地震保険はいくら出る?全損・大半損・小半損・一部損の認定基準と、請求の流れ5ステップ
地震で家に被害が出たとき、多くの人が最初に調べるのが「地震保険はいくら出るのか」です。
地震保険は、火災保険とは支払いのしくみがまったく違います。修理の見積書を出して、その金額が支払われる保険ではありません。建物の主要構造部にどれだけ損害が出たかを割合で判定し、「全損・大半損・小半損・一部損」の4区分に当てはめて、契約した保険金額の決まったパーセンテージを支払うという、かなり割り切った設計になっています。
この記事では、認定基準の具体的な数字、請求の流れ、そして請求前にやってはいけないことを整理します。
1. まず前提:地震保険は「建て直す保険」ではない
地震保険は単独では契約できず、火災保険とセットで加入する保険です。そして、契約できる保険金額には上限があります。
地震保険の保険金額は、火災保険で設定した保険金額の30%〜50%の範囲で決めます。さらに、建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限です。
つまり、火災保険を建物2,000万円で契約している場合、地震保険は600万円〜1,000万円の範囲でしか掛けられません。この上限そのものが、「地震保険は建物を建て直すためのお金ではない」という制度の割り切りを表しています。
なお、地震・噴火・津波による損害は、火災保険では補償されません。地震保険をセットしていなければ、地震で家が倒れても、地震で発生した火事で家が焼けても、火災保険からは出ません。ここは毎回誤解が多いところです。
2. 4つの区分と、支払われる割合
損害の程度は次の4区分に判定され、地震保険金額に対する割合で支払われます。
| 損害の程度 | 支払われる保険金 |
|---|---|
| 全損 | 地震保険金額の100%(時価が限度) |
| 大半損 | 地震保険金額の60%(時価の60%が限度) |
| 小半損 | 地震保険金額の30%(時価の30%が限度) |
| 一部損 | 地震保険金額の5%(時価の5%が限度) |
この4区分は2017年1月1日以降に始まった契約に適用されるものです。それ以前の契約は「全損・半損・一部損」の3区分(100%・50%・5%)でした。2017年の改定で、従来の「半損」が大半損(60%)と小半損(30%)に分けられ、全損と一部損のあいだの段差が小さくなっています。
そして重要なのが、一部損(3%)に届かない被害は、支払いがゼロだということです。地震保険は少額の損害を補償しない設計になっています。
3. 認定基準の具体的な数字
建物の場合
建物は、次の3つのうちどれかに当てはまれば、その区分と認定されます。
| 区分 | 主要構造部の損害額 | 焼失・流失した床面積 |
|---|---|---|
| 全損 | 建物の時価額の50%以上 | 延床面積の70%以上 |
| 大半損 | 時価額の40%以上50%未満 | 延床面積の50%以上70%未満 |
| 小半損 | 時価額の20%以上40%未満 | 延床面積の20%以上50%未満 |
| 一部損 | 時価額の3%以上20%未満 | — |
一部損にはもう一つ入口があります。上記に至らない場合でも、建物が床上浸水、または地盤面から45cmを超える浸水を受けたときは一部損と認定されます。津波による浸水を想定した基準です。
家財の場合
家財は建物とは別に契約し、別に判定されます。パーセンテージが建物とは違うので注意してください。
| 区分 | 家財の損害額 |
|---|---|
| 全損 | 家財全体の時価額の80%以上 |
| 大半損 | 時価額の60%以上80%未満 |
| 小半損 | 時価額の30%以上60%未満 |
| 一部損 | 時価額の10%以上30%未満 |
家財の一部損は10%からです。建物の3%より高いハードルになっています。テレビ1台と食器が割れた程度では届かないことが多く、「家中のものが倒れて割れた」レベルで初めて視野に入ってきます。
4. 見られるのは「主要構造部」だけ
ここが実務で一番トラブルになる点です。建物の判定で見られるのは、主要構造部です。具体的には、土台・柱・壁・屋根・はり・小屋組などの構造上重要な部分です。
つまり、次のようなものは建物の損害割合にほとんど、あるいはまったく反映されません。
- ブロック塀・門・塀・カーポート・物置(そもそも建物本体ではない)
