レントロールの作り方|項目一覧と、数字をどの資料から拾うか
レントロールの作成で時間がかかるのは、表を組む作業ではありません。それぞれの数字が、どの資料に載っているかを探す時間です。
賃料は契約書に書いてある。ただしその契約書が3年前のもので、途中で減額されていたら、契約書の数字は現況と合いません。敷金は契約書に載っていても、償却の有無まで書き写さなければ、受け取った側は正味いくら返ってくるのか判断できません。
この記事では、レントロールに載せる項目を並べたうえで、項目ごとに一次資料はどれか、そしてあとから直すことになりやすい書き方を整理します。
決まった書式はない。だから先に「誰が見るか」を決める
レントロールは法令で様式が定められた書類ではありません。重要事項説明書のように「この欄を埋める」という型が最初から存在しないので、毎回ゼロから迷うことになります。
先に決めるべきは、この1枚を誰が何のために見るかです。用途が決まると、載せる列も、どこまで細かく書くかも自動的に決まります。
| 誰が見るか | 見たいこと | 厚くする項目 |
|---|---|---|
| 買主・投資家 | いくら収入があり、その収入がどれだけ続きそうか | 現況賃料、契約期間、入居年月、空室 |
| 金融機関 | 返済の原資が実在するか | 現況賃料、入金実績との一致、空室率 |
| 社内の管理用 | 次に何が起きるか | 更新日、解約予告、保証会社、滞納 |
買主に出す1枚に社内メモの滞納状況をそのまま残してしまう、といった事故はここを決めていないときに起きます。
最低限入れる項目
用途が変わっても、この範囲は共通で必要になります。
| 区分 | 項目 |
|---|---|
| 区画 | 部屋番号(区画番号)、間取り、面積、階 |
| 契約 | 契約者名(または法人・個人の別)、契約種別、契約開始日、契約期間、更新日 |
| 収入 | 賃料、共益費(管理費)、駐車場代、その他の付帯収入 |
| 預り金 | 敷金・保証金、償却・敷引の有無 |
| 状況 | 入居中/空室、募集中の条件、備考 |
個人の契約者名をそのまま外部に出すかどうかは、渡す相手によって変わります。売買の検討段階でイニシャルや「個人」表記にとどめる運用は一般的です。
項目ごとに、どの資料から拾うか
ここが実際に時間を取られる部分です。
賃料・共益費 — 契約書だけでは足りない
一次資料は賃貸借契約書ですが、契約書の金額と現況の金額はずれます。途中の減額改定、値上げ、賃料と共益費の内訳変更は、契約書ではなく合意書や覚書の側に残っているためです。
契約書で金額を拾ったら、直近数か月の入出金明細(または家賃台帳)と突き合わせます。ここで合わない区画が出たら、その区画だけ変更の書類を探します。全部の契約書を読み直すより早く終わります。
敷金・保証金 — 償却の有無まで書く
金額だけを書き写すと、あとで必ず聞き返されます。償却(敷引)があるのか、退去時にいくら返す前提なのかまで含めて、契約書の該当条項から拾います。更新時に敷金を積み増している契約もあるので、更新合意書も確認します。
契約期間・更新日 — 更新のたびに書類が増える
原契約だけを見ると、期間はとうに切れているように見えます。更新合意書、または自動更新の条項まで追わないと、正しい満了日になりません。
あわせて契約種別を確認します。定期建物賃貸借(定期借家)は更新がなく、期間満了で終了する契約です。普通借家と同じ列に並べたまま種別を書かないと、読む側は「更新されるもの」と誤解します。
面積・間取り — 登記と募集図面は数字が違う
区分所有のマンションでは、登記簿上の専有面積は内法(壁の内側)で計算され、販売図面や募集図面の面積は壁芯(壁の中心線)で書かれるのが一般的です。同じ部屋でも登記の面積のほうが小さく出ます。
どちらを採用しても構いませんが、1枚の表の中で混ぜないこと、そして表の欄外にどちらの基準かを書いておくことが必要です。
駐車場・付帯収入 — たいてい別契約になっている
