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不動産用語の「当て物件」って何?

※ 本ページには広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。

賃貸の部屋を3件案内されて、1件目がひどかった。あの日に削られたのは、半日の時間ではありません。「この予算だと、どうせこんなものか」という、あなたの家賃の物差しのほうです。

物差しがずれたままだと、そのぶんが毎月の支払いに残ります。たとえば予算6万円で探していた人が、その日のうちに6万5,000円の部屋を申し込んだとします。差額は月5,000円、2年で12万円、更新して4年住めば24万円です。

不動産用語に「当て物件」(あてぶっけん)という言葉があります。契約を決めさせたい部屋を引き立てるために、先に案内される条件の劣る部屋のことです。会社によっては「回し物件」「中物件」とも呼びます。

この記事が扱うのは、店に入って車に乗ったあと、つまり案内の話です。問い合わせる前の広告の段階で「安すぎる家賃」を見抜く手順はおとり物件の見分け方に分けて書いています。

先に結論

  • 当て物件は、決めさせたい部屋を引き立てるために先に案内される部屋。不動産用語では「回し物件」「中物件」とも呼ばれます
  • 核心は「狭い・汚い」ではなく、家賃だけは予算内に収まっていること。だから「自分の予算だとこの程度」という物差しがその場で作られます
  • 案内の順番は資料によって食い違います。共通しているのは「決め物件が最後に来る」の1点だけです
  • 最後の1件が本命になる理由は担当者の好みではなく、大家側から仲介会社に払われるAD(広告料)という別建ての報酬です
  • 「その予算では無理」と言われたら、街の家賃の中央値で検算する。福岡市中央区の25㎡なら真ん中は約4万8,000円です
目次

不動産用語の「当て物件」は、決め物件を引き立てるために先に見せられる部屋

用語集を引くと、当て物件の説明は「狭い」「汚い」「陽当たりが悪い」「駅から遠い」といった条件の列挙で終わります。これでは自分の体験と結びつきません。案内された部屋が狭かったからといって、それが当て物件だったとは限らないからです。

核心は条件の悪さではありません。大家・入居者向けメディアのウチコミ!タイムズは、管理不良や騒音、古い設備といった問題を挙げたうえで、こう書いています。

家賃等のコストだけは入居希望者の望む範囲にしっかりと収まっている。安いのだ(ウチコミ!タイムズ・原文のまま)

出典:ウチコミ!タイムズ「『当て物件』『見せ物件』『決め物件』――賃貸“客付け”の裏側をこっそり知っておこう」

つまり当て物件は「予算内なのに残念な部屋」です。予算オーバーの部屋を見せられただけなら、読者は「高い部屋は良いんだな」としか思いません。予算内で残念な部屋を先に見せられたときにだけ、「自分の予算だと、この程度なのか」という結論が頭の中にできあがります。

値踏みされているのはあなたではなく、あなたの物差しのほうです。

3つの言葉の関係を、家賃の位置で並べるとこうなります。

当て物件・見せ物件・決め物件それぞれの家賃の位置と、営業側のねらいをまとめた図

見せ物件は反対側にあります。新築や築浅でピカピカ、設備は最新、外観もきれい。ただし同メディアによれば「家賃がお高め。初期費用などもかさむため、入居希望者側としては通常予算オーバー」。気持ちが上がる部屋ですが、最初から手の届かない位置に置かれています。

真ん中が決め物件です。定義は「スタッフが『ここで決めたい』と思っている物件」で、見せ物件ほどの輝きはなく、当て物件のような失望感もない。そして「予算を若干上回るケース」も少なくない、と書かれています。

ここで思い込みを1つ外しておきます。「最初に見た部屋がひどかったのは、たまたま条件の悪い部屋しか空いていなかったから」。これは成り立ちません。空いている部屋のどれを何番目に見せるかを決めているのは会社側で、3件を選んだ時点で順番も決まっています。

