結論からいうと、「親が昔買った原野を、高く買い取ってくれる業者がいる」とは考えないでください。政府広報オンラインは2025年6月、そうした買い取り話を入口にした「原野商法の二次被害」に、あらためて注意を呼びかけています。
ただし、原野を手放す道そのものが無いわけではありません。国の相続土地国庫帰属制度なら、原野は面積にかかわらず負担金20万円です。その前に確かめるのは、土地がどこにあり、誰の名義になっているかです。
先に結論
- ✓ 「高く買い取る」の電話は、別の原野を買わせる契約や、調査費の請求につながる。1件あたりの平均支払額は2024年度で約258万円
- ✓ 親名義の土地は、2026年2月から法務局の「所有不動産記録証明書」で一覧にできる(窓口1通1,600円)
- ✓ 手放す道は、相続放棄(3か月以内・財産すべて)か、国に渡す(原野は負担金20万円)
原野商法とは
原野商法は、値上がりの見込みがほとんど無い山林や原野を、「開発計画がある」「もうすぐ道路ができる」「将来必ず値上がりする」と言って売りつける商法です。政府広報オンラインによると、被害が多かったのは1970年代から1980年代。その土地の多くは、値上がりも開発もされないまま残っています。
いま問題になっているのは、その土地を持ち続けてきた人を狙う「二次被害」です。国民生活センターの相談データベースに登録された二次被害の相談は、2018年度までは年1,000件を超えていました。2019年度以降は減っていますが、いまも年200〜300件あります。

件数は減っても、1件で払う額は小さくありません。平均支払額は2019年度の約487万円をピークに2023年度は約110万円まで下がり、2024年度は約258万円へ戻りました。契約した人の約9割は60歳代以上です。
政府広報は、業者が「子に相続の負担をかけたくない」「元気なうちに片付けたい」という気持ちにつけこんでいると見ています。親から原野を相続した子の世代が狙われた例もあります。
二次被害の3つの手口
手口は大きく3つに分かれます。どれも「売れない土地が売れる」と思わせるところから始まります。
| 手口 | 言われること | 実際に起きること |
|---|---|---|
| 売却勧誘-下取り型 | 「高値で買い取る」「節税になる」 | 持っている土地を売るのと同時に、もっと高い別の原野を買う契約になっている |
| 売却勧誘-サービス提供型 | 「欲しがっている人がいる」 | 売る前に調査費・整地費・測量費などを払わされる |
| 管理費請求型 | 「ずっと管理してきた」 | 覚えのない業者から、何十年分の管理費を請求される |
いちばん目立つのが下取り型です。政府広報が紹介している事例1では、60歳代の女性が、両親が以前400万円で買った雑木林について、見知らぬ業者から何度も電話を受けました。「オリンピックまでにこの一帯に複合レジャー施設を造る予定」「約5,000万円で買い取る」と言われ、喫茶店で話を聞いて、約400万円を払って契約書にサインしました。

期日を過ぎてもお金は振り込まれず、業者は電話に出なくなりました。契約書を読み直すと、雑木林を約1,200万円で売り、別の原野を約1,600万円で買う内容でした。「買い取る」と言われた人が、実際には土地をもう1つ買わされていたのです。
サービス提供型の事例2は、40年前に30坪と100坪の山林を買った60歳代の男性です。「30坪のほうを欲しがっている人がいる」と電話があり、調査や整地の費用として合計190万円を払いました。売却代金は入らず、次は「同じ人が100坪のほうも欲しがっている」と、さらに調査費80万円を求められました。
管理費請求型の事例3では、50歳代の男性に、約25年前に買った別荘地について、覚えのない管理業者から管理費約70万円と滞納金約50万円の請求が届きました。購入当初の管理契約は解約済みで、業者名も違っていました。
読者
相手が宅地建物取引業の免許を持っていれば、信用してもいいですか
事例1の業者は、宅地建物取引業の免許を持っていました。免許の有無だけでは見分けられません。見るのは、売る話なのに先にお金を求められていないか、別の土地を買う話が混ざっていないか、の2点です
相続したら確かめること
原野商法の土地は、家族が存在を知らないことがよくあります。理由の1つは税金です。固定資産税は、同じ市町村にある土地の評価額の合計が30万円に満たないと課税されません(免税点)。評価の低い原野は課税されず、納税通知書も届かないことがあります。毎年の郵便が来ないので、子は親が土地を持っていることに気づきません。

