安い土地はなぜ安いのか 掘り出し物なんてない
「相場より安い土地には、必ず理由がある」。これは本当です。ただし、その土地がなぜ安いのかを、値段を見て当てることはできません。
2023年の地価公示から、全国の住宅地の標準地17,394地点を数え直しました。同じ市区町村の中で、坪単価は中央値で2.9倍ひらいていました。駅からの距離をそろえても2.2倍です。「相場より500万円安い」と言うときの相場が、そもそも1つに決まっていません。
この記事でわかること
- ✓ 同じ市・同じ駅距離でも、住宅地の坪単価は中央値で2.2倍ひらく
- ✓ 「私道は3割安い」「再建築不可は二束三文」は、条件をそろえると消える
- ✓ 安さは値引きではなく、工事費・年数・借りられないローンで返ってくる
この土地はなぜ安いのか まず「相場」が同じ市の中で2.9倍ひらいている
地価公示は、国が毎年1月1日時点の土地の値段を出しているものです。市区町村ごとに標準地が選ばれていて、用途・前面道路の幅・駅からの距離までデータに入っています。2023年の全国分から住宅地の17,394地点を取り出して、市区町村ごとに「いちばん高い地点 ÷ いちばん安い地点」を計算しました。
| 数えたもの | 結果 |
|---|---|
| 市内の最高 ÷ 最安(標準地3地点以上の1,107市区町村) | 中央値 2.87倍 |
| そのうち2倍以上ひらいている市区町村 | 777(70.2%) |
| 5倍以上ひらいている市区町村 | 260 |
| 同じ市・同じ駅距離帯の中だけで比べた場合(1,489組) | 中央値 2.20倍 |
駅からの距離をそろえたのは、遠いから安いという当たり前の差を消すためです。それでも2.20倍が残りました。同じ市の、駅から同じくらいの距離にある住宅地どうしで、坪単価が倍以上ちがう組み合わせが56.5%あります。
実例を1つ出します。兵庫県西宮市の住宅地は92地点あって、いちばん安いのが山口町船坂の坪64,463円、いちばん高いのが羽衣町の坪1,474,378円。22.9倍です。安いほうは駅まで7.5キロ、前の道は3.7メートル、用途地域の指定がありません。理由は1つではなく、3つ重なっています。
読者
じゃあ「相場より安い」という言い方に意味がないんですか
市の平均と比べているうちは意味がありません。比べる相手は、同じ町の・同じくらい駅から離れた・同じくらいの広さの土地です
ここから先は、その差を作っている理由を1つずつ見ていきます。読み方は「何%安いか」ではありません。安さは値引きではなく、あとから届く請求書だからです。届き方は3つあります。
| 届き方 | 中身 |
|---|---|
| 工事費 | 地面を固める、擁壁を造り直す、水道管を引き直す、道の側へ敷地を下げる。土地の代金とは別に、着工の前に出ていく |
| 年数 | 許可、協議、隣地との立会い、農業委員会。相手の都合で進むので、こちらが急いでも短くならない |
| ローン | その土地では住宅ローンの話が進まない。金融機関が担保をどう見るかは商品ごとに違う |
安い土地の理由は14通り。どれかが必ず当たっている
この記事で扱う理由を先に全部出します。右の列が、その理由が何に姿を変えて返ってくるかです。
| 安さの理由 | 何に姿を変えて返ってくるか |
|---|---|
| 旗竿地 | 工事費・建てられる家の形 |
| 前面道路が4メートル未満 | 敷地が減る・工事費 |
| 道路に2メートル接していない | ローン・建てられるかどうか |
| 私道に面している | 年数(承諾)・工事費 |
| 地盤が弱い | 工事費 |
| 隣地や道路との高低差、擁壁 | 工事費・年数 |
| 標高が低い、浸水想定区域 | 工事費(基礎・盛土) |
| 土砂災害特別警戒区域 | 工事費(構造)・建てられるかどうか |
| 用途地域 | 建てられる家の形・周りに建つ建物 |
| 北側斜線 | 建てられる家の形 |
| 地目が畑・田・山林 | 年数(許可)・工事費 |
| 市街化調整区域 | 建てられるかどうか・ローン |