なお、案内された部屋の話と、広告に出ていた部屋がそもそも借りられなかった話は別ものです。後者に心当たりがあるなら、おとり物件の通報先にまとめた窓口のほうを見てください。

案内の順番は決まっていない。共通するのは「決め物件が最後」だけ

「当て物件 → 見せ物件 → 決め物件の順に案内される」と書いている記事があります。一方、営業マンへの取材記事では「見せ物件 → ボロ物件 → 決め物件」という順番が語られています。同じ業界の話なのに、真ん中が入れ替わっています。

順番を決めつけた資料をあてにすると外れます。ウチコミ!タイムズ自身が、順番や組み合わせは一様に決まっているわけではないと書いています。顧客の経済状況によっては豪華な部屋を先に見せることもあり、当て物件を複数に増やすこともある、と。

資料をつき合わせて残るのは1点だけです。決め物件は最後に来ます。

不動産投資メディア「楽待」の取材に、営業マンの遠藤成明さんがこう答えています。

要は、1件目で期待値を上げ、2件目で落とし、そして3件目で、これくらいがちょうど良いかな、と(楽待の取材/営業マン・遠藤成明さん)

出典:楽待「賃貸業界では『見せ物件』や『決め物件』を作って内見者に見せるのは常識?」

上げて、落として、真ん中で着地させる。3件目の家賃が下がったのではなく、3件目を見るときのあなたの基準が動いています。

当て物件を見せている最中に添えられる言葉も記録されています。

考えておられる予算では、満足いく部屋はちょっと無理かも(ウチコミ!タイムズ)

この一言が入ると、次の部屋の家賃が予算を少し超えていても、超えているようには感じません。予算のほうが低すぎたことになっているからです。

現場の言葉づかいも同じ媒体に載っています。部屋を見た客の興味・関心度を「感度」と呼び、迷っている客の決断を促す殺し文句を「あおり」と呼ぶ。あおりの実例として挙がっているのが、こういうセリフです。

あっ、そういえば今朝、ウチの営業がこの部屋を検討中のお客さんがいるって言っていましたよ。これはすぐに決めないと取られちゃうかもしれませんね(ウチコミ!タイムズ)

同じ記事には「実は僕もこの物件を案内したのは初めてなんですけど、思っていた以上に良い部屋ですね」という言い方も出てきます。初めて見て感心している人と一緒に発見した、という形をつくる言葉です。

出典:ウチコミ!タイムズ「お客さんだけが知らない 普通の物件を『最高』と思わせる不動産仲介マンのストーリー営業術」

順番の意味は、その日の店内では分かりません。3件目を見ている時点では、それが3件目だという事実しか手元にないからです。

当て物件を見せること自体は違法ではない。線を越えるのはどこからか

「わざと条件の悪い部屋を見せるなんて、違法じゃないの?」

そう思った人には残念な答えになりますが、当て物件を見せること自体は違反になりません。

不動産の「おとり広告」は、景品表示法5条3号にもとづく告示(昭和55年公正取引委員会告示第14号)で、3つの型だけが決まっています。

一 取引の申出に係る不動産が存在しないため、実際には取引することができない不動産についての表示
二 取引の申出に係る不動産は存在するが、実際には取引の対象となり得ない不動産についての表示
三 取引の申出に係る不動産は存在するが、実際には取引する意思がない不動産についての表示
(「不動産のおとり広告に関する表示」原文のまま)

当て物件は実在していて、あなたが「ここにします」と言えば契約できます。だから1号にも2号にも3号にも当たりません。腹が立っても、おとり広告としては扱われません。おとり広告そのものの通報先はおとり物件の通報先にまとめていますが、当て物件はその対象外です。

