ChatGPTに「この表を整えて」と頼むと、指示どおりに整った表が返ってきます。困るのは、その表の一部が別の値に置き換わっていても、画面には何も出ないことです。
エラーが出ないので、その場では気づけません。気づくのは、取引先に渡したあとで取り込みが弾かれたときか、誰も気づかないまま使われ続けたときのどちらかです。この記事は、実際に壊れた形3つと、渡す前に5分で終わる4つの検算を書きます。
先に結論
- 整形そのものは成功します。壊れるのは「一括で変えた例外」と「数字に見える文字列」の2か所だけです
- 「全角を半角に統一して」が危ない。手元の宅建業者63,662件のうち6件は社名に全角カンマが入っていて、半角にした瞬間その行だけ列が1つ増えます
- 13桁のコードは数値として読まれると上の桁だけ残して丸められます。今年8月の案件では37行すべてがこの形で壊れていました
- 住所は全角で書かれていることがあります(63,662件すべて全角、半角は0件)。半角で突き合わせると当たるのは0件です
- 検算は4つ。行数・列数・桁数・突合ヒット数を、変換の前と後で数えて突き合わせるだけです
AIの出力をそのまま業務に流す話はAIが作った不動産会社リスト、その会社は本当にありますか?にも書きました。あちらは無いものを作られる話で、この記事はあるものを壊される話です。
「AIが間違えた」のではなく、頼んだとおりに全部変えている
「AIは賢いから、社名の中の記号くらいは残してくれる」と思っている人がいますが、そうとは限りません。一括変換の指示は、例外を選り分けないからです。
「全角を半角に統一して」と書けば、住所の数字も、電話番号のハイフンも、社名の中の記号も、同じ規則で変わります。人間なら「ここは社名だから触らない」と判断しますが、その判断は指示に書いていないかぎり行われません。AIが賢いか賢くないかの話ではなく、こちらが例外を書かなかった、という話です。
そして相手はAIだけではありません。表計算ソフトにも同じ性質があります。Microsoftは[ファイル]→[オプション]→[データ]に自動データ変換のチェックボックスを4つ用意していて、文言はそれぞれ「先頭のゼロを削除して数値に変換する」「長い数値の最初の15桁を保持し、指数形式で表示」「文字”E”を囲む数字を指数形式の数値に変換」「連続文字と数字を日付に変換する」です。
オフにする設定が用意されているということは、既定ではこの4つが働いているということです。
つまり壊す側は2人います。指示どおりに全部変えるAIと、頼んでいないのに変える表計算ソフトです。以下、実際に壊れた形を3つ出します。
「全角を半角に統一して」が、6行だけ列をずらす

手元にある宅地建物取引業者のデータで数えました。兵庫・東京・大阪・愛知の4都府県で、事務所は63,662件。国土交通省が公開している名簿から取ったものです。
このうち、商号に全角カンマ「,」が入っている行が6件ありました。半角カンマが入っている行は0件です。そのままCSVとして読むかぎり、この6件も何も起きません。
ところが「全角を半角に統一して」と一度かけると、この6件の社名の中のカンマが半角になります。CSVで列を区切る記号と同じものです。その6行だけ、列が1つ増えます。
やっかいなのは崩れ方です。列がずれた行は、社名の後半が都道府県の列へ、都道府県が市区町村の列へと、1つずつ後ろへ送られます。空欄になるのは最後の列だけなので、表の形は保たれたままに見えます。6件を見つけたのも目視ではなく、変換の前と後で列数を数えたときでした。
6件÷63,662件は0.009%です。10,000行あたり1行に届きません。画面をスクロールして探すやり方では、まず見つかりません。
13桁のコードが、上の桁だけ残して丸められる
今年8月、こちらが受けた仕事でのことです。先方が用意してくださった商品リストのCSVを開き、13桁の商品コードが並ぶ列を1件ずつ照合したところ、37行すべてが上の桁だけを残した別の数字になっていました。エラーは1件も出ていません。
原因はAIではなく、CSVを表計算ソフトで開いて保存したことでした。長い数字の列は指数表記(4.91E+12のような形)で表示されることがあり、その状態でCSVとして保存すると、画面に出ていた桁数のまま書き出されます。13桁が「上のいくつかの桁+0の並び」になるのはこのためです。
商品コード、会員番号、口座番号、電話番号。桁が長くて、足し算も引き算もしない数字はすべてここに当たります。先頭が0の番号はもっと分かりやすく、0が消えて別の番号になります。
止め方は2つです。1つは、中身を見たいだけなら表計算ソフトで開かないこと。テキストエディタで開けば1文字も変わりません。もう1つは、さきほどの自動データ変換のチェックボックスを外してから開くことです。
半角で書いた住所が、1件も当たらない
同じ63,662件で、住所のうち丁目・番地を含む部分を数えました。全角数字を含む行が63,654件、半角数字を含む行は0件です(残る8件は数字を含まない住所でした)。
国が公開している名簿は、住所を全角で書いています。ここに半角で「1-1-1」と入れて突き合わせると、当たるのは0件です。データが無いのではなく、字が違うだけです。
AIに「このリストから三宮町1-1-1の会社を探して」と頼んで「該当なし」と返ってきたとき、疑う先はリストではなく、自分が打った半角の数字のほうです。
この食い違いは逆向きにも起きます。半角に揃えた自社の顧客名簿と、全角のままの名簿を突き合わせれば、一致率は異常に低く出ます。片方だけを揃えた状態がいちばん危ないので、揃えるなら両方を同じ規則で揃えます。
変換の前後で数える、4つの検算

