「あの作業、私しかできないんですよね」という仕事が1つでもあると、休んだ日に電話がかかってきます。とはいえ手順書を作ろうとして白紙のWordを開くと、どこから書けばいいか分からないまま閉じてしまいがちです。ChatGPTを使えば、自分の作業を思い出した順に、しゃべるように書き出すだけで番号つきの手順書に整えてもらえます。この記事では、引き継ぎ資料になる業務マニュアルの作り方と、毎回同じ依頼を投げている作業を「定型プロンプト」として残す方法を解説します。
先に結論
- 手順書は整えてから書かない。思い出した順に口頭調で書き出し、整えるのはChatGPTに任せる
- 書かせる前に「足りない情報を質問して」と頼む。自分が無意識にやっている工程がここで出てくる
- 毎回同じ依頼をしている作業は、その依頼文自体を「定型プロンプト」として1本の文章に残す
この機能でできること
業務マニュアル作りでのChatGPTの使い方は、大きく2つに分かれます。
1つめは、自分の作業をしゃべるように書き出した文章を、番号つきの手順書に整えてもらう使い方です。「まずシステムを開いて、あ、その前に共有フォルダから今月のファイルを出しておいて」のような話し言葉のままで構いません。順番の並べ替えと番号ふりはChatGPT側の仕事です。
2つめは、自分が毎回ChatGPTに投げている依頼文を、そのまま「定型プロンプト」として残す使い方です。AIに頼む作業のマニュアル、と考えると分かりやすいです。同じ依頼を毎回ゼロから打ち直す手間がなくなり、頼む人が変わっても同じ形の下書きが出てきます。
そしてこの記事でいちばん効くのが、書かせる前に質問させることです。いきなり手順書を書かせず、「この手順書を作るために足りない情報を質問してください」と先に頼みます。すると、自分にとって当たり前すぎて説明し忘れていた工程が、質問という形で出てきます。
こんな仕事に便利
- 事務・総務:月次の支払処理や備品発注など、担当が自分1人しかいない作業の引き継ぎ資料を作る
- 不動産:物件情報をポータルサイトに入稿する手順を、入力する項目名と迷いやすい選択肢の決め方まで残す
- 在宅ワーク・フリーランス:取引先ごとに違う納品ルール(ファイル名の付け方、送付先、締め日)を1枚にまとめる
- ネットショップ:商品登録の手順書を作る。写真のサイズ、説明文の書き方、公開前の確認項目まで
- 店舗・サロン:新人向けの開店準備と閉店作業を、順番と所要時間つきで書き出す
- チームでのAI利用:よく使う依頼文を定型プロンプト集にして共有し、誰が頼んでも同じ形の下書きが出るようにする
実際にやってみる
ここからは手順の順番どおりに進めます。なお、画面のデザインやボタンの名前は更新されることがあります。
STEP1 思い出した順に、しゃべるように書き出す
最初にやるのは、きれいな文章を書くことではありません。ChatGPTの入力欄に、その作業を口で説明するつもりで打ち込みます。
順番がばらばらでも、途中で「あ、その前に」と戻っても構いません。10分ぶん思い出せたら次に進みます。
STEP2 書かせる前に、足りない情報を質問してもらう
書き出したメモの最後に「この手順書を作るために足りない情報を質問してください」と付けて送ります。
返ってくるのは手順書ではなく質問リストです。「そのシステムには誰のアカウントでログインしますか」「金額が合わなかったときは誰に確認しますか」「この作業の締め切りは毎月何日ですか」といった内容が並びます。
これらは、自分にとって当たり前すぎて書き落としていた前提です。引き継ぎ資料が使えないものになる原因のほとんどは、この「言わなくても分かるだろう」の部分にあります。
質問に答えていくだけで、書き出しの分量は倍近くになります。答えられない質問が出てきたら、それが引き継ぎで最初に事故になる箇所です。
STEP3 決まった型で手順書に整えてもらう
質問に答えたら、型を指定して手順書にしてもらいます。使う型は次の5項目です。
| 項目 | 書く中身 |
|---|---|
| 目的 | この作業を何のためにやるのか。1〜2行 |
| 使う道具・画面 | システム名、ログイン先、必要なファイル、必要な権限 |