出典:消費者庁「不動産のおとり広告に関する表示」

では、どこからが違反なのか。国土交通省が2023年1月12日に業界団体へ出した通知に、そのまま書いてあります。

実際には取引する意思のない物件を、顧客を集めるために、合理的な根拠なく「相場より安い賃料・価格」等の好条件で広告して顧客を誘引(来店等を促す行為)した上で、他者による成約や事実ではないこと(生活音がうるさい、突然の水漏れが生じた、治安が悪い等)を理由に、他の物件を紹介・案内することは「おとり広告」に該当すること。
(国土交通省「いわゆる『おとり広告』等の禁止の徹底について」国不動指第80号・令和5年1月12日・原文のまま)

線を越えるのは「別の部屋を勧めたこと」ではなく、「事実ではないことを理由にしたこと」です。正直に「この部屋は日当たりが悪いです」と言って見せる分には、この通知の①には当たりません。逆に、ネットで見て問い合わせた部屋について、実際には起きていない水漏れや治安の悪さを理由に別の部屋へ流されたなら、それはおとり広告です。

出典:国土交通省 国不動指第80号(PDF)

「口で言っただけなら広告じゃないでしょう」も通りません。景品表示法でいう「表示」には、口頭による広告その他の表示(電話によるものを含む)が明文で入っています。不動産の表示に関する公正競争規約4条5項2号も同じ書き方です。店頭で言われたことも、対象になり得ます。

宅地建物取引業法の側にも網があります。47条1号は、契約の勧誘をするに際して、環境・交通の利便・借賃等の対価の額や支払方法といった、相手の判断に重要な影響を及ぼす事項について、故意に事実を告げない、または事実でないことを告げる行為を禁じています。罰則は2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。

そして、部屋探しでいちばん耳にする「今日決めないと埋まりますよ」。これも規則で名前がついています。

正当な理由なく、当該契約を締結するかどうかを判断するために必要な時間を与えることを拒むこと
(宅地建物取引業法施行規則 第16条の11第1号ロ・原文のまま)

国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、この具体例をこう書いています。相手が「契約の締結をするかどうかしばらく考えさせてほしい」と申し出たのに、事実を歪めて「明日では契約締結はできなくなるので、今日しか待てない」と告げること。営業の現場で「あおり」と呼ばれているものは、ここに近いところにあります。

出典:国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(PDF)

私は、この線引きは借りる側にとってかなり使えるものだと考えています。確かめることが「言われた内容が事実かどうか」の1点に絞られるからです。断られた部屋の水漏れも、治安の悪さも、別の会社に同じ部屋を聞けば裏が取れます。順番の善し悪しを言い合うより、はるかに決着が早い。

決め物件が本命になる理由は、担当者の好みではなく報酬の入り方

賃貸の仲介で会社が受け取れる手数料には、国が決めた上限があります。貸主と借主の双方から受け取る合計で、借賃の1か月分の1.1倍(=家賃1か月分+消費税)まで。しかも住むための建物なら、依頼を受けるときに承諾をもらっている場合を除いて、片方から受け取れるのは0.55か月分までです(報酬告示 第四)。どの部屋で決めても、ここが頭打ちになります。

別建てで入ってくるお金があります。ADと呼ばれる広告料で、大家や管理会社から仲介会社へ払われます。借主が払う仲介手数料とは別の財布で、借主の請求書には出てきません。

法律の側から見ると、ADは報酬の例外として1か所だけ穴が開いています。国土交通大臣の告示は、決められた報酬以外は受け取れないと定めたうえで、ただし「依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額」はこの限りでない、と書いています。逆にいえば、依頼にもとづかない広告料や、案内料・申込料といった名目のお金は受け取れません。

ADが何か月分出るかは物件ごとに違い、公的な統計はありません。不動産会社向けの解説では家賃の1〜2か月分が相場とされ、CHINTAI JOURNAL・いい生活・スマイティ賃貸経営の3つが同じ幅を書いています。国が示した数字ではないので、目安として読んでください。仲介手数料の上限が0.55〜1.1か月分であることを思い出すと、ADが1か月分付いた部屋は、会社の売上が2倍前後になる計算になります。

