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【近日公開】AIが物件資料からSUUMO・at homeの入稿文を作成「入稿メイト」|先行登録受付中(無料)

実は地名にヒントがあります 静岡の「浜」は海抜3.7m、津波までに歩けるのは200m

実は地名にヒントがあります。静岡県の住宅地の標準地451地点を1点ずつ測ると、「浜」の字がつく7地点は7地点とも標高5m未満で、中央値は3.7m。県全体の中央値17.4mより13m以上低いところに、この字は集まっています。2023年3月31日、南海トラフ地震の津波の到達予測をめぐって知恵袋に「そんな短時間で津波来たらみんな飲み込まれますよね。どうするのですか?」という質問が投げられ、回答が4件つきました(閲覧2,990)。静岡県が国の検討会に出した資料には、この問いを距離に置き換えた計算が載っています。津波到達5分・揺れ1分・避難開始は1分40秒後という条件を置いたときに、歩ける距離は200m。何mの津波が来るかではなく、家から200m以内に高いところがあるかどうか。静岡の地名が出すヒントは3種類あって、開く地図がそれぞれ違います。

この記事でわかること

  •  「浜」を含む7地点は全部5m未満で中央値3.7m、「浦」は4.4m、「津」は7.8m。県全体451地点の中央値は17.4mで、5m未満は65地点しかない
  •  静岡県が避難困難地区を洗い出すために示した計算例では、避難できる距離は200m(津波到達5分・揺れ1分・避難開始1分40秒後という条件を置いたときの例)
  •  熱海市の住宅地の標準地は3地点とも56.6m以上で中央値93.8m。標高の図では県内で高いほうに入る市で、2021年7月3日に伊豆山で土石流が起きた
目次

「浜」「浦」「津」の町は5m未満に集まる 焼津は16地点の半分

2026年の地価公示で静岡県に置かれた住宅地の標準地は451地点あります。平均は55.9mですが、中央値は17.4mです。平均のほうが3倍以上に見えるのは、御殿場市(12地点・中央値451.1m)や富士宮市(26地点・156.1m)、裾野市(9地点・171.0m)のような、富士山の裾に広がる高い街が引き上げているからです。451地点のうち標高5m未満は65地点。全体の14%しかありません。

その65地点がどこに集まっているかは、字を見ると分かります。市区町村名を除いた町名・字名で数えると、「浜」を含むのは7地点で、平均3.2m、中央値3.7m。7地点が7地点とも5m未満です。「浦」は3地点で中央値4.4m、「津」は8地点で中央値7.8m。いっぽうで「山」を含む31地点は中央値51.8m、「久保」10地点は77.5m、「窪」3地点は105.9m、「沢」12地点は35.1m、「上」32地点は35.1m、「出」7地点は45.9m。同じ県の中で、字によって10倍以上の差がつきます。

焼津市の色別標高図。石津港町1.4m、浜当目2.4m、東小川2.6m、西小川3.3m、大栄町3.7m、塩津4.4mと、住宅地の標準地が海ぞいに1〜4mで並ぶ
焼津市の色別標高図。丸印は地価公示の住宅地の標準地で、青いほど低い。「浜」「港」「小川」の字がつく町が海ぞいに並ぶ(国土地理院の地理院タイルと5mメッシュ標高から作成)
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図の丸印に書いた数値は国土地理院の数値標高モデル(5mメッシュ)から読んだ地表の高さ、本文の標準地の数値は国土地理院の標高APIで取得した値です。同じ地点でも小数点以下で食い違うことがあります(焼津市石津港町は図で1.4m、標高APIで1.1m)。どちらも建物の高さは含みません。

市や町ごとに並べると、いちばん低いのは焼津市です。16地点の中央値は5.7m、最低は石津港町の1.1mで、これが県内451地点の最低値でもあります。16地点のうち8地点、ちょうど半分が5m未満です。続いて牧之原市が4地点で中央値4.3m、下田市が3地点で4.5m、沼津市が28地点で8.5m(最低は常盤町2丁目の1.7m)、浜松市中央区が62地点で8.4m(最低は村櫛町字保令と舞阪町浜田の1.9m)、磐田市が23地点で8.6m(最低は福田字午新田の1.9m)。静岡市駿河区は26地点で11.1m、最低は4.3mです。