| 手順 | 番号つき。1手順1動作。押す場所と入力する値まで書く |
| 間違えやすい箇所 | 自分が実際にミスしたこと、前任者に指摘されたこと |
| 困ったときの連絡先 | 誰に聞けばよいか。部署・担当・連絡手段 |
このとき必ず入れる指示が「私が説明していない工程は書かないでください」です。これを入れないと、ChatGPTは他社でよくある流れを推測して、自分の職場には存在しない工程を足してきます。足された工程は、読んだ新人がその場で止まる原因になります。
判断できない箇所は「【要確認】」と書いてもらう指示も一緒に入れておくと、埋まっていない場所が一目で分かります。
STEP4 自分で1回なぞってから配る
出てきた手順書を画面に出したまま、実際にその作業を最初から1回やります。手が止まったところが、抜けている工程です。
止まった箇所はそのままChatGPTに伝えて直してもらいます。「手順4のあと、承認ボタンを押す前に上長へチャットで一報を入れていました。ここを追加してください」のように、止まった場所と実際にやっていることを一緒に伝えると、番号を振り直した状態で返ってきます。
なぞらずに配ると、読む側は書いた人が省いた1行で止まり、結局その人に聞きに来ます。
STEP5 毎回の依頼を定型プロンプトとして残す
ここからは2つめの使い方です。ChatGPTに毎回同じような依頼をしている作業があれば、その依頼文自体を1本の文章として保存します。
定型プロンプトに入れるのは、役割(誰として答えるか)・渡す材料・出力の形式・やってはいけないこと、の4つです。毎回打ち直すのをやめると、頼むまでの時間が数十秒に縮みます。
保存先はテキストファイルでも社内の共有ドキュメントでも構いません。ChatGPTの中に置いておきたい場合は、プロジェクト機能の指示欄に貼っておくと、そのプロジェクトの中では毎回貼り直さなくても効きます。設定方法はChatGPTのプロジェクト機能とは?仕事で使う方法で解説しています。
コピペで使えるプロンプト
4つ紹介します。【 】の部分は自分の仕事に合わせて書き換えてください。
1つめは、書き出したメモを手順書に整えるプロンプトです。
コピーして使えるプロンプト(作業説明を手順書にする)
以下は、私が【作業名】をやるときの流れを思い出した順にしゃべるように書いたものです。
これを次の5項目の業務マニュアルに整えてください。
1. 目的 2. 使う道具・画面 3. 手順(番号つき・1手順1動作) 4. 間違えやすい箇所 5. 困ったときの連絡先
条件:
・私が説明していない工程は書かないでください
・私の説明から判断できない箇所は【要確認】と書いてください
・専門用語には短い説明を付けてください
【ここに書き出したメモを貼る】
2つめは、書かせる前に質問させるプロンプトです。手順書を作るときは、これを先に使います。
コピーして使えるプロンプト(足りない情報を質問させる)
以下は【作業名】について私が説明したメモです。
まだ手順書は書かないでください。
この作業をやったことがない人が、このメモだけで最後までできるかを考え、足りない情報を質問の形で挙げてください。
・質問は10個以内、番号つきで
・私が言葉にしていない前提(使う権限、承認をもらう相手、判断の基準、締め切り)を優先してください
【ここにメモを貼る】
3つめは、あちこちに散らばっている手順メモを1本にまとめるプロンプトです。
コピーして使えるプロンプト(バラバラの手順メモを1本に統合する)
以下は【作業名】について、別々の時期に書かれた手順メモです。
これを1本のマニュアルに統合してください。
・内容が食い違っている箇所は統合せず、「食い違い」として一覧に出してください
・どのメモにも書かれていない工程を補わないでください
・重複している説明は1つにまとめてください
【メモ1】
【メモ2】
【メモ3】
4つめは、繰り返している依頼を定型プロンプトに変えるものです。
コピーして使えるプロンプト(定型プロンプトを作らせる)
私は【作業内容】を、毎回ChatGPTに頼んでいます。
次回から貼り付けるだけで同じ形の結果が出る「定型プロンプト」を作ってください。
・役割、渡す材料、出力の形式、やってはいけないこと、の4つを含める
