結論からいうと、「売れない土地は、タダでも誰ももらってくれない」とは限りません。国の統計にも、手放そうとした土地を、隣の土地の持ち主が引き受けると申し出た例が出ています。
ただし、どの道も開いているのは、名義が整っていて境界が分かる土地だけです。手放す方法は7つあり、かかるお金と条件はそれぞれ違います。
先に結論
- ✓ 先に当たるのは隣の持ち主。あげる場合、受け取る側は年110万円までなら贈与税がかからない
- ✓ 800万円以下の土地は、不動産会社が仲介手数料を33万円まで受け取れる特例がある(2024年7月から)
- ✓ 国に渡すなら審査手数料1筆14,000円+負担金20万円から。建物があると申請できない
手放す7つの道
売れない土地を手放す道を、先に当たったほうがよい順に並べると次のようになります。上の道ほど、かかるお金が少なく済みます。

相続放棄は、まだ相続していない人だけの道です。相続を知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し立て、預金や自宅も含めた財産すべてを手放します。土地だけを選んで放棄することはできません。
まず隣に声をかける
売れない土地を、いちばん欲しがる可能性があるのは隣の持ち主です。自分の土地とつなげれば、形が整う、駐車場や庭が広がる、道路への出入りが楽になる、といった使い道が隣にだけあるからです。
法務省の相続土地国庫帰属制度の統計では、2026年8月末までに申請を取り下げた1,139件のうち586件が「有効活用の見込みが生じた」ためでした。法務省はその例に、隣接地の所有者から引き受けの申出があったケースを挙げています。国に渡す手続きを進めている途中で、隣が引き受けると言ってくることがあるということです。
隣の持ち主が分からないときは、法務局で隣の土地の登記事項証明書を取ると、名義と住所が分かります。声をかけるときは、次の3つを先に決めておきます。
- 売るか、あげるか 値段を付けるなら近くの取引価格を調べておく
- 名義変更の費用を誰が持つか 所有権を移す登記の登録免許税や、司法書士への報酬がかかる
- 受け取る側の税金 あげる場合、受け取った人には贈与税がかかるが、1年間にもらった財産の合計が110万円以下ならかからない。不動産取得税がかかることもある
読者
隣の人に「タダでもらってほしい」と言うのは失礼になりませんか
失礼かどうかより、相手にとって得かどうかです。隣にとって使い道がある土地なら、話は聞いてもらえます。断られても、境界を確かめておく機会にはなります。境界は、ほかのどの道でも必要になります
不動産会社と空き地バンク
安い土地は、不動産会社にとって手間のわりに手数料が少なく、後回しにされがちでした。そこで国は2024年7月、物件価格800万円以下の土地や家について、不動産会社が仲介にかかった費用を考えて、手数料を30万円の1.1倍(33万円)まで受け取れるようにしました。媒介契約を結ぶときに、額を説明して合意することが条件です。
200万円の土地なら、通常の上限で計算した手数料は10万円を下回ります。特例で33万円まで払う可能性があると知ったうえで、引き受けてくれる会社を探すほうが話が早く進みます。私は、売値が安い土地ほど、手数料を値切るより「地元で動いてくれる会社」を選ぶほうが結果的に安く済むと考えています。
市区町村が運営する空き家・空き地バンクに載せる手もあります。移住や家庭菜園の土地を探す人が見ています。登録の条件や費用は自治体ごとに違うので、土地がある市区町村の窓口で確かめます。
寄付と国に渡す制度
自治体への寄付は、受けてもらえれば費用はかかりませんが、ハードルは高めです。たとえば名古屋市が受けるのは「本市の事業に利用できる土地」か「処分(換価)が容易であると見込まれる土地」で、原則は更地です。境界が決まっていない土地、抵当権が付いた土地、崖崩れのおそれがある土地は受けません。使い道の無い土地を、使い道の無いまま受け取る自治体は多くありません。
国の相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈で受け取った土地が対象です。審査手数料が1筆14,000円、承認されると負担金を払います。宅地・田畑・原野は原則20万円で、市街化区域の宅地などは面積で計算します。

家が建ったままの土地、境界に争いがある土地は申請できません。崖や竹林、地中のがれきがあると、審査で不承認になることもあります。
引き取り業者の確かめ方
お金を払って土地を引き取ってもらう民間の業者もあります。料金は業者ごとに違い、公的な統計もありません。だからこそ、契約の前に次の4つを確かめます。
- 先にお金を求められないか 「調査費」「測量費」「整地費」を先に払わせる形は、原野商法の二次被害と同じ手口です
- 別の土地を買う話が混ざっていないか 引き取りのはずが、ほかの土地の購入とセットになっていないか契約書で読む
- 名義がいつ移るか 所有権を移す登記を、いつ、誰の費用でするかが契約書に書いてあるか。登記が済むまで持ち主は自分のまま
- 国の制度と比べた総額 手数料14,000円+負担金20万円より高いなら、なぜ国の制度が使えないのかを確かめる
私は、引き取り業者を考えるのは、国の制度の条件に当たらないと分かってからでよいと考えます。比べる物差しが無いまま見積もりを見ても、高いか安いかを判断できないからです。
冒頭の「タダでも誰ももらってくれない」は、まだ誰にも声をかけていない段階の思い込みであることが多いです。隣、地元の不動産会社、国の順に当たっていけば、少なくとも「いくら払えば手放せるか」は分かります。
出典
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」令和8年8月31日現在(速報値)
法務省 相続土地国庫帰属制度の統計(2026年10月16日取得) - 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」「相続土地国庫帰属制度のご案内(第2版)」
法務省 制度の概要(2026年10月16日取得) - 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」改正資料(2024年7月1日施行)
国土交通省(PDF)(2026年10月16日取得) - 名古屋市「土地の寄附について」
名古屋市(2026年10月16日取得) - 国税庁 タックスアンサー No.4402「贈与税がかかる場合」
国税庁 No.4402
※ 寄付の受け付け基準は自治体ごとに異なります。※ 仲介手数料の特例額は上限で、実際の額は媒介契約で決まります。※ 2026年10月16日時点の公表資料にもとづいています。個別の税金や登記は、税理士・司法書士・法務局で確認してください。
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