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床上浸水と床下浸水の違い/修理費用の目安は4倍

床上浸水と床下浸水の違いは、水が家の「床」を越えたかどうかです。床を越えたとたん、国が治水の計算に使っている家の被害の目安は約4倍、家具や家電は約8倍になります。何cmからという決まりはありません。

千葉県の延床100㎡の家にあてはめると、床下浸水で約115万円、床上50cm未満で約462万円。床上2〜3mなら約1,447万円です。

この記事は戸建ての話です。マンションの1階にお住まいならマンションの1階は浸水したら住めない?を、水が引いた日の片付けの順番は家が浸水したらまず何をするの?を先にどうぞ。

先に結論

  •  壁の石膏ボードは、一部が浸かっただけでも全面交換になることがある
  •  床上浸水なら1階は乾くまで1か月以上使えない。住むなら2階か仮住まい
  •  全部直すか手放すかの二択ではない。見積もりは家の値段と並べて決める
目次

床上浸水と床下浸水の違いは「床より上か下か」だけ

言葉の決まりは、消防庁が被害を数えるときに使う「災害報告取扱要領」にあります。

「床上浸水」とは、住家の床より上に浸水したもの及び全壊・半壊には該当しないが、土砂竹木のたい積により一時的に居住することができないものとする。

床下浸水は「床上浸水にいたらない程度に浸水したもの」です。線は床の1本だけで、何cmという数字は出てきません。水が床に届いていなくても、土砂が積もって住めなくなれば床上浸水に数えます。

「床上浸水は50cmから」という話は、ハザードマップの色分けと混ざっています。ハザードマップの「0.5m」は地面から測った深さです。木造の家の床は、建築基準法施行令第22条で原則として地面から45cm以上と決まっています(床下をコンクリートで覆う場合などは例外)。床の高さが45cmの家なら、地面から50cmの水は床上5cmです。

床下浸水と床上浸水の断面図。水が床の下で止まれば床下浸水で家の被害率4.7%、床を越えれば床上浸水で18.9%

読者

床下浸水なら、国の数え方でも軽い扱いですよね?

おかあさん

数え方の上ではそうです。「り災世帯」に数えるのは床上浸水からで、床下浸水の世帯は入りません。ただ、お金の話は別です。次で数字を出します。

乾かすときと、次の雨の前に

床上でも床下でも、乾かすのに約1か月かかります。そのあいだ風を送り続ける道具と、次の雨で水を玄関から入れないための道具です。

サーキュレーター(DCモーター・静音・360°首振り)

サーキュレーター(DCモーター・静音・360°首振り)

床をはがしたあとの床下や壁の中は、窓を開けるだけでは空気が動きません。床の開口部に向けて風を送り続けると、乾くまでの1か月を短くできます。

吸水式 土のう袋(水で膨らむ・逆流防止にも使える)

吸水式 土のう袋(水で膨らむ・逆流防止にも使える)

土のうは砂を詰める前提の道具ですが、住宅街ではその砂が手に入りません。水で膨らむ型なら平たいまま棚にしまえて、玄関の段差にも、下水が逆流してくる風呂・トイレの排水口の上にも置けます。

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床を越えると修理費の目安は4倍、家財は8倍

国土交通省は、堤防などの効果を計算するための「治水経済調査マニュアル」で、浸水の深さごとの被害率を決めています。家の被害率は、ハウスメーカーなどへの聞き取りをもとに、部材ごとの補修費を積み上げて出した値です(令和2年改定)。修理費の目安として読めるのはこのためです。

浸水の深さ 家の被害率 家(千葉・100㎡) 家財の被害率 家財
床下 4.7% 約115万円 3.7% 約35万円
床上50cm未満 18.9% 約462万円 30.8% 約289万円
50cm〜1m 25.3% 約619万円 53.3% 約499万円
1〜2m 40.6% 約993万円 70.1% 約657万円
2〜3m 59.2% 約1,447万円 94.8% 約888万円
3m以上 80.0% 約1,956万円 97.7% 約915万円

平らな低地(地盤の勾配1/1000未満)の被害率。家は千葉県の1㎡あたり24.45万円×100㎡、家財は1世帯あたり936.8万円で計算(いずれも国交省の評価単価)

床下から床上50cm未満に上がるだけで、家は4.7%から18.9%、家財は3.7%から30.8%です。床を1cm越えるかどうかで、家は約4倍、家財は約8倍の差になります。

床の上で跳ねるのは、壁と床の中身のせいです。令和2年の改定前は、床上50cm未満の家の被害率が9.2〜14.4%でした。改定で約2倍に上がったのは、石膏ボードや断熱材、キッチンや浴室などの設備が、今の家では大きな割合を占めるようになったためです。