低い順に県内の顔ぶれを並べると、石津港町1.1m、常盤町2丁目1.7m、村櫛町字保令1.9m、舞阪町浜田1.9m、福田字午新田1.9m、雄踏町宇布見字領家2.0m、下香貫字汐入2.0m。駿河湾、遠州灘、浜名湖の周りに固まっています。

読者

「浜」がつく町は、砂浜が近くて気持ちのいい場所という意味ではないんですか。

おかあさん

砂浜のこともあります。ただ静岡で「浜」がつく地点は、海と川が土砂を置いていった平らな土地に集まっています。焼津市でいうと浜当目2丁目が2.4m、東小川3丁目が2.4m、西小川2丁目が3.1m、南小川2丁目が3.5m、大栄町1丁目が3.6m。県全体の中央値17.4mと比べると、「浜」の字がつくだけで13mほど低い計算になります。字は景色ではなく、その土地の成り立ちを言っていることが多いです。

焼津という名前そのものは、水の話ではありません。焼津市の公式サイトは、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が東征の途中で天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ/草薙の剣)を使って草をなぎ払い、火を放って賊を滅ぼした地を「ヤキツ」と称したことに由来する、と説明しています。万葉集にも「焼津辺(やきつべ)」という言葉が出てきます。「津」は船の着く場所を指す字ですが、「焼」のほうは火の話です。由来をたどっても、その町が何mなのかは出てきません。だから測ります。

読者

県名の「静岡」も、地形からきた名前ですか。

おかあさん

山の名前からきています。災害とは関係ありません。静岡県立中央図書館の解説によると、明治2年(1869年)、「府中」という地名が他藩と重複して紛らわしいという新政府の意向で改称が協議され、藩の重臣は駿府城の北西にある賤機山(しずはたやま)にちなんで「賤ヶ丘」でいったん決まりかけました。これに藩学校頭取の向山黄村(むこうやまこうそん)が「賤」の字を嫌って「静ヶ丘」を提案し、同じ年の6月20日に「駿州府中静岡と唱え替えせしめられ候」という町触れが出ています。

この由来は、昔から気になっている人がいるようです。2012年1月の知恵袋には「『静岡』という地名の由来について」という質問があり、投稿者は「もともと『駿府』と呼ばれていたこの地は徳川幕府の倒壊とともに『静岡』と改名され」たとしたうえで、「この地名にはやはり、徳川政権に対するネガティブな意味が込められているのでしょうか?」と書いています。答えは山の名前で、危ないかどうかのヒントは県名には残りません。残るのは、もっと小さい町名や字のほうです。

静岡の字が指す先は1つではありません。先に早見表にします。

地名のヒント 指しているもの 開く地図
海と川が土砂を置いていった平らな低地。県内7地点の中央値3.7mで、7地点とも5m未満 津波浸水想定/高潮浸水想定区域図
波の静かな入り江。県内3地点の中央値4.4m 津波浸水想定/高潮浸水想定区域図
船の着く場所。県内8地点の中央値7.8mで、3地点が5m未満 津波浸水想定/洪水浸水想定区域図
島・新田 川がつくった中州と、後から開いた田。島は16地点の中央値8.4m、新田は18地点の中央値12.1m 洪水/内水/液状化危険度
堤・沼・池 水を止めた場所と、水がたまっていた場所。堤6地点8.6m、沼3地点10.5m、池6地点9.9m 洪水/浸水継続時間
山・沢・上・久保 斜面と谷。山31地点の中央値51.8m、沢12地点35.1m、上32地点35.1m、久保10地点77.5m 土砂災害警戒区域(県内18,250か所)
字に出ないもの 谷や斜面を埋めて造成した宅地。地名にも標高の色にも表れない 大規模盛土造成地マップ
安倍川の河口。川が運んだ砂礫が広がり、その先に駿河湾が見える
安倍川の河口(静岡市駿河区)。手前は支流の丸子川。国土交通省中部地方整備局静岡河川事務所は安倍川を「急勾配で流下するためおびただしい量の砂礫を流出」する川と説明している。写真:アルプスデイク(Alpsdake・投稿者名)(ウィキメディア・コモンズ(Wikimedia Commons)・クリエイティブ・コモンズ 表示-継承(CC BY-SA 4.0))