- 玄関のタイル、外構、庭、植栽
- 内装のクロス(壁紙)のひび・はがれ
- 給湯器やエアコンの室外機
逆に、外から見て地味でも、基礎に構造的なひび割れが通っていたり、柱の傾きが出ていたりすると、割合は大きく動きます。「たいした被害じゃないから請求しない」と自分で判断しないことが、この保険では特に重要です。
5. 罹災証明書と地震保険は「別物」
同じ被害を見ているのに、判定する主体も基準も区分名も違います。混ぜて考えると必ず混乱するので、表で分けます。
| 罹災証明書 | 地震保険 | |
|---|---|---|
| 出すところ | 市区町村 | 損害保険会社 |
| 調査する人 | 自治体の調査員 | 保険会社が委託した鑑定人 |
| 区分 | 全壊・大規模半壊・中規模半壊・半壊・準半壊・一部損壊 | 全損・大半損・小半損・一部損 |
| 何に使うか | 支援金・応急修理・税の減免など公的支援 | 保険金の支払い |
| 申請 | 自分で市区町村に申請 | 自分で保険会社に連絡 |
そして大事なのが、地震保険の請求に罹災証明書は原則として必要ないということです。保険会社は自社の基準で独自に調査するので、自治体の調査結果を待つ必要はありません。「まず罹災証明書を取ってから保険に連絡しよう」と順番待ちをする必要はなく、両方を並行して進めてかまいません。
ただし例外もあります。被害が広範囲で現地調査が難しいときなど、保険会社が参考資料として罹災証明書の提示を求めたり、調査の代わりに活用することがあります。
罹災証明書のほうの手続き(区分の基準・第2次調査・支援金)は別記事にまとめています。
👉 罹災証明書は「片付ける前の写真」で決まる|撮り方のポイントと、全壊・半壊を分ける損害割合
6. 請求の流れ5ステップ
ステップ1:片付ける前に写真を撮る
保険でも公的支援でも、ここが共通の出発点です。鑑定人が来るまでに片付けてしまうと、被害の証拠が消えます。家の外は可能な範囲で4方向から、家の中は部屋ごとの全景と被害箇所の寄りを撮ります。割れた家財を捨てる前に、まとめて広げて撮っておくのもポイントです。
ステップ2:保険会社(または代理店)に連絡する
証券番号がわかるとスムーズですが、わからなくても契約者の名前・住所・生年月日で照会できます。証券が見つからないことを理由に連絡を遅らせる必要はありません。
火災保険をどこで契約したか忘れてしまった場合は、住宅ローンを組んだ金融機関、家を買った不動産会社、通帳やクレジットカードの引き落とし履歴から辿れます。それでもわからないときは、日本損害保険協会の「自然災害等損保契約照会制度」に問い合わせる方法があります。
ステップ3:必要書類を用意する
保険金請求書、損害箇所の写真、修理見積書などを求められます。書類の様式は保険会社から送られてくるので、勝手に修理を発注する前に手順を確認します。
ステップ4:鑑定人の現地調査を受ける
地震保険は、請求すればすぐ振り込まれるものではありません。保険会社が委託した鑑定人が現地を確認し、損害割合を算定して区分を決めます。
このとき、自分が把握している被害箇所を一覧にしておくと伝え漏れが防げます。特に、床下・小屋裏・基礎まわりなど、言われないと見ない場所です。立ち会って一緒に見て回るのが理想です。
ステップ5:区分の通知を受け、保険金を受け取る
結果に納得できない場合は、根拠を示して再調査を依頼できます。ここで効くのが、ステップ1で撮った写真です。「片付ける前はこうだった」を示せるかどうかで結論が変わることがあります。
保険会社との話し合いで解決しない場合は、そんぽADRセンター(日本損害保険協会の相談・紛争解決サポート窓口)に相談する道があります。
7. 期限は3年。ただし早いほうがいい
保険金請求権の時効は、原則3年です(保険法95条)。地震から3年を過ぎると請求できなくなります。
「あとから壁のひびに気づいた」というケースでも、3年以内であれば請求できます。実際、地震から時間が経ってから請求して支払われた例もあります。「もう地震から半年経ったから無理だろう」とあきらめる必要はありません。
ただし、時間が経つほど「その損害が本当にその地震によるものか」の立証が難しくなります。気づいたら早めに連絡するのが結局は有利です。
72時間ルール
もう一つ知っておきたいのが、72時間以内に生じた2以上の地震は、まとめて1回の地震とみなすという取り扱いです(被災地域がまったく重複しない場合を除く)。
