🗨️「薬剤師の仕事はAIでなくなる?」
調剤は法律で薬剤師にしかできず、機械や事務の人に回るのは判断のいらない作業までです。それより国の推計では、2045年に薬剤師が必要な数より2.4万〜12.6万人多くなります。
[AI] この記事の要点
2026年11月6日 発表
- 薬局や病院で働く薬剤師
- 薬学部への進学を考えている人と家族
- 薬局で調剤の補助をしている人
「薬剤師はAIに仕事を奪われる」と言い切れる材料は、今の法律にも国の資料にもありません。調剤は薬剤師法19条で薬剤師だけに認められた仕事で、国が機械や事務の人に回してよいとしたのは、薬を数どおりにそろえるといった判断のいらない作業までです。数字で先に表れているのは別のことで、国の推計では2045年に薬剤師は必要な人数を上回ります。
先に結論
- ✓ 薬剤師以外に任せてよいのは、包装されたままの薬の取りそろえと一包化した薬の数の確認など(2019年の厚労省通知)
- ✓ 一包化をほかの薬局に任せる外部委託は2027年5月20日に始まる予定
- ✓ 薬剤師は2024年末で32万9,045人。2045年の推計は供給43.2万〜45.8万人、需要33.2万〜40.8万人
薬剤師法19条と調剤の独占
薬剤師法の19条は「薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない」と定めています。例外は、医師・歯科医師・獣医師が自分の処方箋で自ら調剤する場合だけです。AIは薬剤師の免許を持てないので、AIが単独で処方箋を受けて薬を調剤し、患者に渡すことは今の条文では起きません。
法律が薬剤師に課しているのは、薬を作ることだけではありません。25条の2は、調剤したら患者や家族に必要な情報を伝え、薬学的知見に基づく指導をすることを義務にしています。必要なときは、薬をどう使っているかを継続して把握することも求めています。渡したあとの確認まで、薬剤師の仕事として条文に書かれています。
資格者にしかできない仕事が法律で決まっている職業は、薬剤師のほかにもあります。ほかの資格との比べ方はAI時代 資格/残るのは独占業務にまとめました。
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薬剤師以外ができる作業の範囲
では、機械や事務の人はどこまで手伝えるのか。厚生労働省は2019年4月2日の通知「調剤業務のあり方について」(薬生総発0402第1号)で線を引きました。通知は目的を、薬剤師の対人業務を充実させるために、対物業務の効率化を図ることだと書いています。対物は薬を相手にする作業、対人は患者を相手にする仕事のことです。
| 作業 | 薬剤師以外 |
|---|---|
| PTP(ピーティーピー)シートなど包装されたままの薬を、処方箋どおりの数だけそろえる | 薬剤師の指示があり、目の届く場所なら可 |
| 一包化した薬の数を、薬剤師の監査の前に数える | 同じ条件で可 |
| 軟膏・水剤・散剤を直接はかる・混ぜる | 不可(途中で確認しても19条違反) |
| 納品された薬を調剤室の棚に並べる | 調剤に当たらない |
| 調剤した薬の最終的な確認 | 薬剤師が自ら行う |

出典
melvil / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)任せてよい作業には条件が3つあります。薬剤師の目が現実に届く場所であること、薬の品質に影響がなく患者に危害が及ばないこと、そして「判断を加える余地に乏しい機械的な作業」であることです。判断が入る部分は、一つも薬剤師の手から外れていません。
一方で通知は、散剤の計量を人に任せることは禁じながら、調剤機器を積極的に使うことまで妨げる趣旨ではない、とも書いています。人に任せるのは止めても、機械に任せるのは止めていません。
機械が薬をそろえて数えるなら、薬剤師はいらなくなるんじゃないの?
通知が手放させたのは、そろえる・数えるのところだけ。最後に薬を確かめるのは薬剤師本人だと、同じ通知にはっきり書いてあるのよ。
一包化の外部委託は2027年から
次の変更は、薬局の外への委託です。2025年5月に公布された改正薬機法で、都道府県知事などの許可を受ければ、調剤業務の一部をほかの薬局に委託できるようになりました。厚生科学審議会の医薬品医療機器制度部会の資料(2026年7月23日)には、2027年5月20日の施行に向けて政省令を公布済みとあります。
委託できるのは当面、一包化だけです。一包化は、飲む時間ごとに何種類かの薬を1袋にまとめる作業で、すぐに必要なものと散剤は対象から外れます。委託先は同じ三次医療圏の中に限られ、使うときは患者に説明して同意を得ることになっています。大阪市では国家戦略特区として先に始まり、2026年1月末時点で市内の一部の薬局が実施しています(全国薬務関係主管課長会議の資料)。
2019年の通知も2027年の外部委託も、目的として書かれているのは対人業務の充実で、薬剤師を減らすことではありません。私は、薬局の仕事の中身を先に動かしているのはAIより制度のほうだと見ています。機械や仕組みを入れても人の仕事がすぐには減らない理由は、AIを入れたのに仕事が減らないのはなぜ?にも書きました。
薬剤師の需給推計と2045年
次に人数を見ます。厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、2024年12月31日時点の届出薬剤師数は32万9,045人です。2018年の31万1,289人から6年で1万7,756人増えました。働く場所は薬局が19万7,437人(60.0%)でいちばん多く、2022年より6,702人増えています。製薬会社など医薬品関係企業で働く人は3万4,184人で、2,902人減りました。

