「大雨警報が出たから今日は休み」を決めてくれる法律は、ありません。あなたが明日出勤するのかどうか、休んだ日の給料が出るのかどうかは、警報の種類ではなく、勤め先の規程と会社の判断で決まります。
「暴風警報出たら会社休みになりますか?新社会人でよくわかりません」——2022年9月、Yahoo!知恵袋に投稿された質問です。ついた回答は「会社によります」に終始しました。突き放したように見えて、実はこれが正確な答えです。学校には「校長は、臨時に授業を行わないことができる」という条文があるのに、警報と会社の休みを結ぶ条文は、探してもどこにも無いからです。
それなら、会社のほうから「危ないから休みにしよう」と言ってくれればいい。なかなか言い出さないのには、根性論ではないお金の理由があります。会社の判断で休業にすると、平均賃金の60%以上の「休業手当」を払う義務が生まれるからです(労働基準法26条)。
さらに2026年5月29日からは、警報の名前そのものが変わりました。「レベル3大雨警報」「レベル4大雨危険警報」という新しい名前を見て、「レベル4なら会社も休みでしょ」と思った人もいるはずです。そうはなっていません。この記事では、警報と仕事・給料・学校の関係を、厚生労働省・気象庁・市の教育委員会の資料だけで説明します。
先に結論
- 警報が出ても、仕事が自動で休みになる法律は無い。休みかどうかは会社の規程と判断で決まる
- 会社の判断で休業すると平均賃金の60%以上の休業手当が要る(労働基準法26条)。会社自体が被災していなければ「天災だから払わない」は原則通らない——会社が自分から「休み」と言いにくい理由はここ
- 自分の判断で休んだ日の給料は就業規則の定め次第。実務は有給休暇での処理に落ち着きがち
- 2026年5月29日から「大雨警報」は「レベル3大雨警報」になり、警戒レベル4相当の「レベル4大雨危険警報」が新設された。暴風警報は名前もレベルも変わっていない
- 学校の休校基準は市町村・学校ごと。千葉市も大阪市も「朝7時に暴風警報」型で、大雨警報だけでは自動休校にならない
警報が出たら会社は休み? 決めている法律は無い
台風や大雨のたびに、知恵袋には同じ質問が戻ってきます。「台風や雨が強くなっているのに、何で会社は、お休みにならないの?」。
警報と会社の休みを直結させる法律は、労働基準法にはありません。労働時間や賃金を細かく定めている労基法にも、「暴風警報が出たら休業」「警戒レベル4で出勤停止」という規定は1つも無いのです。休みかどうかを決めているのは、就業規則・社内の災害時ルール・当日の会社の判断。冒頭の「会社によります」は投げやりな回答ではなく、制度の描写として正しいわけです。
一方で、住民に「逃げてください」と伝える情報はあります。政府広報オンラインは「警戒レベル4」までに危険な場所から全員避難、と呼びかけています。ただしこれは避難の情報であって、事業所を閉めさせる効力はありません。
その隙間を突いた実例が知恵袋に残っています。2021年8月、警戒レベル4の避難指示が出ている地域で、上司に「出社した方がいいか」を尋ねた人の相談です。返ってきたのは、警戒レベルは安全な場所へ移動しろという意味だから、職場が自宅より安全なら出社が必要だ、という理屈でした。避難の情報と労務のルールが別物である以上、この理屈を正面から止める条文も、やはり無いのです。
住まいのリスクに対する備え
土地の履歴やリスクを知ったら、次は「起きたときにどうするか」です。最低限そろえておくと動けるものを挙げます。
一から集めると抜けが出ます。まずセットで用意して、家族の人数分と常備薬だけ足すのが早いです。
断水で最初に困るのがトイレです。備蓄で見落とされやすい一方、代用が効きません。
停電時は懐中電灯より、部屋全体を照らせるランタンの方が使えます。電池でも充電でも点くものだと、どちらが尽きても止まりません。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
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「レベル3大雨警報」「レベル4大雨危険警報」とは? 2026年5月に警報の名前が変わった
気象庁は2026年5月28日の午後、大雨などの防災気象情報を新しい名称に切り替え、翌29日から正式な運用を始めました(切替当日は13時50分ごろから、発表中の警報が新名称で出し直されています)。変わったのは、河川氾濫・大雨・土砂災害・高潮の4つの災害に関する情報です。
大雨と暴風について、名前はこう変わりました。
| 2026年5月27日まで | 2026年5月29日から |
|---|---|
| 大雨警報 | レベル3大雨警報 |
| (「危険警報」という区分は無かった) | レベル4大雨危険警報(新設) |
| 暴風警報 | 暴風警報(変更なし) |
出典:気象庁「新たな防災気象情報について(令和8年~)」ほか(URLは記事末尾)