| 境界が未確定、越境がある | 年数・売るときの手取り |
| 心理的瑕疵 | 売るときの値段 |
読者
ぜんぶ当てはまる土地なんて、そうそう無いですよね
1つも当てはまらない土地が、隣と同じ値段の土地です。安い区画は、この表のどれかが必ず当たっています
旗竿地・私道・再建築不可の「◯割安い」を数え直した
安さの理由を並べた記事はいくらでもありますが、そこに書いてある「◯割安い」の出どころを書いたものはほとんどありません。当サイトでは実際の成約価格を市区町村ごとに集計しているので、そのつど数えてきました。条件をそろえると、世間で言われている値引き率はほとんど消えます。
| よく見る言い方 | 条件をそろえて数えた結果 |
|---|---|
| 不整形地は整形地より2〜3割安い | 面積を100〜200m²にそろえると74.2まで戻る。差の約2割は形ではなく広さのぶん(188市区町村の集計) |
| 旗竿地は◯割安い | 公表されている取引データから旗竿地だけを取り出す方法がない。数字を出している記事は、出どころを書いていない |
| 私道に面していると3割安い | 前面道路の幅・築年・広さをそろえると2.2%。3割は相続税の評価の話(私道VS公道) |
| 再建築不可は二束三文 | 築1990年以降にそろえると差は8.1%。安さの中身は道ではなく13年ぶんの古さ(257,639件の集計) |
| 道幅4メートル未満は3割安い | 地価公示でも同じ向き。同じ市区町村・同じ駅距離帯でくらべると4〜8メートルの77.9%。ただし駅800メートル以内では83.8%、3.2キロ超では62.6%まで開く |
| 標高が低い土地は安い | 取引データでは逆に出る。浸水のしやすさは値段に入っていない(土地の標高の調べ方) |
いちばん最後の行が、この記事でいちばん言いたいことです。値段に出ていない理由がある以上、「安いかどうか」を見ても危ないかどうかは分かりません。逆に、値段に出ている理由(道が狭い、形が悪い)は、見積もりを取れば金額に置き換えられます。
この記事の「◯%」は、当サイトが不動産取引価格情報などから集計した中央値です。個別の土地の査定額ではありません。集計の条件は、それぞれのリンク先に書いてあります。
前面道路 ― 2メートル接していなければ、そこに家は建たない
安さの理由でいちばん重いのが道です。値段が2割下がるという話ではなく、家が建つか建たないかが変わります。建築基準法第43条第1項は、こう書いています。
建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。
ここでいう「道路」が何を指すかは、同じ法律の第42条第1項が決めていて、原則は幅員4メートル以上です。目の前に道があっても、幅が足りなければ法律上の道路ではありません。
ただし4メートル未満の道が全部だめになるわけではありません。第42条第2項が、現に建物が立ち並んでいる4メートル未満の道について、道の中心線から2メートルの線を境界とみなす、と定めています。これがセットバックです。

みなし境界線の外側は道路の扱いになるので、建ぺい率と容積率を計算するときの敷地面積から外れます。広告に書かれた面積のまま家の大きさを考えていると、設計の段階で床面積が縮みます。
下がる距離は、いつも2メートルとは限りません。道の向かいががけ地や川のときは、第42条第2項のただし書きで、こちら側だけが道の側へ4メートル分まで下がります。逆に第42条第3項は、土地の状況によりやむを得ない場合に「二メートル未満一・三五メートル以上」の範囲で短くできると定めています。下がる距離は法律の原則ではなく、その道に対する行政庁の指定で決まります。
もう1つあります。第43条第3項は、地方公共団体が条例で接道の制限を付加できると定めています。階数3以上の建築物、延べ面積1,000平方メートル超などが対象です。「一戸建ての住宅を除く」と書かれているのは、袋路状道路にのみ接する延べ150平方メートル超の建築物(第五号)だけで、3階建てには除外がありません。2メートル接していればどこでも建つ、ではありません。