住まいのリスクに対する備え

土地の履歴やリスクを知ったら、次は「起きたときにどうするか」です。最低限そろえておくと動けるものを挙げます。

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一から集めると抜けが出ます。まずセットで用意して、家族の人数分と常備薬だけ足すのが早いです。

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断水で最初に困るのがトイレです。備蓄で見落とされやすい一方、代用が効きません。

Lepro LEDランタン(電池・充電の2way給電)

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停電時は懐中電灯より、部屋全体を照らせるランタンの方が使えます。電池でも充電でも点くものだと、どちらが尽きても止まりません。

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鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。

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津波までに歩ける距離は200m 静岡県が示した計算の例

冒頭の質問に戻ります。「そんな短時間で津波来たらみんな飲み込まれますよね。どうするのですか?」。この問いに、静岡県が数字で答えている資料があります。国(消防庁)の検討会に出された「静岡県の津波想定」という資料で、津波避難ビルなどを考えるときに避難困難地区を洗い出すため、「避難可能距離」をどう出すかの例が書かれています。

静岡県「静岡県の津波想定」より(避難可能距離の算出の例)

津波到達予想時間が 5 分で、震度 5 強以上の激しい揺れが 1 分間程度続き、避難を開始する時間を 1 分 40 秒後とした場合

・津波到達時間の設定 地震発生後 300 秒
・避難開始時間の設定 地震発生後 100 秒
・避難歩行速度の設定 1.0 m/秒
∴ 避難可能距離 L=1.0 m/秒×(300 - 100)秒 = 200 m

先に断っておくと、これは県全域に当てはまる基準ではありません。津波の到達が5分、揺れが1分、避難を始めるのが1分40秒後、歩く速さが秒速1.0m——その条件を置いたときの計算例です。到達時間は場所によって違いますし、避難を始めるまでの時間はもっと短いことも長いこともあります。それでも、この式が言っていることははっきりしています。避難にかけられる時間は秒で数える長さで、距離に直すと200mです。

同じ資料には「発生の可能性が予想されている東海地震では、早いところでは地震の発生から数分で津波が襲来し」と書かれています。避難場所の確保の考え方も数字で示されていて、「地震発生から 5 分 500m 以内で避難できる場」を確保する、という書き方です。いっぽう避難圏域については「ア 避難圏域は、該当する避難地までの到達距離が 2km 以内(徒歩で1時間以内)とする。」とあります。5分で500m、1時間で2km。津波のときに使えるのは、この2つのうち前者だけです。

秒速1.0mは、時速に直すと3.6kmです。信号のない平らな道をふつうに歩く速さ。そこから、靴を履いて、鍵を持って、200m。港町の避難場所がなぜ高い場所に置かれてきたのかは、「日和山」はなぜ避難場所になったのかにまとめました。

焼津市の津波浸水想定。標高図と同じ範囲で、石津港町・浜当目・東小川・塩津の標準地が浸水想定の色の中に入る
焼津市の津波浸水想定。前の色別標高図とまったく同じ範囲・同じ地点で作図した。色が濃いほど想定される浸水が深く、白は浸水想定なし。静岡県が公表した津波浸水想定を、国土地理院の「重ねるハザードマップ」が配信するタイルから作成

標高の図と同じ範囲に、県が公表した津波浸水想定を重ねると、白いところがほとんど残りません。石津港町、浜当目、東小川、西小川、塩津——標高図で1〜4mだった地点が、そのまま浸水想定の中に入ります。2枚の図で、同じ町の名前が並びます。床上まで水が来たときに建物と暮らしがどうなるかは、マンションの1階は浸水したら住めない?にまとめています。

沼津の市街地と富士山。海に近い平地に建物が広がる
沼津市街と富士山。沼津市の住宅地の標準地28地点の中央値は8.5mで、いちばん低い常盤町2丁目は1.7m。写真:アルプスデイク(Alpsdake・投稿者名)(ウィキメディア・コモンズ(Wikimedia Commons)・クリエイティブ・コモンズ 表示-継承(CC BY-SA 4.0))

