相場を調べる
この記事の数字は市全体の中央値です。町ごとの相場は住所を入れるとその場で出ます。
このツールは農地や山林が混ざった極端な取引も除かずに集計します。そのため市全体の数字はこの記事より低く出ます。町ごとの傾向を見るのに使ってください。
公示価格より13.0%低いのは、値下がりしたからではない
地価公示は、国が選んだ標準地の価格です。たつの市の住宅地は17地点。標準地に選ばれるのは、道路に接していて形が整い、住宅地として普通に使える土地です。毎年同じ地点を同じ条件で見続けるための地点なので、極端な土地はそもそも選ばれません。
一方の成約データは、実際に売買が成立した土地そのものです。60件のなかには、間口の狭い土地も、傾斜のある土地も、家を建てる前提になっていない土地も混ざります。坪単価は1.3万円から27.4万円まで開いていて、これでも極端な13件を外したあとの幅です。
つまり、11.4万円と9.9万円は、同じ土地を2回測った数字ではありません。条件のよい土地だけを選んだ集団の真ん中と、売れた土地を全部入れた集団の真ん中を、並べて見ているだけです。13.0%という差は、たつの市の土地が1年で目減りした割合ではありません。公示価格は、あなたの土地が売れる値段ではありません。
実家を相続した人が、公示価格を調べて坪単価に自分の土地の坪数を掛け、紙にメモする。ここまでは誰でもできます。困るのはその紙の金額を「最低ライン」だと思い込んでしまうことで、査定額がそれを下回った瞬間に、買い叩かれていると感じて話が止まります。測っているものが最初から違う、という一点を知っているかどうかで、この場面の受け止め方が変わります。
1区画の面積の中央値は265㎡(80.2坪)
たつの市で売れた土地の面積の中央値は265㎡(80.2坪)です。坪単価の中央値9.9万円と掛け合わせると795.0万円になりますが、これはあくまで概算です。面積の中央値と坪単価の中央値は別々に取った数字なので、掛け合わせた795.0万円という価格で売れた土地が実在するわけではありません。自分の土地の広さが80.2坪から離れているほど、この概算からも離れます。
80.2坪という広さは、総額を押し上げます。坪単価が同じでも、面積が大きければ買い手が用意する現金と借入は増えます。私は、たつの市の土地では、この面積の大きさが買い手の数を絞る要因になっていると見ています。坪単価が9.9万円と控えめでも、総額で見たときに手が届く人はそこまで多くならないからです。
売る側にできるのは、まず自分の土地が80.2坪より広いのか狭いのかを確かめることです。広ければ、坪単価の相場観だけで値段を置くと総額が跳ね上がって買い手が離れます。狭ければ、総額は下がる代わりに、その土地に家を建てられるかどうかが値段を決めます。
古家が残っている土地は、解体費が手取りから引かれる
建物が付いた取引は、土地だけの取引とは数え方から違います。戸建ての坪単価は成約総額を建物の延床坪数で割った値で、土地の坪単価のように土地面積で割った値ではありません。並べて引き算はできない数字です。たつの市の中古戸建ての坪単価の中央値は69.4万円/坪(19件)、新築戸建ては76.0万円/坪(13件)でした。どちらも件数が少なく、19件・13件の真ん中の値なので、1件2件の入れ替わりで動きます。目安として見てください。
問題は、古い家が建ったままの土地です。買い手は「壊す前提」でその土地を見ます。80.2坪の敷地に建っている家なら、建物も相応の大きさで、解体の見積もりもそのぶん大きくなります。売主が費用を出して更地にするなら手取りから引かれ、買主に負担させるなら、その分を引いた価格でないと話がまとまりません。どちらにしても、解体費は必ず誰かの財布から出ます。
内見に来た買い手が庭の隅に立って「この家、壊すのにいくらかかるんですか」と聞く場面があります。ここで「わかりません」と答えると、買い手は自分の頭のなかで高めの数字を置いて値引き交渉に入ります。見積書を1枚持っているだけで、この会話の位置が変わります。
見積もりを取るのは、売り出す値段を決める前が順番として先です。
売り出す前に確認しておく3つの数字
- 自分の土地の坪数。たつの市の中央値80.2坪より広いか狭いかで、総額の出方が変わります
- 自分の町で直近に何件売れたか。3件以上あった町は市内に5町だけで、それ以外の町は数字がほとんど積み上がっていません
- 建物を残すか壊すか。壊すならその費用がいくらか
私は、たつの市の土地では、最初に決めるべきなのは値段ではなくこの3つだと考えています。値段は3つが埋まったあとに決まります。売り出す値段は、公示価格ではなく成約価格から逆算します。
この記事の数字の出どころ
- 出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」の成約価格、および地価公示
- 土地:たつの市の成約60件(坪単価が極端な13件を除外)。集計期間は2024年4Q〜2025年4Q
- 地価公示:住宅地17地点の坪単価の中央値
- 中古戸建て19件、新築戸建て13件。件数が少ないため目安の水準です
- 数字はすべて中央値です(平均値は一部の高額・低額の取引に引っ張られるため使いません)
たつの市で土地を売るときに覚えておく数字
たつの市で実際に売れた土地60件の坪単価の中央値は9.9万円/坪、面積の中央値は265㎡(80.2坪)、掛け合わせた概算は795.0万円。住宅地の公示価格の中央値11.4万円/坪とは13.0%の差がありますが、その差は値動きではなく、数えている土地の違いから出ています。
売る側にできるのは3つです。公示価格から計算した金額を最低ラインにしないこと。町の数字を件数とセットで読むこと。建物が残っているなら解体費を先に把握しておくこと。この3つで、査定額を見たときの落胆と、決まらないまま値下げを重ねる時間を減らせます。


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