結論からいうと、「台風のピークは8月」ではありません。気象庁の平年値で、日本に上陸した台風がいちばん多い月は9月です。
ただし8月が嘘だったわけでもありません。ピークが8月なのは台風が生まれる数で、9月に入れ替わるのは日本に来る数のほうです。夏と秋では、台風が通る道が違います。
この記事でわかること
- ✓ 上陸数の最多は9月の1.0個。年間3.0個のうち、9月と10月で1.3個がまだ残っている
- ✓ 水深60センチの冠水路は、セダンなら時速10キロでも走りきれない(JAFの実測)
- ✓ 地下は外開きの扉なら水深26センチで開かなくなる(国土交通省のガイドライン)
台風が生まれるピークは8月、上陸のピークは9月です
気象庁が出している台風の平年値(1991年〜2020年の30年平均)から、夏と秋の4か月を抜き出します。
| 月 | 発生数 | 接近数 | 上陸数 |
|---|---|---|---|
| 7月 | 3.7個 | 2.1個 | 0.6個 |
| 8月 | 5.7個 | 3.3個 | 0.9個 |
| 9月 | 5.0個 | 3.3個 | 1.0個 |
| 10月 | 3.4個 | 1.7個 | 0.3個 |
発生数のピークは8月の5.7個です。ところが上陸数だけは9月の1.0個が最多で、8月の0.9個を上回ります。年間の上陸は3.0個ですから、9月と10月を足した1.3個は年間の43パーセント。9月に入った時点で、まだ4割が残っている計算になります。
読者
9月に入ったので、もう峠は越えたと思っていました。
逆なんです。8月に多いのは「生まれる数」のほうで、「上陸する数」は9月がいちばん多い。備えを8月で片づけた人がいちばん危ないところです。
もうひとつ、同じ平年値には本土と沖縄・奄美を分けた接近数の表があります。並べると、地域によって本番の月が入れ替わっているのが分かります。
| 接近数 | 8月 | 9月 | 年間 |
|---|---|---|---|
| 本土 | 1.6個 | 1.9個 | 5.8個 |
| 沖縄・奄美 | 2.3個 | 2.0個 | 7.9個 |
「台風といえば8月」は沖縄・奄美の実感で、本土の本番は9月です。テレビで見る暴風の映像は8月の沖縄に集中するので、本土に住んでいる人まで8月がピークだと刷り込まれます。
秋の台風が、勢いを落とさずに来る理由
なぜ9月になると上陸が増えるのか。気象庁は経路の説明のなかでこう書いています。
8月は発生数では年間で一番多い月ですが、台風を流す上空の風がまだ弱いために台風は不安定な経路をとることが多く、9月以降になると南海上から放物線を描くように日本付近を通るようになります。このとき秋雨前線の活動を活発にして大雨を降らせることがあります。
8月の台風はふらふらと迷います。迷っているあいだ、海の上で摩擦にエネルギーを削られます。9月の台風は上空の偏西風に乗って、放物線を一本描くように日本へ向かいます。気象庁は別のページで「中・高緯度に達すると上空の強い西風(偏西風)により速い速度で北東へ進む」とも説明しています。遠回りせず、速く来る。だから勢いが残ったまま届きます。
そして秋には、すでに秋雨前線が日本付近に居座っています。雨についても気象庁はこう書いています。「日本付近に前線が停滞していると、台風から流れ込む暖かく湿った空気が前線の活動を活発化させ、大雨となることがあります」。秋の台風は、本体が来る何日も前から雨を降らせます。
室戸台風も伊勢湾台風も、9月にこの経路をとった台風でした。前線がいつまで居座るのかは秋雨前線はいつまで居座る?にまとめてあります。
「大型の台風」の「大きさ」は、中心の風の強さではありません。気象庁の区分では、風速15メートル以上の強風域の半径が500キロ以上で「大型」、800キロ以上で「超大型」です。強さのほうは最大風速で決まり、33メートル以上が「強い」、44メートル以上が「非常に強い」、54メートル以上が「猛烈な」。大きさと強さは別々に発表されます。
台風が来ると分かった日、家の外側でやること
順番があります。先にやるのは、飛ぶものを減らすことと、水の逃げ道を空けること。買い物はそのあとでも間に合います。
- ベランダの排水口と、家の前の側溝にたまった落ち葉を取る
- 植木鉢・物干し竿・自転車・ゴミ箱を室内か物置へ入れる
- 雨戸やシャッターがあるなら閉める(いちばん確実な窓の対策です)
- 停電に備えて冷凍庫を詰めておく(保冷剤の代わりになります)
窓については、期待の方向を間違えないでください。テープを貼ってもガラスは強くなりません。飛散防止フィルムも「割れたあとに破片を膜で押さえる」道具で、割れること自体は止まりません。飛散率を1パーセントまで落とせるのは防災安全合わせガラスですが、こちらは発注から工事まで日数がかかるので、進路が出てからでは間に合わない。詳しくは台風のとき窓に養生テープは効くの?に書いています。
