結論からいうと、「古い家や田舎の土地は負動産になる」とは限りません。負動産になるかどうかを分けるのは築年数や場所よりも、売る・人に渡す・国に返すという出口が、1つでも残っているかどうかです。
ただし、その出口は持ち主が何もしなくても閉じていきます。2026年の地価公示で、住宅地の地価が前年より下がったのは全国1,525市区町村のうち625。4割の町では、土地は待つほど安くなっています。
先に結論
- ✓ 負動産は「安い不動産」ではなく、持つほどお金が出ていき、手放す先も無い不動産
- ✓ なる原因は6つ。いちばん重いのは住まない家が建ったままの土地で、国に返す制度は建物があると申請もできない
- ✓ ならないための手は、名義を直す・境界を確かめる・売れるうちに売るの3つ。どれにも期限がある
負動産とは
負動産は法律の言葉ではありません。持っているだけで税金や草刈り、修理のお金が出ていくのに、売っても貸しても取り戻せない不動産を指す呼び名です。出ていくものは、主に次の3つです。
| 出ていくもの | 中身 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 毎年かかる。土地の評価額が合計30万円未満なら課税されない(免税点) |
| 管理の手間と費用 | 草刈り、庭木の剪定、屋根や外壁の修理。遠方なら往復の交通費も |
| 事故の責任 | 塀や建物が崩れて人にけがをさせたら、持ち主が賠償する(民法717条) |
3つ目は見落とされがちです。民法717条は、塀や建物の傷みで他人に損害が出たとき、まず使っている人に責任を負わせ、その人が注意を尽くしていたなら所有者が賠償すると定めています。所有者は「注意していた」と言っても逃れられません。誰も住んでいない家では、その両方が持ち主に向かいます。
「いらない土地」を国に返したい人が、実際にどんな土地を持っているかは、法務省の統計に出ています。相続した土地を国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度の申請は、2026年8月末までに5,997件。いちばん多いのは田・畑の2,335件(39%)で、宅地2,091件、山林902件が続きます。
読者
毎年の固定資産税が数千円なら、持っていても困らないのでは
税金だけならそうです。困るのは、相続のたびに持ち主が増えて、売りたいときに全員の同意が要るようになること。それと、塀や木が隣に迷惑をかけたときの責任です。税金の安さは、負動産かどうかの目安になりません
負動産になる6つの特徴

1. 買い手がいない場所 住宅地の地価が1㎡1万円を下回る地点は、全国17,613地点のうち717(4.1%)。北海道が225地点と最も多く、茨城57、鹿児島45、青森43と続きます。1㎡1万円なら、200㎡の土地でも200万円に届きません。

安いこと自体は問題ではありません。問題は、下がり続けて「来年はもっと安い」と分かっている土地を、急いで買う人がいないことです。3年前と同じ地点で比べられる1,515市区町村のうち、700では3年で下がっていました。
2. 建て直せない土地 家を建てる土地は、幅4m以上の道路に2m以上接していなければなりません(建築基準法43条)。満たさない土地の家は、壊すと同じ場所に建て直せません。市街化調整区域にも、更地にすると建てられなくなる土地があります。
3. 田畑・山林 農地は、農地法の許可が無いと農地のまま売れません。買えるのは原則として農業をする人です。2023年4月に「何アール以上耕す人」という面積の条件は無くなりましたが、許可そのものは残っています。山林は境界が分からないまま代替わりしていることが多く、売るにも国に返すにも、まず境界でつまずきます。使わない畑を宅地に転用する費用も、別の記事にまとめています。
4. 権利がこじれている 共有名義の土地は、売るのに共有者全員の同意が要ります。名義が亡くなった親のままの土地は、売る前に相続登記が必要です。相続登記は2024年4月から義務になり、正当な理由なく3年を過ぎると10万円以下の過料の対象です。2024年3月以前の相続も対象で、期限は2027年3月31日です。
読者
うちの実家は駅から歩けるし、道路にも接しています。どれにも当たらないのでは
それなら、いまは負動産ではなく資産です。ただ5番目だけは場所を選びません。住む人がいなくなった日から、どの家にも始まります
5. 住まない家が建っている 家が建っている土地は、固定資産税の課税標準が200㎡までの部分で6分の1になる「住宅用地の特例」を受けています。2023年12月の空家法の改正で、手入れされていない空き家が「管理不全空家」として市区町村から勧告を受けると、この特例が外れるようになりました。2024年度に全国で出た勧告は、管理不全空家と特定空家を合わせて978件です。