名前に入った「レベル」は、避難情報の警戒レベルとそろえた数字です。気象庁は「警戒レベル4に相当する情報として、新たに『危険警報』を運用することで情報名称の統一を図ります」と説明しており、大雨では「レベル4大雨危険警報」がこれに当たります。新しい名前ですが既に実戦投入されていて、2026年8月21日には埼玉県に発表されました。
一方、暴風警報は今回の変更対象に入っておらず、名前もレベルも変わっていません。あとで見るとおり、学校の休校基準の主役はこの暴風警報なので、「学校の警報」は改名の影響をほぼ受けていないことになります。
では、レベル4大雨危険警報が出たら出勤しなくていいのか。避難の情報としては、危険な場所から離れるべき段階で、身の安全が最優先という原則は動きません。ただ、それを「出勤免除」や「給料の保障」に自動で翻訳する法律が無い、というのが前の章の話です。名前が変わっても仕事のルールは1ミリも変わっていないのに、「レベル4なら休みのはず」という期待だけが先に育つ。これが2026年からの新しいすれ違いです。
「情報の名前」と「避難の指示」が別物であることは、記録的短時間大雨情報でも同じです。
→ 福島・北塩原村で1時間に約100ミリ 記録的短時間大雨情報が出ても、避難指示が出ているとは限りません
会社が「休みにします」と言わないのはなぜ? 労働基準法26条のお金の仕組み
労働基準法26条は、会社側の事情(使用者の責に帰すべき事由)で労働者を休業させた場合、休業期間中、平均賃金の60%以上の休業手当を払わなければならない、と定めています。
台風なら「天災だから会社のせいではない」と思うかもしれません。ところが厚生労働省のQ&A(令和元年台風第15号のときに出された公式解説)は、支払いを免れる「不可抗力」と言えるためには「①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること」の2つの要件を満たす必要がある、としています。
そして同じQ&Aは、会社の建物や設備が直接被災していない場合は、原則として「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たる——つまり休業手当が要る、と書いています。例外になり得るかは、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、休業を避けるための具体的な努力などを総合的に見て判断する、という書きぶりで、「警報が出たから」だけで支払いを免れる建て付けにはなっていません。
つまり、会社が大事を取って「休み」と宣言するとお金の支払いが生まれ、宣言しなければ生まれない。「様子を見ましょう」という会社の沈黙は、思いやりの不足ではなく、この費用構造の上に載っています。
知恵袋には「台風くらいで学校や会社が休みになるのは甘えだと思いませんか?」という逆側の声もあります。ただ、会社が休みにしないのは社員の根性を信じているからでも、甘えを締め出すためでもなく、費用の発生点で立ち止まっているだけ——というのが構造から見た実態です。
私はこの仕組みを、災害の日には働く人に不利に働く構造だと見ています。会社が「休め」と言えば手当が要り、自分の判断で休めば給料が減り得る。どちらの側も「決めない」ことがいちばん安く見えるため、判断が当日の朝まで先送りされやすいからです。制度が今の形である以上、働く側にできるのは、次の章の確認を警報が出る前に済ませておくことだと考えています。
自分の判断で休んだ日の給料はどうなる?
この疑問は、国のQ&Aに質問文がそのまま載るほど、災害のたびに全国で聞かれています。「今回の台風の被害により労働者が出勤できなかった場合、出勤しなかった日の賃金の支払は必要でしょうか。」
厚労省の答えはこうです。「労働契約や労働協約、就業規則等に労働者が出勤できなかった場合の賃金の支払について定めがある場合は、それに従う必要があります」。裏を返せば、定めが無ければ、働いていない分の給料は出ないことがあり得ます(欠勤の扱い)。実務では、年次有給休暇を充てるか、会社側が特別休暇や在宅勤務に切り替えるかに落ち着きがちで、厚労省のQ&Aも有給の特別休暇制度の活用や労使の話し合いを挙げています。
あなたの会社でどうなるかを、この記事は断定できません。就業規則の「休業」「災害時の取り扱い」「賃金」の項を、警報が出る前に読んでおいてください。それがこの章の結論です。
もう1つはタイミングの話です。知恵袋には雇う側からの相談も残っています。「台風で電車が止まると『交通手段がない』と言って会社を休む社員がいます」。この押し問答を当日の朝にやる必要は、実はもうありません。台風の計画運休は約48時間前に第一報、約24時間前に詳細が発表される運用になっているからです。電車が止まる基準と発表のタイムラインは、こちらで1本にまとめています。
学校が休みになる基準は? 千葉市も大阪市も「朝7時に暴風警報」型
「明日の台風で東京に大雨警報が出た場合、学校や仕事は休みにした方がいいんですか」。知恵袋では、学校と仕事はよく1つの質問で聞かれます。親にとっては同じ朝の問題だからです。ただし、仕組みは正反対です。
