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「値切るなんて、失礼になるのでは」——不動産の指値を考えている人は、最初にここで足を止めます。結論からいうと、指値そのものは失礼な行為ではありません。買付証明書を出す段階で価格の交渉をすること自体は、不動産の売買では普通に行われています。
問題は、値切ること自体ではなく、金額の大きさです。売り出し価格から大きく離れた金額を提示すると、売主に断られるだけでは終わらないことがあります。Yahoo!知恵袋に投稿された相談へのベストアンサーには、無茶な指値を出した結果、仲介のはずの不動産会社が売主から直接その物件を買い取ってしまう、という話が書かれています。値切ろうとした本人は、結局その家を手に入れられません。
不動産用語の「指値」(さしね)は、買主が売り出し価格より低い金額を提示して、価格の交渉を持ちかけることです。呼び方は不動産取引に特有ですが、仕組みそのものは「この値段でどうですか」と一言添えるだけの行為です。
この記事でわかること
- ✓ 不動産の指値は「値切り」ではなく、買付証明書の段階で行う価格交渉の一種です
- ✓ 複数の不動産情報メディアが挙げる目安は売り出し価格の3%〜10%程度ですが、国の統計ではありません
- ✓ 無茶な指値を出すと、仲介業者自身がその値段で物件を買い取ってしまうことがあります
不動産の指値は「値切り」ではありません
中古の一戸建てやマンションは、値札どおりの金額で決まる商品ではありません。売主が最初に付ける売り出し価格には、値下げ交渉の余地を見込んで多少上乗せしていることがあります。買主が指値を入れて、そこから話し合いで価格が決まっていくのは、不動産の売買における普通の手順です。
不動産会社の担当者に「指値を入れたいのですが」と伝えることも、失礼にはあたりません。担当者の側も、買付証明書に書かれた金額を売主に取り次ぐのが仕事のうちです。
読者
じゃあ、いくら下げても失礼にはならないんですか?
金額そのものに失礼・失礼でないの線引きはありません。問題になるのは、相手が交渉に応じようがないほど離れた金額を出したときです。

売り出し価格がどこから来た数字かは、貼り紙を見ただけでは分かりません(写真はイメージ・Pexels)
不動産の指値はどこまで下げられるのか(業界の目安とその限界)
不動産投資や売買の解説記事では、指値の目安として売り出し価格の3%〜10%程度という数字がよく挙げられています。物件が5,000万円なら150万円〜500万円、3,000万円なら90万円〜300万円という幅です。
この数字は、複数の不動産情報メディアが解説記事の中で示している目安であり、国土交通省などが集計した一次統計ではありません。指値がどの程度の割合で通っているかを示す公的な数字は、このリサーチの範囲では見つかっていません。
この3%〜10%という数字は、不動産会社や投資メディアの解説記事が示す目安です。物件の売れ行きや売主の事情によって変わるため、目安以上の意味を持たせないでください。
半額での指値が通った、という話がインターネットには出回っています。ただし「鬼の指値」という言葉を使ったYahoo!知恵袋の相談でも、半値以下の指値を勧める本やサイトがあることを前提に、実際の現場でどこまで通用するのかが問われていました。半額からの指値は、成立に至らないまま終わることがほとんどです。
不動産で無茶な指値を出すと、仲介業者が横から買っていきます
先ほどのYahoo!知恵袋の相談には、こういう回答が寄せられています。
安く買おうとして無茶な指値を出しても、その値段で得をするのは自分ではなく仲介業者になる、という指摘です。売主が「その金額でもいい」と答えた時点で、仲介会社は自社で買い取る選択肢を持っています。買主が下げた分だけ、業者の利益が増えるだけで話が終わります。
この回答は不動産投資の文脈で書かれたものです。仲介業者が売主と買主の間に立ち、指値を取り次ぐという構造そのものは、マイホームを買う場合の売買でも変わりません。私は、無茶な指値が買取業者の利益を作るだけで終わるという力学は、投資用でも実需でも同じだと考えています。
不動産の元付会社と客付会社は、指値をどう伝えるか
1つの物件には、売主から直接依頼を受けた元付会社と、買主を案内する客付会社という、2つの立場があります。指値の申し出は客付会社が買付証明書にまとめ、元付会社を通じて売主に伝わります。同じ物件が複数の不動産ポータルに載る理由は不動産用語の「元付・客付」って何?に書きました。
読者
間に会社が2つ入ると、指値も伝わりにくくなりませんか?