この資料には、静岡県の中に線が1本引かれている箇所もあります。津波の高さを推定するときに基準にする、過去の地震です。「下田市須崎以西の駿河湾及び遠州灘に面する沿岸市町においては、1854 年安政東海地震津波」の痕跡高、「下田市須崎以東の相模湾に面する沿岸市町においては、1923 年関東大地震津波の痕跡高をもとに推定」。下田市の須崎を境に、県が見ている過去が入れ替わります。西側は170年前の安政東海地震、東側は100年前の関東大地震。同じ静岡県でも、住んでいる場所によって「前にここで起きたこと」が別の地震を指します。

この資料が書かれたのは、県が第4次地震被害想定を作っていた時期です。平成24年3月31日に内閣府が南海トラフ巨大地震の震度分布と津波高を公表し、静岡県は平成25年6月の県防災会議での公表を目途に策定を進めていた、と書かれています。数字はその時点の想定に基づくものなので、自分の家の想定を見るときは、市や県が今出しているハザードマップで確かめてください。

この住所は浸水しやすい場所ですか?

住所を入れるだけ。ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さが5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。



熱海の住宅地は中央値93.8m 標高の図には出ないものがある

読者

熱海は海のそばの街ですよね。だったら津波の地図を見ておけばいいですか。

おかあさん

それだけでは足りません。熱海市の住宅地の標準地は3地点で、低いほうから56.6m、93.8m、281.4m。町名でいうと桜町、春日町、西熱海町2丁目です。3地点とも56m以上で、5m未満は1つもありません。中央値の93.8mは県全体の中央値17.4mの5倍以上で、焼津市の5.7m、沼津市の8.5m、浜松市中央区の8.4mと並べると、熱海は県内でいちばん高いほうのグループに入ります。海のすぐそばの温泉街ですが、住宅地は斜面の上に載っています。

熱海市の色別標高図。住宅地の標準地は桜町56.9m、春日町94.0m、西熱海町2丁目278.5mと、3地点とも標高56m以上の斜面に載っている
熱海市の色別標高図。丸印は地価公示の住宅地の標準地で、青いほど低く、茶色いほど高い。3地点とも相模湾に面した斜面の上にある(国土地理院の地理院タイルと5mメッシュ標高から作成)

地名のほうも、水の低さは指しません。熱海という名は、海の中から温泉が湧いて海水が熱くなった「あつうみが崎」が転じたものだという説が知られています(市の公式サイトに地名由来の記述は見つけられなかったため、説として書きます)。749年に箱根権現の万巻上人が海中から湧く湯を陸へ導いて湯前神社を建てた、という話も伝わります。熱い海。地名が言っているのは温泉のことで、斜面のことではありません。

それでも、2021年7月3日の午前10時30分ごろ、熱海市伊豆山の逢初川(あいぞめがわ)で土石流が起きました。死者・行方不明者は28人です(2023年2月に災害関連死1人が認定されてこの数になりました。発生直後の報道では26〜27人と数字に幅がありました)。住家の被害は128棟・135世帯。

静岡新聞の報道によると、崩れたのは逢初川の起点から西へ約400m、標高およそ390mの地点にあった盛土で、約5.4万m³のうち大半にあたる約5万m³が崩落し、周辺の土砂を含めると約10万m³が流れ下ったとみられています。

原因については、静岡県の「逢初川土石流の発生原因調査検証委員会」が2022年9月8日に発生原因調査報告書を公表し、排水設備やえん堤が未設置で工法が不適切だったと指摘しました。別に置かれた「逢初川土石流災害に係る行政対応検証委員会」は、熱海市の行政対応について「最善の対応となるための手続きを行う余地は十分にあった」とする最終報告書を可決しています。責任の所在は裁判と検証が続いた事案なので、ここでは公表された内容の紹介にとどめます。

熱海市伊豆山の土石流の現場。斜面に沿って土砂が流れ下った跡が残る
2022年3月4日に撮影された熱海市伊豆山の土石流の現場。2021年7月3日の発生から8か月後の様子。写真:しなず山藤(投稿者名)(ウィキメディア・コモンズ(Wikimedia Commons)・クリエイティブ・コモンズ 表示-継承(CC BY-SA 4.0))

色別標高図には、この場所は「高いところ」として出てきます。起点の標高はおよそ390mで、青ではなく茶色に塗られる高さです。地名も「熱い海」で、斜面のことは言いません。では、どの地図なら何かが出るのか。

