新商品の名前を考える、チラシのキャッチコピーを決める、企画会議までに案を10個そろえる。この手の仕事は、机の前で唸っている時間ばかりが過ぎて、結局いつもの発想に落ち着きがちです。ChatGPTはこの場面で強いのですが、頼み方を間違えると、どこかで見たような案が数個返ってくるだけで終わります。この記事では、案を大量に出させて自分で選ぶという使い方と、そのための指示の型を説明します。
先に結論
- 「いい名前を考えて」と1個だけ頼むと、当たり障りのない案しか返らない
- 個数(20個)・方向性(かたい/やわらかい)・前提条件(誰向け・どこで使う・避けたい言葉)を渡すと案がばらける
- 選ぶのは人間の仕事。出た案から3つ選んで派生を作らせると、使える案に近づく
この機能でできること
アイデア出しは、ChatGPTのほかの使い方と考え方が違います。要約やメール作成はAIに答えを出してもらう作業ですが、アイデア出しはAIに正解を1つ出させるのではなく、たたき台を大量に出させて人間が選ぶ作業です。
試しに「新しいハーブティーの商品名を考えてください」とだけ送ってみると、返ってくるのは「ハーブの恵み」「やすらぎブレンド」のような、どこかで見たような案が数個です。条件が何も書かれていない質問に対して、AIは最大公約数の答えを返します。1個だけ頼むと平凡な案しか出てこないのは、AIの性能ではなく頼み方の結果です。
この状態から抜けるための技が、次の4つです。
| 技 | 言い方の例 | 何が変わるか |
|---|---|---|
| 個数を指定する | 「20個出してください」「30個お願いします」 | 無難な案を出し切ったあとに、変わった案が出てくる |
| 方向性を分けて出させる | 「かたい系10個、やわらかい系10個」「ひらがな中心と漢字中心で半分ずつ」 | 似た案の羅列にならず、比べる軸ができる |
| 前提条件を渡す | 「40代の働く女性向け」「店頭のPOPで使う」「癒しという言葉は避けて」 | 一般論ではなく、自分の商売に合った案になる |
| 選んで派生を作らせる | 「3番と7番と15番が近いので、この方向で10個」 | 当たりの方向だけを深掘りできる |
4つは順番に重ねて使います。前提条件を渡してから20個出させ、その中から自分で3つ選び、選んだ案から派生を作らせる。この二段構えが、アイデア出しの基本の流れです。
対象は商品名やキャッチコピーだけではありません。ブログの記事タイトル案、SNS投稿の書き出し、社内イベントの名前、企画の切り口、アンケートの設問案。候補を並べてから選びたいものなら、全部この方法が使えます。
こんな仕事に便利
- 小売・EC:新商品の名前を20個出し、社内で投票して1つに絞る。ネットショップの商品ページ用と店頭POP用で別々に案を出す
- ブログ・SNS運用:記事タイトル案を検索する人の言葉で20個出し、その中から本文の内容に合うものを選ぶ
- 不動産・営業:物件広告や販売図面の見出しコピーを、かたい方向とやわらかい方向で出し分ける
- 事務・総務:社内イベントや社内報の企画名、社員アンケートの設問案を一気に並べる
- 在宅ワーカー・フリーランス:提案書に入れる企画の切り口を10通り出し、依頼主の業種に近いものを残す
どれも「ゼロから絞り出す」から「並んだ候補を見比べて選ぶ」への置き換えです。頭を使う場所が、思いつくことから選ぶことに移ります。
実際にやってみる
ここからは、新商品の入浴剤の名前を決める場面で手順を追います。※画面は更新されることがあります。
STEP1 まず条件なしで頼んで、返ってくる案を見る
最初にわざと「入浴剤の商品名を考えてください」とだけ送ってみます。返ってくるのは3個から5個くらいの、無難な案です。ここで条件のない質問には、当たり障りのない案しか返ってこないことを自分の目で確かめておくと、このあとの手間をかける理由が腑に落ちます。この失敗を先に見ておくのが、遠回りに見えて近道です。
STEP2 前提条件を先に書き出す
ChatGPTに送る前に、自分の手元で条件を並べます。誰向けか、どこで使うか、商品の特徴は何か、避けたい言葉は何か。この4つを箇条書きにするだけで、返ってくる案の質が変わります。避けたい言葉を書くのが効きます。「癒し」「こだわり」「贅沢」のように使い古された言葉を先に禁止しておくと、AIはそれ以外の語を探しにいきます。
毎回この条件を書くのが面倒になったら、ChatGPTのプロジェクト機能の使い方にまとめておくと、自社のトーンや避けたい言葉を毎回説明せずに済みます。
STEP3 個数と方向性を指定して出させる
条件のあとに「20個出してください」と個数を書き、さらに「かたい方向10個、やわらかい方向10個」のように方向性を分けます。個数を指定すると、AIは最初の数個で無難な案を使い切り、そのあと発想を広げにいきます。20個目のあたりに、自分では思いつかない語が混じることがあります。方向性を分けると、案が一方向に固まらず、比べる軸ができます。
STEP4 出てきた案から自分で3つ選ぶ
ここが人間の担当です。20個をざっと読み、「これは使えそう」と感じたものに3つだけ印をつけます。選ぶときは、自分の中で基準を1つ決めておきます。読みやすさで選ぶのか、覚えやすさで選ぶのか、検索されたときに他社と混ざらないかで選ぶのか。基準を決めずに眺めると、20個を前にして決められなくなります。
STEP5 選んだ3つから派生を作らせる
同じチャットで「3番と7番と15番が方向として近いです。この3つに共通する要素を説明したうえで、同じ方向で10個出してください」と続けます。共通点を言語化させてから派生を頼むのがコツです。AIが「短く・ひらがな中心・場面が浮かぶ」のように方向を言葉にすると、そのあとに出てくる10個の精度が上がります。ここで出た案の中から最終案を決めます。
