駅から徒歩1分遠くなるごとに、住宅地の土地は中央値で1.45%安くなります。坪40万円の街で40坪の土地なら、1分あたり約23万円、徒歩5分と徒歩15分の差は約218万円です。
ただしこれは全国をならした数字です。国土交通省の地価公示から住宅地8,317地点を市区町村ごとに分けて計算したところ、調べた141市区町村のうち53市区町村では、駅からの距離で土地の値段がほとんど動いていませんでした。そのうち23市区町村は、駅から遠いほうがむしろ高い。
・駅から徒歩1分の差が、土地の値段に何%効くのか(全国中央値1.45%)
・その効き方が街によって20倍以上違うこと、そして分かれ目が何なのか
・自分が売る/買う土地が、駅距離の効く街か効かない街かを調べる方法
駅から1分遠いと、土地は中央値で1.45%安くなる
計算に使ったのは、国土交通省が毎年公表している地価公示のうち、用途が「住宅」で最寄り駅まで3,000m以内の地点です。全国で8,317地点あります。
最寄り駅までの距離を1分80mで徒歩分数に直し、市区町村ごとに「徒歩1分あたり坪単価が何%変わるか」を求めました。地点が20に満たない市区町村は誤差が大きいので外し、残った141市区町村で集計しています。
その中央値が、徒歩1分あたりマイナス1.45%でした。
金額に直すと実感が湧きます。坪単価40万円(141市区町村の平均的な水準)の街で40坪=1,600万円の土地なら、駅から1分遠いだけで約23万円。徒歩5分の土地と徒歩15分の土地では、同じ広さでも約218万円違う計算になります。
141市区町村のうち53は、駅からの距離で値段が動いていない
ここからが本題です。1.45%はあくまで真ん中の街の数字で、実際の散らばり方は次のようになっていました。
| 徒歩1分あたりの変化 | 市区町村数 | 意味 |
|---|---|---|
| マイナス3%以下 | 14 | 駅近が強烈に高い |
| マイナス1〜3% | 74 | 駅近が高い |
| マイナス1〜0% | 30 | ほぼ横ばい |
| プラス | 23 | 駅から遠いほうが高い |
横ばいの30とプラスの23を足すと53。141市区町村の37.6%で、駅からの距離は土地の値段をほとんど説明していませんでした。
「駅徒歩10分以内なら資産価値が落ちにくい」という説明は、不動産の広告でも記事でもよく見かけます。私はこの説明を、全国どこでも成り立つ話として使うのは無理があると考えています。根拠は上の表で、4割近くの街では10分歩いても値段が変わっていないからです。
分かれ目は「その街の坪単価」だった
何が効く街と効かない街を分けているのかを調べたところ、街の地価水準できれいに割れました。
| 街の坪単価(住宅地の中央値) | 市区町村数 | 徒歩1分あたり |
|---|---|---|
| 50万円以上 | 46 | −2.17% |
| 25万円未満 | 48 | −0.24% |

差は9倍あります。坪50万円以上の街では10分歩くと約20%落ちるのに対し、坪25万円未満の街では10分歩いても2.4%しか落ちません。坪20万円の土地40坪=800万円なら、19万円の差にしかならない金額です。
私は、駅からの距離に価格が反応するのは土地が奪い合いになっている街だけだと見ています。買い手が限られている街では、駅に近い区画も遠い区画も同じように売れ残るので、駅近というだけで値段が上がる理由がありません。
売却でこれが効くのは、駅から遠い家を売るときです。坪25万円未満の街なら、駅距離を理由に大きく値下げする根拠は地価公示のデータには見当たりません。
西宮市では、徒歩10分と徒歩20分で40坪あたり2,440万円違う
駅距離がもっとも強く効いていたのは兵庫県西宮市で、徒歩1分あたりマイナス5.68%でした(住宅地89地点)。
実際の坪単価の中央値を距離帯で分けると、こうなります。
| 西宮市の住宅地 | 坪単価の中央値 | 40坪の価格 |
|---|---|---|
| 駅まで800m以内(徒歩10分以内) | 106万円 | 4,240万円 |
| 駅まで1,600m超(徒歩20分超) | 45万円 | 1,800万円 |

