浸水した家は、乾いて見えても壁と床の中に水が残ることがあります。そのまま床や壁紙を張り直すと、はがし直す工事がもう一度かかり、浸かった家電に電気を戻せば発火することもあります。
国土交通省が被災した家50件を訪ねて聞き取った調査に、こんな記録があります。被災した人は当初「床の被害はない」と話していましたが、実際は床が反り返っていました。住んでいる本人でも、傷みを見落とすことがあります。
千葉では、8月13日の豪雨から5週間あまりで、台風25号による床上浸水が405棟出ました(千葉 台風被害/床上浸水は佐倉に集中)。水が引いた日の片付けの順番は家が浸水したらまず何をするの?にあります。
先に結論
- ✓ 家を十分に乾かすには1か月以上かかる。床上浸水なら、そのあいだ1階で暮らせないことがある
- ✓ 浸かった家電は、動いても電源を入れない。ブレーカーは家電の傷みを確かめてから入れ、浸かっていない家電を1台ずつ差す
- ✓ 濡れた畳は時間がたつと発熱する。ほかのごみと分けて置く
浸水した家はその後どうなる(当日から2〜3年後まで)
水が引いた時点で止まるのは、水が入ってくることだけです。国と支援団体の資料に出てくる「その後」を、時間の順に並べました。
| いつ | 家で起きること | 出どころ |
|---|---|---|
| 浸水した日 | 浸かったコンセントから漏電・停電が起きる。冷蔵庫は数十センチの浸水でも、背面の下にあるコンプレッサーが浸かって故障する | 国土交通省 |
| 数日後 | 「数日して自宅に戻るときは、屋内にカビが発生していることがあります」 | 厚生労働省 |
| 1か月 | 家を十分に乾かすには1か月以上。床下は床板をはがし、最低でも1か月かけて乾かす | 震災がつなぐ全国ネットワーク |
| 翌年の梅雨 | 濡れた壁を放っておくと、翌年の梅雨にカビが大発生する。壁紙がはがれ、壁を押すとへこむ | 同 |
| 2〜3年後 | 床上浸水した家をそのまま放置すると、腐朽が進み、シロアリが出るおそれ | 国土交通省の資料(住宅メーカーなどへの聞き取り) |
手引きは「見かけ上被害がないカベも、裏側にカビが生えていることがあります」と書いています。ここで床を張り、壁紙を貼り直すと、濡れた断熱材や床下の泥にふたをすることになります。
翌年の梅雨のカビを防げるかどうかは、水が引いた年に、壁と床の中まで乾かせるかにかかっています。1年後に同じ場所をもう一度はがせば、そのぶん工事費がもう一度かかります。
乾かすときと、次の雨の前に
床上でも床下でも、乾かすのに約1か月かかります。そのあいだ風を送り続ける道具と、次の雨で水を玄関から入れないための道具です。
床をはがしたあとの床下や壁の中は、窓を開けるだけでは空気が動きません。床の開口部に向けて風を送り続けると、乾くまでの1か月を短くできます。
土のうは砂を詰める前提の道具ですが、住宅街ではその砂が手に入りません。水で膨らむ型なら平たいまま棚にしまえて、玄関の段差にも、下水が逆流してくる風呂・トイレの排水口の上にも置けます。
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乾いて見えても、壁の裏と床下は濡れている
冒頭の調査は、国交省が東日本大震災の津波、2011年の紀伊半島南部豪雨、2009年の山口豪雨で被災した家を、1件30分〜1時間かけて訪ねたものです。床のほかにも、こんな記録が並んでいます。
- 当初「柱の被害はない」と話していた人の家で、柱にヒビが入っていた
- 断熱材の入った壁が浸かったが、表面をはがしていないので「被害状況がわからない」
- 床下に土砂が入っていると考えられるが、床をはがしていないので「被害状況がわからない」
見落とすのは、傷みが壁と床の中にあるからです。国交省の別の資料には「1階だけの被災でも、断熱材を通して2階も被災するケースがある」とあります。石こうボードと断熱材が一部浸かっただけで壁ごと替える話は床上浸水と床下浸水の違い/修理費用の目安は4倍に書きました。
床下浸水でも同じです。国交省の資料には、住宅メーカーなどへの聞き取りとして「床下浸水でも汚泥が堆積している場合は、衛生面から床をはがして汚泥を除去すべきである」という指摘が載っています。床下の乾かし方と日数は床下浸水は何日で乾くの?にまとめました。