伝える内容自体は変わりません。ただし1つの物件に3社以上が関わることもあり、それは「あんこ」と呼ばれる仕組みです。
中間に入る業者が増えるほど、指値の話が誰を経由して伝わっているのかが見えにくくなります。この仕組みは不動産用語の「あんこ」って何?にまとめました。
不動産の指値を入れる前に、自分で確認できること
指値の金額を決める前に、売り出し価格がそもそも周辺の相場と比べて高いのか安いのかを、自分で確認しておくと交渉の材料になります。相場より明らかに高い売り出し価格なら、指値の理由を説明しやすくなります。逆に相場並みの価格なら、大きな指値は通りにくくなります。
断られた不動産の指値のあと、物件はどこへ行くのか
指値が断られたあと、その物件がそのまま売れ残るとは限りません。先ほどの回答が示すように、無茶な指値に対して売主が「安くてもいい」と応じた場合、仲介会社自身がその価格で買い取ることがあります。買い取った会社は、リフォームをして再販したり、他の買主に紹介し直したりします。
案内を受けた不動産会社を、契約前に別の会社へ乗り換える買主もいます。会社を変えること自体が問題になるかどうかは、不動産用語の「抜き」って何?に書いた、申込みの前か後かという線引きで変わります。
読者
指値を断られたら、もう一度出し直してもいいんですか?
回数の制限はありません。ただし同じ担当者に何度も大きく離れた金額を出し続けると、次の交渉に応じてもらいにくくなります。
不動産の指値を入れるときの手順
1. 売り出しからの経過日数を確認する
売り出しから時間が経っている物件ほど、売主が値下げに応じやすくなる傾向があります。ポータルサイトの掲載日を確認しておきます。
2. 周辺の相場を先に調べる
指値の理由を「相場より高いから」と説明できるように、周辺の取引価格を自分で調べておきます。
3. 買付証明書に金額と条件を書いて提出する
指値は口頭ではなく、買付証明書という書面で提出します。金額のほかに、ローン特約の有無や引き渡し時期も書き添えます。
4. 断られた場合の対応をあらかじめ決めておく
金額が折り合わない場合に、いくらまで歩み寄るかを先に決めておくと、その場で条件を崩さずに済みます。
不動産の指値に関するよくある質問
指値は何度でも出し直せますか
回数の制限はありません。ただし短期間に大きく離れた金額を繰り返し出すと、担当者から交渉相手として扱われにくくなります。
新築の物件でも指値はできますか
売主が個人ではなく事業者の新築物件は、指値に応じない方針の会社もあります。まずは担当者に交渉の余地があるかどうかを確認します。
指値の理由は伝えたほうがいいですか
金額だけを伝えるより、周辺の相場や物件の気になる点など、理由を添えたほうが検討してもらいやすくなります。
不動産用語の「指値」は、値切るという行為そのものを恐れる言葉ではありません。恐れるべきは、相手が応じようがないほど離れた金額を出して、結局その物件を仲介業者に持っていかれることです。
同じシリーズで、不動産用語の「三為」って何?、不動産用語の「業物」って何?も公開しています。
出典:Yahoo!知恵袋(「鬼の指値」に関する質問へのベストアンサーより、回答部分は原文のまま引用)/不動産投資・売買を扱う複数の不動産情報メディアの解説記事(指値の目安として売り出し価格の3%〜10%程度を挙げているが、公的な一次統計ではない)
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