神戸市の土地の坪単価は区で7倍違う|相続した実家の「売り方」が変わる境目
実家をどうするか考えるとき、最初に知りたいのは「いくらになるのか」です。ところが神戸市の場合、市全体をひとまとめにした相場を見てもほとんど役に立ちません。国が公開している実際の取引データを9区ぶん並べると、土地の坪単価は最も高い区と最も安い区で約7倍の差がありました。
そしてこの差は「高く売れる/安くしか売れない」という話にとどまりません。解体してから売るべきか、そのまま売るべきかという判断そのものが、区によって変わります。今回はその境目をデータで整理します。
先に、このデータが何かを書いておきます
使うのは国土交通省「不動産情報ライブラリ」の不動産取引価格情報です。公示地価のような「評価のための価格」ではなく、実際に売買が成立した金額を集めたものです。
- 対象期間:2024年第4四半期〜2025年第4四半期
- 対象エリア:神戸市9区
- 件数:土地(宅地)496件/中古戸建て521件
- 単位:1坪あたりの価格(1坪=約3.31㎡)
以下の数字はすべて中央値です。平均値は極端に高い1件に引っ張られてしまうため、「ちょうど真ん中の取引」を代表値にしています。
神戸市9区・土地の坪単価(実際の取引)
| 区 | 坪単価の中央値 | 取引件数 |
|---|---|---|
| 中央区 | 約150.4万円 | 22件 |
| 灘区 | 約138.8万円 | 35件 |
| 東灘区 | 約130.6万円 | 74件 |
| 兵庫区 | 約72.7万円 | 32件 |
| 須磨区 | 約43.0万円 | 55件 |
| 垂水区 | 約43.0万円 | 73件 |
| 西区 | 約33.1万円 | 81件 |
| 長田区 | 約26.8万円 | 29件 |
| 北区 | 約21.5万円 | 95件 |
土地の坪単価(中央区を100とした比較)
出典: 国土交通省 不動産情報ライブラリ(取引期間 2024年4Q〜2025年4Q・宅地496件)
最も高い中央区(約150.4万円/坪)と、最も安い北区(約21.5万円/坪)の差は約7.0倍でした。おおまかに3つの層に分かれます。
- 坪100万円超:中央区・灘区・東灘区
- 坪40〜75万円:兵庫区・須磨区・垂水区
- 坪35万円以下:西区・長田区・北区
同じ「神戸市の実家」でも、この3層のどこにあるかで話がまったく変わります。
建物が付くと、差は7倍から2.5倍に縮まる
同じデータから、中古戸建ての取引も見てみます。
| 区 | 坪単価の中央値 | 取引件数 |
|---|---|---|
| 東灘区 | 約175.8万円 | 76件 |
| 灘区 | 約150.8万円 | 60件 |
| 中央区 | 約145.0万円 | 22件 |
| 須磨区 | 約132.2万円 | 59件 |
| 垂水区 | 約125.6万円 | 86件 |
| 兵庫区 | 約116.7万円 | 33件 |
| 西区 | 約107.9万円 | 59件 |
| 北区 | 約102.3万円 | 92件 |
| 長田区 | 約71.4万円 | 34件 |
中古戸建ての坪単価は「取引総額 ÷ 建物の延床坪数」です。土地の坪単価とは分母が違うので、そのまま引き算はできません。また、この集計は築年が1982年以降(新耐震基準の目安)の物件に限っています。旧耐震のまま残っている築45年以上の実家は、この数字には含まれていません。
土地だけなら7.0倍あった差が、建物が付くと2.5倍(東灘区175.8万円 ÷ 長田区71.4万円)まで縮まります。土地が安い区ほど、価格に占める建物の比重が相対的に大きくなるということです。
裏返すと、土地が安い区にある実家ほど、建物の状態が売値を左右しやすいことになります。
判断が分かれるのはここ:解体費の「重さ」が区で違う
木造30坪の解体費用は、おおむね100〜150万円が目安です(内訳は実家の解体費用の記事にまとめています)。この150万円を、土地50坪ぶんの価格と並べてみます。
| 区 | 土地50坪の目安 | 解体150万円が占める割合 |
|---|---|---|
| 中央区 | 約7,521万円 | 約2% |
| 灘区 | 約6,942万円 | 約2% |
| 東灘区 | 約6,529万円 | 約2% |
| 兵庫区 | 約3,636万円 | 約4% |
