🗨️「帰省したら、実家の近くのケーキ屋さんが閉まっていました。いま、そんなに潰れているんですか?」
2026年1〜7月の倒産は45件で、1〜7月としては過去30年で最多です。うち44件(97.7%)が破産で、再建ではなく店を畳む形がほとんどです。
[話題] この記事の要点
東京商工リサーチが2026年8月11日、「ケーキや菓子店」(菓子小売業・製造小売を含む・負債1,000万円以上)の倒産が2026年1〜7月で45件になったと発表した。1〜7月の同期間では過去30年で最多。年間最多だった2025年の58件を「抜くことが確実な情勢」としている。
2026年8月11日 発表 (2026年8月14日 更新)
- お盆の帰省土産・手土産をこれから買う人
- 行きつけのケーキ屋・和菓子屋・パン屋がある人
- 菓子・パンなど食品の小さい店を経営している人、開業を考えている人
この記事でわかること
- 45件は「昨年の58件を超えた」のではなく、「1〜7月として過去最多。通年最多の58件を抜くことが確実な情勢」という段階であること
- お菓子の市場全体は4兆996億円で過去最高。消えているのは需要ではなく、値上げできない小さい店であること
- 45件のうち97.7%が破産=閉店セールのないまま急に閉まる、の統計的な裏づけ
「地元で有名な洋菓子店のしばらく閉店します、の張り紙を見て嫌な予感がしていたが、2ヶ月後に店の張り紙が変わっていた。地元民は相当なショック」——街のケーキ屋の倒産が過去最多ペースだという調査が配信された8月11日、Yahoo!ニュースのコメント欄にこんな声が寄せられていました。
お盆で帰省しているいま、駅前の商店街で同じ光景を見た人がいるはずです。ケーキ屋・菓子店の倒産は2026年1〜7月で45件。1〜7月としては、この30年で最多になりました。
同じ帰省のタイミングで実家の側を見ておく話は「お盆に実家へ帰ったら、前の道の幅を測ってください」に書きました。この記事は、商店街の側で何が起きているのかを数字で確かめます。
先に結論
- ケーキ屋・菓子店の倒産は2026年1〜7月で45件。1〜7月として過去30年で最多。年間最多の2025年58件を「抜くことが確実な情勢」(東京商工リサーチ)
- 45件のうち44件(97.7%)が破産。閉店セールを打つ余力が残らないまま閉まる
- いちごショートケーキ1個の全国平均は536円で統計開始以来の最高値。5年前より119円高い
- 一方で、お菓子の市場全体は小売金額4兆996億円で過去最高。売れないのではなく、値上げできない小さい店から消えている
- 帰省する人の約9割はいまも手土産を買っている。「帰省土産離れ」を数字で示す家計統計は無い
ケーキ屋・菓子店の倒産、1〜7月で45件。過去30年で最多です
東京商工リサーチが8月11日に公表した集計です。対象は「菓子小売業」で、ケーキ屋のような製造小売を含み、負債1,000万円以上の倒産を数えています。
2026年1〜7月の倒産は45件。1〜7月の同期間としては過去30年で最多を更新しました。これまでの年間最多は2025年の58件です。まだ「超えた」わけではありませんが、7か月で昨年1年分の77.6%に達しており(当サイトで算出)、東京商工リサーチは「58件を抜くことが確実な情勢」としています。
45件の中身はこうです(項目は重複があります)。
| 項目 | 件数・割合 |
|---|---|
| 原因が販売不振 | 41件(91.1%) |
| 物価高の影響を受けた倒産 | 15件(33.3%) |
| 人手不足による倒産 | 5件(前年同期比66.6%増) |
| 資本金1,000万円未満 | 31件(68.8%) |
| 形態が破産 | 44件(97.7%) |
もうひとつ、この統計の読み方で確かなことがあります。数えているのは負債1,000万円以上の法的整理だけ、という点です。体力が残っているうちに店を畳む自主廃業や休業は、この45件に入りません。統計に映らない閉店が、この外側にあります。
閉店セールが無いまま、急に閉まるのはなぜか
45件のうち44件、97.7%が破産でした。民事再生のような、事業を続けながら立て直す形はほぼゼロです。
