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不動産用語の「両手」って、売主と買主の両方からお金をもらうこと?

3,000万円の中古マンションを買うとき、あなたが仲介した不動産会社に払う手数料の上限は105万6,000円です。同じ取引で、その会社が売主からも105万6,000円を受け取っていることがあります。合計211万2,000円。あなたの支払いが増えたわけではないのに、会社の受け取りだけが倍になる形です。

この形を不動産用語で両手(りょうて)といいます。片方からだけ受け取るのが片手(かたて)です。

家を買う前にこの言葉を知った人が、こう質問しています。

両手の取引と、片手の取引、どちらの方が指値が通るとか、あるでしょうか?片手の場合、こちらの不動産仲介さんは、こちらの味方になりますよね?両手の場合は中立の立場でしょうが、手数料が2倍なので、仲介さんもまとめようと少し頑張るかもしれません。

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この短い文に、思い違いが2つ入っています。「手数料が2倍」は会社から見れば正しく、買主から見れば正しくありません。「片手ならこちらの味方」も、そう決まってはいません。順に見ていきます。

先に結論

  • 不動産用語の「片手」「両手」は、仲介した会社が手数料を誰から受け取るかの呼び分けです。宅地建物取引業法にこの言葉は出てきません
  • 買主が払う手数料の上限は、片手でも両手でも同じです。国の告示が「依頼者の一方につき」上限を決めているからです
  • 両手そのものを禁じる条文はありません。2025年1月から義務になったのは、レインズへ取引状況を登録することです
  • 3,000万円の売買なら、一方あたりの上限は105万6,000円。両手だと会社の受け取りは211万2,000円になります
  • 「両手だから値引きが通る」「片手だからこちらの味方」とは決まりません。効いてくるのは、担当者が売主の事情をどれだけ知っているかです
目次

不動産用語の「片手」「両手」は、手数料を誰から受け取るかの呼び方

家の売買には、売る人の側と買う人の側があります。売主から「売ってください」と頼まれた会社を元付(もとづけ)、買主を連れてくる会社を客付(きゃくづけ)と呼びます。この2つの役目を別々の会社が担当すると、売主は元付に、買主は客付に、それぞれ手数料を払います。これが片手です。業界では「分かれ」とも呼ばれます。

ある投稿で、この仕組みがひとことで説明されていました。

「わかれ」とは、元付は売主さんから手数料をもらう、客付は買主さんから手数料をもらう、という方式です。

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いっぽう、売主から頼まれた会社が自分で買主も見つけてくると、その1社が売主と買主の両方から手数料を受け取ります。これが両手です。片手・両手・分かれのどれも法律の言葉ではなく、現場で生まれた呼び方なので、会社や地域によって使い方に幅があります。

元付と客付の役割そのものは、このシリーズの1本目で詳しく書いています。SUUMOに同じ物件が4件も載ってるのはなぜ?を先に読むと、この記事の話がつながります。

3,000万円の家だと、一方あたり105万6,000円が上限です

仲介手数料は、会社が好きに決めているわけではありません。国土交通大臣の告示(昭和45年建設省告示第1552号)で上限が決まっていて、売買代金を3つに区切って計算します。

売買代金の区分 上限の割合
200万円以下の部分 100分の5.5
200万円を超え400万円以下の部分 100分の4.4
400万円を超える部分 100分の3.3

3,000万円の家なら、11万円+8万8,000円+85万8,000円で105万6,000円。よく見る「3%+6万円+消費税」は、この区分計算を1本の式にまとめた早見式で、答えは同じになります。

ここで押さえておくと後が早いのが、告示の言い回しです。条文には「依頼者の一方につき」と書いてあります。片手でも両手でも、買主から見た上限はこの105万6,000円で変わりません。両手というのは、会社が反対側からも同じ枠を受け取っている状態のことです。

なお、これは上限であって定価ではありません。手数料以外の名目でお金を受け取れるかどうかには線引きがあり、業者向けに書いた記事があります。仲介手数料のほかにお金を受け取ると違反になるパターン。請求書に見慣れない項目が並んでいたら、こちらが判断の材料になります。

「両手だと手数料を2倍取られる」と思っていた人へ

取られません。ここが冒頭の投稿でいちばん誤解されていた部分です。

上限は取引ごとではなく、依頼者ごとにかかります。だから売主が105万6,000円、買主が105万6,000円で、会社の受け取りが211万2,000円になっても、買主が払う額は片手のときと同じです。

間に会社が増えても同じです。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」には、複数の会社が1つの売買を仲介したときは、その会社たちが依頼者の一方から受け取る報酬の総額が告示の金額以内でなければならない、と書かれています。関わる会社が2社でも3社でも、あなたが払う上限は動きません。動くのは、その枠を何社で分けるかだけです。

損得の話としてまとめると、両手か片手かで変わるのはあなたの支払額ではなく、担当者の取り分です。そして取り分が変われば、力の入れ方が変わることはあります。そこが次の論点になります。