下がった帯を整えるのにも、お金がかかる
後退した部分は、塀を撤去して舗装し直すことになります。横浜市は狭あい道路の拡幅整備で出す補助金の単価を公表していて、そこに金額が並んでいます。塀と門柱の除去が見付面積1平方メートルあたり4,000円、塀の築造が18,000円、門扉の移設・築造が1組123,000円。市が補助として払う額なので工事費そのものではありませんが、「下がるだけ」では終わらないことは、この表を見れば分かります。
ローンが先に止まることがある
住宅金融支援機構のフラット35は、技術基準に接道の条件を置いています。一戸建て住宅もマンションも「原則として一般の道に2m以上接すること」です。ただし機構のよくある質問には、建築基準法第43条第2項第2号の許可を受けた敷地なら融資の対象になる、とも書かれています。「再建築不可だからローンは無理」と決めつける前に、その敷地がどちらなのかを先に確かめてください。
役所と現地で見る場所
- 役所の建築指導課で道路の種別を聞く。第42条第1項のどの号にあたるのか、第2項の指定を受けた道か、そもそも法律上の道路ではないのか。住所か地番で答えが出ます
- セットバックの起点を聞く。中心線からの距離が2メートルなのか、それより短い指定があるのかは道ごとに違います
- 現地でメジャーを当てる。側溝のふたを含めるかどうかで数字が変わるので、測った値を役所の記録と突き合わせます
- 敷地が道に接している長さを測る。角の切り欠きや電柱で、思ったより短いことがあります
- 公図で道の部分に地番があるかを見る。地番が付いていれば私道です

道幅そのものが値段にどう出ているかは、お盆に実家へ帰ったら、前の道の幅を測ってください|道幅4m未満の土地は、駅から遠い地域ほど3割安いに集計をまとめています。建て替えができない土地の値段は再建築不可の家は本当に二束三文?です。
私道のときは、承諾書がもう1枚いる
道が私道だと、通行と掘削で所有者の承諾が要ります。水道管やガス管を引くために道路を掘るからです。承諾が取れないまま買うと、家は建っても水が来ません。値段はほとんど変わらないのに買える人だけが減る、というのが私道の効き方です。
承諾書が誰から誰へ引き継がれるかは、私道の掘削承諾書は引き継がれる?「所有者が変わってもリスクはありません」と言われたらに書きました。
旗竿地 ― 竿の幅で、工事費と建てられる家が決まる
道路から細い通路が伸びて、その奥に敷地が広がる形です。通路の部分を竿、奥を旗と呼びます。竿は登記の面積には入りますが、そこに家は載りません。

竿の幅が2メートル未満だと、前の節の第43条第1項に届きません。形が悪いのではなく、建てられない土地になります。
2メートルあれば安心、でもありません。東京都建築安全条例の第3条は、路地状部分の長さが20メートルを超える敷地に幅3メートル以上を求めています。木造などで延べ面積が200平方メートルを超えると、この表の数字が2メートル→3メートル、3メートル→4メートルに読み替わります。
さらに同条例の第3条の2は、路地状部分の幅が4メートル未満の敷地に、3階建て以上を建ててはならないと定めています(耐火建築物・準耐火建築物などは4階以上が不可)。竿の幅は、工事費だけでなく建てられる階数まで決めます。都内の旗竿地を見るときは、この条例まで確かめてください。
返ってくるのは工事費です。竿が長いほど、上下水道とガスの引込がその長さぶん延びます。竿が狭いと重機が入らないので、掘削も基礎も小さい機械か人力になります。同じ建物を建てても、旗竿地というだけで工事の単価が変わる部分です。
引込そのものにかかる公的な費用も、住む市で違います。水道メーターの口径13ミリで、神戸市の分担金は44,000円、千葉県営水道の給水申込納付金は110,000円。同じ太さの管をつなぐだけで66,000円の差がつきます。竿が長ければ、この上に管を延ばす工事費が乗ります。
