「遠方の山林や売れない土地を相続した」「固定資産税や草刈りだけが続く土地を国に返せる?」と悩んでいませんか。
相続土地国庫帰属制度では、相続や相続人への遺贈で取得した土地を、一定の要件を満たす場合に国へ引き渡せます。ただし、建物がある土地、境界争いがある土地、担保権がある土地などは対象外です。申請手数料に加え、承認後は10年分の標準的な管理費用を考慮した負担金を納めます。
先に結論
- 対象は、相続または相続人への遺贈で土地を取得した人が基本です。
- 制度開始前に相続した土地も申請できます。
- 共有地は共有者全員で共同申請します。
- 審査手数料は土地一筆につき14,000円で、却下・不承認・取下げでも返還されません。
- 承認後、期限内に負担金を納めた時点で国へ所有権が移ります。
制度内容・費用は2026年7月26日時点の法務省情報で確認しています。申請前に最新の手引きと所管法務局へ確認してください。

相続土地国庫帰属制度とは
相続土地国庫帰属制度は、相続したものの利用予定がなく、管理負担が大きい土地について、要件審査と負担金納付を経て国庫へ帰属させる制度です。2023年4月27日に始まり、それ以前に相続した土地も対象になります。
「国へ寄附を申し込めば必ず引き取ってもらえる」制度ではありません。将来の管理に過分な費用・労力がかかる土地を国へ転嫁しないため、却下事由と不承認事由が定められています。
| 項目 | 制度の基本 |
|---|---|
| 申請できる人 | 相続または相続人への遺贈で土地を取得した人など |
| 共有地 | 共有者全員で共同申請 |
| 申請先 | 土地を管轄する法務局・地方法務局の本局 |
| 審査手数料 | 一筆14,000円、原則返還なし |
| 承認後 | 通知の翌日から30日以内に負担金を納付 |
| 所有権移転 | 負担金を納付した時点で国庫帰属 |
申請できる人
基本的な申請者は、相続または相続人に対する遺贈によって土地の所有権・共有持分を取得した人です。売買で自ら取得した人や法人は、原則として利用できません。
共有の場合は、共有者全員の共同申請が必要です。共有者の一人が相続で持分を取得していれば、ほかの共有者が売買などで持分を得た場合でも、全員で共同申請できる場合があります。
国が引き取れない土地
申請段階で却下される主な土地
- 建物がある土地
- 抵当権などの担保権、地上権・賃借権など使用収益権がある土地
- 通路・墓地・境内地など、他人による利用が予定されている土地
- 法令上の基準を超える土壌汚染がある土地
- 境界が明らかでない、または所有権の範囲に争いがある土地
審査で不承認になる主な土地
- 一定の崖があり、管理に過分な費用・労力がかかる土地
- 管理・処分を妨げる樹木、工作物、車両などが地上にある土地
- 除去が必要な地下埋設物がある土地
- 隣地所有者等との争訟がなければ管理・処分できない土地
- 災害危険、森林整備、金銭債務などにより通常の管理・処分に過分な費用・労力がかかる土地
単に「草が生えている」「山林である」だけで直ちに対象外になるとは限りませんが、樹木、崖、接道、境界、放置物、管理状況を具体的に審査されます。申請前相談で写真・公図・登記事項証明書を示し、問題点を洗い出すのが現実的です。
費用はいくらかかる?
申請時:審査手数料
審査手数料は土地一筆につき14,000円です。申請書に収入印紙を貼って納付し、取下げ、却下、不承認になっても返還されません。複数筆を申請する場合は筆数分が必要です。
承認後:負担金
承認された土地について、国が管理する10年分の標準的な費用を考慮した負担金を一度納付します。宅地、田畑、森林などの種目、面積、区域によって算定方法が異なります。
隣接する2筆以上が同じ種目である場合は、申出により一つの土地とみなして負担金を算定できる特例があります。申出の時期と条件があるため、申請時に法務局へ確認してください。
申請までの手順
1. 売却・寄附・国庫帰属を比較する
まず隣地所有者、自治体、農業委員会、森林組合、不動産会社へ活用・売却・寄附の可能性を確認します。国庫帰属は審査手数料、整備費、負担金がかかるため、ほかの手放し方より有利とは限りません。
2. 登記と現況をそろえる
相続登記を行い、登記事項証明書、公図、地積測量図、固定資産税資料を確認します。現地では境界標、建物、残置物、樹木、崖、接道、占有者を写真に残します。

3. 法務局へ事前相談する

土地を管轄する法務局・地方法務局の本局へ相談します。法務省は相談票とチェックシートを案内しています。資料が少ないまま「引き取れますか」と聞くより、登記、公図、写真、利用状況、境界の説明をそろえると確認しやすくなります。
4. 申請・書面審査・実地調査
申請書、土地の位置・範囲を示す図面、現況写真、名義・相続を示す書類などを提出します。必要に応じて法務局が実地調査を行い、自治体等へ情報提供を求めることがあります。
5. 承認後に負担金を納付する
承認されると負担金の通知と納入告知書が届きます。通知到達日の翌日から30日以内に納付しないと承認は失効します。負担金を納めた時点で所有権が国へ移ります。
申請前チェックリスト
- 自分が相続・遺贈で取得したことを確認した
- 共有者全員の意向を確認した
- 相続登記と土地の筆数を確認した
- 建物・倉庫・墓・道路利用などがないか確認した
- 抵当権・賃借権・農地利用など権利関係を確認した
- 境界標と隣地所有者の認識を確認した
- 崖、樹木、残置物、地下埋設物、土壌汚染の可能性を確認した
- 売却、隣地への譲渡、自治体への寄附とも費用比較した
- 審査手数料・整備費・負担金の予算を確認した
よくある質問
建物付きの実家も国に引き取ってもらえますか?
建物がある土地は申請段階の却下事由です。更地にすれば必ず承認されるわけではなく、境界、権利、崖、埋設物などほかの要件も審査されます。解体前に相談してください。
制度開始前に相続した土地も対象ですか?
対象です。数十年前の相続でも申請できますが、相続登記、共有者、境界、現況を整理する必要があります。
山林や農地も申請できますか?
土地の種目だけで一律に対象外とはされていません。ただし、森林の整備状況、農地の利用、崖、接道、境界、管理負担などを個別に審査されます。
相続放棄との違いは?
相続放棄は相続の権利・義務全体を受け継がない家庭裁判所の手続です。国庫帰属制度は、いったん相続した特定の土地について要件審査と負担金を経て国へ移す制度です。
まとめ
相続土地国庫帰属制度は、相続した不要な土地を国へ引き渡せる制度ですが、無条件・無料ではありません。建物、担保権、他人の利用、土壌汚染、境界争いなどがある土地は申請できず、過分な管理負担が見込まれる土地も承認されません。
売却・寄附と比較し、相続登記、境界、現況、費用を整理したうえで、審査手数料を納める前に所管法務局へ相談しましょう。実家を含む選択肢全体は住まない実家を相続したときの選択肢でも確認できます。
参考資料
- 相続土地国庫帰属制度について(法務省)(確認日:2026年7月26日)
- 相続土地国庫帰属制度の概要(法務省)(確認日:2026年7月26日)
- 引き取ることができない土地の要件(法務省)(確認日:2026年7月26日)
- 相続土地国庫帰属制度の負担金(法務省)(確認日:2026年7月26日)
- 相続土地国庫帰属制度に関するQ&A(法務省)(確認日:2026年7月26日)
本記事は一般的な情報提供を目的としています。対象土地の承認可否、必要な整備、負担金は個別事情で異なります。最新の申請手引きと所管法務局の案内をご確認ください。


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