検証報告が残る大規模停電の実測を並べると、復旧までの時間は二段構えです。北海道全域の約295万戸が停電した2018年のブラックアウトは、約2日で約99%が復旧しました(消防庁)。同じ年に関西で最大約168万軒が停電した台風21号も、関西電力の検証報告に「大部分の復旧に3日間」と記録されています。
問題は、残りに入った場合です。台風21号では一部の家の復旧に2週間以上かかり、翌2019年の台風15号(千葉)では復旧作業が約21日間に及びました。数日なら冷蔵庫と携帯の電池の算段で乗り切れますが、2週間なら生活そのものが変わります。そして自分の家がどちら側かは、停電した瞬間には分かりません。分けているのは運ではなく、電線のどこが壊れたかです。
「豪雨などで起きる停電って、どのくらいの時間で復旧しますか?20分前後ってことはあったりしますか?」——Yahoo!知恵袋に実際にある質問です。正直な答えは「20分のこともあれば、2週間のこともある」になります。ただし、復旧工事の順序を知れば、自分の家がどちらに寄っているかの見当までは付けられます。この記事では、①過去の大規模停電の実測日数、②「うちだけ点かない」が起きる理由、③復旧見込みの当てにし方、④電気が戻る瞬間にやることを、電力会社と国の検証資料だけで説明します。
先に結論
- 過去の大規模停電では、大半の家は2〜3日で復旧している(北海道:約2日で約99%。関西:大部分が3日間)
- ただし最後に残る一部は2週間以上。台風15号の千葉では復旧作業が約21日間続いた
- 早い家と遅い家を分けるのは引込線。復旧工事は「電柱→高圧配電線→変圧器→引込線」の順で、引込線は1軒ずつの個別工事
- 「復旧見込み」は見直される前提の数字。台風15号では「今夜中に約12万軒まで縮小」の翌朝に約40万軒以上が停電していた
- 避難するときはブレーカーを切り、停電中はプラグを抜く(通電火災の予防)。冷蔵庫はドアを開けなければ約2〜3時間が目安
いま停電中の人へ 自分の地区の復旧見込みはここで見る
この記事は「過去の停電で何が起きたか」の解説で、いまの停電情報は載せていません。自分の地区の停電件数と復旧見込みは、住んでいる地域の送配電会社(東京電力パワーグリッド、関西電力送配電など)の停電情報ページで公開されています。どの会社のエリアか分からないときは、電気事業連合会が全国の停電情報ページを一覧にしています。
スマホの電池が残り少ないなら、確認はそのページだけにして、この先は電気が戻ってから読んでください。
停電でスマホを生かすための電源
設定で節約しても、数日の停電では足りません。充電の出どころを2系統以上にするのが現実的です。
災害時に多いつまずきが「ケーブルが見つからない・端子が合わない」です。本体にケーブルが付いている型だとそこで止まりません。20000mAhでスマホ数回分。
停電下で扇風機とスマホを動かせるかどうかが、夏の避難生活の体感を大きく変えます。大型より、避難所や車まで持ち運べる重さのほうが実際に使えます。
手回しは常用の充電手段にはなりません。電源が尽きたあとに情報を得る最後の一手として、そしてスマホの電池を情報収集で使い切らないための道具として持ちます。
停電時は懐中電灯より、部屋全体を照らせるランタンの方が使えます。電池でも充電でも点くものだと、どちらが尽きても止まりません。
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過去の大規模停電では、復旧まで何日かかったか