ウチコミ!タイムズは、決め物件に選ばれる条件として最も件数が多いのは「オーナーからのインセンティブが存在する物件」だと書いています。家賃の何か月分かを支給する約束がある部屋、という意味です。楽待の取材でも、営業マンが広告料の高い物件を優先して紹介していることが語られています。年間100人以上を案内する仕事の、効率化の一手段として。

報酬の入り方は、間に立つ会社の数でも変わります。仲介の報酬が片側から入るのか両側から入るのかは片手・両手に、元付と客付の間にもう1社挟まる形はあんこに書きました。案内される3件は、この報酬の地図の上から選ばれています。

ADの金額が書かれているのは、業者間で回る販売図面の下部、「オビ」と呼ばれる帯の部分です。客の手元に渡る資料では切り落とされているのが普通です。「オビを見せてください」と頼む手はありますが、ウチコミ!タイムズ自身が、営業が不快に感じる可能性があると書いています。私はすすめません。金額を確認できたところで、案内の順番は変わらないからです。

公平のために、同じ記事のこの一節も引いておきます。

多くのスタッフはそうではないのだ。彼ら・彼女らは(多くは若者だ)、働く人間としてあたりまえに、客の笑顔と喜びをモチベーションにしている真面目な人々だ(ウチコミ!タイムズ)

ここは私の見方です

私は、当て物件を「悪い会社がやっていること」として読むのは筋が悪いと考えています。順番を組み立てているのは担当者の人格ではなく、報酬の入り方と、1日に何組も案内する仕事の段取りです。だから、目の前の担当者が誠実かどうかを見抜こうとしても効きません。効くのは、最後の1件をその日のうちに決めない、という自分側の手続きのほうです。なお、ADが付いている物件の割合を公表している統計は見つかりませんでした。ここは仕組みの説明であって、件数の話ではありません。

「その予算では無理」と言われたら、街の家賃の真ん中で検算する

当て物件でつくられるのは、「自分の予算では満足のいく部屋がない」という感覚です。感覚は言い返せませんが、数字なら比べられます。

当サイトでは全国1,526市区町村の賃貸データを集計しています。1㎡あたり家賃の中央値、つまり「その街の真ん中の家賃」です。主要な街を25㎡(ワンルーム〜1Kのよくある広さ)に直すと、こうなります。

主要10都市の25㎡あたりの家賃中央値を並べた棒グラフ

1㎡あたり家賃の中央値 25㎡に直すと
東京都足立区 1,999円 約49,975円
横浜市神奈川区 2,490円 約62,250円
さいたま市大宮区 1,928円 約48,200円
大阪市淀川区 2,033円 約50,825円
名古屋市中区 2,231円 約55,775円
京都市中京区 2,302円 約57,550円
福岡市中央区 1,938円 約48,450円
札幌市中央区 1,476円 約36,900円
仙台市青葉区 1,740円 約43,500円
広島市中区 1,807円 約45,175円

出典:当サイト集計の賃貸データ(全国1,526市区町村・2026年8月時点)。各市区の集計件数は約2万〜16万件です。

使い方は3手順です。探している街の1㎡単価に希望する面積を掛け、自分の予算と比べ、予算が中央値を上回っていれば「その予算では無理」は街全体の相場としては成り立たない、と判定します。

福岡市中央区で25㎡・予算6万円の人なら、中央値は約4万8,000円。予算は街の真ん中より2割以上も上です。札幌市中央区なら中央値は約3万7,000円で、6万円は6割以上の上振れになります。この状態で「その予算では無理かも」と言われたなら、無理なのは予算ではなく条件のほうです。

この中央値は単身向け(ワンルーム〜1K)が大半を占める集計です。当てはめてよいのは25㎡前後までで、60㎡のファミリー向けに同じ単価を掛けると実際よりかなり高く出ます。