熱海市の大規模盛土造成地。伊豆山と春日町を打点し、色のついた区域が谷埋め型・腹付け型などの大規模な盛土を示す
熱海市の大規模盛土造成地。色のついた区域が、造成前後の地形図を重ねて抽出された大規模な盛土で、色の違いは盛土区分。国土交通省は「安全性の確認が必要な盛土造成地を示したものであり、直ちに危険性のある盛土造成地を示したものではありません」と注記している(国土地理院の「重ねるハザードマップ」が配信するタイルから作成)

国土交通省は、大規模盛土造成地マップという地図について、こう説明しています。「谷や斜面に盛土した大規模な造成宅地(大規模盛土造成地)において、盛土の地滑り的変動(滑動崩落)が生じ、崩れや土砂の流出等による被害が発生しています」。そのうえで「都道府県や市町村では、造成前後の航空写真や地図等を用いて、既存宅地における大規模盛土造成地の有無等の調査(第一次スクリーニング)を実施しました」と書かれています。造成の前と後の地形を重ね合わせて、谷や斜面を埋めた大きな造成地を洗い出した地図です。熱海市にもこの地図があり、市内のどこが大規模な盛土なのかは公表されています。

はっきりさせておきたいことが2つあります。1つは、2021年の伊豆山の土石流の起点がこの地図に載っていたかどうかを、この記事では確認していないということ。載っていたとも、載っていなかったとも書きません。もう1つは、この地図が危ない場所を示す地図ではないということです。国土交通省は留意事項として「マップに示す箇所が全て地震時に危険というわけではありません」「調査に使用しているデータの作成時期やその精度等により、全ての盛土が抽出できているものではありません」と書いています。データを配っている国土数値情報のページにも「安全性の確認が必要な盛土造成地を示したものであり、直ちに危険性のある盛土造成地を示したものではありません。最新の情報は各自治体にご確認ください」とあります。

書けるのはここまでです。そのうえで、一般論として言えることが1つあります。標高の図に出ないものが、別の地図には出ていることがある。色別標高図が描くのは、今の地面の高さだけです。その地面がもとから山だったのか、谷を埋めて作られたのかは、標高の色では区別がつきません。盛土の区分は、データを配る国土数値情報では「1:谷埋め型」「2:腹付け型」「9:区分をしていない」の3つに分かれていて、地図の色の違いはこの区分によるものです。

地名で当たりをつけて、標高で確かめて、それで終わりにしたくなります。熱海市の3地点はどれも56m以上で、標高の欄だけを見れば安心できる数字です。地名も標高も、その土地について全部を教えてはくれません。

地名のヒントを地図で確かめたシリーズ

見るべき地図は字で入れ替わる 土砂災害警戒区域は18,250か所

国土交通省が2026年6月30日に公表した「全国における土砂災害警戒区域等の指定状況」によると、静岡県の土砂災害警戒区域は18,250か所です。内訳は土石流5,034、急傾斜地の崩壊12,869、地すべり347で、うち特別警戒区域が15,830か所。全国では16位にあたり、全国計721,014か所の2.5%を占めます。この資料には「令和8年3月末時点の値であり、今後、変更の可能性がある」「集計時期の違い等により、ここで公表している都道府県の指定数と都道府県が公表している市町村別指定数の合計が一致しない場合があります」という注記が付いているので、そのまま添えておきます。市や町ごとの内訳は、この記事で確認できた一次資料が無いため書きません。

指定されると何が変わるのか、イエローとレッドで何が違うのかは、イエローゾーン・レッドゾーンとは?にまとめました。

静岡が面倒なのは、開く地図が1枚で終わらないところです。海ぞいの「浜」「浦」「津」の町では、津波と高潮の想定図。川ぞいや「新田」「島」の字が残る低地では、洪水と内水の浸水想定。山ぎわの「山」「沢」「上」の町では、土砂災害警戒区域。そして、字にも標高の色にも出てこない造成地では、大規模盛土造成地マップ。海と山と造成地で、3枚めくって、やっと自分の家の話になります。

見る過去も入れ替わります。下田市の須崎から西は1854年の安政東海地震、東は1923年の関東大地震。字が変われば開く地図が変わり、海岸線をたどれば基準にする地震まで変わる。1つの県の中でこれだけ入れ替わるところが、静岡の面倒なところであり、地名が役に立つところでもあります。

自分の町で同じことをする手順(無料)