前震・本震・大きな余震が続いたときに、それぞれ別々に保険金が出るわけではありません。72時間内のものは合わせて被害を見て、最終的にどの区分に当たるかを1回だけ判定します。
なお、全損の保険金が支払われると、その地震保険契約はその時点で終了します(保険の目的物がなくなったという扱いです)。建て直したあとは新たに契約し直すことになります。
8. 請求前にやってはいけないこと3つ
① 片付け・修理を先に済ませてしまう
繰り返しになりますが、これが最大の失敗です。写真がないまま原状回復してしまうと、被害があったこと自体を示せなくなります。
② 「保険金が使えます」という業者の勧誘に乗る
災害のあと、「保険金で自己負担なく修理できます」と勧誘する業者が増える傾向があります。契約させて高額な手数料を取る、認定されなかった場合に高額なキャンセル料を請求する、被害を実際より大きく見せる作業をする、といったトラブルにつながります。
被害を実際より大きく見せて請求すれば、保険金詐欺になります。不審な勧誘を受けたら、消費者ホットライン「188」(局番なし)に相談してください。修理は、保険会社に連絡して手順を確認してから発注します。
③ 家財の請求を忘れる
建物だけ請求して家財を忘れる人が少なくありません。家財に地震保険を掛けているなら、建物と家財は別に判定されるので、両方請求します。家財は10%以上で一部損なので、家中のものが倒れたなら検討する価値があります。
9. これから加入する人・見直す人へ
すでに被害が出ている場合、地震保険をあとから掛けることはできません。ただ、この記事を「今のうちに確認しておこう」という気持ちで読んでいる方には、次の3点をおすすめします。
- 火災保険に地震保険がセットされているか確認する。付いていない契約は珍しくありません
- 保険金額が火災保険の何%になっているか確認する。30%にしていると、支払いも小さくなります
- 建築年割引・耐震等級割引が適用されているか確認する。1981年6月1日以降に新築された建物には建築年割引(10%)があります
証券は、いざというとき取り出せる場所に置いておきます。停電・断水のなかで探すことになるので、非常持ち出し袋に証券のコピーか写真を入れておくと確実です。書類をまとめて持ち出すなら、防水の書類ケースのようなものに一式入れておくと、雨のなかの避難でも傷みません。
保険そのものの選び方は別記事にまとめています。
👉 家を買う・住み替える人におすすめの火災保険・地震保険の選び方3選
自分の家がどのリスクを持っているか、先に知っておく
地震保険をいくら掛けるべきかは、住んでいる場所がどのリスクを持っているかで変わります。活断層が近いのか、液状化しやすい地盤なのか、津波や洪水の想定があるのか。
undefined では、住所を入力するだけで地震・土砂災害・洪水などのリスクをまとめて確認できます。
被災後の生活と、賃貸の場合の扱いも別記事にまとめています。
👉 在宅避難の備えは「トイレ→水→電気」の順|4人家族で必要な量を計算しました
👉 借りている家が地震で壊れたら家賃はどうなる?民法611条の「当然減額」と、退去・敷金の扱い
👉 なぜ熊本でまた震度7?10年前から「次はここ」と名指しされていた日奈久断層帯の南側
まとめ
- 地震保険は火災保険の30〜50%の範囲でしか掛けられない(建物5,000万円・家財1,000万円が上限)。建て直す保険ではない
- 支払いは全損100%・大半損60%・小半損30%・一部損5%の4区分。2017年1月以降始期の契約が対象
- 建物は主要構造部の損害額が時価の3%以上で一部損。50%以上で全損。ブロック塀・外構・クロスのひびはほぼ反映されない
- 家財は建物と別判定で、10%以上が一部損。建物だけ請求して家財を忘れないこと
- 罹災証明書は原則不要。自治体の調査を待たず、保険会社への連絡と並行して進められる
- 判定は保険会社が委託した鑑定人の現地調査による。立ち会って被害箇所を伝えると漏れが防げる
- 時効は3年。72時間以内の複数の地震はまとめて1回として判定される
- 「保険金で自己負担なく修理」の勧誘には消費者ホットライン188
損害の認定は個別の被害状況によります。この記事は全体像をつかむためのものとして使い、具体的な判断は必ずご契約の保険会社・代理店に確認してください。


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