そこで、相続のときは次の順で確かめます。
- 所有不動産記録証明書を取る 2026年2月2日に始まった制度で、亡くなった人の名義の不動産を、法務局が全国から一覧にして証明します。相続人が請求でき、窓口で1通1,600円。登記簿の住所・氏名と一致しない不動産は抽出されないので、親が昔住んでいた住所でも請求します
- 権利証と売買契約書を探す 1970〜80年代の契約書や、販売会社のパンフレットが一緒に見つかることがあります
- 登記事項証明書で名義・地目・面積を見る 地目が「原野」「山林」か、共有になっていないかを確かめます
- 相続登記をする 原野でも相続登記の義務の対象です。相続を知ってから3年以内、2024年3月以前の相続は2027年3月31日までで、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です
読者
現地に行ったこともない土地です。境界が分からなくても大丈夫ですか
売るにも国に渡すにも、境界は避けて通れません。国の制度は測量までは求めていませんが、隣の持ち主と境界の認識が食い違っていないことが条件です。現地を一度見て、境界標の杭があるかを確かめるところから始めます
手放す道は2つ
原野を手放す現実的な道は、相続放棄と、国に渡す相続土地国庫帰属制度の2つです。
相続放棄は、相続を知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し立てます。原野だけを放棄することはできず、預金や自宅も含めた財産すべてを手放すことになります。親にほかの財産があるなら、選びにくい道です。
国に渡す場合、原野・雑種地などの負担金は面積にかかわらず20万円、森林は面積で計算して1,500㎡で27万3,000円です。ほかに審査手数料が1筆14,000円かかります。ただし、境界がはっきりしない土地は申請の段階で却下され、別荘地の管理組合とトラブルになりそうな土地は審査で不承認になることがあります。
業者の言う値段が本当かどうかは、近くで実際に売れた土地の値段と比べると見当がつきます。周りの土地が1㎡数百円〜数千円で取引されている場所で「5,000万円で買い取る」という話は成り立ちません。
勧誘を受けたら
政府広報は、契約したあとは業者と連絡がつかなくなることがほとんどで、一度払ったお金を取り戻すのは非常に難しいとしています。電話や訪問で買い取り話が来たら、次の3つで対応します。
- その場で話を聞かない、会わない、お金を払わない
- 「売る」話なのに、先に費用を払う・別の土地を買う話が出たら断る
- 家族に話し、迷ったら消費者ホットライン「188」に電話する(近くの消費生活センターにつながる)
私は、二次被害の土台は「土地の存在を家族が知らないこと」だと考えています。納税通知書が届かない土地は、業者からの電話で初めて話題にのぼります。最初に土地の話を持ち込んだのが業者だと、家族はその人の言う値段しか知りません。親が元気なうちに、権利証の場所と土地の所在地を聞いておくことが、いちばん安い対策です。
冒頭の「高く買い取る」という電話が、原野の値段を家族が知る最初の機会になってはいけません。値段を最初に教えてくれるのは、業者ではなく、近くで実際に売れた土地の記録です。
出典
- 政府広報オンライン「『原野商法』再燃!『土地を買い取ります』などの勧誘に要注意」2025年6月20日(国民生活センター提供資料・2025年2月28日までのPIO-NET登録分)
政府広報オンライン(2026年10月16日取得) - 新潟地方法務局「所有不動産記録証明制度」
法務局 所有不動産記録証明制度(2026年10月16日取得) - 法務省「相続登記の申請義務化について」
法務省 相続登記の申請義務化(2026年10月16日取得) - 法務省「相続土地国庫帰属制度のご案内(第2版)」「引き取ることができない土地の要件」
法務省 引き取ることができない土地(2026年10月16日取得) - 総務省「固定資産税の概要」(免税点)
総務省 固定資産税
※ 免税点は同じ市町村内にある同じ人の土地の評価額の合計で判定します。市町村によって扱いが異なる場合があります。※ 2026年10月16日時点の公表資料にもとづいています。契約してしまった場合は、消費生活センターや弁護士に相談してください。
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