そして、検算で分かるのは「街全体の相場として無理か」だけです。駅徒歩5分以内・築5年以内・独立洗面台・オートロックと積み上げれば、予算内の部屋が本当に無くなることは普通にあります。そのときは条件を1つ落とすか、街を1つ隣にずらすかの選択です。隣の街でいくら変わるかは隣町の相場を並べた記事で比べられます。

案内される前と、帰ってからやること

当て物件を見抜く必要はありません。順番の効き目を切るだけなら、やることは5つです。5つとも相手と言い争わずに済み、自分の側だけで完結します。

1. 最後の1件を、その日のうちに決めない

決め物件は最後に来ます。だからその日に決めなければ、順番の効き目は切れます

3件見終わって店に戻ると、たいてい夕方です。案内した人はそのままテーブルに着き、最後の1件の資料を真ん中に置きます。ここで言うことは1つで足ります。「持ち帰って、明日の午前中に連絡します」。理由を説明する必要はありませんし、家族に相談するという言い方でも構いません。

一晩あければ、あおりの言葉も自分で確かめられます。「今朝、ウチの営業がこの部屋を検討中のお客さんがいる」と言われた部屋が翌日も残っているかどうかは、翌日になれば分かります。本当に埋まる部屋もありますが、それは埋まったという事実であって、今日決める理由ではありません。埋まったなら、その部屋は最初から選択肢に入っていなかっただけです。

その場で申込みを入れるとき、「申込金」「申込証拠金」「預り金」といった名目でお金を求められることがあります。渡すなら、金額と名目が書かれた書面を必ずもらってください。契約の前に渡したお金は預けたお金で、申込みを撤回すれば返ってきます。返ってこないときの手順は預り金と申込金の話にまとめました。

2. 帰ってから、3件を「家賃・面積・築年数」の3列で並べ直す

店の中では並べ直せません。資料は1枚ずつ順番に出てきますし、どこを比べるかは説明する側が決めています。

やることは単純です。帰宅したら、もらった資料をテーブルに3枚並べて、家賃・専有面積・築年数の3つだけを紙かスマホのメモに書き写します。設備も内装も写真も、いったん全部落とします。

書き写すと、たとえばこういう並びになります(数字は書き方の見本です)。

見た順 家賃 専有面積 築年数
1件目 5万8,000円 22㎡ 34年
2件目 7万2,000円 26㎡ 3年
3件目 6万5,000円 25㎡ 12年

3列にすると、1件目と3件目の家賃差が数字で出ます。この見本なら7,000円で、2年住めば16万8,000円の差です。1件目が予算内で、3件目が予算を数千円超えているなら、あなたがその日に見ていたのは「良い部屋か悪い部屋か」ではなく、予算をどこまで動かせるかの幅のほうです。

もう1つ見るのは1件目の家賃です。予算内に収まっていたなら、当て物件の条件に合います。1件目がはっきり予算オーバーだったなら、当て物件ではなく見せ物件から始まる組み立てだった、と読めます。

並べ直したうえで3件目が良いと思えるなら、それでいいのです。この作業の目的は契約をやめさせることではなく、順番の記憶を消してから同じ3件を見直すことにあります。

3. 「その予算では無理」と言われた分を、検算に戻す

前の章の3手順です。中央値に面積を掛けて、予算と比べる。スマホの電卓で30秒で終わります。表に自分の街がないときは、いま見ている賃貸サイトで同じ面積帯を家賃の安い順に並べ、真ん中あたりの部屋で1㎡単価を出せば近い線が引けます。

検算する相手は営業ではありません。自分の記憶です。案内の帰り道で下がった感覚が、街の相場に照らして正しいのかを確かめる作業なので、その場で言い返す必要はありません。

予算が中央値を上回っていたなら、探し方の問題です。同じ街で、条件を1つずつ外しながら自分でサイトを絞り込み直せば、予算内の部屋がまだ残っているかどうかが分かります。

逆に、予算が中央値を下回っていたなら、「その予算では無理」は街の相場としても本当だったことになります。そのときに動かせるのは、面積、築年数、駅からの距離、そして街そのものの4つです。1つずつ外して、どれを外したときにいちばん家賃が落ちるかを見ます。

