神戸市9区で実際に売れた築50年以上のマンション(専有50〜80㎡)の値段は、中央値で330万円でした。管理費と修繕積立金の全国平均は月24,557円なので、空き部屋のまま11年持っていると、払った額が売値に追いつきます。
この「何年で追いつくか」は、築40〜50年なら48年あります。実家が築何年かで、4倍以上ちがう話になります。
先に結論
- 神戸の実成約(専有50〜80㎡・1,322件)の中央値は、築40〜50年で1,400万円、築50年以上で330万円。1つ帯をまたぐと76%落ちる
- 管理費+修繕積立金の全国平均は月24,557円=年約29万円(国交省 令和5年度マンション総合調査)
- 売値をこの年額で割ると、追いつくまでの年数は築40〜50年で48年、築50年以上で11年
- 値段が半分になるのは築50年ちょうどではなく、その手前。築47〜49年の995万円が築50〜52年で485万円
- 「旧耐震だから安い」は神戸の実データでは成り立たない。1981年の線に段差は無かった
- 先に数えるのは建物の寿命ではなく、長期修繕計画の残り期間と積立金の残高
8人の回答が、全部「あと何年もつか」の話でした
2022年11月、Yahoo!知恵袋に一人っ子の方から質問が出ています。要約すると、実家がマンションで築50年。両親は健在だが引っ越し先が決まって売ろうとしている。立地が良いので売りに出せば売れるし、新築当時より高い。両親は売れるうちに手放したいと言うが、賃貸にして将来自分が相続するのはどうか——という内容です。閲覧は13,736件、回答は8件付きました。
質問の最後の一文が、この記事の主題です。
「持ち続けたら負の遺産でしょうか?」
回答は8件とも、手放す方向でそろっていました。ただ、根拠がほぼ全部「建物があと何年もつか」でした。旧耐震のデメリット、建替えの合意形成ができずに放置される可能性、築70年になれば200万円ほどの売却額しか見込めない、あるいは値段が付かないかもしれない、といった具合です。区分所有のマンションを「ババ抜き」と表現した回答もありました。
ベストアンサーだけが、金額を並べていました。築42年のマンションを実際に売った方で、売却時に毎月かかっていた費用は6万円。賃貸に出せば月12万円で貸せるが経費が5万円かかるので手取りは7万円、20年貸せば1,680万円になる。ただし20年後は築62年で売れるのか——という計算です。
この方は、費用を2つに分けて書いていました。管理費・修繕積立金・駐車場料金は年数が経つほど上がる。固定資産税は少しは下がる。上がるものと下がるものを正しく仕分けているのに、その合計を売値と比べるところまでは行っていません。
神戸の実際の成約データを使うと、そこが数えられます。区ごとの値動きや税金の特例から見たい方は、先に神戸でマンションを相続した人へ|価格は区で+43%と−8%に割れていたのほうが早いかもしれません。この記事は築年数だけを縦に見ます。
持ち続けると、何年で「売値と同じ額」を払うか
国土交通省の不動産取引価格情報から、神戸市9区で成約した中古マンションのうち専有面積50〜80㎡のもの1,322件を取り出し、築年帯ごとに総額の中央値を出しました。50〜80㎡に絞ったのは、これを外すと築浅の帯にワンルームの投資物件が大量に入り、面積中央値が25㎡まで落ちて比較にならなくなるからです。この絞り込みで、どの帯も面積中央値は60〜70㎡にそろいます。
それを、管理費+修繕積立金の年額294,684円で割ります。管理費11,503円と修繕積立金13,054円は、国交省の令和5年度マンション総合調査にある月/戸当たりの平均額(駐車場使用料等からの充当額を除く)です。

築30年までは100年以上あります。ここは実質的に無関係な数字です。動きが出るのは築30年からで、61年→48年と縮み、築50年で11年に落ちます。
築40〜50年(167件・1,400万円)と築50年以上(139件・330万円)の差が76%。10年ぶんの経年で説明できる下がり方ではありません。
値段が半分になるのは、築50年の手前でした
帯が10年刻みだと、どこで落ちたのかが分かりません。同じ1,322件を建築年3年ごとに切り直しました。

