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実家の名義は生前と相続どっちが得?神戸の家付き土地93.7%が「8割引き」の枠内

実家の名義を親が生きているうちに移すと、その土地は相続税の計算で使えたはずの「評価額の8割引き」を、その時点で失います。神戸市9区で実際に売買された家付きの住宅地1,655件を数えたところ、93.7%はその8割引きが使える330㎡の枠に収まっていました。

ただ、この話が出てくる場面で先に語られるのは、たいてい別の数字です。ある実在の質問に付いた5件の回答が並べていたのは、2%と3%と110万円でした。

先に結論

  • 自宅の土地は330㎡まで相続税の評価額を80%下げられる。ただし使えるのは相続または遺贈で受け取った場合だけ(国税庁 No.4124)
  • 生前に名義を移すとこの80%は使えない。相続時精算課税を選んでも戻らない
  • 神戸で売れた家付きの住宅地1,655件のうち93.7%が330㎡以内。中央値は130㎡で、枠の4割しか使っていない
  • 生前贈与で余分にかかる登録免許税2%・不動産取得税3%より、失う80%のほうが桁が2つ大きい
  • ただし相続税がそもそもかからない家では、この80%に価値はない
目次

5件の回答が、全部ちがう方向を向いていました

2023年10月、Yahoo!知恵袋に「実家をもらうことになりました」という質問が投稿されました。要約すると、実家の土地と家の名義は父で、親は隣の土地に父名義で別の家を建てる。その親から「私達が亡くなってから名義を変えた方がいい」と言われた。それでいいのでしょうか、という内容です。共感した人は1,516人。

付いた回答は5件で、方向がそろっていませんでした。

  • 相続まで待ってもいいし相続時精算課税でもいい。ただ、相場より安くならないよう気をつけて親子間で売買したほうが納税額は安い
  • 「相続が断然お得です」。名義変更に2%ほどの登録税、贈与なら不動産取得税3%もかかる
  • 父を被相続人としたとき、誰が相続人になるか次第
  • 売買の形にして代金を借金にし、暦年で年111万円ずつ減らしていけば9年で済む
  • 一番簡単で税金のかからない方法だと思う

同じ質問に対して、待て・売れ・借金にしろが並んでいます。質問者はここから選ばなければなりません。

2%と3%の話をしている横で、1件だけ80%と書いていた

回答に出てくる税率は、一次情報でも確かめられます。国税庁のタックスアンサー No.7191 によると、土地の所有権の移転登記にかかる登録免許税は、相続なら1,000分の4、贈与その他なら1,000分の20です。不動産取得税は兵庫県のページに「相続により不動産を取得した場合」は非課税とあり、土地と住宅の税率は平成15年4月1日から令和9年3月31日までの取得に限り4%から3%に軽減されています。

つまり、生前に名義を移すと余分にかかるのは、登記で1.6ポイント、取得税で3ポイントです。ここまでは回答者の言うとおりでした。

ところが5件のうち1件だけ、別の桁の数字を書いていました。「住んでいる土地を相続した場合、評価額を最大80%下げて計算できます」。小規模宅地等の特例のことです。

2%と3%の話をしている横で、80%が1件だけ出てくる。動く金額の大きさが違いすぎます。なお、この80%が効くのは相続税がかかる家だけで、そもそも基礎控除に届かない家では関係ありません。神戸の隣の芦屋で土地だけで基礎控除を超えてしまう事情は芦屋の実家を相続したら土地だけで4,760万円になる理由にまとめました。

「330㎡」は、広い家の話ではありません

国税庁 No.4124 によると、被相続人が住んでいた土地(特定居住用宅地等)は、330㎡までの部分について相続税の課税価格に入れる評価額を80%減額できます。

330㎡は約100坪です。この数字だけを見ると「うちみたいな狭い家には関係ない」と読めます。実際どうなのかを、神戸で売買された土地の面積で数えました。

神戸市9区で売れた家付き住宅地1,655件の土地面積の分布。330㎡以内が93.7%
神戸市9区・住宅地・家が建っている土地1,655件の面積分布(国土交通省 不動産取引価格情報)

国土交通省が公表している不動産取引価格情報から、神戸市9区・住宅地・家が建っている土地(宅地(土地と建物))だけを抜き出すと1,655件あります。2024年10-12月期から2026年1-3月期までの6四半期分です。

  • 330㎡以内は1,551件=93.7%。330㎡を超えたのは104件、6.3%だけ
  • 面積の中央値は130㎡(約39坪)。330㎡の枠の4割しか使っていません
  • 100㎡未満が519件で31.4%と最も多い

区でも大きくは変わりません。330㎡を超えやすいのは区画の大きい西区(枠内90.3%)と北区(91.1%)ですが、それでも9区すべてで9割を超えています。逆に狭いのは兵庫区の97.5%と垂水区の97.0%です。