4. 内見の順番を、先に自分で指定する

次の案内があるなら、車に乗る前に一言だけ言えます。「気になっている順に見たいです」。

これで順番の設計が崩れます。当て物件も見せ物件も、後ろの部屋を良く見せるための位置取りですから、位置を自分で決めれば効きません。

物件名を指定できるなら、そのほうが確実です。サイトで見つけた部屋があるなら、問い合わせの時点で「この部屋を最初に見せてください」と書いておきます。断られたときは理由を聞けば足ります。鍵の受け取りや入居中で見られない部屋は実際にあり、その説明ができるかどうかで、順番が事情によるものか設計によるものかが分かれます。

反応を見られていることも頭に入れておいてください。現場では、部屋を見た客の関心度を「感度」と呼びます。1件目で強く不満を言うほど、次に出てくる部屋との落差は大きく設計できます。良し悪しの感想は帰ってから紙に書けば足りるので、内見中に口に出すのは設備の有無や採寸のような事実だけにしておきます。

5. 気に入った部屋は、別の会社にも当たってみる

同じ部屋を複数の不動産会社が扱えます。1つの部屋が何社ぶんもの広告になっているのはそのためで、仕組みは同じ部屋が何社からも載る理由に書きました。

別の会社に問い合わせると、案内の順番がリセットされます。前の会社で3件目だった部屋が、次の会社では1件目として出てくることもあります。同じ部屋なのに位置が変わるなら、その位置は部屋の値打ちではなかった、ということです。

問い合わせるときは、建物名と部屋番号(出ていなければ住所・築年数・階)を書いて、その部屋だけを指定します。「このあたりで探しています」と書くと、その会社でもまた3件の組み立てが始まります。

初期費用の内訳も会社ごとに変わります。家賃が同じでも、仲介手数料の割引や保証会社の使い方で総額は動くので、見積書は同じ部屋のぶんを2社ぶん並べて比べられます。

1つだけ気をつけることがあります。同じ部屋に2社から同時に申し込まないでください。審査は大家・管理会社側で行われるので、同じ人の申込みが2経路で届くと、話がこじれるのはあなたのほうです。申し込むと決めたら、どちらか1社に絞ります。

案内の順番に乗らずに、自分で部屋を探す ▶

条件を自分で並べて絞り込めば、1件目に何が出てくるかを人任せにせずに済みます

よくある質問

当て物件かどうか、その場で見分けられますか

その場では分かりません。1件目を見ている時点では、それが1件目だという事実しか手元にないからです。分かるのは帰ってから3件を並べ直したときで、判断材料は家賃・面積・築年数の3つで足ります。見分けようとするより、最後の1件をその日に決めないほうが確実です。

「当て馬物件」と呼ぶのを聞きましたが、同じ意味ですか

現場では当て馬という言い方もします。ただ、検索して出てくる「当て馬」はほとんどが恋愛や漫画の意味なので、不動産の話を調べるなら「当て物件」「回し物件」「中物件」で探すほうが早く着きます。

決め物件で決めてしまいました。失敗だったのでしょうか

決め物件は会社が決めさせたい部屋であって、悪い部屋という意味ではありません。見せ物件ほどの輝きはなく、当て物件のような失望感もない位置に置かれた部屋です。見ておくとよいのは家賃のほうで、予算を少し超えているなら、その差額は2年、4年と積み上がります。更新のときに家賃が動くこともあるので、通知が来たときの考え方は家賃の値上げを通知されたときの話に書きました。

不動産用語の「当て物件」を覚える値打ちは、部屋を見抜けるようになることではありません。案内の順番には組み立てた人がいて、その順番があなたの物差しをつくる、と知っておくことです。

失うのは物件ではなく物差しのほうです。物差しさえ手元に残っていれば、3件目でも、別の会社の1件目でも、同じ基準で家賃を見られます。


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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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