そもそも風でどこまで壊れるのかは、家は風速何メートルまで耐えられる?のほうにまとめてあります。
車をどこに置くか——水深60センチで、セダンは走れません
JAF(日本自動車連盟)が、アンダーパスの冠水を想定した走行テストを実際にやっています。セダン(トヨタ・マークⅡ)とSUV(スポーツ用多目的車。日産・エクストレイル)で、水深を変えて走りきれるかを見たものです。
| 水深 | 車種 | 速度 | 走れたか |
|---|---|---|---|
| 30センチ | セダン/SUV | 時速10キロ・時速30キロ | いずれも走行できた |
| 60センチ | セダン | 時速10キロ | 走行できなかった |
| 60センチ | SUV | 時速10キロ | 走行できた |
| 60センチ | SUV | 時速30キロ | 走行できなかった |
怖いのは結果そのものより、途中の挙動です。JAFはセダンの60センチについて「フロントガラスの下端まで水をかぶった。それでもすぐには止まらず、しばらく走ることはできたが、登りのスロープに差し掛かった31m地点でエンジンが止まった」と書いています。入っても、しばらくは走れてしまいます。止まるのは出口の登りです。引き返せる気がしているうちに、引き返せない場所まで進みます。
30センチなら安心、でもありません。同じテストで、水深30センチでも時速30キロで走ると「巻き上げる水の量が多くなり、エンジンルームに多量の水が入ることがわかった」と報告されています。走りきれたかどうかと、壊れなかったかどうかは別の話です。
止まったあと車から出られるかについては、水深60センチでドアは開きませんのほうに実測を載せています。ここでは1つだけ。JAF自身が「脱出用ハンマーを車内の手に届くところに常備しておくことが大切です」と書いています。ただし同じページには「一部車種のドア(サイド)ガラスは、フロントガラスと同様に合わせガラスを採用しているため、割れない場合があります」という注記もあります。自分の車がどちらなのかは、晴れている日に取扱説明書で確かめておいてください。
置き場所の決め方は単純です。明るいうちに、浸水想定より高いところへ動かす。川と用水路のそば、アンダーパス、擁壁の下は外します。市区町村が道路冠水の注意箇所を住所まで公表していることもあるので(道路冠水注意箇所は住所まで公表されています)、通勤路と重なっていないかを先に見ておくと早いです。土地の形から読む方法は冠水しやすい場所の見分け方に。
冠水した道で車が動けなくなったときに要るもの
JAFのテストでは、セダンが走れなくなる水深と、ドアが開かなくなる水深がほぼ同じでした。つまり止まった時点で、窓を割る以外に外へ出る方法がなくなります。車に置いておくものから挙げます。
水に浸かった車は、外からの水圧でドアが開かなくなります。割れるのは側面のガラスで、フロントガラスは合わせガラスなので割れません。グローブボックスの奥ではなく、座ったまま手が届く場所に置いてください。
119番も家族への連絡も、スマホが生きていることが前提です。水に落とすと沈んで探しようがなくなるので、浮く型かどうかがそのまま連絡手段の有無になります。入れたまま操作できます。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
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地下駐車場は「屋根のある場所」ではなく「水の行き止まり」です
去年の9月12日、三重県四日市市で観測史上最大となる1時間123.5ミリの雨が降りました。市の中心部にある地下駐車場(くすの木パーキング)が浸水し、274台の車が被災しています。国土交通省はこの事案を受けて、今年3月に国管理の地下駐車場を対象にした浸水対策ガイドラインを作りました。
読者
地下なら屋根があるし、風で飛ばされる心配もないから安全だと思っていました。
風は防げます。でも水は上から下へ行くので、地下は雨水の行き止まりになるんです。守る相手が入れ替わります。
「地下は屋根があるぶん安全」ではありません。国土交通省の「地下空間における浸水対策ガイドライン」には、人が出られなくなる水深がはっきり書かれています。
- 水圧でドアが開かなくなる水深は、外開きの扉で26センチ、内開きの扉で47センチ(健常者を想定した数字)
- 地下の廊下や部屋を避難するときの行動限界水深は30センチ