築47〜49年(1977〜1979年築・34件)が995万円。築50〜52年(1974〜1976年築・54件)が485万円。3年の差で51%落ちています。その次の築53〜55年は300万円で、ここから先はほぼ横ばいです。
つまり落ちるのは築50年を越えてからではなく、越える手前です。冒頭の質問者の実家は築50年ちょうどなので、ちょうどこの段差の上に立っています。両親が「売れるうちに」と言っているのは、体感として正しいことになります。
築50年以上の139件を値段順に並べると、下から10件目あたりが130万円、4分の1が200万円以下、真ん中が330万円、上から4分の1が600万円以上でした。最高値は2,000万円で、最安は20万円です。同じ「築50年超の神戸のマンション」の中に、100倍の開きがあります。
築40年を越えた物件を区ごとに見ると、追いつくまでの年数はこう変わります。件数が10件に満たない区は載せていません。
| 区 | 成約中央値 | 件数 | 追いつくまで |
|---|---|---|---|
| 垂水区 | 300万円 | 52件 | 10.2年 |
| 北区 | 435万円 | 24件 | 14.8年 |
| 須磨区 | 485万円 | 78件 | 16.5年 |
| 灘区 | 740万円 | 31件 | 25.1年 |
| 東灘区 | 1,500万円 | 44件 | 50.9年 |
| 中央区 | 1,900万円 | 28件 | 64.5年 |
垂水区と中央区で6倍ちがいます。同じ神戸市内の同じ築年数でも、片方は10年で追いつき、片方は64年かかる。「築古マンションは負動産」という一般論を自分の実家に当てはめる前に、区の実数を見たほうが早いです。
開いた時点で神戸市が入っています。町名まで絞れます
「旧耐震だから安い」は、神戸の数字では出ませんでした
築古マンションの話には、必ず1981年の新耐震基準が出てきます。冒頭の質問にも旧耐震を指摘する回答が2件ありました。私も最初はここが段差だと考えて、同じデータで確かめました。
1981年以前の216件は中央値450万円、1982年以降の2,110件は2,300万円。5.1倍です。これだけ見ると耐震基準の線で説明できそうに見えます。
ところが建築年ごとの㎡単価を並べると、線がありません。1979年が157,143円、1980年が134,286円、1981年が160,000円、1982年が181,818円、1983年が189,474円。1981年と1982年のあいだで跳ねていない。5.1倍の正体は、旧耐震のグループが17年ぶん・新耐震のグループが44年ぶんという、母集団の年齢差でした。
私は、この5.1倍を「旧耐震だから安い」と説明するのは間違いだと考えています。実際に落ちているのは築47〜49年から築50〜52年にかけてで、1981年より3〜5年ずれた場所です。耐震基準が値段に効いていないという意味ではなく、少なくとも神戸の実成約では、耐震基準の線としては検出できないという意味です。
実務的にはこの区別に意味があります。耐震基準が理由なら、耐震診断や補強で動かせる話になります。築年数が理由なら、待っても戻りません。
分母は下がり、分子は上がります
ベストアンサーの方が書いていた「年数が経てば経つほど上がる」は、統計でも裏が取れます。国交省の同じ調査によると、修繕積立金の積立方式は均等積立方式が40.5%に対し、段階増額積立方式が47.1%。半数近くのマンションが、最初は安く後から上げる前提で設定されています。完成年次別の平均額でも、平成27年(2015年)以降のマンションは全体平均を下回っています。今が安いということは、これから上がるということです。
同じ調査で、管理費または修繕積立金を3か月以上滞納している住戸があるマンションは30.1%。この割合は、完成年次が古いマンションほど大きくなります。滞納が増えれば足りない分は値上げか一時金で埋めることになるので、古い建物ほど上振れしやすい構造です。
ここまでの計算は、全国平均の月24,557円をそのまま当てはめたものです。駐車場代も固定資産税も入れていません。冒頭のベストアンサーの方は駐車場込みで月6万円だったので、実額がこれより高い部屋なら、追いつく年数はもっと短くなります。
売値のほうは築年数とともに下がり、月々の支払いは上がる。分母が縮んで分子が伸びるので、追いつくまでの年数は、経過した年数より速く減ります。
築50年に近い実家がある人が、いま数えること
1. 管理組合に3つ聞く
建物の寿命は誰にも分かりませんが、次の3つは管理組合か管理会社に聞けば今日わかります。
- 長期修繕計画が何年先まで引かれているか(25年以上あるか)
- 修繕積立金の現在の残高と、計画上の必要額との差
- 今後の値上げ予定と、一時金の徴収予定
国交省の調査では、実際の積立額が長期修繕計画より不足しているマンションが少なくありません。計画より足りていない場合、その差は将来の値上げか一時金として、持っている人に来ます。ここが分かって初めて、月24,557円という全国平均を自分の部屋の実額に置き換えられます。
2. 今の値段を数字で押さえる
上の表は区ごとの中央値で、個々の部屋の査定額ではありません。同じ築50年超でも20万円から2,000万円まで開いています。持っている部屋がどちら側にいるのかは、住所まで絞らないと分かりません。
3. 「まだ売らない」を選ぶなら、期限を決める
持ち続けること自体は選択肢です。両親が住んでいる、自分が住む予定がある、賃貸で回せる見込みがある——どれも十分な理由になります。問題は、理由がないまま持ち続ける状態です。
築50年超の神戸のマンションで中央値の330万円なら、判断を11年先送りした時点で、売っても手元に残らない計算になります。垂水区の中央値300万円なら10年です。
なお、一戸建ての実家を売るときに使える「相続空き家の3,000万円特別控除」は、国税庁タックスアンサーNo.3306の要件に「区分所有建物登記がされている建物でないこと」とあり、分譲マンションは最初から対象外です。戸建てとマンションで出口の数が違うという話は、神戸でマンションを相続した人へで税金の側から整理しています。
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この記事の数字の出どころ
- 成約価格: 国土交通省「不動産取引価格情報」より神戸市9区の中古マンション等2,378件(2024年第4四半期〜2026年第1四半期)。本文の集計は専有面積50〜80㎡に絞った1,322件で、値はすべて中央値です。取引が成立した部屋の記録であって、相続が起きた部屋の統計ではありません。件数の少ない区の値はブレが大きくなります
- 管理費・修繕積立金: 国土交通省「令和5年度マンション総合調査」(令和6年6月公表)。月/戸当たりの平均額で、駐車場使用料等からの充当額を除く数値。全国平均であり、神戸の築古マンションの実額ではありません。駐車場代・固定資産税は含みません
- 3,000万円特別控除の要件: 国税庁タックスアンサーNo.3306
- 質問と回答の引用: Yahoo!知恵袋(2022年11月22日投稿・回答8件)。質問文は要約で、原文は転載していません
税額や特例の可否は個別の事情で変わります。判断の前に、税理士や管理組合など、その部屋の実額を確認できる相手にあたってください。


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