契約当日の書類づくりは、営業ではなく事務側の仕事になっていることが多い作業です。そして「契印」「割印」「消印」は名前が似ているうえに、押す場所も目的も別物です。
押し間違えたからといって契約が無効になるわけではありません。ただし消印だけは印紙税法上の義務で、忘れると税金がかかります。
この記事では、3つの印の押し分け、袋とじ製本の手順、収入印紙の貼り方を図で整理します。
3つの印は「何と何にまたがるか」で覚える

| 印の名前 | 何のために押すか | どこに押すか | 法律上の義務 |
|---|---|---|---|
| 契印 | 同じ1通の中でページが差し替えられていないことを示す | ページの見開き、または製本テープと本紙 | なし(実務慣行) |
| 割印 | 2通が同じ内容の控えだと示す | 2通を少しずらして重ね、両方にまたがって | なし(実務慣行) |
| 消印 | 収入印紙を再使用させない | 印紙と契約書の用紙にまたがって | あり(印紙税法) |
契印と割印は、法律で押せと決まっているものではありません。押していなくても契約は成立します。ただし後から「そのページは差し替えられている」と主張されたときに、押してあるほうが説明が楽になります。
一方で消印は義務です。印紙を貼っても消印をしていないと、消していない印紙の額面と同じ金額の過怠税がかかります。
どの印鑑を使うか
契印・割印には、契約書の署名欄に押したものと同じ印鑑を使います。署名欄が実印なら契印も実印です。ここで認印に変えてしまうと、同じ人が押したことを示す意味が薄れます。
売主が共有名義などで複数いる場合、契印は全員分を押すのが原則です。ただし実務では代表者1名で運用している例もあります。相手方の会社の慣行に合わせてください。
契印を押す場所は「製本したかどうか」で変わる

製本しない場合は、全ページの見開きに契印を押します。4枚なら3か所です。ページが増えるほど押す回数が増え、そのぶん押し漏れが起きます。
製本すると、製本テープと表紙・裏表紙にまたがって押すだけで済みます。中のページには押しません。
契約書が1枚で収まっているなら、製本も契印も不要です。 2枚以上あるときだけ検討します。
袋とじ(製本)の手順

- ページ順に重ねて左端をホチキスで留める — 上下2か所が基本です
- 製本テープを裏面から貼る — テープの中心を背に合わせ、のりしろが左右で均等になるようにします
- 表側に折り返して貼る — 空気を抜きながら密着させます
- テープと本紙にまたがるように契印を押す — 上下2か所が一般的です
つまずきやすいのは2の位置決めです。テープの中心がずれると、表に折り返したときに片側だけのりしろが足りなくなります。裏から貼る段階で、はみ出し幅を目で確認してください。
上下にはみ出したテープは、折り込むか切り落とします。切る場合は、契約書の端より内側に刃を入れないよう注意します。
収入印紙は「貼る」だけでは終わらない

消印は、印紙と契約書の用紙の両方にまたがるように押します。印紙の中だけに収まっていると、消したことになりません。
国税庁は消印の方法を「印章または署名」と定めています。ゴム印でも構いません。一方で、次のものは消印として認められません。
- 「印」の文字だけを書いたもの
- 斜線を引いただけのもの
- 鉛筆など、消せる筆記具で書いたもの
押すのは、その文書の作成者・代理人・使用人・従業者のうち誰か1人で足ります。売主と買主の両方が押す必要はありません。実務では、印紙を買って貼った側が押します。
契約書が2通なら、印紙も2通分
売買契約書は売主用・買主用の2通を作るのが一般的です。この場合、2通とも課税文書なので、印紙はそれぞれに必要です。負担は当事者の合意で決められますが、各自1通分ずつ負担するのが通例です。
印紙代を抑えるために、原本を1通だけ作り、もう一方はコピーを持つという方法もあります。ただしコピーに「原本と相違ない」旨の証明として署名や押印をすると、そのコピーも課税文書として扱われます。単なる写しとして渡すなら印紙は不要です。
どちらにするかは当事者の合意事項です。事務側の判断で決めず、契約条件として確認してください。
税額(軽減措置の適用後)
不動産の譲渡に関する契約書は、令和9年3月31日までに作成されるものについて税額が軽減されています。
| 契約金額 | 軽減後の税額 | 本則 |
|---|---|---|
| 500万円超〜1,000万円以下 | 5千円 | 1万円 |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 1万円 | 2万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 3万円 | 6万円 |
| 1億円超〜5億円以下 | 6万円 | 10万円 |
貼り忘れ・消し忘れのペナルティ
| 状態 | 過怠税 |
|---|---|
| 印紙を貼っていない | 本来の印紙税額の3倍 |
| 貼っていないが、調査を受ける前に自主的に申し出た | 1.1倍 |
| 貼ったが消印していない | 消していない印紙の額面と同額 |
過怠税は、全額が法人税の損金・所得税の必要経費に算入できません。金額そのものより、後の経理処理が面倒になります。
契約当日に確認する書類と、印の要否
| 書類 | 押印 | 収入印紙 |
|---|---|---|
| 売買契約書 | 署名欄+契印(2通なら割印も) | 必要(契約金額に応じて) |
| 重要事項説明書 | 宅地建物取引士の記名のみ(2022年5月の法改正で押印は不要になりました) | 不要 |
| 付帯設備表・物件状況報告書 | 売主の署名押印 | 不要 |
| 手付金の領収書 | 受領者の押印 | 売主が個人なら不要。宅建業者が受け取る場合は必要(受取額5万円未満は非課税) |
重要事項説明書と37条書面は、2022年5月の宅建業法改正で宅地建物取引士の押印が不要になりました。記名は引き続き必要です。古い社内マニュアルが押印を求めたままになっていないか確認してください。
手付金の領収書は、売主が個人で「営業に関しない受取書」に当たる場合は非課税です。宅建業者が売主として受け取る場合は課税文書になります。
契約が終わったら、掲載を止めるまでが仕事
成約したら、レインズの取引状況の更新と、ポータルサイトの掲載停止まで行って一区切りです。この2つは同じタイミングで動かしてください。 片方だけ直す運用にしていると、必ずどちらかが遅れます。
掲載の停止が遅れるとおとり広告として指摘を受けます。レインズ側の更新漏れについてはレインズ登録でやりがちな違反6つ、契約後に走る期限の管理は媒介契約を結んだ後の期限管理にまとめています。
まとめ
- 契印=1通の中のページのつなぎ目、割印=2通にまたがって、消印=印紙と用紙にまたがって押す
- 契印と割印は法律上の義務ではないが、消印は義務。忘れると印紙の額面と同額の過怠税
- 契約書が2枚以上なら、製本したほうが押す回数が減る(中のページには押さなくてよい)
- 消印は「印」の字だけ・斜線・鉛筆では認められない。印章か、ペンでの署名
- 契約書が2通なら印紙も2通分。コピーに証明の押印をすると、そのコピーにも印紙が必要になる
弊社では、ポータルサイトへの掲載・更新・停止をまとめてお受けしています。物件資料からのマイソク・募集図面の作成にも対応しており、作り方はマイソクの作り方にまとめています。詳しくはポータルサイト入稿代行と料金表をご覧ください。


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