26センチは、ひざにも届かない高さです。しかも同じガイドラインは「浸水によって地下空間への入口前の狭い空間に水が溜まり、その部分が所定の深さになる時間は、地下空間全体が同じ深さになる時間に比べてきわめて短くなる」と説明しています。フロア全体が水浸しになるより先に、出口の前だけが埋まる。地下は「浸水してから逃げる」が成り立ちません。
これは車だけの話ではありません。マンションの地下にある電気室や機械式駐車場が水に浸かると、建物ごと止まります。費用を誰が払うのかはマンションの地下が水没したら、修繕費は誰が払うの?にまとめました。
寝る部屋は、がけと反対側にする
崩れた土砂がどこまで届くのかには、目安が出ています。国土交通省 北陸地方整備局 黒部河川事務所は、がけ崩れについて「くずれた土砂は、斜面の高さの2〜3倍の距離に達することがあります」と書いています。
つまり高さ5メートルのがけなら、10メートルから15メートル先まで届くということです。裏山や擁壁から数メートルしか離れていない家なら、建物がまるごとその範囲に入ります。距離を稼げないなら、家の中で稼ぐしかありません。
- 夜のうちに、がけや斜面と反対側の部屋へ布団を移す
- できれば2階へ。1階の山側は、いちばん最初に土砂が入る場所です
- 寝る前にスマホを充電し、靴とライトを枕元に置く
ただしこれは、暗くなってから外に出るほうが危ない場合の最後の手段です。明るいうちに動けるなら、部屋を変えるより家を出るほうが確実です。自分の家が土砂災害警戒区域に入っているかどうかは土砂災害警戒区域とはで調べ方を説明しています。斜面に造成した住宅地で実際に何が起きたかは呉の斜面住宅地で崩落のほうに。
土砂崩れの前は、におい・音・水が変わります
国土交通省 関東地方整備局 富士川砂防事務所のページに、昭和34年の災害を体験した人たちの言葉が残っています。教科書的な前兆リストより、こちらのほうが伝わります。
夜のうち、石のぶつかり合う音、不気味な音、ゴットン、ゴットン腹までしびれるような音がしており
土石流がくる直前には水の濁りと同時に、山の土の凄い匂いがした
そして、いちばん見落とされるのがこれです。同じ記録に「大武川の水位が引くのを確認すると同時に、おかしな音、ゴーっという音、聞いたことがない音が聞こえた」とあります。雨が降り続いているのに川の水が減ったら、上流で土砂が川をせき止めています。減った水は、まとめて来ます。
同事務所が挙げている前兆現象を、種類ごとに並べます。
| 種類 | 前兆 |
|---|---|
| 土石流 | 山鳴りがする/川の流れが濁る、流木が混じる/雨が続いているのに川の水が減る |
| がけ崩れ | がけから小石がパラパラ落ちる/がけに割れ目ができる/がけから水が湧き出る |
| 地すべり | 地面がひび割れる、陥没や隆起が出る/井戸水が濁る/池や沼の水の量が急に変わる |
逃げ方にも向きがあります。同事務所は「土石流はスピードが速いため、流れを背にして逃げたのでは追いつかれてしまいます。土砂の流れる方向に対して直角に逃げるようにしましょう」と書いています。土石流の速さは時速20キロから40キロ。背を向けて走っても追いつかれるので、谷筋から横へ外れてください。
小さい川ほど、速く増えます
大きい川のほうが危ない、と思われがちです。増える速さでいうと逆になります。気象庁の説明です。
一般に、山間部等を流れる中小河川(水位周知河川、その他河川)は流域面積が狭く、勾配が急であるため、流れが速くなりやすく、大雨が降ると急激な増水を伴うという特徴があります。
雨を集める範囲が狭いということは、降った雨が川に着くまでの時間が短いということです。家の前の用水路や、名前も知らない小さな流れほど、目を離した10分で表情が変わります。気象庁が洪水キキクルで3時間先までの予測を出しているのも、水位計の数字を見てからでは間に合わないからです。同庁は「実際に河川の水位が上昇するより前の早い段階から早めの避難を心がけることが大切です」と書いています。
読者
近くの川の様子だけ、ちょっと見てきます。すぐ戻りますから。
その「すぐ」のあいだに増えるのが中小河川です。見に行かなくても、キキクルの色で分かります。
見に行ってはいけない理由も含めて、当日やってはいけないことは大雨のとき絶対にやってはいけない6つの行動にまとめてあります。
停電は、暴風域が抜けるまで直しに来られません
台風の停電が長引くのは、電力会社が遅いからではありません。暴風のなかでは作業員が巡視にすら出られないからです。つまり復旧が始まるのは、風がやんだあとです。それまでの数時間から数日を、自分の家にあるものだけでしのぐことになります。
実際にどれくらいかかるのかは台風で停電したら復旧まで何日かかる?に、なぜ巡視が始まらないのかは暴風域の中では巡視すら始まりませんに書きました。