| 停電 | 最大停電 | 復旧までの時間(検証報告の実測) |
|---|---|---|
| 2018年9月 台風21号(関西) | 約168万軒(9月4日21時。延べでは約220万軒) | 大部分の復旧に3日間。一部では2週間以上を要し、復旧完了は16日後の9月20日17時51分 |
| 2018年9月 北海道胆振東部地震(ブラックアウト) | 約295万戸 | 発生から約2日で約99%が復旧 |
| 2019年9月 台風15号(千葉) | 約93万戸(うち千葉県 約63万7,100戸。9月9日朝ピーク) | 2日後の朝もなお約40万軒以上が停電。5日目に「3日以内・1週間以内・2週間以内におおむね復旧」の市区町村別見通しを公表。復旧作業は約21日間 |
出典:関西電力「台風21号対応検証委員会報告」(2018年12月13日)/消防庁 防災危機管理eカレッジ/経済産業省 レジリエンスWG資料4(2019年10月3日)/電気新聞
「93万戸も停電したなら、うちに工事が来るのは何週間も先だ」という順番待ちのイメージは、実測とは逆です。復旧工事は1軒ずつ順番に回るのではなく、次の章で見るとおり、太い設備から面でまとめて直します。だから北海道は約295万戸が約2日で約99%まで戻り、関西も大部分は3日間で戻りました。大半の家は数日で戻る。最後に残った家だけが、2週間以上かかる。
そして、その最後に残った側の長さは人手では縮みませんでした。台風15号の千葉には全国の電力会社から延べ9,164人が応援に入り、高圧発電機車174台が集められましたが(9月20日時点・電気新聞)、それでも復旧作業は約21日間。人手の問題ではなく、壊れ方の問題だということです。
「近所は点いたのに、うちだけ点かない」を分ける引込線
台風21号が関西を直撃した2018年9月4日の夜、知恵袋に「停電中から復旧された方、何時間くらいで復旧しましたか?」という質問が投稿されました。集まった回答の実体験は、約1時間で戻った家(名古屋)から、約6時間半、約9時間半(大阪)、約10時間かかった家まで。同じ台風の夜でも、家によってばらばらです。
このばらつきは、復旧工事の順序で説明できます。関西電力送配電は、復旧の流れを「被害状況の調査→保安措置→復旧工事」とし、工事は電柱→高圧配電線→変圧器→引込線の順に進むと説明しています。
- 高圧配電線が直ると、その先の一帯はまとめて点きます。「近所が一斉に点いた」はこれです
- 自宅への引込線が切れている家は、高圧側が直っても点きません。1軒ずつの個別工事の順番を待つことになります
台風21号では、延べ1,300本以上の電柱が折損等の被害を受けました。折損・倒壊した881本の内訳は、倒木・飛来物等によるものが788本、地盤の影響が93本です。電柱が折れた区間は、建て直すまで配電線の工事に進めません。最大時に大阪府で97万軒、兵庫県でも16万軒が停電した規模の裏で、こうした「土木工事から始める区間」が最後まで残る側に回りました。延べ約220万軒という数字は、関西電力自身が検証報告の中で阪神・淡路大震災の260万軒と並べて記した規模です。
台風15号の千葉では、もうひとつの形で「最後の1軒」が生まれています。公表される停電件数に、低圧線・引込線側の停電が反映されていなかった問題が検証で指摘され、東京電力は9月17日(発生9日目)に低圧線・引込線に係る対応を打ち出しました。地図の上では「停電解消」となった地区に、まだ点かない家が残っていたということです。
停電の復旧見込みはどこまで当てになる?