破産は、事業を続けることをあきらめる手続きです。在庫を売り切る閉店セールや、常連への挨拶ができる段階は、たいてい過ぎたあとに手続きが始まります。冒頭の「しばらく閉店します」の張り紙が2か月後に別の張り紙に変わっていた、という体験談は、この数字と符合します(その店が倒産だったのかは分かりません。ただ統計の側から見ると、「急に閉まる」形が97.7%を占めるということです)。
Yahoo!ニュースのコメント欄には、こんな声もありました。「ケーキ屋さんをやろうと思って、原価を調べてみた経験があります。その結果、人件費をほぼ出すことができなかったので、出店を断念しました」。開業を考えた人が原価計算の段階で引き返すほどの商売を、いま営業している店は続けています。
お菓子の市場は4兆996億円で過去最高。それでも街の店から消えていく
「ケーキが売れなくなったから潰れるんでしょ」と思うかもしれません。逆です。全日本菓子協会の集計では、2025年の菓子の小売金額は4兆996億円(前年比+5.7%)、生産金額は2兆9,403億円で、どちらも過去最高でした。
ただし数量は前年比▲0.8%で横ばいです。金額が伸びて、数量が伸びていない。市場の成長分は、ほぼ値上げでできています。売れなくなったのではなく、値上げできない店から消えている、というのがこの対比の読み方です。
帝国データバンクの別の集計がそれを裏づけます(こちらは対象が「洋菓子店」で、年度区切り・法的整理・負債1,000万円以上。冒頭の45件とは別の統計です)。2025年度の洋菓子店の倒産は65件で、2年連続の最多更新。そして洋菓子店の営業利益率は平均0.7%、3割超が赤字でした。100万円売って、手元に残るのは7,000円です。
東京商工リサーチの45件に戻ると、68.8%は資本金1,000万円未満の小さい店で、原因の91.1%は販売不振でした。値上げすれば客が離れ、据え置けば利益が消える。この板挟みを、体力の小さい店から順に抜けられなくなっています。
私は、消えているのは「ケーキの需要」ではなく「小さい店が値上げに耐える体力」だと見ています。根拠は3つです。1つめは、市場の金額が+5.7%なのに数量は▲0.8%であること。伸びの正体は単価の上昇で、値上げを通せた作り手の側は過去最高を更新しています。2つめは、洋菓子店の営業利益率が0.7%しかないこと。仕入れの上昇を数%かぶるだけで赤字に落ちる薄さです。3つめは、倒産の68.8%が資本金1,000万円未満に集中していることです。同じようにケーキを作っていても、値札を動かせるかどうかで生死が分かれています。
「全体の数字は過去最高なのに、足元では過去最多の倒産」という形は、住宅の世界にもあります(空き家は過去最多なのに、家の値段が上がるのはなぜ?)。平均や合計だけを見ていると、個々の現場で起きていることを見落とします。
ショートケーキ1個536円。「500円越えたら無理」の線はもう越えている
5ちゃんねるのスレッドに「ショートケーキが500円越えたら無理だわ」という書き込みがありました。総務省の小売物価統計では、いちごショートケーキ1個(70〜120g)の全国平均は2026年4月に536円。統計開始以来の最高値で、この線はすでに越えています。
| 時期 | いちごショートケーキ1個(70〜120g)の全国平均 |
|---|---|
| 2021年6月 | 417円 |
| 2026年4月 | 536円(統計開始以来の最高値) |
| 2026年6月 | 535円 |
5年で119円、28.5%の上昇です(当サイトで算出)。クリスマスケーキ(5号)の平均価格も、2021年の3,939円から2025年は4,740円へ、4年で約800円上がりました(帝国データバンク)。Yahoo!ニュースのコメント欄にあった「1個600円、700円するケーキを見ると、好きでも今日はやめておこうかなとなってしまう」という声の600円、700円は誇張ではなく、平均536円の分布の上側です。
値札の裏側では、材料の仕入れが軒並み上がっています。輸入小麦の政府売渡価格は2026年4月期で1トン62,520円(前期比+2.5%・農林水産省)。鶏卵は10個パック309円で、3月・5月と並ぶ最高値でした(6月時点・農林水産省の食品価格動向調査)。カカオの国際先物は2025年1月に1トン10,709ドルのピークを付け、2022年と比べ約4〜5倍の水準。仕入れ値が7年前の2倍になったという洋菓子店の報道もあります。さらに9月1日には雪印メグミルクがバターなど138品目を値上げし、雪印北海道バター200gは621円から636円になります(森永乳業も61品目)。