学校には条文があります。学校教育法施行規則63条(昭和22年文部省令第11号)です。
「非常変災その他急迫の事情があるときは、校長は、臨時に授業を行わないことができる。」
続く後段が定めるのは、公立小学校の場合に教育委員会へ報告する義務です。読みどころは、「どの警報が出たら」とはひとことも書いていないこと。決めるのは校長と設置者で、実際の基準は市町村の教育委員会や学校ごとに作られています。つまり、市が変われば基準も変わります。実例を2つ並べます。
| 千葉市 | 大阪市 | |
|---|---|---|
| 判断の時刻 | 午前7時(特別支援学校は6時、市立高校は6時と10時) | 午前7時 |
| 休みになる条件 | 暴風警報・暴風雪警報などが継続中 | 暴風警報・暴風雪警報、危険警報(河川氾濫を除く)、特別警報、河川氾濫の警戒レベル3・4、震度5弱以上の地震 |
| 大雨系の警報だけの場合 | 「保護者が安全と判断した場合に登校させる」=一律休校ではない | 自動休校の対象ではない |
出典:千葉市・大阪市の公式サイト(URLは記事末尾)
大雨警報(いまのレベル3大雨警報)だけでは、千葉市でも大阪市でも自動休校にはなりません。学校を自動で休みにする主役は暴風警報で、その暴風警報は2026年5月の改名の対象外です。暴風警報だけ休校になり、大雨の警報では学校がある——なぜ?という投稿も知恵袋に残っていますが、各市の基準を見るかぎり、暴風系は「登校させない」線に置かれ、大雨系は「保護者の判断」に回されています。この運用の形そのものが答えです。
一方、大阪市の基準には新体系の「危険警報」が既に組み込まれています。大雨側も、レベル4相当の危険警報や特別警報まで行けば学校は閉まる設計です。特別警報が実際に出た夜に何が起きるかは、こちらに記録があります。
→ 夜7時30分、千葉に大雨特別警報。「とりあえず2階へ」は、どの家でも正解ではありません
お子さんの学校の基準は、「市区町村名+警報+学校」で検索して、市の公式サイト(教育委員会または学校のページ)で確認してください。この件に限っては、まとめ記事より市のページが正解です。
警報が出そうな日、前日までにやること3つ
- 会社:就業規則の「休業」「災害時」「賃金」の定めを確認する。台風の接近が分かっている日は、出社をどうするかを前日のうちに職場と決めておく(当日の朝の電話は、全員にとっていちばん苦しいタイミングです)
- 学校:市の教育委員会・学校の基準ページを一度見て、朝の判断時刻(午前7時など)を控えておく
- 交通:計画運休は約48時間前に第一報、約24時間前に詳細。車通勤の人は、高速道路の通行止めも「予想の段階で早めに止める」運用です
そしてもう1つ。警報の日に確かめておくべきなのは、会社のルールと同じくらい、自宅と職場の「水のリスク」です。住所を入れれば、浸水・土砂のリスクは1分で確認できます。
賃金や手当の個別の扱いは、勤め先の規程と契約によります。この記事は制度の構造の解説で、あなたのケースの結論はここでは出せません。最終的には就業規則と、勤め先への確認をお願いします。
出典(この記事で使った一次資料・報道)
- 厚生労働省「令和元年台風第15号による被害に伴う労働基準法や労働契約法に関するQ&A」(令和元年9月18日)A1-4・A1-5・Q9-2/A9-2
- 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第63条(e-Gov法令検索の原文を2026年8月23日に確認)
- 気象庁「新たな防災気象情報について(令和8年~)」(変更対象は河川氾濫・大雨・土砂災害・高潮に関する情報。令和8年5月29日から運用開始)
- 気象庁 報道発表「5月29日(金)から、新たな防災気象情報の運用を開始します」(2026年4月14日)
- 気象庁 お知らせ「明日28日午後から新名称による提供が開始されます」(2026年5月27日。切替後、同日13時50分ごろから新名称で再発表)
- 気象庁「気象業務はいま2026」特集1(警戒レベル4相当の「危険警報」新設)
- 政府広報オンライン(「警戒レベル4」までに危険な場所から全員避難)
- 内閣府防災「避難情報に関するガイドライン」(令和8年3月改定)
- 千葉市「気象警報等の発表に伴う市立学校の対応」
- 大阪市(気象警報等の発表時における学校園の措置)

- tenki.jp(2026年8月21日、埼玉県に「レベル4大雨危険警報」発表の速報)

- 読者の声として引用したYahoo!知恵袋の投稿(2021年8月・2022年9月ほか、いずれも実在の投稿の原文)
※本記事は2026年8月時点で官公庁・自治体が公表している資料にもとづく常設の解説です。制度や各市の基準は今後変わることがあります。警報・避難情報の最新の発表は気象庁・自治体の公式発表を、賃金の個別の扱いは勤め先の就業規則をご確認ください。



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