相続税の評価では、この形に率が決められています。国税庁の財産評価基本通達にある間口狭小補正率表では、普通住宅地区の間口4メートル未満がひとまとめに0.90です。竿の幅が2メートルちょうどでも3.9メートルでも、率は同じ0.90になります。ただしこれは相続税を計算するための率で、売買価格そのものではありません。
公図と現地で見る場所
- 公図で竿の形を見る。販売図面の絵ではなく、法務局の図面で確かめます
- 現地で竿のいちばん狭いところを測る。入口でも出口でもなく最狭部です。ブロック塀、電柱、隣家の基礎が出ていると図面より狭くなります
- 竿の長さを測る。道路から旗部分までの距離が、そのまま引込配管の長さになります
- 竿が単独所有かを登記簿で見る。共有や通行地役権だと、工事のたびに他人の承諾が要ります

形そのものが売買価格にどれだけ効いているかは、不整形地が安い理由は、形だけではありません。安さの2割は「広さ」のぶんでしたで分けています。
地面の下と、まわりとの高さ ― 更地を見ても分からない
更地は何も無いぶん、確かめられることも少ない状態です。ここが安さのいちばん見えにくい部分になります。
地盤 ― 調査の結果が出るのは、買ったあと
地盤調査をするのは、土地を買って建物の設計に入ってからです。順番がそうなっている以上、地面が弱いと分かるのは自分の土地になったあとになります。
金額の目安になる公的な数字が1つだけあります。国税庁が毎年出している宅地造成費の金額表です。令和7年分の東京都では、地盤改良費が1平方メートルあたり2,100円、土止費(擁壁の面積あたり)が83,600円と決められています。令和6年分は2,000円と82,000円だったので、1年で上がっています。
高低差と擁壁 ― 「がけ」の基準は市ごとに違う
道路より高い、隣より低い。段差があるところには擁壁があります。コンクリートが立っているから安心、とはいきません。見るのは擁壁そのものより、その擁壁の書類です。

がけ条例と呼ばれるものは、都道府県や市の建築基準の条例です。全国一律ではありません。高さの基準も、どのくらいの傾きから「がけ」と呼ぶかも、市ごとに違います。
東京都建築安全条例の第6条は、2分の1こう配の斜線を超える部分で高さを測り、高さ2メートルを超えるがけの下端から、がけ高の2倍以内で建てるなら擁壁を設けよと定めています。ただし斜面のこう配が30度以下なら要りません。横浜市は「主要部分の勾配が30度を超える」高さ3メートル超の崖、神戸市は「角度30度を超え、かつ高低差1メートルを超える」ものが対象です。神戸市は、ふつう「がけ」と呼ばないような段差でも制限がかかります。
傾いた土地そのものの造成費も、さきほどの金額表に載っています。100平方メートルあたりに直すと、こうなります。

傾斜が15度を超えると、100平方メートルで600万円です。土地が安いぶんの何割かは、ここに置き換わっていると考えたほうが実際に近くなります。
もう1つ、同じ通達には斜面の向きで率が変わる表があります。

同じ面積・同じ傾斜でも、斜面が北を向いているだけで率が下がります。日当たりは感想ではなく、国税庁の表に率として書いてあります。土砂災害の特別警戒区域と重なったときの下限は0.50と決められています。
その特別警戒区域は珍しいものではありません。国土交通省の集計では、2026年6月30日時点で土砂災害警戒区域が全国721,014か所、そのうち特別警戒区域が621,287か所です。警戒区域の指定を受けている場所の大半に、建物の構造まで決まる特別警戒区域が重なっています。
擁壁と地盤で見る場所
- 現地で高さを測る。道路面と敷地面の差、隣地との差を別々に測ります
- 擁壁の水抜き穴を数える。東京都の条例は壁面3平方メートル以内ごとに1つと定めています。詰まっているもの、そもそも無いものがあります
- 擁壁のふくらみとひびを見る。上端が前へ出ていると、背面の土が押しています
- 役所で工作物の確認申請と検査済証を探す。書類が残っていない擁壁は、造り直す前提で見ます
- その市のがけ条例を読む。がけの高さの基準も、制限のかかる範囲も市ごとに違います