出典
厚生労働省「薬剤師の需給動向把握事業 報告書」(令和3年3月31日)図表6-1の値から作図将来の推計は、厚生労働省の委託で行われた「薬剤師の需給動向把握事業」の報告書(2021年3月31日)にあります。2020年は供給32.5万人に対して需要32.0万人で、ほぼ釣り合っていました。2045年には供給が43.2万〜45.8万人に増え、需要は33.2万〜40.8万人と推計されています。需要がいちばん多い見方で比べても2.4万人、少ない見方なら12.6万人、薬剤師のほうが多くなります。

出典
厚生労働省「薬剤師の需給動向把握事業 報告書」(令和3年3月31日)501ページ需要を40.8万人まで押し上げる前提は、患者と向き合う仕事が増えることです。機械で対物の作業が減るほど、需要は下の線に近づきます。私は、薬剤師が余るかどうかを決めるのはAIの性能より、対人の仕事がどこまで増えるかのほうだと読んでいます。
余るってことは、どこでも薬剤師はもう足りているの?
足りているのは全国の合計の話。2024年に薬局と医療施設で働く薬剤師は、人口10万人あたり徳島県が256.6人、沖縄県が155.3人で、1.65倍の開きがあるの。
厚生労働省の委託で2022年3月にまとめられた「薬剤師確保のための調査・検討事業」の報告書にも、病院団体などから病院や地方で薬剤師が足りず確保が難しいという要望が出ていると書かれています。総数が余っても、働く場所によっては人が足りない状態が続きます。
AIで何割の仕事が置き換わるかという予測の数字は、AI 仕事 奪われる 何割/49%と7%の差で推計どうしを比べました。同じシリーズでは、求人の数から答えた経理 AI なくなる/求人は減り希望者は増えたもあります。
「薬剤師はAIに仕事を奪われる」と検索した人に、数字で返せる答えはここまでです。薬を確かめて患者に渡す最後の判断は、法律で薬剤師に残っています。機械と外部委託に回っていくのは、そろえる・数える・まとめるといった作業のほうです。そして2045年の推計では、奪われるより先に、薬剤師の数が必要な数を追い越します。
よくある質問
Q. 薬剤師の仕事はAIでなくなりますか。
A. 調剤は薬剤師法19条で薬剤師以外には認められていません。厚生労働省が薬剤師以外に任せてよいとしたのは、包装されたままの薬の取りそろえや一包化した薬の数の確認など、判断のいらない作業までです。
Q. 薬剤師は将来余りますか。
A. 厚生労働省の委託調査(2021年3月)では、2045年の供給43.2万〜45.8万人に対し需要は33.2万〜40.8万人で、どの組み合わせでも供給が上回ります。ただし地域や病院では不足が指摘されています。
Q. 調剤の外部委託はいつから始まりますか。
A. 改正薬機法による一包化の外部委託は、2027年5月20日の施行に向けて政省令が公布されています。大阪市では国家戦略特区として先に実施されています。
生活・仕事にどう効くか
- 人数:2045年は供給43.2万〜45.8万人に対し、需要は33.2万〜40.8万人と推計されている。
- 仕事の中身:薬の取りそろえや一包化など、判断のいらない作業から機械・外部委託に移っていく。
結局どうすればよいか
- AIの話より先に、2045年の需給推計と働く地域の薬剤師数を確かめる
- 薬をそろえる作業より、服薬の説明や飲んだあとの確認など患者と向き合う仕事の経験を積む
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くわしく知る(保存版の記事)
公式出典
更新履歴
- 2026年11月6日 初版を公開
※本記事は2026年11月6日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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