| 須磨区 | 約2,149万円 | 約7% |
| 垂水区 | 約2,149万円 | 約7% |
| 西区 | 約1,653万円 | 約9% |
| 長田区 | 約1,339万円 | 約11% |
| 北区 | 約1,074万円 | 約14% |
中央区・灘区・東灘区であれば、解体費は土地価格の2%程度です。更地にして買い手の幅を広げる効果のほうが上回りやすい水準といえます。
一方、北区・長田区・西区では、解体費が土地価格の1割前後を占めます。ここで「更地にすれば売れるはず」と考えて先に解体してしまうと、費用を回収できないまま売り出すことになりかねません。
この層で必要なのは、順番を逆にすることです。解体してから売値を考えるのではなく、解体後にいくらで売れる見込みなのかを先に確かめてから、解体するかどうかを決める。同じ150万円でも、土地価格の2%と14%では意味が違います。
解体費用を複数社で比較する
解体費用は付帯工事の扱いで大きく変わります。複数社に同じ条件で見積もりを出してもらうと、本体工事と付帯工事の内訳を比べられます。
※ 上記リンクは広告(アフィリエイト)を含みます。
土地が安い区ほど、「とりあえず持ち続ける」が効きにくい
坪単価が低い区では、もう一つ効いてくる要素があります。維持コストの相対的な重さです。
北区の土地50坪=約1,074万円という水準は、固定資産税・草木の管理・遠方からの往復費用が数年積み上がると、無視できない割合で目減りしていく規模です。加えて、放置が続いて「管理不全空家」に指定されると、住宅用地の特例が外れて固定資産税が上がる可能性があります(詳しくは実家を空き家のまま放置するとどうなるか)。
坪100万円超の3区であれば、判断を先送りしても資産価値そのものが大きく崩れることは考えにくい。しかし坪35万円以下の3区では、先送りのコストが資産額に対して大きく効きます。「急いで売れ」という話ではなく、判断を先送りできる期間が区によって違うという話です。
売ると決めたら、価格ではなく手取りで比べる
売却価格がそのまま手元に残るわけではありません。仲介手数料、譲渡所得税、測量や解体の費用を引いた「手取り」で見ないと、区をまたいだ比較はできません。
art-pi.comでは売却手取りシミュレーターを公開しています。売却価格と取得費を入れると、税金・手数料を引いた手取り額の概算が出ます。相続した実家の場合は、相続空き家の3,000万円特別控除が使えるかどうかで手取りが大きく変わるので、あわせて確認してください。
相続税がかかりそうか、税理士に相談する
基礎控除を超えそうかどうかの判断に迷う場合は、相続に強い税理士を無料で紹介してもらえます。相続税の申告期限は10か月と短いため、迷った段階で一度確認しておくと安心です。
※ 上記リンクは広告(アフィリエイト)を含みます。
まとめ
- 神戸市の土地の坪単価は、中央区(約150.4万円)と北区(約21.5万円)で約7.0倍の差がある
- 建物が付いた中古戸建てでは、差は2.5倍まで縮まる。土地が安い区ほど建物の状態が売値を左右する
- 解体費150万円の重さは、中央区で土地価格の約2%、北区では約14%。更地にしてから売るという定石は、坪35万円以下の区ではそのまま当てはまらない
- 坪単価が低い区ほど、維持コストと解体費が資産額を削る速度が速い。判断を先送りできる期間が短い
「神戸市の相場」ではなく、「その区の相場」で考える。実家がどの層にあるかを先に確かめることが、売り方を決める最初の一歩になります。
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」不動産取引価格情報。取引期間は2024年第4四半期〜2025年第4四半期、集計対象は神戸市9区の宅地(土地)496件および中古戸建て521件です。中古戸建ては築年1982年以降(新耐震基準の目安)に限定し、坪単価は取引総額を建物の延床坪数で割った値としています。いずれも中央値であり、同じ区内でも接道・地形・用途地域によって実際の価格は大きく上下します。個別の物件価格を示すものではありません。
※ 本記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。紹介している商品・サービスは、記事の内容に関連するものを編集方針にもとづいて選んでいます。


コメント