現地で境界・接道・高低差をどの順番で見るかは、土地の境界・接道・高低差はどこを見る?現地で確認する順番と写真の撮り方にまとめてあります。現地へはこちらを持って行ってください。
標高 ― 水がどこへ集まるかは、値段には出ていない
標高は現地に立っても分かりません。まわりより1メートル低いことは、目では拾えないからです。しかも当サイトの集計では、土地の値段に地面の高さは入っていませんでした。安いから危ないのではなく、危なくても安くならない、というのが実際に出ている形です。
読者
ハザードマップで色が付いていたら、もう買わないほうがいいですか
そうではありません。色が付いていると知ったうえで、基礎の高さや盛土の見積もりを取って、値引き分と見比べてから決める順番にしてください
地名から地形をたどる手順は水害の地名を標高図で確かめた 梅田・渋谷・亀戸・真備町川辺に書きました。
用途地域と北側斜線 ― 同じ広さでも、建てられる家が違う
ここからは地面ではなく紙の上の話です。現地をどれだけ歩いても分かりません。
用途地域 ― 色を見る前に、凡例を見る
用途地域は、その土地に建てられる建物の種類と大きさを決めています。建ぺい率と容積率もここで決まるので、同じ広さの土地でも載せられる床面積が違います。

工業地域は住宅を建てられますが、学校と病院は建てられません。工業専用地域は住宅そのものが建てられません(建築基準法 別表第二)。子どもの通学先が近くにできない地域だ、というのは都市計画図を見ないと分からない部分です。
用途地域の境界線は、道路や町丁の境目を通るとは限りません。1つの敷地の途中を通っていると、建ぺい率と容積率を按分して計算することになります。境界線の位置の調べ方は用途地域の境界線の調べ方に手順があります。
北側斜線 ― 北のとなりに日を当てるぶん、上が削られる
北側斜線は、北側の隣地の日当たりを守るために建物の高さを北へ向かって斜めに抑える決まりです。建築基準法第56条第1項第三号にあります。

かかるのは第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種・第二種中高層住居専用地域の5つだけです。しかも中高層のほうは、条例で日影規制が指定されている区域だと北側斜線が外れます(別表第四の二の項の(一)(二)(三)の号)。「北向きの土地は北側斜線で建てにくい」と一般化すると外れます。まず用途地域と条例を見る順番になります。
北向きに傾いた土地だと二重に効きます。地面が北へ下がっているぶん南側の建物の影が長く伸び、さらに斜線で自分の建物の北側が削られます。道路の向きが値段にどう出ているかは南向きVS北向きで数えています。
登記簿と契約書に出てくる安さ ― 地目・調整区域・境界
地目 ― 表題部の1行が「畑」なら、まだ宅地ではない
登記事項証明書の表題部に、所在・地番・地目・地積が並びます。この地目が「畑」「田」「山林」「原野」だと、そのままでは家が建ちません。農地なら農地法の手続きが要りますし、山林や原野なら造成が要ります。安いのは、宅地になっていないぶんです。
ここで返ってくるのは年数のほうです。市街化区域の外の農地を転用するには許可が要ります。農地法施行規則第32条は、農業委員会が申請書を都道府県知事へ送るまでの期限を40日(意見を聞く場合は80日)と定めています。これは委員会が書類を回すまでの日数で、許可が下りるまでの日数ではありません。工事の見積もりは取れても、この待ち時間の見積もりは誰も出してくれません。

- 登記事項証明書の表題部の地目欄を見る。取り方は登記簿謄本の取り方にまとめました
- 現況と地目のずれを見る。何十年も耕していない土地でも、地目が畑のまま残っていることがあります
- 農業委員会で、農用地区域に入っているかを聞く。入っていると転用の話が別の段階になります
- 地積と実測の差を見る。古い地積は実際の面積と合っていないことがあります
相続した畑をどうするかは、使わない畑を相続した人へ|宅地に転用する費用と、転用せずに手放す3つの道に別で書いています。
市街化調整区域 ― 建てられるかどうかが、そもそも別枠
