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不動産用語の「白紙解除」 手付金が全額戻る条件

※ 本ページには広告が含まれます。

「ローン特約が付いているから、審査に落ちても手付金は戻る」。そう理解して契約書に印鑑を押した人へ。理解そのものは間違っていませんが、条件が1つ省かれています。戻るのは、契約書に書かれた期限の中で、決められた手続きをしたときだけです。

白紙解除(はくしかいじょ)は、売買契約を最初から無かったことにして、手付金も仲介手数料も元に戻す解除です。神戸市灘区の住宅地は、地価公示で1㎡132,000円(大月台)から679,000円(森後町)まで開きがあります。その下のほうにある国玉通4丁目で1㎡281,000円、100㎡なら2,810万円。手付金が慣行の5%なら140万5,000円、10%なら281万円が、審査の結果が出た日ではなく契約書に書いた日付で行き先を変えます。

この記事でわかること

  •  融資が通らなかったときの解除は2つの型に分かれる。不成立の確定で自動的に効く型と、買主が解除を伝えないと効かない型
  •  白紙解除なら仲介手数料は「全額を遅滞なく返還しなければならない」業者の義務。利息は付かない
  •  灘区の土地100㎡(2,810万円)なら、手付金140万5,000円と仲介手数料99万3,300円の計239万8,300円が動く
目次

白紙解除・手付解除・違約解除——買主の手元に残る金額が3つとも違う

契約をやめる話は、不動産の現場では3つの名前で呼び分けられます。買主の手元に残る金額が違うからです。

解除の名前 きっかけ 買主が失う金額
白紙解除 契約書の特約に書いた条件(融資の不成立など)が現実になった 0円。手付金は返り、仲介手数料も返還される
手付解除 理由は問わない。買主の都合でやめる 手付金の全額を放棄する
違約解除 契約の義務を果たさなかった(代金を払わないなど) 違約金。額は契約書の定めによる

手付解除のルールは民法557条にあり、白紙解除とは根拠がまったく違います。こちらは不動産用語の「手付流し」「手付倍返し」って何?に書きました。

同じ「ローンが通らなかった」という一言でも、白紙解除か手付解除かで、灘区の例なら140万5,000円が動きます。

自分のケースはどれか——ローン特約の期限切れで扱いが変わる

3つのうちどれに当たるかは、事情の重さや誠実さでは決まりません。契約書の特約に書かれた条件を満たしたかどうかだけで決まります。

  • 融資が正式に否決され、特約に書かれた期限の中で手続きをした → 白紙解除
  • 融資は否決されたが期限を過ぎていた、または他の銀行を当たると言って手続きをしなかった → 白紙解除にならず、手付解除か違約解除に落ちる
  • 融資は承認されたが、別の物件に気が変わった → 手付解除
  • 融資の申込みそのものをしていなかった → 特約の条件を満たしていないため、白紙解除にはならない

読者

銀行の回答待ちなのだから、期限は自動で延びますよね?

おかあさん

延びません。期限を動かすには、売主との間で書面の合意を取り直す必要があります。決済日の延長だけ申し出て、特約の期限の延長を言い忘れがちだと指摘されています。

机の上の契約書を、二人が指をさしながら確認している手元
説明を受けた場ではうなずけても、条件の1つが省かれていることがあります(写真はイメージ)(写真: Pexels)

国の告示に書かれた2つの型——自動で効く型と、自分で言わないと効かない型

この2通りは業界の言い回しではなく、国が文言を定めた告示にそのまま書かれています。標準媒介契約約款(平成2年建設省告示第115号、最終改正 令和6年国土交通省告示第34号)の第9条第2項です。

2 目的物件の売買又は交換の契約が、代金又は交換差金についての融資の不成立を解除条件として締結された後、融資の不成立が確定した場合、又は融資が不成立のときは甲が契約を解除できるものとして締結された後、融資の不成立が確定し、これを理由として甲が契約を解除した場合は、乙は、甲に、受領した約定報酬の全額を遅滞なく返還しなければなりません。ただし、これに対しては、利息は付さないこととします。(標準媒介契約約款 第9条第2項・原文のまま)

前半に、契約の型が2つ並んでいます。

1つめは「融資の不成立を解除条件として締結された後、融資の不成立が確定した場合」。融資が通らないと確定した時点で契約は自動的に終わり、買主は何も言わなくて構いません。

2つめは「融資が不成立のときは甲が契約を解除できるものとして締結された後……甲が契約を解除した場合」。こちらは、不成立が確定しただけでは終わりません。買主が自分で解除を伝えて、はじめて効きます。

期限を過ぎて手付金が戻らなくなったという話は、ほぼ全部この2つめの型で起きています。解除する権利は買主のもので、使わなければそのまま期限が来ます。

読者

否決が決まれば、どちらの型でも結果は同じでは?

おかあさん

同じになりません。2つめの型は、伝えないまま期限が来れば権利ごと消えます。

Yahoo!知恵袋には、こんな質問が投稿されています。

住宅ローン特約の期限より後でローンの本審査結果が出て、否決されたら特約は無効になってしまいますか?(Yahoo!知恵袋・質問タイトル原文のまま)

審査の結果がいつ出るかは銀行の都合、特約の期限は契約書の都合です。連動していないので、結果を待つあいだに期限だけが過ぎます。

手付金はいくら戻るのか——神戸市灘区の土地で実額にする

判定が分かれると何円動くのかを、実際の地価で出します。国土交通省の地価公示から、神戸市灘区の住宅地3地点です。手付金の割合は法律で決まっておらず、売買代金の5〜10%程度という慣行値を使っています。

