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相続土地国庫帰属制度/使えない土地と費用

結論からいうと、「いらない土地は国に引き取ってもらえる」とは限りません。家が建っている土地や、隣との境界がはっきりしない土地は、審査に入る前に却下されます。

ただ、法務省の統計で多いのは、落ちた土地より、申請したあとで本人が取り下げた土地です。2026年8月末までの申請5,997件のうち取り下げは1,139件で、審査で落ちた185件の6倍。そのうち半分は「使い道が見つかった」ための取り下げでした。

先に結論

  • ✓ 建物・抵当権・境界の争いがある土地は申請できない。崖、竹林、地中のがれきがあると不承認
  • ✓ 費用は審査手数料1筆14,000円+負担金。宅地・田畑・原野は原則20万円、市街化区域の宅地200㎡なら79万3,000円
  • ✓ 国に渡ったのは3,119件。取り下げ1,139件のうち586件は、隣の持ち主の引き受けなどで使い道が見つかった
目次

申請できない土地

相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈で受け取った土地を、負担金を払って国に引き取ってもらう制度です。2023年4月27日に始まり、それより前に相続した土地も対象です。売買で買った土地は使えません。

次の5つに当たる土地は、申請の段階で却下されます。

却下される土地 具体的には
建物がある 古家・空き家・倉庫。壊してからでないと申請できない
担保や使う権利が付いている 抵当権、地上権、賃借権など
他人が使う予定がある 道路として通られている、墓地、境内、ため池など
土壌が汚染されている 基準を超える特定有害物質がある
境界や持ち主に争いがある 隣と境界の認識が食い違う、ほかに所有権を主張する人がいる

実家を相続した人がまず当たるのは1つ目です。親の家が建ったままの土地は、解体するまで入口にも立てません。境界は、測量や境界確認書までは求められていませんが、申請者が示す境界に隣の持ち主が異を唱えていないことが条件です。

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読者

共有名義の土地でも申請できますか

おかあさん

共有者全員が一緒に申請すれば使えます。売買で持分を買った人が混ざっていても、相続で持分を受け取った人が1人でもいれば申請できます。1人でも反対すれば使えません

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審査で落ちる土地

申請は通っても、審査で次のどれかが見つかると不承認になります。法務局は書類だけでなく、現地も見に来ます。

不承認になる土地 例
崖がある 勾配30度以上かつ高さ5m以上で、擁壁工事などが必要
地上に邪魔なものがある 果樹、倒れそうな枯れ木、定期的に切る必要のある竹、廃屋、放置車両
地下に埋まったものがある 産業廃棄物、瓦などのがれき、古い基礎、浄化槽、井戸
隣と争わないと使えない 公道に出られない袋地、不法占拠、別荘地の管理組合とのトラブル
管理に手間と費用がかかりすぎる 崩れや陥没のおそれ、スズメバチやヒグマの被害、手入れされていない森林、土地改良の賦課金

家を壊して申請しても、古い基礎や浄化槽を地中に残したままだと、ここで止まります。解体を頼むときは、基礎と浄化槽まで撤去する見積もりにしてもらいます。

?

読者

山林は木が生えているだけで不承認になりますか

おかあさん

なりません。森林の木は、管理の邪魔にならないものとして扱われることがあります。落ちるのは、間伐されずに国が整備し直さないといけない森林や、倒れそうな枯れ木、広がる竹がある場合です

針葉樹が密に立ち並ぶ林
森林は面積で負担金を計算する。手入れされていない森林は不承認になることがある(Photo: Pexels)

費用は20万円から

お金は2回かかります。申請するときの審査手数料が1筆14,000円で、取り下げても却下・不承認でも戻りません。承認されたら、10年分の管理費にあたる負担金を一度だけ払います。

国に渡すときの負担金の早見。宅地は原則20万円で市街化区域・用途地域の中は面積で計算(100㎡で54万8,000円、200㎡で79万3,000円)。田・畑は原則20万円で農用地区域などの中は面積で計算(500㎡で72万3,000円、1反で112万円)。森林は面積で計算(1,500㎡で27万3,000円、6,000㎡で33万5,000円)。原野・雑種地などは20万円
法務省「相続土地国庫帰属制度のご案内(第2版)」から当サイト作成

市街化区域かどうかで、同じ200㎡の宅地でも20万円と79万3,000円に分かれます。自分の土地がどちらかは、市区町村の都市計画の担当課か、ホームページの都市計画図で確かめられます。