市街化調整区域は、市街化を抑えるほうの区域です。家を建てるには開発許可の話から始まります。安さの理由がここにあるときは、値引き分の計算ではなく、建てられるかどうかの確認が先に来ます。既に家が建っていても、壊して更地にすると建て直せなくなることがあります。分かれ目は相続した実家を壊す前に|市街化調整区域は更地にすると建て直せない土地があるに書きました。
細かいところでも差が出ます。船橋市の下水道の受益者負担金は、市街化区域が1平方メートルあたり300円、市街化調整区域が380円です。土地が150平方メートルなら45,000円と57,000円になります。
境界が決まっていない、隣のものが越えている
敷地の角に境界標が無い、隣の塀が敷地側へ出ている、樹木の枝が越えている。これは工事費ではなく、時間と、売るときの手取りに返ってきます。
- 敷地の角を全部歩く。4つ角だけでなく、折れている点も全部です
- 地積測量図が法務局にあるかを確かめる。あれば境界標の位置が図に残っています
- 塀・屋根・雨樋・室外機・枝が越えていないかを見る。地中の配管も聞きます
- 越境の覚書があるかを売主に聞く。書面が無い口約束は、所有者が変われば消えます
測量が要ると言われたときの進め方は、「境界標がないので、測量が必要です」と言われた土地も売れます 測量代が土地代を超える町がありますにあります。
道路の扱い、がけ条例、開発許可の運用は自治体ごとに違います。この記事は考え方の順番で、最後の答えは敷地のある市区町村の窓口にしかありません。
買う前の30分でできること
順番があります。現地へ行くのは最後です。
- 都市計画図を開く。用途地域、区域区分、建ぺい率、容積率、防火地域、高度地区を控える
- 重ねるハザードマップで、洪水・内水・高潮・土砂を1枚に重ねる
- 登記事項証明書と公図を取る。地目、地積、竿の形、道路部分の地番を見る
- 役所へ電話する。道路の種別、セットバックの起点、条例による付加、開発許可の見込み
- 現地でメジャーを当てる。道の幅、接している長さ、竿の最狭部、道路との高低差
- その街の土地がいくらで売れているかを見てから、見積もりを取る
6を最後にしているのには理由があります。値引き額が大きいか小さいかは、その街の水準を知らないと判断できません。同じ500万円の差が、坪単価の高い街では誤差におさまり、安い街では土地代を丸ごと超えます。冒頭の2.25倍は、そういう意味の数字です。
私は、安い土地でいちばん重いのは工事費ではなく年数だと考えています。工事費は見積もりを取れば金額になり、値引き分と並べて引き算ができます。ところが許可、協議、隣地との立会いは相手の都合で進むので、見積もりが出ません。金額にならないものは判断の材料に乗らないまま先送りになります。だから3の書類と4の電話を、現地へ行く前に置いています。
読者
そこまで調べたら、買える土地が無くなりませんか
減りません。理由が分かって、その金額が出せるなら買っていい土地です。減るのは、理由を知らないまま契約する回数のほうです
よくある質問
安い土地は買ってはいけないということですか
いいえ。理由が分かっていて、その金額を出せるなら買えます。避けるのは、理由が分からないまま安いほうを選ぶことだけです。
買ってはいけない土地、やめたほうがいい土地はありますか
一律には決まりません。理由が「道が狭い」「形が悪い」なら、見積もりを取れば金額に置き換わります。判断が変わるのは、金額に置き換えられない理由のほうです。建てられるかどうかが許可待ちになる(市街化調整区域・農地)、構造まで決められる(土砂災害特別警戒区域)、こちらの都合で短くできない年数がかかる。この3つに当たったときは、値引き分と引き算せずに、そもそも降りる選択肢を持っておいてください。
この土地はなぜ安いのか、と不動産会社に聞いてもいいですか
聞いてください。答えられないことはありません。ただし「日当たりが少し」のような感想で返ってきたら、質問を具体に変えます。道路の種別は、セットバックの起点は、用途地域は、地目は、境界標はあるか。各節の「見る場所」の箇条書きが、そのまま質問のリストになります。