関西電力送配電のFAQには「復旧作業の状況により、復旧予定情報は見直される場合がございます」と書かれています。この1行の重さは、台風15号の千葉で実際に起きたことが示しています。経済産業省の検証資料に、東京電力の発表の時系列が残っています。
| 日時 | 東京電力の発表(検証資料に記録された文言) |
|---|---|
| 9月10日 17:00 | 「本日17時00分時点で約58万軒が停電しておりましたが、全力で復旧作業を進め、今夜中に約12万軒まで縮小する見込みとなりました」 |
| 9月11日 8:00 | 「現時点で約40万軒以上が停電している状況です」「現時点で本日中にすべての停電が解消する見通しは立っておりません」 |
出典:経済産業省 レジリエンスWG(2019年10月3日)資料4「台風15号に伴う停電復旧プロセス等に係る検証について」
「今夜中に約12万軒まで」と発表された翌朝、停電は約40万軒以上でした。さらに翌9月12日の発表では、朝8時時点の停電が約47万軒と、前日朝より大きな数字が示されています。見込みどころか、停電件数の把握そのものが動いていたわけです。検証資料は、見込みが外れた要因として「雷雨に伴う作業の一時的な中断、現場作業を進める中で判明した作業量の増加、夜間作業による想像以上の作業効率の低下」を挙げています。市区町村ごとの復旧期間の目安が公表されたのは5日目の夜(9月13日)、地区ごとの見通しはさらに翌日の夜(9月14日)でした。
私はこれを「電力会社の発表は当てにならない」という話ではなく、停電直後の見込みは構造的に外れる、という前提の話だと見ています。検証資料が挙げた3つの要因は、いずれも現場に入る前には見えなかったものだからです。だから使い方はこうなります。最初に出る復旧見込みは「順調にいった場合の最短」として聞き、電池・水・冷蔵庫の算段は見込みより1日長い側で立てる。これが検証資料から引ける実用的な結論だと考えています。
見込みが後ろへ動くのは、電車の運転再開と同じ構造です。点検も工事も、風がやんだ後にしか始められません。
停電中の冷蔵庫は何時間もつ?
台風21号のときの知恵袋には、「停電の時に冷蔵庫の中は何時間ぐらい持ちますか?」という質問も投稿されています。これにはメーカーの公式回答があります。パナソニックはFAQで「冷蔵庫は庫内が十分に冷えている状態で停電になった場合、ドアを開けなければ約2~3時間、庫内の冷えを保つことができます」とし、あわせて「冷えを保てる時間は目安です。設置場所や季節、天候、食品の保存状況などにより異なります」と注記しています。
この約2〜3時間という目安を、先ほどの実測(大半の家でも復旧まで2〜3日)と並べると、停電がニュースになる規模のときは、冷蔵庫の冷えは復旧まで持たない前提で考えることになります。ドアの開け閉めを最小限にして時間を稼ぐ——公式の目安から言えるのはここまでです。
停電の復旧時に増える火事「通電火災」 避難前はブレーカーを切る
「停電した時にブレーカーを落とさないと復旧した時に出火するとよく聞きますが、、例えば夜中に停電したとして家族全員寝ていたら停電したこと自体に気付かないじゃないですか?」——知恵袋の実際の質問です(2022年3月)。質問者は「そんなの怖くて夜眠れないです、、(泣)」と続けています。
この不安には統計の裏付けがあります。京都市消防局によると、阪神・淡路大震災と東日本大震災では、発生した火災の半数以上が電気による火災でした。停電が復旧して再び通電する際に起きる火災、いわゆる通電火災です。地震の言葉として知られていますが、NITE(製品評価技術基盤機構)は2023年8月の注意喚起で、停電復旧後の発火経路として「電熱器具が周囲の可燃物に接触していたことによる発火」「家電製品の水没や部品の破損によりショートして発火」を挙げています。水没という言葉のとおり、台風・大雨の停電でも起きる火災です。
対策も公式のものがあります。京都市消防局は「避難時にブレーカーを遮断することや、停電中に電気機器の電源プラグをコンセントから抜くことなどが効果的」としています。知恵袋には「停電後に勝手に電気が着くことはありますか?」という質問もありますが、答えは「あります」。復旧はこちらの都合を待たず、深夜でも留守中でも、送電が再開された瞬間に家中へ電気が入ります。だからプラグとブレーカーの操作は電気が来る前に済ませておく、というのが消防の勧める順序です。