駐車場、バイク置場、看板、自販機、倉庫。これらは住戸の賃貸借契約とは別の契約書になっていることが多く、部屋の契約書だけを集めると丸ごと抜け落ちます。収入の合計が実際の入金と合わない原因の多くはここです。
あとから直すことになりやすい4つ
1. 現況賃料と募集賃料を同じ列に入れる
空室の区画に募集条件の金額を入れ、入居中の区画に実際の賃料を入れて、同じ「賃料」列にまとめてしまうパターンです。合計すると満室想定の数字になりますが、読む側にはどれが実収入か分かりません。列を分けるか、状況の列で必ず区別します。
2. フリーレント・段階賃料を書かない
契約書上は月10万円でも、当初3か月が無償なら、その期間の実収入はゼロです。数年かけて賃料が上がる契約も同様で、備考に書いておかないと、あとで説明のやり直しになります。
3. 消費税を混ぜる
住宅として貸す建物の賃料は消費税が非課税、店舗・事務所など事業用として貸す部分は課税対象です。住宅と店舗が混在する物件で税込・税抜を混ぜて並べると、合計額が実態と合わなくなります。表の中で統一し、どちらで書いたかを明記します。
4. 空室を0円で埋める
空室に「0」を入れると、集計上は入居中の0円契約と区別がつきません。状況の列で「空室」と持たせ、賃料欄は空欄にしておくほうが、あとで集計するときに困りません。
Excelで作るなら、あとで集計できる形にする
レントロールは一度作って終わりではなく、更新・退去のたびに直す表です。最初の作り方で、その後の手間が決まります。
- 1行1区画にする。 1部屋の情報を2行に分けると、並べ替えも合計もできなくなります
- セルを結合しない。 見た目は整いますが、結合したとたんに並べ替えと集計が壊れます
- 金額は数値で入れる。 「100,000円」と文字で入れると合計されません。単位は列名(賃料(円))側に書きます
- 日付は日付型で入れる。 「R7.4.1」はExcelにとって文字列です。更新日の並べ替えができなくなります
- 状況は入力規則の選択肢にする。 「空室」「空き」「-」が混在すると、あとで数えられません
この5つを守っておくと、同じ表から入居率も年間収入も関数で出せます。守らなかった場合、毎回電卓で数え直すことになります。
まとめ
- レントロールに法定の様式はない。先に誰が見るかを決めると、載せる項目が決まる
- 賃料は契約書だけでは足りない。入出金明細と突き合わせて、ずれた区画だけ書類を探す
- 面積は登記(内法)と募集図面(壁芯)で数字が違う。1枚の中で混ぜない
- 空室・フリーレント・消費税・定期借家は、書かないと必ず聞き返される
- Excelでは1行1区画・結合なし・数値と日付は型どおり。あとで直す表だという前提で作る
手元に契約書と入出金明細が揃っていれば、あとは拾って並べる作業です。ただし区画数が多い物件では、その「拾って並べる」だけで半日から一日かかります。
資料を一覧表にする手が足りないときは
- 不動産資料のExcel化 — お預かりした契約書・マイソク・謄本から、レントロールや物件一覧をExcelにまとめます。1行1区画・集計できる形でお渡しします
- 事務作業の自動化 — 毎月くり返している集計や転記そのものを、ツール化して減らします
物件資料まわりの実務については、こちらでもまとめています。
👉 重要事項説明書の書き方|35条書面に何を書くか、調査はどこから始めるか
👉 レインズの「売外全」「売外一」とは?物件種目の読み方と使い分け
この記事の情報について
レントロールは法令で様式が定められた書類ではなく、記載項目は当事者間の慣行によります。本記事の項目一覧は実務上よく用いられる範囲を整理したものです。消費税の課税・非課税の区分、定期建物賃貸借の取り扱いなど、税務・法務の判断を伴う部分については、税理士・所属する宅地建物取引業者にご確認ください。登記面積と募集図面の面積の差は、区分所有建物における一般的な取り扱いを説明したもので、個別の物件では原資料をご確認ください。


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