両手を禁じる条文はありません。処分の対象になったのは囲い込みです

ネットで「両手仲介は違法」と書かれているのを見ることがありますが、両手そのものを禁じる条文は宅地建物取引業法にありません。問題として扱われてきたのは、両手にしたいがために他社からの問い合わせを断る囲い込みのほうです。

国土交通省は2024年6月に宅地建物取引業法施行規則を改正し、2025年1月1日から、不動産会社にレインズへ物件の取引状況を登録することを義務づけました。あわせて、売主に渡される登録証明書に2次元コードが載るようになり、売主が自分の物件が今どう扱われているかを画面で確認できるようになっています。

売主の立場でこれを使う手順は別記事にまとめてあります。スマホだけで確認できます。

売却中の自分の家が囲い込まれていないか確認する ▶

登録証明書の2次元コードから、売主本人が3つの区分を見る手順です

ここで一方に肩入れしないために書いておくと、囲い込みは「わざと」だけで起きるものではありません。成約したのに取引状況の更新が漏れていた、という形でも同じ状態になります。業者側から見た線引きは囲い込みは「わざと」だけじゃないに書きました。

両手のとき、値引き交渉はどうなるのか

ここは業界の中でも見解が割れています。冒頭の投稿への回答は、両手のほうが有利だと答えていました。

両手の取引でしょう。片手から来た話より両手の話のほうを優先するから、たとえば同時期に同じ程度の指値をしてきたらどっちが有利かわかるはず。

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逆の見方もあります。別の投稿では、元付は売主からしか手数料をもらえない場面があるので売主に有利な条件で進めようとするのは当たり前だ、と現役の業者が答えていました。同じ「元付」という立場から、正反対の結論が出てきます。

ここは私の見方です

私は、片手か両手かという分類そのものは、買主にとってあまり使えない物差しだと考えています。値引きが通るかどうかを決めているのは、売主がいくらまでなら受けると言っているか、住み替え先の契約がいつなのか、といった売主側の事情です。そしてその事情を知っているのは、売主と直接話している担当者だけです。両手の会社はそれを知っている確率が高い、というだけの話で、知っていることと買主に有利に動くことは別です。この見方を裏づける法令や公的な統計はありません。

買う側にできるのは、担当者が売主の事情をどれだけ話せるかを見ることです。「売主さんは、いつまでに引き渡したいと言っていますか」と聞いて、その場で答えが返ってくるか、持ち帰りになるか。ここに差が出ます。

いま話している会社が片手か両手かを確かめる2つの方法

1. 契約の前に「御社は売主さんとも媒介契約を結んでいますか」と聞く

聞いて構いません。禁じられていることではありませんし、両手であること自体はやましいことでもないので、答えられる会社は普通に答えます。答えを渋る場合でも、その反応自体が情報になります。この質問は、売主とどれだけ近い位置にいるかを測る質問でもあります。

2. 売主なら、媒介契約の種類を自分の契約書で確認する

売る側であれば、自分が結んだ契約の種類で状況が変わります。専任媒介と専属専任媒介は1社にしか頼めない形なので、その会社が両手を狙える位置にいます。一般媒介なら複数社に頼めます。それぞれ、レインズへの登録期限と報告の頻度も違います。

契約の種類 他社にも頼めるか レインズ登録 売主への報告
一般媒介 頼める 義務なし 法律上の義務なし
専任媒介 頼めない 契約日の翌日から7日以内 2週間に1回以上
専属専任媒介 頼めない(自分で買主を見つけても直接契約できない) 契約日の翌日から5日以内 1週間に1回以上

この期限を業者側がどう管理しているかは媒介契約を結んだ後の期限管理に書いています。報告が来ない、レインズに載った様子がない、というときの物差しになります。

まとめ

不動産用語の片手と両手は、会社の取り分の話であって、あなたの支払額の話ではありません。買主が払う上限は告示で「依頼者の一方につき」決まっていて、両手でも片手でも、間に会社が何社入っても変わりません。

両手だから避ける、片手だから安心する、という選び方は、実際にはあまり働きません。見るべきなのは、目の前の担当者が売主の事情をどれだけ話せるかです。売る側であれば、2025年1月からの取引状況の登録義務によって、自分の物件がどう扱われているかを自分で確認できるようになりました。

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出典

  • 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年10月23日建設省告示第1552号/令和6年6月21日国土交通省告示第949号改正)/国土交通省
  • 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(第46条第1項関係)/国土交通省
  • レインズの機能強化について(令和6年12月24日 不動産・建設経済局不動産業課)/国土交通省
  • 媒介契約制度/公益財団法人 東日本不動産流通機構(レインズ)
  • 不動産会社に売却を依頼する/不動産ジャパン(公益財団法人 不動産流通推進センター)
  • 読者の声の引用元:Yahoo!不動産 教えて!住まいの先生(質問ID 11114430491/1346328368/1432888609)

このシリーズは、家を買う人・売る人に向けて不動産用語をひとつずつ説明していきます。1本目は元付・客付、次は「あんこ」です。

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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