冒頭の「寝ている間だったら」への答えとして国の検討会が挙げているのが、感震ブレーカー——「地震時に設定以上の揺れを感知した時に電気を自動的に止める器具」(内閣府)です。ただし内閣府は、設置する場合は停電時の照明や医療機器のバッテリーに留意するよう付記しています。
もうひとつ、NITEの同じ注意喚起は、停電中に携帯発電機を屋内で使ったことによる一酸化炭素中毒が毎年発生し、死亡事故も報告されていると警告しています。
停電が復旧したのに点かないときのブレーカーの戻し方
停電中にブレーカーを何度も上げ直す人がいます。知恵袋にも、台風で停電した夜に、大きなブレーカーを入れ直せば点くかと思った——という趣旨の質問が実際にあります。地域ごと停電しているとき、原因は家の外(電柱や配電線)にあるので、家の中のブレーカーを操作しても点きません。
ブレーカーの出番は、周りは点いたのに自分の家だけ点かないとき、分電盤で漏電遮断器が落ちている場合です。中部電力パワーグリッドが公式の手順を公開しています。
- 漏電遮断器と配線用遮断器(小さいスイッチ)をすべて「切」にする
- 漏電遮断器を「入」にする
- 配線用遮断器を1つずつ「入」にしていく。問題のある回路を入れた瞬間に漏電遮断器が再び落ちるので、どの回路が原因か特定できる
- 原因の回路だけ「切」のまま残し、それ以外を「入」にする
中部電力パワーグリッドは「漏電は火災にもつながるので、電気工事店へ相談」するよう案内しています。原因の回路を切ったまま使い続けず、点検を受けてください。
台風が来る前に、住所ひとつでできる備え
停電の長さは選べません。引込線が切れるかどうかも、電柱が折れるかどうかも、当日まで分かりません。当日より前に分かるのは、台風が近づいていることと、自分の家の弱点だけです。
台風の報道は、上陸の何日も前から「台風のたまご」の段階で始まります。たまごの段階で何が分かって何が分からないかは、こちらにまとめています。
停電がいつ復旧するかは、このページでは分かりません。ですが、台風の日に家で起きるもう一つの被害——浸水と土砂——のリスクは、住所を入れれば1分で確認できます。電気を止めた主因が倒木と飛来物だったように(台風21号で折損・倒壊した電柱881本のうち788本)、台風の被害は家そのものより家の周りから来ます。自宅や実家の周りの弱点は、電気が来ているうちに確認しておいてください。
出典(この記事で使った一次資料・報道)
- 経済産業省 レジリエンスWG(2019年10月3日)資料4「台風15号に伴う停電復旧プロセス等に係る検証について」(最大約93万戸・東京電力の情報発信の時系列・見込みが外れた要因・低圧線/引込線に係る対応)
- 関西電力「台風21号対応検証委員会報告」(2018年12月13日。延べ約220万軒・最大約168万軒・大部分の復旧に3日間・一部で2週間以上・9月20日17時51分復旧完了・電柱延べ1,300本以上)
- 消防庁 防災危機管理eカレッジ「ブラックアウト」(約295万戸・約2日で約99%復旧)
- 電気新聞「台風15号被害——オール電力で挑んだ停電復旧の軌跡」(応援延べ9,164人・高圧発電機車174台・復旧作業約21日間)
- 関西電力送配電「復旧のしくみ・復旧の流れ」(電柱→高圧配電線→変圧器→引込線)
- 関西電力送配電FAQ(復旧予定情報は見直される場合がある)
- パナソニックFAQ「冷蔵庫の停電前の準備と停電時・停電復旧後の対処方法」(ドアを開けなければ約2~3時間)
- 京都市消防局(通電火災。阪神・淡路大震災、東日本大震災では発生した火災の半数以上が電気による火災)
- NITE 製品評価技術基盤機構(2023年8月29日注意喚起。停電復旧後の発火経路・携帯発電機の一酸化炭素中毒)
- 内閣府「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」(感震ブレーカー)
- 中部電力パワーグリッド「ブレーカーの操作方法」(漏電遮断器の復旧手順)

- 電気事業連合会 停電情報リンク集
- 読者の声として引用したYahoo!知恵袋の投稿(2018年9月4日・2022年3月18日ほか、いずれも実在の投稿の原文)
※本記事は2026年8月時点で各社・官公庁が公表している検証資料にもとづく常設の解説です。いまの停電状況と復旧見込みは、必ず各エリアの送配電会社の公式停電情報でご確認ください。







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