用意するものは、明かりと情報と充電の3つです。懐中電灯が1本だと、持っている人以外は動けません。部屋ごと照らせるランタンを1つ。スマホは情報を取るだけで減り続けるので、充電の出どころは2系統にしておく。ラジオは電池が尽きたあとの最後の一手です。
停電が長引いたときに手元に要るもの
暴風域の中では、電力会社は巡視にすら出られません。復旧を待つ側が数日ぶんの電気と情報を自分で持つ、という前提で選んでいます。
停電下で扇風機とスマホを動かせるかどうかが、夏の避難生活の体感を大きく変えます。大型より、避難所や車まで持ち運べる重さのほうが実際に使えます。
災害時に多いつまずきが「ケーブルが見つからない・端子が合わない」です。本体にケーブルが付いている型だとそこで止まりません。20000mAhでスマホ数回分。
手回しは常用の充電手段にはなりません。電源が尽きたあとに情報を得る最後の一手として、そしてスマホの電池を情報収集で使い切らないための道具として持ちます。
停電時は懐中電灯より、部屋全体を照らせるランタンの方が使えます。電池でも充電でも点くものだと、どちらが尽きても止まりません。
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断水したら、家の中で3日
避難所へ行かず家にとどまるほうが多数派です。そのとき詰まる順番は決まっていて、トイレ、水、電気の順に来ます。必要な量の目安は在宅避難はトイレ→水→電気の順にまとめてあります。
断水のときにやりがちな失敗も1つだけ。ためた水をトイレのタンクに入れるのは間違いです(断水中、水を入れるのはトイレのタンクではありません)。
それから、去年そろえた防災グッズが今年もそのまま使えるとは限りません。缶詰やレトルトの期限は静かに切れます。防災グッズの期限を先に見てから、足りないぶんだけ買い足すほうが安く済みます。
断水した家で3日しのぐもの
在宅避難で先に詰まるのはトイレと水です。全部を今そろえなくてよくて、この順に足していけば止まりません。
断水で最初に困るのがトイレです。備蓄で見落とされやすい一方、代用が効きません。
飲料水は1人1日3L。4人家族の1週間分で84L=2Lボトル42本なので、6本入りだと7ケースぶんです。5年保存タイプなら入れ替えの手間が減ります。
お湯でも水でも作れて、袋のままおにぎりの形になります。断水すると鍋も食器も洗えません。洗い物の出ない形を先に入れておくと、水の減り方が変わります。
ボンベ1本で約60〜90分。4人家族の1週間分でおよそ6本が目安です。多めに持ってローリングストックにすると、鍋物などで日常的に消費できます。
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逃げる先は「どこ」より「いつ」で決まります
避難所の場所を覚えている人は多いのに、「何が出たら動くか」を決めている人はほとんどいません。当日いちばん迷うのはそこです。
- 自宅が浸水想定区域か、土砂災害警戒区域かをハザードマップで見る(ハザードマップは気にしすぎ?)
- 逃げる先は避難所とは限りません。親戚の家、ホテル、浸水想定より高い階でもいい
- 動く合図を決める。2026年5月に防災気象情報の名前が変わったので、聞き慣れない言葉が出ます(危険警報って何?)
- 避難勧告はもうありません。避難勧告っていつ出るの?で今の呼び方を確認しておく
- 家の標高を一度だけ調べておく(土地の標高の調べ方)
子どもがいる家なら、学校がいつ休みになるかを先に見ておくと段取りが変わります(台風で学校は休みになる?)。仕事のほうは大雨警報が出たら仕事は休みになる?に書きました。
出典
- 気象庁「台風の平年値」(1991〜2020年の30年平均。2026年9月2日確認)
- 気象庁「台風の発生、接近、上陸、経路」
- 気象庁「台風とは」/「台風の大きさと強さ」/「台風に伴う雨の特性」
- 気象庁「洪水キキクル(洪水警報の危険度分布)」
- JAF ユーザーテスト「冠水路走行テスト」(2010年4月8日実施)
- JAF ユーザーテスト「水深何cmまでドアは開くのか?」(2014年6月3日実施)
- 国土交通省 報道発表「国管理の地下駐車場に関する浸水対策ガイドライン(直轄地下駐車場)を策定しました」(令和8年3月6日)
- 国土交通省「地下空間における浸水対策ガイドライン 同解説<技術資料>」G-11〜G-14(PDF)
- 国土交通省 関東地方整備局 富士川砂防事務所「災害の前兆と避難のしかた」
- 国土交通省 北陸地方整備局 黒部河川事務所「土砂災害のいろいろ」


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