隣り合った同じ種類の土地が2筆以上あるときは、1つの土地とみなして負担金を計算するよう申し出ることもできます。市街化区域外の宅地同士なら、20万円×2ではなく20万円で済みます。宅地と森林のように種類が違う組み合わせはできません。

比べる相手は、その土地を売ったときの値段です。全国17,613地点の住宅地の地価公示のうち、1㎡1万円を下回る地点は717あります。そういう町の200㎡は、売れても200万円に届きません。国に払う20万〜80万円と、売るための仲介手数料や測量費を並べてから決めます。

\国に払う前に、売ったらいくらかを確認/

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申請の実績と取り下げ

法務省の統計(2026年8月31日現在・速報値)では、申請5,997件のうち3,119件が国に渡りました。申請が多いのは田・畑2,335件、宅地2,091件、山林902件の順です。

相続土地国庫帰属制度に申請された5,997件の行方。帰属3,119件、取下げ1,139件、不承認100件、却下85件、それ以外(審査中など)1,554件。取下げのうち586件は有効活用の見込みが生じたため
法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」2026年8月31日現在(速報値)。それ以外は当サイトで差し引き

取り下げ1,139件の内訳は、「有効活用の見込みが生じた」586件、「却下・不承認であることが判明した」405件、その他148件です。法務省は有効活用の例として、自治体や国の機関が使うと決まったケース、隣の土地の持ち主が引き受けを申し出たケース、農業委員会の調整で農地として使われる見込みになったケースを挙げています。

私は、この制度のいちばんの使い道は、国に渡すこと以上に「申請の準備で周りに声をかけること」だと見ています。申請には境界を示す必要があり、そのために隣の持ち主と話します。その話の中で引き受け手が見つかるなら、20万円の負担金も払わずに済みます。

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読者

却下や不承認と分かって取り下げた405件は、手数料が戻らなかったということですか

おかあさん

そうです。審査手数料は取り下げても戻りません。だから申請の前に、法務局の相談で「建物」「境界」「崖」の3つだけでも確かめておきます

申請までの順番

  1. 法務局に相談の予約を入れる 土地がある都道府県の法務局(本局)の不動産登記部門が、事前予約制で対面・電話・ウェブの相談を受けています。支局・出張所では受けていません
  2. 建物と地中のものを確かめる 家や倉庫があれば、基礎と浄化槽まで含めた解体の見積もりを取り、負担金と合わせた総額を出します
  3. 境界を隣の持ち主と確認する このとき「引き受けてもらえないか」も聞きます。取り下げ586件の入口はここです
  4. 売った場合の値段と比べる 総額が売値を大きく上回るなら、売る・隣に渡す道を先に試します
  5. 書類を作る 自分で作れます。人に頼むなら、業務として代行できるのは弁護士・司法書士・行政書士だけです

国に渡す以外の道は、売れない土地を手放す7つの道に並べています。相続そのものをやめる相続放棄は、預金も含めた財産すべてを手放す手続きで、期限は相続を知ってから3か月です。

冒頭の「国に引き取ってもらえる」は、建物が無く、境界に争いが無い土地に限った話です。そこまで整えた土地には、国より先に引き受けたい人が現れることもあります。

出典

  • 法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」令和8年8月31日現在(速報値)
    法務省 相続土地国庫帰属制度の統計(2026年10月16日取得)
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」
    法務省 制度の概要(2026年10月16日取得)
  • 法務省「引き取ることができない土地の要件」
    法務省 引き取ることができない土地(2026年10月16日取得)
  • 法務省「負担金の算定」「相続土地国庫帰属制度のご案内(第2版)」p.48〜51
    法務省 負担金(2026年10月16日取得)
  • 法務省「相談を検討している方・希望される方へ」「申請書等の作成を資格者に依頼する場合」
    法務省 相談の案内(2026年10月16日取得)
  • 国土交通省 地価公示(国土数値情報 L01)2026年の住宅地17,613地点。1㎡1万円未満の地点数は当サイトで集計

※ 統計は速報値で、法務省が順次更新します。※ 負担金は登記簿上の面積で計算し、1,000円未満は切り捨てです。正確な額は法務省の自動計算シートか法務局で確認してください。※ 2026年10月16日時点の公表資料にもとづいています。

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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