実際にかかった額とも桁がそろいます。8月13日の千葉豪雨で床上1cm、床下に水がたまった40代の夫婦は、床下の復旧に「130万円ぐらい」かかったと取材に答えています。床上30cmだった71歳の男性は、家具と家電を買いそろえると約150万円と話していました(FNNプライムオンライン、9月21日配信)。

自分の家で出すなら「県の1㎡あたりの単価×延床面積×被害率」です。単価は東京36.99万円、大阪27.50万円、神奈川27.36万円、愛知24.04万円、茨城21.80万円(令和5年の値)。東京の100㎡の家が床上50cm未満なら約699万円です。

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この単価は新築の建築費に近い値で、築年数で下がる中古の値段ではありません。国の平均から出した目安で、あなたの家の見積もりではありません。

浸水の深さ別の罹災証明の区分と、直す範囲

浸水の深さ別に、罹災証明の区分、直す範囲、千葉県の延床100㎡の家で試算した家と家財の被害額を並べた表

罹災証明書の区分は、内閣府の「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」で深さごとに決まっています。床下は一部損壊、床上10cm未満は準半壊、10cm以上1m未満は半壊、1m以上1.8m未満は中規模半壊、1.8m以上は大規模半壊です。

ふつうの浸水では、床上1.8mを超えても全壊にはなりません。全壊の線があるのは、川の氾濫や津波の水の勢いで外壁や建具まで壊れた場合の別の表です。八千代市で床上2m26cmまで浸かった家も、判定は大規模半壊でした(FNN)。深さの測り方は床下浸水でもり災証明は出ますか?にまとめています。

直す範囲は、深さよりも「水がどこまで染みたか」で決まります。国交省の被害率の検討資料には、住宅メーカーなどへの聞き取りとして次の指摘が載っています。

内壁に石膏ボードが使用されている場合、浸水により著しく損傷し、一部のみの浸水であっても全面交換が必要となる場合がある。

壁の中の断熱材も同じです。千葉豪雨の家を見たリフォーム業者は、断熱材は縦に長い1枚ものなので、下の方が濡れただけでも壁を壊して替えることになると話しています。床下浸水でも、床下の断熱材が濡れていれば外して入れ替えます。千葉豪雨で床下浸水した家でも、復旧業者が断熱材を撤去していました。

内壁の石膏ボードをはがし、柱のあいだの断熱材が見えている改修中の部屋
壁の石膏ボードをはがすと、柱のあいだに断熱材が入っています。浸水したらこの断熱材まで入れ替えます(写真はイメージ/Photo: Pexels)

読者

見た目は乾いたし、壁紙だけ張り替えれば済みませんか?

おかあさん

同じ国交省の資料に、そのまま放置すると2〜3年で腐朽が進み、シロアリが出るおそれがあると書かれています。被災した人が表面のクロスだけ張り替えればいいと判断しがちなことも、名指しで指摘されています。

床下なら住みながら直せる、床上なら1階は1か月以上使えない

床下浸水なら、床下を乾かしながら住み続けられる場合があります。乾くまでの目安は約1か月で、濡れた床下の断熱材は外して入れ替えます。乾かし方は床下浸水は何日で乾くの?に書きました。

床上浸水では、1階の床や壁をはがして乾かすので、そのあいだ1階は使えません。水害の手引き『水害にあったときに』(震災がつなぐ全国ネットワーク)には「家屋を十分に乾かすには1か月以上かかります。それまでは仮住まいや2階での生活になるかもしれません。」とあります。

戻って住む前に、次の3つを済ませます。

  • 浸かった家電は通電しない。家電製品協会は「水害などによる冠水品はぜったいにそのまま使用、通電しないでください」としています
  • 分電盤やコンセントが浸かったら、電気工事店か電力会社に見てもらってからブレーカーを上げる
  • 床下にはもぐらない。手引きには、有毒ガスがたまっていたりクギが飛び出ていたりすることがあると書かれています

カビは見た目ではわかりません。八千代市の家を見た業者は、表からは問題がなさそうでも触るとまだ湿っていて、カビが出るおそれがあると指摘していました。フローリングにはもうカビが点々と出ていたそうです。

修理に使える公的な支えは応急修理75.7万円まで、半壊は支援金0円

公的な支えは、罹災証明の区分で決まります。

罹災証明の区分 住宅の応急修理(2026年度) 被災者生活再建支援金(補修して住む・複数世帯)
大規模半壊 75万7,000円まで 150万円(基礎50万+加算100万)
中規模半壊 75万7,000円まで 50万円(加算のみ)
半壊 75万7,000円まで 0円
準半壊 36万7,000円まで 0円
一部損壊(床下浸水) 対象外 0円