それでも、倒産原因の91.1%は販売不振です。材料高を値札に乗せれば客足が減り、乗せなければ利益が消える。536円という平均値は、その綱引きの現在地です。
「帰省土産離れ」は本当か——9割はいまも手土産を買っている
東京商工リサーチはこの調査に「値上げで帰省土産も我慢」という題を付けました。ただし、帰省土産の支出が減ったことを直接示す家計統計は見つかりません。ぐるなびの「帰省の手土産調査2026」では、帰省する人の約9割が手土産を用意しています。クロス・マーケティングの調査(2025年12月・1,100人)でも、帰省土産の予算は「昨年並み」が75.9%でした。
数字の背景として東京商工リサーチが挙げているのは、帰省土産そのものより贈答の習慣です。原文には「お中元や暑中見舞いなど贈答品の需要が落ち込み、苦境が際立つ」とあります。年に何度も箱菓子が動いた贈答の習慣が細り、書き入れ時が帰省シーズンに絞られてきた——統計から言えるのはここまでで、「誰も土産を買わなくなった」わけではありません。
その帰省シーズンが、いまです。東京商工リサーチは調査の締めくくりに「お盆の帰省シーズンが到来した。手土産を買うことも『菓子小売業』の支援につながる」と書いています。
帰りの手土産を駅ナカだけで決める前に、実家の近所の店を一度のぞいてみてください。97.7%が破産という数字は、閉店の予告が来ないことを意味します。「また次の帰省で」と通り過ぎた店のシャッターに、次は張り紙が出ているかもしれません。
生活・仕事にどう効くか
- 手土産の予算:いちごショートケーキの全国平均は1個536円。6個で3,216円になる。5年前の417円なら6個2,502円で、同じ箱が714円違う(単純計算・当サイトで算出)。
- 行きつけの店:倒産45件のうち44件(97.7%)が破産で、閉店の予告はほぼ来ない。買うか迷ったときの「また今度」が利かない。
- 小さい食品店の経営・開業:洋菓子店の営業利益率は平均0.7%・3割超が赤字(帝国データバンク)。原価を調べて出店を断念したという声がYahoo!コメントにもあるとおり、値上げ幅の設計が生死を分ける。
結局どうすればよいか
- 帰りの手土産は、駅ナカだけで決めずに実家の近所の店も一度のぞく。東京商工リサーチも「手土産を買うことも『菓子小売業』の支援につながる」と書いている
- 行きつけの店の焼き菓子やギフト缶は、思い立った日に買う。97.7%が破産=「閉店セールの告知を待ってから」は成立しない
- 菓子・パンの開業や副業を考えているなら、洋菓子店の営業利益率0.7%・倒産原因の91.1%が販売不振という数字を、事業計画の前提に置く
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公式出典
- 東京商工リサーチ「『ケーキや菓子店』の倒産が過去最多 〜値上げで帰省土産も我慢、贈答慣習の変化も影響〜」(2026年8月11日発表)
- 帝国データバンク「『洋菓子店』の倒産動向(2025年度)」(2026年5月2日発表)
- 総務省「小売物価統計調査」いちごショートケーキ1個(70〜120g)全国平均(推移の整理ページ)
- 全日本菓子協会 2025年の菓子小売金額・生産金額(食品新聞のYahoo!ニュース配信)(2026年4月1日発表)
- 帝国データバンク「クリスマスケーキの平均価格(2025年)」(2025年12月6日発表)
- 農林水産省「輸入小麦の政府売渡価格の改定(2026年4月期)」(2026年3月11日発表)
- 日本経済新聞「雪印メグミルク、バターなど138品目値上げ」(2026年7月30日発表)
- 時事通信(農林水産省 食品価格動向調査・鶏卵)(2026年6月16日発表)
- ぐるなび「帰省の手土産調査2026」
- FNNプライムオンライン(カカオ高騰・バター不足のYahoo!ニュース配信)
更新履歴
- 2026年8月14日 初版を公開
※本記事は2026年8月14日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。


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