同じ市内で2,440万円、率にして58%の差です。西宮市で駅から遠い土地を持っている人が、駅近の相場を見て売り出し価格を決めると、まず売れません。
同じ傾向は神戸市灘区(マイナス4.35%)、神戸市須磨区(マイナス4.39%)、埼玉県越谷市(マイナス4.43%)、千葉市中央区(マイナス3.79%)でも出ていました。
一方、同じ兵庫県内でも明石市はマイナス0.17%(33地点)、姫路市はプラス0.50%(70地点)、加古川市はプラス1.27%(20地点)で、駅距離はほとんど効いていません。県が同じでも別の話だということです。
郡山市と鳥取市では、駅前より郊外のほうが高い
駅から遠いほうが高い側の代表が、福島県郡山市(プラス3.52%)と鳥取県鳥取市(プラス2.17%)でした。
郡山市では、駅から800m以内の住宅地の坪単価中央値が7万円、1,600m超が20万円。駅から離れたほうが3倍近く高い結果です。
これについては、私の解釈を書きます。地方都市の駅前は商業地として使われているため、住宅地として値付けされる地点が駅前にほとんど残っていません。地価公示で駅前の「住宅」に分類される地点は、商業地の裏手にある古い住宅街になりがちです。そして車で移動する前提の街では、新しく開発された郊外の住宅地のほうが住環境として評価されます。この2つが重なって、駅から遠いほうが高いという並びになっていると考えています。
ただし郡山市の駅800m以内は3地点、鳥取市は5地点しかありません。この2市の数字は方向としては読めても、金額をそのまま当てにはできない精度です。
自分の街がどちらのタイプかを調べる
ここまでの話は、自分の土地がある市区町村がどちら側かが分からないと使えません。まず街の坪単価を見て、50万円以上なら駅距離が効く側、25万円未満なら効かない側、と当たりをつけるところから始まります。
売却を考えている場合、駅距離が効かない街で「駅から遠いので」と大きく下げた査定額を提示されたら、その根拠を聞いてみてください。効く街であれば、駅からの距離は価格の中心的な理由になります。
よくある質問
駅から徒歩1分遠いと、土地はいくら安くなりますか
全国141市区町村の中央値で1.45%です。坪40万円の街の40坪の土地なら、1分あたり約23万円になります。ただし街によって幅があり、兵庫県西宮市では1分あたり5.68%、福島県郡山市ではプラス3.52%(遠いほうが高い)でした。
駅に近いほうが必ず高いのですか
いいえ。調べた141市区町村のうち23市区町村では、駅から遠い住宅地のほうが坪単価が高く出ました。さらに30市区町村は徒歩1分あたりマイナス1%未満で、駅距離がほとんど効いていません。合わせて37.6%です。
徒歩10分の土地と徒歩15分の土地では、どれくらい違いますか
全国中央値のマイナス1.45%で計算すると、5分の差は約7%です。坪単価50万円以上の街(マイナス2.17%)なら約10%、坪単価25万円未満の街(マイナス0.24%)なら約1.2%になります。
徒歩分数はどう計算されていますか
不動産広告と同じ基準で、道路距離80mを1分としています。この記事では最寄り駅までの距離を80で割って徒歩分数に換算しました。
データの出典と計算方法
出典は国土交通省「地価公示」の公表データ(国土数値情報 L01-23、2023年公示)です。
集計の条件は次のとおりです。用途区分が「住宅」の地点のみを対象とし、最寄り駅までの距離が3,000m以内の8,317地点を使いました。市区町村ごとに、坪単価の対数を徒歩分数で回帰し、その傾きを「徒歩1分あたりの変化率」としています。地点数が20に満たない市区町村は集計から外し、141市区町村が残りました。
地価公示は取引価格そのものではなく、国が毎年1月1日時点で評価した価格です。実際の売買価格とは差が出ます。また地点数が20〜30の市区町村は、数地点の入れ替わりで結果が動く精度である点も付け加えておきます。


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