この集計には3つ断りを入れておきます。1つ目は、これは「売買された家付きの住宅地」であって「相続が起きた家」ではないこと。市場に出た家のほうが小さめに偏っている可能性は残ります。2つ目は、分譲マンションを入れていないこと。マンションの土地は敷地の持分なので、この分布とは別物です。3つ目は、330㎡ちょうどの10件は枠内として数えたことです。

生前に移すと消えるのは、面積ではなく資格のほうです

No.4124 の本文はこう始まります。「個人が、相続や遺贈によって取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族……の事業の用または居住の用に供されていた宅地等」。根拠となる租税特別措置法第69条の4第1項も、「個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに」から始まります。

生前に贈与で受け取った土地は、相続でも遺贈でもありません。条文の入口で外れます。

面積は足りているのに、渡し方を変えた瞬間に枠ごと消える。これが、2%や3%を気にして名義を先に移す判断で起きていることです。

「相続時精算課税なら相続と同じ」は、土地では成り立ちません

相続時精算課税は、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫へ贈与するときに選べる制度です(No.4103)。年110万円の基礎控除と2,500万円の特別控除があり、超えた分に一律20%。そして特定贈与者が亡くなったとき、贈与した財産を相続財産に合算して相続税を計算します。

合算されるのだから相続と同じ扱いになるはず、と読めます。しかし No.4124 には、こう書かれています。

相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等……については、この特例の適用を受けることはできません。

合算はされる。けれど80%減額だけは戻ってきません。しかも合算される価額は、原則として贈与時の価額です。

同じ実家を生前に名義変更した場合と相続まで待った場合の、評価額・登録免許税・不動産取得税の違い
生前に名義を移す場合と相続まで待つ場合で変わるもの(国税庁 No.4124・No.7191、兵庫県)

先ほどの知恵袋で「一番簡単で税金のかからない方法」と答えた回答者も、最後に相続時精算課税へ触れたうえで、小規模宅地等の特例が使えなくなると書き添えていました。5件のうち、この点まで書いた回答は1件でした。

私はこう見ています

私は、自宅の土地に関しては「生前贈与で節税」という言い方が逆に働く場面のほうが多いと見ています。理由は単純で、生前に移して節約できるのが2%と3%なのに対し、失うのが80%だからです。桁が2つ違う勝負を、小さいほうの数字だけを見て決めている例が多いように思います。

ただしこれは、相続税がかかる家に限った話です。相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、ここに届かない家では80%引きの価値は0円です。「うちは特例が使えないと大変だ」と身構える前に、まず基礎控除を超えるかどうかを見たほうが順番として早いと考えます。

それでも生前に渡したほうがよい場面はあります

税額だけで決められない事情もあります。誰に渡すかを自分の目で見て決めたい、という理由は税制の外側にあります。実家に住み続ける子と出ていった子がいる家では、分け方の話が先に来ます。

もう1つ、暦年課税で現金を渡していく計画があるなら、期限が動くことは知っておいてください。国税庁 No.4161 によると、相続税の課税価格に加算される暦年贈与の期間は、相続の開始日が令和8年12月31日までなら3年以内です。令和9年1月1日以降は令和6年1月1日からの分が対象になり、令和13年1月1日以降は7年以内に延びます。土地の話ではありませんが、同じ「生前に渡す」判断に効いてきます。

今日、家で確かめられること

  1. 敷地の面積を見る。固定資産税の納税通知書か登記事項証明書に地積が載っています。330㎡=約100坪。神戸の実測では10軒中9軒以上が枠の中でした
  2. 誰が住んでいるかを確かめる。特例の要件は取得する人ごとに違います。配偶者は要件なし、同居していた親族は申告期限まで住み続けて持ち続けること、それ以外の親族はさらに6つの条件があります(No.4124)
  3. 名義を動かす前に順番を確認する。登記を入れてしまうと、その土地は「相続により取得した財産」ではなくなります

面積は自分で測れますが、評価額は書類を見ても出てきません。実家がいくらの土地なのかを先に知っておくと、基礎控除を超えるかどうかの判断が早くなります。

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この記事で使ったデータと出典

  • 面積の集計: 国土交通省「不動産取引価格情報」。神戸市9区、種類「宅地(土地と建物)」、地区「住宅地」、2024年第4四半期〜2026年第1四半期の1,655件。330㎡ちょうどは枠内として集計
  • 国税庁 タックスアンサー No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(令和7年4月1日現在法令等)
  • 国税庁 タックスアンサー No.4103「相続時精算課税の選択」(同)
  • 国税庁 タックスアンサー No.4161「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」(同)
  • 国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表」
  • 兵庫県「不動産取得税」(税率と非課税の範囲)
  • 質問と回答の引用元: Yahoo!知恵袋 q11287296681(2023年10月11日投稿)

この記事は制度の一般的な説明で、個別の税額の判断ではありません。実際の適用可否は取得する人ごとの要件で変わります。

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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