コピペで使えるプロンプト
どれも【 】の中を自分の状況に書き換えて、そのまま貼り付けて使えます。
商品名の候補を20個出す
コピーして使えるプロンプト
【入浴剤】の新商品の名前を20個考えてください。
商品の特徴:【国産のよもぎを使用/お湯が白く濁る など】
買う人:【30代から40代の働く女性 など】
使う場所:【ネットショップの商品ページ/店頭のPOP】
避けたい言葉:【癒し、こだわり、贅沢】
20個は似た方向に寄せず、ばらけさせてください。
各案に、その名前にした理由を1行で添えてください。
キャッチコピーを方向性別に出す
コピーして使えるプロンプト
【商品・サービス名】のキャッチコピーを、次の3つの方向で各10本ずつ、合計30本出してください。
1.かたい方向(実績や品質を伝える)
2.やわらかい方向(使っている場面が浮かぶ)
3.短い方向(15字以内で言い切る)
読む人:【 】
使う場所:【チラシの一番上/Webサイトの見出し】
日本一、絶対、最高といった言い切りの表現は使わないでください。
記事タイトル案を検索する人の言葉で出す
コピーして使えるプロンプト
【記事のテーマ】についてのブログ記事のタイトル案を20個出してください。
この記事を読む人:【 】
その人が検索するときに実際に打ち込みそうな言葉を使ってください。業界用語や社内でしか通じない言い方は使わないでください。
10個は疑問の形、10個は言い切りの形にしてください。
各案は32字以内にしてください。
選んだ案から派生を10個作る
コピーして使えるプロンプト
さきほど出してもらった案のうち、【3番・7番・15番】の3つが方向として近いです。
この3つに共通している要素を最初に1行で説明してください。
そのうえで、同じ方向の新しい案を10個出してください。
元の3つの言い換えではなく、別の言葉で同じ雰囲気を出す案にしてください。
実際の仕事での使用例
雑貨のネットショップを1人で運営しているAさんは、新商品を出すたびに名前で3日ほど止まっていました。商品の素材と買う人と避けたい言葉を書いてから20個出させ、その中から響きの短い3つを選んで派生を10個。合計30案から最終案を決めるまで、40分で終わるようになりました。決める前に商標の登録状況と同名のショップがないかを自分で検索し、重なっていた1案は外しています。
地域の工務店で広報を担当しているBさんは、秋の見学会のイベント名と告知投稿の書き出しを頼まれました。かたい方向とやわらかい方向で各10本ずつ出させ、社内で見せたところ、やわらかい方向の案に反応が集まりました。以前は自分の案を1つ持っていって「これでいいんじゃない」と流れていた会議が、20本の一覧を配ることで選ぶ会議に変わったといいます。
よくある失敗
条件を渡さずに頼んで、一般的な案しか出ない
「キャッチコピーを考えて」だけで送ると、どの会社でも使えそうな案が返ってきます。返ってきた案が平凡だったときは、AIの能力を疑う前に、自分が渡した条件の少なさを疑います。誰向けか、どこで使うか、避けたい言葉は何か。この3行を足すだけで返ってくる中身が変わります。
出た案をそのまま採用して、他社と似てしまう
AIが出す案は、世の中にある表現をもとにした組み合わせです。既存の商品名やサービス名と、そっくりの案が混じることがあります。商品名やサービス名として使うなら、商標や既存サービスとの重複を自分で調べてから決めます。この確認をAIに頼んではいけません。
1回のやり取りで決めようとする
20個出させて、その中から選んで終わりにすると、いちばん惜しい案を捨てることになります。惜しい案は、方向は合っていて言葉だけが弱い場合がほとんどです。選んだ案から派生を作らせる二段構えにすると、その言葉だけを差し替えた案が手に入ります。
案を選ぶ基準を自分で決めていない
20個が並んだ画面を前に、何となく良さそうなものを選ぼうとすると手が止まります。読みやすさ、覚えやすさ、検索したときに他社と混ざらないか。基準を1つ決めてから一覧を見ると、選ぶ時間が数分で済みます。基準はAIに決めてもらうものではありません。
注意点
- 個人情報や社外秘の情報を入れない。未発表の商品情報を貼る前に、勤務先のルールを確認する
- AIの回答は間違うことがある。案に含まれる数字・固有名詞・言葉の意味は自分で確かめる
- 会社の資料を入れる前に、データの学習利用設定(設定→データコントロール)を確認する
- 商品名・サービス名として使う前に、商標や既存サービスとの重複を自分で調べる
商標の確認は特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で検索できます。あわせて、その名前で検索して同名のショップや商品が出てこないかも見ておきます。AIは商標の登録状況を確認できないので、ここは人間の手作業です。
まとめ
アイデア出しでChatGPTに求めるのは、正解ではなく候補の数です。前提条件を渡して20個出させ、自分で3つ選び、選んだ案から派生を作らせる。この流れなら、名前もコピーも記事タイトルも同じやり方で回せます。
AIが案を並べ、人間が基準を決めて選ぶ。この分担にすると、悩む時間が選ぶ時間に変わります。決めたあとの商標や同名サービスの確認だけは、必ず自分の目で行ってください。
選んだ案をもとに商品ページや告知文を書いたあと、誤字や言い回しを整えるにはChatGPTで文章チェックする方法が次の一歩になります。
ほかのChatGPT仕事効率化を見る


コメント