・毎回変わる部分は【 】の空欄にする
・全体で15行以内におさめる
参考に、これまで私が書いていた依頼文と、気に入った回答を貼ります。
【依頼文】
【気に入った回答】
実際の仕事での使用例
産休に入る前に引き継ぎ資料を求められた、経理事務のAさんの例です。
対象は月次の支払処理でした。Aさんは手順を思い出しながらWordに箇条書きで書き始めましたが、3行目で手が止まりました。毎月やっている動作を、順番どおりに言葉にできなかったためです。
書き方を変え、ChatGPTの入力欄に「まず前月のファイルを開いて、金額を突き合わせて、あ、その前に承認をもらう分だけ先に出しておいて」と、話すとおりに打ち込みました。そのうえで足りない情報を質問してもらったところ、9個の質問が返ってきました。そのうち「承認をもらう金額の基準はいくらからですか」という質問に、Aさんは答えられませんでした。基準は前任者から口頭で聞いたまま、どこにも書かれていなかったのです。
Aさんはここで上長に確認を取り、金額の基準を手順書に書き足しました。引き継ぎで最初に事故になるのは、こうした「誰も文書にしていない判断基準」です。
もう1つは、ネットショップで商品登録をしているBさんの例です。
Bさんは新商品が入るたびに、ChatGPTへ商品説明文の作成を頼んでいました。ただ、頼むたびに「文字数は250字くらいで、素材と使い方を入れて、誇張表現は避けて」と打ち直していて、回によって出てくる文章の調子が違っていました。
そこで、これまでの依頼文と気に入った回答を渡して定型プロンプトを作らせ、テキストファイルに保存しました。今は商品名と仕様を【 】に入れて貼るだけです。手が回らない日にパートの方へそのファイルを渡したところ、同じ形の下書きが上がってきました。文章の書き方ではなく、貼るファイルの場所だけを伝えれば済んだためです。
よくある失敗
- 自分が無意識にやっている工程が抜ける — 毎日やっている人ほど、手順として意識していない動作があります。書き終えたらChatGPTに「足りない情報を質問してください」と頼み、質問に答える形で埋めます
- ChatGPTが一般論の工程を足す — 説明していない工程まで「普通はこうする」と書かれることがあります。依頼文に「私が説明していない工程は書かないでください」と入れ、出てきた手順書は自分の作業と1行ずつ照らします
- 作った手順書を試さずに配る — 読む側は、書いた人が省いた1行で止まります。配る前に手順書を見ながら自分で1回なぞり、手が止まった箇所を直します
- 画面が変わったのに更新しない — システムの画面や項目名は変わります。更新日と作った人の名前を手順書の先頭に入れておくと、読む側が「いつの情報か」を判断できます
- 1つの手順書に複数の作業を詰め込む — 作業ごとにファイルを分けます。分かれていれば、変わった作業のぶんだけ直せます
注意点
- 手順書には取引先名・口座番号・個人名が入りがちです。ChatGPTに渡す前に、その情報を入れてよいか勤務先のルールを確認してください。名前を【取引先A】のように置き換えても手順書は作れます
- ChatGPTの回答は間違うことがあります。金額の基準・日付・システム名・項目名は、出てきた文章をそのまま信じず、元の資料や実際の画面と突き合わせてください
- 会社の資料を渡す場合は、事前にデータの学習利用の設定(設定→データコントロール)を確認してください
まとめ
業務マニュアル作りでChatGPTに任せるのは「整えること」で、中身を出すのは自分です。
思い出した順に口頭調で書き出す、足りない情報を質問してもらう、型を指定して整えてもらう、自分で1回なぞる。この4つの順番を守るだけで、引き継ぎ資料は「読んだ人が最後までたどり着けるもの」になります。
毎回同じ依頼をしている作業があれば、その依頼文も1本のマニュアルです。今日使う分だけでいいので、1つ文章にして保存してみてください。
打ち合わせの場で決まった手順を資料にする場合は、話した内容から先に起こすほうが早いことがあります。やり方はChatGPTで議事録を作る方法で解説しています。
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