掘り出し物はあるのですか
土地そのものの掘り出し物はありません。上の表の14項目は、どれも書類か現地に必ず出てくるからです。安いのに何も出てこないときは、売主の事情(相続・転勤・離婚・期限のある売却)が残ります。ただしそれは土地の性質ではないので、書類には書かれていません。書類に出る理由を先に全部つぶして、それでも安いときに残るのがそれです。順番は逆にできません。
更地なら安心ですか
更地は問題の無い土地ではなく、まだ何も確かめられていない土地です。地盤も、擁壁の書類も、境界も、建物が建っていない状態では手がかりが減ります。
不動産会社は安い理由を教えてくれますか
聞けば答えます。ただ、こちらが何を聞けばよいかを知らないと、質問そのものが出ません。各節の「見る場所」の箇条書きを、そのまま質問に使ってください。
図面と現地の数字が違ったら、どちらが正しいですか
現地で測った数字は事実ですが、幅員のように役所の記録が答えになる項目があります。違いを見つけたら、その場で決めずに役所へ持って行ってください。
値引き分と工事費は、どこで見比べればいいですか
同じ紙の上です。値引き額と見積書が両方そろっているときにだけ、引き算が成り立ちます。土地の契約を先に済ませて工事の見積もりを後で見る順番にすると、比べる相手がもう手元にありません。
出典
- e-Gov法令検索「建築基準法」(第42条・第43条・第56条・別表第二)
e-Gov法令検索(2026年9月5日取得) - 国土交通省 地価公示(国土数値情報 L01・2023年〈令和5年〉公示)。全国47都道府県から利用現況が「住宅」の標準地17,394地点を抜き出して当サイトで集計。市区町村内の最高÷最安は標準地3地点以上の1,107市区町村、駅距離帯をそろえた比較は1,489組、前面道路の幅の比較は450組が対象
- 国税庁 財産評価基本通達 付表(がけ地補正率表・特別警戒区域補正率表・間口狭小補正率表・奥行長大補正率表)
国税庁 財産評価基本通達 付表(2026年9月5日取得) - 国税庁 令和7年分 財産評価基準書 東京都「宅地造成費の金額表」
令和7年分 財産評価基準書(東京都)(2026年9月5日取得。令和6年分との比較は main_r06 の同ページ) - 横浜市建築基準条例 第3条(崖)
横浜市例規集(2026年9月5日取得) - 神戸市「がけ条例」(神戸市建築物の安全性の確保等に関する条例 第20条)
神戸市「がけ条例」(2026年9月5日取得) - 東京都建築安全条例(第3条 路地状敷地の形態/第3条の2 路地状敷地の建築制限/第6条 がけ)
東京都例規集(2026年9月5日取得) - 住宅金融支援機構「フラット35 技術基準の概要」
フラット35 技術基準の概要(2026年9月5日取得。43条2項2号の扱いは同機構のよくある質問による) - 横浜市建築局「狭あい道路拡幅整備事業 補助金一覧表(令和6年9月以降に協議書を提出した場合)」
横浜市 狭あい道路拡幅整備事業(2026年9月5日取得) - 神戸市水道局「給水工事に関する水道局徴収費用一覧」(令和7年4月1日)/千葉県営水道「給水申込納付金」/船橋市「下水道事業受益者負担金」
船橋市 下水道事業受益者負担金(2026年9月5日取得) - 農地法施行規則 第32条(農業委員会が意見を付して送付するまでの期間)
e-Gov法令検索(2026年9月5日取得) - 国土交通省「土砂災害警戒区域等の指定状況」2026年6月30日時点
※ 地価公示の標準地は「その地域の標準的な土地」として選ばれているため、旗竿地や急斜面のような極端な土地は含まれにくくなっています。実際の売買では、ここで出した倍率より開くと考えてください。※ 国税庁の補正率と造成費は相続税の評価に使うもので、売買価格や工事の見積もりそのものではありません。※ 2026年9月5日時点の法令と公表資料にもとづいています。
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