PDFをAIに読ませてExcel(エクセル)にまとめると、読めなかった文字は空欄にならず、もっともらしい別の文字で埋められることがあります。この記事で書く実測では、所在地の市名が別の市に変わり、管理費が実際の1.7倍の金額になりました。エラーは出ず、表は整って見えます。
そのまま契約書や物件情報に使えば、直すのは先方への訂正連絡から始まります。この記事は、私が自作ツールで確認した誤読の実例と、AIに任せる前に自分でできる検算、外注に回す線引きを書きます。
先に結論
- 向きが壊れたスキャンPDFでは、AIが読めない文字を推測で埋め、所在地・管理費・学区が別の値になった
- AIは創作した値にも「所在地欄で読んだ」と出典を付けるため、AIの自己申告は検算にならない
- 検算は「住所は地図で引く・金額は面積や単価と割る・読めない文字は空けさせる」の3つで足りる
AIは読めない文字を空けずに埋める
「AIに読ませれば、PDFの中身はそのままExcelに移る」と思っている人は多いはずです。移るのは、AIが読めた部分だけです。
人が書類を読むときは、かすれて読めない字を「ここは読めない」と手を止めます。AIは止まらず、前後の文脈から一番ありそうな文字を選んで先へ進みます。数字や住所は、ありそうな値が実在の値と一致する保証がありません。
この性質は、読み取りの精度が高いAIでも変わりません。精度が高いほど、間違えたときの見た目が本物に近くなります。
実測:向きが壊れたPDFで所在地が別の市になった
自作の入稿ツールを作る過程で、2026年8月2日にスキャンしたマイソク(物件の販売図面)のPDFを、3つのAIに同じ条件で読ませました。
結果は、ChatGPT(チャットジーピーティー)とGemini(ジェミニ)が正しく読み、Claude(クロード)だけが落第でした。落第した出力の中身は次のとおりです。
| 項目 | 資料の実物 | AIの出力 |
|---|---|---|
| 所在地 | 箕面市 | 豊中市(別の市) |
| 管理費 | 13,000円 | 22,877円 |
| 交通 | 箕面船場阪大前駅 | 千里中央駅 |
| 小学校区 | 萱野東小学校 | 豊野東/豊島(2回の実行で答えが違う) |
管理費の22,877円は、資料に書かれていた専有面積「約22.87坪」の数字から作られた値でした。読んだのではなく、近くにあった数字を管理費の欄へ持ってきています。小学校区は同じ資料を2回読ませて答えが変わったので、毎回その場で作っていたことになります。
原因は文章の読み取り能力ではなく、PDFの向きでした。このPDFは「270度回転して表示する」と内部で宣言していましたが、正しい向きは180度でした。宣言どおりに描くと全部の文字が横倒しになります。ChatGPTとGeminiは向きを自動で直して読み、Claudeは直さずに読もうとして推測で埋めたのです。
その後、向きが正常な画像だけのPDFをClaudeに読ませたところ、正しく読めました。AIが苦手なのは画像のPDFではなく、向きや傾きが壊れた資料です。
この向きのずれは、特定の販売元の様式ごと同じ壊れ方をしていることがあります。1件だけの事故ではなく、同じ様式の資料が届くたびに起きる前提で考えたほうが安全です。
AIが「読めた」と言っても検算にならない
誤りに気づくために「出典も一緒に書かせる」方法があります。私も最初は、根拠の欄が空なら要確認に倒せばよいと考えていました。
ところが、創作された所在地にも「所在地欄で読み取りました」という出典が付いていました。AIは間違った値にも、正しい値と同じ形で根拠を書きます。根拠の有無では、正誤を見分けられません。
書類のほうが間違っていることもあります。ある販売図面では、周辺施設9件のうち6件で「徒歩◯分」が誤っていました。全件が「徒歩3分」と印字されていて、距離1,000mの病院も3分です。不動産の広告は80mを1分と数え、端数は切り上げるので、正しくは13分です。AIが図面を完璧に読み取っても、原本の数字が誤りなら、そのまま誤りがExcelに入ります。
AIに渡す前後にできる検算3つ
高い精度を求めなくても、次の3つで大半の事故は止まります。
- 住所は地図で引く — 国土地理院の住所検索や地図で、出てきた住所が実在するかを1件ずつ引きます。市名が変わるような誤りはここで見つかります
- 金額は元の数字と割り算する — 管理費なら「面積×単価」で桁が合うか、徒歩分数なら距離を80で割って切り上げた値と一致するかを確かめます
- 読めない文字は空けさせる — AIへの指示に「読めない文字は推測せず『判読不可』と書く」と入れます。埋められた文字を探すより、空欄のほうが後から見つけやすくなります
PDFの向きが怪しいときは、読ませる前に画面で開いて、文字が正しい向きで見えるかを確認します。読める向きに直してから渡すだけで、上の実測のような誤読は避けられました。
AIに整えさせた表の数字が変わる別の落とし穴はChatGPTでCSVを整えたら数字が勝手に変わってた?に書いています。
件数が多いときは目視つきで外注する
検算は1件なら数分で終わります。100件を超えると、検算だけで1日が消えます。ここが外注に回す線です。
2026年9月30日にココナラの検索ページで数えた件数は次のとおりです。
| 検索語 | 件数 |
|---|---|
| PDF Excel(エクセル)変換 | 2,591件 |
| データ入力 代行 | 5,429件 |
| PDF データ入力 | 6,812件 |
同じ「PDFをExcelにする」でも、AIの出力をそのまま納品する出品と、人が原本と見比べて納める出品が混ざっています。頼む前に、出品ページで「原本と照合するか」「読めない文字をどう扱うか」が書かれているかを見ると、当たりを引きやすくなります。
こちらでは、登記簿PDFの所在・地番・所有者の住所をExcelにまとめる仕事を受けています。氏名と住所は原本のとおりに入力し、かすれて読めない文字は推測せず「判読不可」と書いて返します。10件までが3,500円で、11件目からは件数を確認して見積もります。
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AIに整えさせた表の数字が変わる例を先に見る
登記簿以外のPDFは、件数と項目を送っていただければ対応できるか確認します。
ココナラの件数・出品内容は2026年9月30日に確認した時点の値です。出品と料金は変わるため、最新の内容は各ページで確認してください。
出典・集計条件
- 入稿ツール開発時の読み取り検証(2026年8月2日、スキャンPDF1件を3つのAIで比較。資料の実物と出力を照合)
- 販売図面の周辺施設の徒歩分数の検算(2026年9月、9件中6件が距離と不一致)。徒歩1分=80m・端数切り上げは不動産の表示に関する公正競争規約に基づく
- ココナラの検索結果(2026年9月30日時点。各キーワードの検索結果の総件数)
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