  • 国玉通4丁目(阪急王子公園から940m)1㎡281,000円 → 100㎡で2,810万円。手付金5%で140万5,000円、10%で281万円
  • 記田町3丁目 1㎡340,000円 → 100㎡で3,400万円。手付金5%で170万円、10%で340万円
  • 楠丘町3丁目(阪急六甲から730m)1㎡405,000円 → 100㎡で4,050万円。手付金5%で202万5,000円、10%で405万円

白紙解除ならこの額は全額返り、手付解除に落ちれば同じ額が売主のものになります。同じ結果から、140万円から405万円の差が生まれます。

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仲介手数料は「全額を遅滞なく返還しなければならない」。ただし利息は付かない

戻るのは手付金だけではありません。第9条第2項の後半は、仲介手数料についてこう書いています。「返ってくることがあります」ではなく、乙(不動産会社)は甲に、受領した約定報酬の全額を遅滞なく返還しなければなりません。会社が返すかどうかを選べる書き方ではなく、業者の義務です。

仲介手数料の上限は報酬告示で、代金のうち400万円を超える部分は3.3%(税込)。2,810万円なら上限は99万3,300円です。

  • 手付金(5%)140万5,000円
  • 仲介手数料の上限 99万3,300円
  • 合計 239万8,300円

白紙解除かどうかで、灘区の土地1つにつき約240万円の行き先が変わります。

ただし条文は、返還に利息は付さないとも書いています。解除まで3か月かかっても、預けたお金が増えて戻ることはありません。

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第9条第2項は媒介契約約款、つまり不動産会社と依頼者のあいだの契約の条文です。専任・専属専任では第9条第2項と第10条、一般媒介では第11条第2項と第12条にあたり、文言は3種とも同じです。手付金のやりとりは売主と買主のあいだの話で、別の書類で決まります。
書類を広げた机の上で、電卓を操作している手元
戻る金額と戻らない金額は、契約書の1行で入れ替わります(写真はイメージ)(写真: Pexels)

白紙解除でも戻らないお金がある——同じ約款の第10条

白紙解除になれば1円も動かない、と理解している人がいますが、同じ約款の次の条文がそこに例外を置いています。

第10条 甲が乙に特別に依頼した広告の料金又は遠隔地への出張旅費は甲の負担とし、甲は、乙の請求に基づいて、その実費を支払わなければなりません。(標準媒介契約約款 第10条・原文のまま)

甲は依頼者、つまり売却を依頼した売主のことです。売主が自分から頼んだ広告の料金と、遠隔地への出張旅費だけは、契約が白紙に戻っても実費として残ります。報酬告示の第十一①も、決められた報酬のほかは受け取れないと定めたうえで、依頼者の依頼によって行う広告の料金だけを例外にしています。

これは売主側の負担の話です。買主が払う登記費用・ローンの事務手数料・火災保険料・印紙代は、この条文とは別枠で、手続きがどこまで進んだかによって扱いが変わります。買主側は自分の契約書と見積書で一つずつ確認してください。

自分の契約書のどこを見ればいいか

原文を引けたのは媒介契約約款の側だけです。売買契約書には国が定めた標準様式が無く、書式は不動産会社や団体ごとに違います。契約書にはこう書いてある、と一般化できないので、自分の手元の1通を開いて次の3つを見ます。

  • 融資利用の特約が第何条にあるか。条項の名前は「ローン特約」「融資条項」など書式によって違う
  • 特約の中に入っている期限の日付。カレンダーに入れるのは決済日ではなく、この日
  • 文末が「解除されたものとする」か「解除することができる」か。後者なら、期限内に自分で解除を伝えなければ効かない

契約に入る前の価格の交渉については不動産用語の「指値」って何?に書きました。

契約書のページをめくりながら、鉛筆の先で条文を追っている手元
確かめるのは期限の日付と、条文の文末の書き方の2つだけです(写真はイメージ)(写真: Pexels)

私の見解——ローン特約の説明が途中で止まる理由

私は、ローン特約の説明がそこで止まりがちなのは、その先を話すと契約の席が重くなるからだと考えています。期限の管理は買主の仕事で、間に合わなければ140万円が消えるという説明は、その日の空気に合いません。

ただ、告示の文言はすでに2つの型を書き分けています。自動的に効く型と、自分で言わなければ効かない型があると知っていれば、契約の席で聞く質問は1つに絞れます。この特約は否決が決まった時点で自動で解除になるのか、それとも買主から解除を伝える必要があるのか。これだけで、自分がどちらの型に乗っているかが分かります。

白紙解除に関するよくある質問

白紙解除と白紙解約は違いますか

指している中身は同じです。「解除」は最初から無かったことにする言葉で、契約書の条文でも解除が使われます。

期限までに審査結果が間に合わないときはどうすればいいですか

期限は自動では延びません。結果を待つなら、期限が来る前に売主と延長の合意を書面で取り直します。

白紙解除になったら、仲介手数料はいつ返ってきますか

約款の文言は「遅滞なく」で、日数の指定はありません。返還に利息が付かないことも条文に明記されています。

白紙解除という言葉を覚えることに値打ちはありません。値打ちがあるのは、自分の契約書の融資利用の特約を開いて、期限の日付と文末の書き方を今日のうちに確かめることです。

同じシリーズで、不動産用語の「当て物件」って何?も公開しています。

出典:宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款(平成2年1月30日建設省告示第115号、最終改正 令和6年4月1日国土交通省告示第34号)第9条第2項・第10条 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001723420.pdf / 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(報酬告示)第二・第十一 https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001750143.pdf / 国土交通省 地価公示(神戸市灘区の住宅地3地点。100㎡換算と手付金の額は当サイトの試算で、手付金の5〜10%は慣行値) / Yahoo!知恵袋(質問タイトルは原文のまま引用 https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14288641809 )

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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