勧告を避けて家を壊せば、今度は更地になって特例が外れ、解体費もかかります。建っていても壊しても負担が出るのが、空き家の付いた土地の重さです。空き家を放置するとどうなるかは、別の記事で詳しく書いています。
6. 原野商法で買った土地 1970〜80年代に「開発計画がある」「必ず値上がりする」と売られた山林や原野です。値上がりしないまま残り、いまはその土地の「買い取り話」が二次被害の入口になっています。
国に返せる土地の条件
「いらなければ国に返せばいい」と考える人は多いのですが、国の制度が引き取るのは、建物が無く、境界がはっきりしていて、抵当権なども付いていない土地だけです。家が建ったままの土地は、申請の時点で却下されます。
費用は、審査手数料が1筆14,000円。承認されると負担金を払い、原則は20万円です。市街化区域の宅地は面積で計算し、200㎡なら79万3,000円になります。1㎡1万円の土地なら、売値と国に払うお金がほとんど変わりません。

審査で落ちた土地(却下85件・不承認100件)より、申請した人が自分で取り下げた1,139件のほうが6倍多くなっています。そのうち586件は「有効活用の見込みが生じた」ためで、法務省は例として、隣の土地の持ち主が引き受けを申し出たケースを挙げています。
私は、この586件に負動産の正体が出ていると見ています。売れないと思っていた土地にも、まだ声をかけていない相手がいた、ということです。負動産かどうかを決めているのは土地の値段より、出口を探したかどうかのほうだと考えます。
相続放棄は、預金も借金も含めた財産すべてを手放す手続きです。土地だけを選んで放棄することはできず、期限は相続を知ってから3か月です。放棄したあとの空き家の管理は「相続放棄しても空き家の管理は必要?」にまとめています。
負動産にしない3つの手
6つの特徴のうち、場所と地形は持ち主には変えられません。変えられるのは名義、境界、売る時期の3つで、どれにも期限があります。
| やること | 期限 | 過ぎると |
|---|---|---|
| 相続登記(名義を直す) | 相続を知ってから3年。2024年3月以前の相続は2027年3月31日 | 10万円以下の過料の対象 |
| 境界を確かめる | 期限なし。隣の持ち主が代わる前 | 国庫帰属・寄付・売却のどれも止まる |
| 空き家を売る(3,000万円控除) | 相続から3年が過ぎる年の年末。制度は2027年12月31日まで | 売れた利益に税金がそのままかかる |
まず名義です。親がどこに土地を持っていたか分からないときは、2026年2月から法務局で「所有不動産記録証明書」を取れるようになりました。相続人が請求でき、窓口で1通1,600円です。ただし、登記簿の住所が古いままだと抽出されないので、親の昔の住所でも請求します。
次に境界です。境界標の杭、測量図、建物の図面を探して、1か所にまとめます。国の制度も、名古屋市などの寄付の基準も、境界がはっきりしない土地は受けません。隣の持ち主が代替わりすると、昔の境界を知る人がいなくなります。
最後が売る時期です。昭和56年5月以前に建った親の家を相続して売るとき、条件を満たせば売れた利益から3,000万円(相続人が3人以上なら1人2,000万円)を差し引けます。使えるのは相続から3年が過ぎる年の年末までです(3,000万円控除の期限と条件)。
読者
親はまだ元気です。いまからできることはありますか
いちばん効くのは、親が元気なうちに「どこに何を持っているか」を一緒に書き出すことです。原野商法の二次被害は、子が土地の存在を知らないところに付け込みます。権利証や固定資産税の通知書の置き場所を聞いておくだけでも違います
状況別の次の一歩
当てはまった特徴ごとに、次に読む記事を分けました。
冒頭の「古い家」に戻ると、築50年の家でも、名義が整い、境界が分かり、欲しい人がいる場所なら、それは負動産ではありません。負動産にしてしまうのは、家の古さより、何もしないまま過ぎる3年のほうです。
出典
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」令和8年8月31日現在(速報値)
法務省 相続土地国庫帰属制度の統計(2026年10月16日取得) - 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」「相続土地国庫帰属制度のご案内(第2版)」
法務省 制度の概要(2026年10月16日取得) - 法務省「相続登記の申請義務化について」
法務省 相続登記の申請義務化(2026年10月16日取得) - 新潟地方法務局「所有不動産記録証明制度」
法務局 所有不動産記録証明制度(2026年10月16日取得) - 国土交通省・総務省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について(令和7年3月31日時点)」
国土交通省(PDF) - 国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
国税庁 No.3306 - 総務省「固定資産税の概要」(免税点)
総務省 固定資産税 - 国土交通省 地価公示(国土数値情報 L01)2026年・2023年の住宅地。市区町村ごとの対前年変動率の中央値と、同じ地点の3年比較は当サイトで集計
※ 地価公示は国が選んだ標準地の価格で、実際の売買価格とは一致しません。※ 国庫帰属の統計は速報値で、法務省が順次更新します。※ 2026年10月16日時点の公表資料にもとづいています。個別の相続・登記・税金の判断は、司法書士や税理士、法務局の相談窓口で確認してください。
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