  • 国土地理院の「地理院地図」に住所を入れ、「自分で作る色別標高図」で0〜5mを塗り分ける。静岡県の住宅地の標準地451地点の中央値は17.4mで、5m未満は65地点。自分の町がこの色に入るかどうかを見る
  • ハザードマップポータルサイトの「重ねるハザードマップ」で、海ぞいなら「津波」を1枚目に開く。次に「高潮」「洪水」「内水」を重ねる。同じ住所でも、色がつく地図とつかない地図が分かれる
  • 山ぎわの町なら「土砂災害警戒区域」(県内18,250か所)を、造成された住宅地なら「大規模盛土造成地」を重ねる。標高の図で高く出る場所ほど、この2枚のほうが効く
  • 地図を閉じたら、玄関から避難場所まで実際に歩く。県が示した計算例では、津波到達5分・避難開始1分40秒後という条件で歩ける距離は200m。200m以内に高い場所があるか、坂や階段の入口はどこかを、明るいうちに1回見ておく

洪水の地図で浸水深と浸水継続時間をどう読むかは、洪水ハザードマップはどこを見る?にまとめています。静岡の地名は、津波と土砂と盛土という3つの別々の話を指しています。答えは町名ではなく、自分の家の地点にあります。

\色のついていない場所から55.7%

ハザードマップの色の外で起きたことを見てみる ›

「気にしすぎでしょうか」という質問に、被害報告の数字で答えた記事

同じ日に出した地名シリーズ

この記事の集計条件

標高は、国土地理院の地理院タイル「数値標高モデル(5mメッシュ)」を緯度経度で切り出して色別標高図と陰影を作り、淡色地図を重ねました。図の丸印に書いた数値は5mメッシュから読んだ地表の高さで、建物は含みません。本文に書いた標準地の標高は国土地理院の標高APIで取得した値で、図の数値とは小数点以下で食い違うことがあります。字別・市町別の集計は、国土数値情報「地価公示」2026年のうち用途が住宅の静岡県の標準地451地点の住所と、標高APIで取得した標高によります(全国17,612地点の取得は2026年8月20日)。字の集計は市区町村名を除いた町名・字名で行ったため、「焼津市」「沼津市」のような市町村名そのものは字別の数に入っていません。

津波浸水想定と大規模盛土造成地は、ハザードマップポータルサイト「重ねるハザードマップ」が配信する静岡県・国土交通省の公表分のタイル(作図時点の掲載内容)です。避難可能距離200mの計算、避難場所の考え方、避難圏域2km、東海地震の襲来時間、痕跡高の基準(下田市須崎以西は1854年安政東海地震津波、以東は1923年関東大地震津波)、第4次地震被害想定の経緯は、消防庁の検討会に配布された静岡県の資料「静岡県の津波想定」の原文によります。200mは避難困難地区を出すための算出例であり、県全域に適用される基準ではありません。市町ごとの津波到達時間・最高津波水位は、一次資料に到達できなかったため書いていません。

土砂災害警戒区域の数は国土交通省「全国における土砂災害警戒区域等の指定状況」(2026年6月30日公表)で、注記は本文に書いたとおりです。大規模盛土造成地の説明と留意事項は国土交通省「大規模盛土造成地マップについて」、盛土区分は国土数値情報「大規模盛土造成地データ」2023年版によります。熱海市伊豆山の土石流の死者・行方不明者28人と住家被害128棟・135世帯は静岡県の公表ページおよび2026年7月の五年追悼式の各社報道、盛土の量と標高は静岡新聞の報道、検証委員会の記述は県が公表した内容の紹介です。焼津の地名由来は焼津市「焼津市ってどんな街?」、静岡の地名由来は静岡県立中央図書館の史跡解説、安倍川の説明は国土交通省中部地方整備局静岡河川事務所によります。熱海の地名由来は公的な一次資料を確認できなかったため「説」として書きました。冒頭と本文で引用した質問は、2023年3月31日と2012年1月6日の知恵袋の投稿です。

写真はウィキメディア・コモンズ(Wikimedia Commons)の素材を、それぞれのライセンスに従って使用しています。アイキャッチの焼津港と瀬戸川の写真はアルプスデイク(Alpsdake・投稿者名)の撮影(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 CC BY-SA 4.0)です。

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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