やることは、変換の前と後で同じものを数えて突き合わせるだけです。慣れれば5分で終わります。
- 行数 — 前と後で1行も増減していないか。増えていたらセルの中の改行が行として割れています
- 列数 — 全行が同じ列数か。1行でも多い行があれば、そこに区切り文字が紛れ込んでいます
- 桁数 — コードの列が全部同じ桁数か。13桁のはずの列に12桁や11桁が混ざっていないか
- 突合ヒット数 — 変換後のデータで、元データの1件を検索して当たるか。0件なら全角と半角がずれています
AIに頼むときは、この4つを最初の指示に入れておくと結果が変わります。「変換の前と後で行数・列数・コードの桁数を数えて、一致しない行だけ一覧で出して」と書き添えるだけです。整形と検算を1回の指示にまとめる、と言い換えてもかまいません。
数字と記号の並びが日付に変わる形も同じやり方で見つかります。「1-2-3」が「2003/1/2」になっていれば、その列に「/」が現れます。変換後のファイルを「/」で検索して、日付ではない列に出てきたらそこが壊れています。
私は、この自動変換は既定でオフであるべき機能だと考えています。根拠は、Microsoft自身がオフにするためのチェックボックスを4つ並べて用意していることです。意図せず働いている現実がなければ、設定を4つに分けて置く必要はないはずです。
自分でやる線と、任せる線
ここまでの3つは、どれも1回きりの作業なら自分で片づけられます。列数と桁数を数えるだけだからです。線を引くとしたら、次のどちらかに当たったときだと考えています。
1つは、同じ整形を毎月くり返す場合です。手で検算する限り、検算を飛ばした月に事故が起きます。仕組みにして、桁数が合わない行だけ自動で吐き出させるほうが安く済みます。
もう1つは、渡した先で取り込みエラーが起きると相手の作業が止まる場合です。取引先のシステムに入れるファイル、税や在庫にかかわる数字は、目視ではなく機械の検算を通してから渡すほうが安全です。
外注の相場も見ておきます。2026年8月22日にココナラの検索ページで数えたところ、「CSV 整形」は954件・上位60件の最低価格の中央値5,500円、「データ 整形」は1,763件・中央値5,000円、「エクセル データ整理」は3,490件・中央値4,000円でした。1回の整形を頼むだけなら数千円の世界です。
こちらでも、ChatGPTで途中まで作って止まった処理を動く形にする仕事と、資料を1本の一覧表にまとめる仕事をココナラで受けています。前者は検算まで含めて仕組みにするもの、後者は資料を渡してもらって一覧表にするものです。
ChatGPTで止まった処理を動く形にする(3,000円〜) ▶
資料を1本の一覧表にまとめてもらう(3,500円)
どちらも見積り相談から。壊れているかどうかの確認だけでもかまいません。
ココナラの件数と価格は2026年8月22日に検索ページで数えた実測値です。出品は入れ替わるため、相場は時期によって変わります。
もう1本、ChatGPTに書かせたのに動かなかった処理の直し方はChatGPTに書かせたGASが動かない原因は5つにまとめています。
出典・集計条件
- 宅建業者データ:国土交通省が公開する宅地建物取引業者の名簿から取得した兵庫県・東京都・大阪府・愛知県の全事務所63,662件を、おかあさんのおうちが2026年8月22日に集計。商号の全角カンマ6件、住所欄の全角数字63,654件・半角数字0件はこの集計による
- Excelの自動データ変換:Microsoft「Excel のデータのインポートと分析のオプション」([ファイル]>[オプション]>[データ]。Excel for Microsoft 365 / 2024 / 2021)
- 外注相場:ココナラの検索結果(2026年8月22日時点。各キーワードの上位60件に表示された最低価格の中央値)
- 13桁コードの事例:2026年8月に当方が受託した案件で実際に観測したもの。依頼者・商品が特定できる情報は記載していません


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