水の勢いで外壁が壊れて全壊と判定された場合、支援金は補修して住むなら200万円(基礎100万+加算100万)。単数世帯は4分の3の額

応急修理は現金ではなく、市区町村が業者に直接払う仕組みです。使うと原則として応急仮設住宅には入れません(家を直すか、仮設住宅に入るか)。

床上30cmの半壊なら、支援金は0円で、応急修理が75万7,000円まで。国の目安で家に約462万円、家財に約289万円の被害が出る深さに対して、公的に出るのはこの修理分だけです。残りは火災保険か自分で払うことになります。

火災保険の水災補償は、代表的な商品の約款では「床上浸水」か「地盤面から45cmを超える浸水」、または損害が建物の再調達価額の30%以上のときに支払われます(水災補償の45cm・30%基準)。パンフレットの「最高600万円」を見て水災に入っていると思っていた71歳の男性は、その額は全壊や流されたときのもので、床上30cmで受け取れたのは見舞金の60万円だけでした(FNN)。

足りない分は、住宅金融支援機構の災害復興住宅融資で借りる道もあります。

直す・一部だけ直す・建て替える・売るの決め方

住めるか・直すかを決める5つの順番。身の安全、片付ける前の撮影、1か月以上の乾燥、区分とお金の確認、どう直すかの決定

最後に決めるのは、どこまで直すかです。見積もりは、その家の値段と並べて見ます。

当サイトが国の不動産取引価格情報から集計している千葉県八千代市の中古戸建て(2024年10〜12月期〜2026年1〜3月期の81件)では、延床1坪あたりの取引価格の中央値が、築10年以内で114.8万円、築31〜40年で44.1万円でした。延床100㎡に直すと、築31〜40年の家は土地込みで約1,333万円です。

1階を骨組みまで戻す工事を「下手すれば1000万超えてくる」と業者に言われた場合、築35年前後の家なら、土地ごとの取引価格の4分の3にあたります。築10年以内の家(100㎡で約3,474万円)なら3割弱です。同じ1,000万円の工事でも、築年数で重さがまるで違います。

築年数が古く、1階を骨組みまで戻す見積もりが家の取引価格に近づくなら、建て替えや売却と並べて比べる段階です。建て替えるなら、基礎を高くする、寝室や分電盤を2階に置くといった、次の浸水に備えた造りを選べます。

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私は、床上浸水した家を「全部直すか、手放すか」の二択で考えないほうがいいと見ています。『水害にあったときに』には、業者に相談すると家を全部新しくする見積もりが出ることが多いが、過去の水害では一部を修繕して住み続けた人もいる、と書かれています。床上75cmだった40代の住人も、先に壁を直して、床は時間をおいてからにすると決めていました(FNN)。

ただ、一部だけ直すときも、濡れた断熱材と床下の泥は残さないほうがいいと考えます。国交省の資料が腐朽とシロアリを挙げているのはここだからです。あとに回せるのは、乾いていて傷みのない内装の仕上げです。

売る場合は、浸水したことを買う人に伝えます。売主が家の状態を書いて渡す告知書(物件状況報告書)には、浸水の有無を書く欄があります。八千代市の40代の男性も、ローンが残るなかで今売っても買い手はつかないだろうと考え、直して住むかどうかをまだ決められずにいました(FNN)。

見積もりは2社以上から取り、どこまで直す工事なのかを並べて比べます。佐賀県建築士会の手引きは「必ず見積もりを取り、施工範囲と金額を確認してから発注してください」と書いています。災害のあとに回ってくる業者の相談先は訪問してきたリフォーム業者と契約してよいか相談できる無料ダイヤルにまとめました。

次の雨の前に、自宅の浸水の深さを調べておく

表のとおり、浸水が1段深くなるごとに、家の被害の目安は数百万円ずつ増えます。住所で洪水の浸水想定区域に入っているかを調べ、入っていれば自治体のハザードマップで深さを確かめておくと、家財を2階へ上げる高さも決められます。

ただ、ハザードマップの外でも浸かります。八千代市で2m26cm浸かった家は、市のハザードマップでは洪水の浸水想定区域ではない場所でした(FNN)。千葉豪雨で浸水が想定区域の外に広がった話は浸水想定区域の外/千葉豪雨は半分以上にあります。

\住所を入れるだけで浸水想定区域かどうか分かります/

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出典

震災がつなぐ全国ネットワーク『水害にあったときに』、佐賀県建築士会 危機管理対策部会「浸水後の『壁・床』内部の対処について」も参照しました。建築基準法施行令第22条(居室の床の高さ及び防湿方法)はe-Govで確認できます。

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2026年9月23日時点の制度・数値で書いています。応急修理の上限額は年度で変わります。

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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