読者
水が引いて1週間です。床も壁も乾いて見えるし、においも薄くなりました。
薄くなったのは表面のにおいです。災害支援の現場では、専用の機械で水分量をはかりながら乾かしています。目と鼻で「乾いた」と決められる工程ではないんです。

浸水した家電は、動いても電源を入れない
「なぜ電化製品は水没したら壊れるんですか?完全に乾いたら大丈夫な気がするのですが。」Yahoo!知恵袋に残っている質問です。水害の後にこの考えで電源を入れると、壊れるだけでは済まないことがあります。
家電製品協会は、冠水した家電についてこう書いています。
一見、乾燥しているようでも、内部が乾燥していなかったり、泥や塩分が残っていると大変危険で発煙、発火および感電のおそれがあります
『水害にあったときに』の家電のページには、「まれに使えてもあとから故障することがある」「いちど動いてもショートの可能性アリ」と書き込まれています。スイッチが入ったことは、安全の確認になりません。
浸かった家電は、プラグを抜いたまま販売店に相談します。家電製品協会は「販売店にご相談し必ず点検・修理を受けてください」としています。手引きは、エアコン・給湯設備・太陽光発電の項目に「災害救助法が適用されると無料で修理をしてくれるメーカーもある」と添えています。
浸水の後、ブレーカーを上げる順番
「大雨とかで家が浸水した時にコンセントなどが水没して感電したという話を聞きませんが何故でしょうか?」。Yahoo!不動産の知恵袋に2017年に寄せられた質問です。浸かったとき、家のブレーカーが先に落ちていることがあります。問題は、それを上げるときです。
消費者庁・家電製品協会・『水害にあったときに』の書き方をつなぐと、順番は次のとおりです。
- 避難などで家を離れるときは、ブレーカーを切っておく
- 家電のプラグをコンセントから抜く。浸かった家電は、このあとも差さない
- 戻ったときにブレーカーが落ちていたら、手引きは「どこかで漏電しているかもしれないため、電力会社に相談しましょう」としている
- 家電やコードに傷や焦げた痕がないかを見てから、ブレーカーを入れる
- 浸かっていない家電を、1台ずつ差して様子を見る
4と5は、消費者庁の注意喚起の書き方そのものです。
機器などの外観に異常がないか(電源プラグやコードに損傷はないか、製品に焦げた痕はないか、など)を確認の上、分電盤のブレーカーを入れ、機器の電源プラグを1台ずつコンセントに差し、様子を確認しながら使用してください。異音や異臭がする場合は、必ず使用を中止し、メーカーや販売店に御相談ください。
一度に全部差さないのは、どの家電に異常があるかを1台ずつ見分けるためです。8月の千葉豪雨のあとには経済産業省も、ブレーカーを上げるときは家電の損傷と周りの燃えやすい物を確かめるよう呼びかけていました(報道による)。
分電盤やコンセントそのものが水に浸かった家は、ブレーカーが落ちていなくても、私は手順3と同じ扱いにすることをすすめます。電力会社か電気工事店に見てもらってから上げてください。

浸水した家で起きる2つの火事
水に浸かった家なのに、火の元が2つ残ります。
1つ目は、電気を戻したときです。消費者庁は「水に濡れた家電製品の内部には、水分が残っていたり、泥や塩分などの異物が付着していたりすることがあるため、通電時に電気回路基板から発火するおそれがあります」としています。NITE(製品評価技術基盤機構)も、雨漏りや浸水で水に浸かった家電が「火災を引き起こすことがあります」と注意を出しています。前の節の順番は、この火事を防ぐためのものです。
2つ目は、濡れた畳です。
ぬれた畳は時間がたつと発熱し、火災の原因になります。他の廃棄物とは必ず分けておきましょう。
『水害にあったときに』の一文です。国交省の資料によると、浸かった畳は大量に水を吸い、乾かしても雑菌が繁殖して使えなくなります。捨てることになる畳を、片付けの勢いでほかのごみと一緒に家の前へ積むと、その山が火の元になります。畳は畳だけで分けて置きます。
浸水した家に住める目安と、直す範囲の決まり方
床上浸水なら、家を十分に乾かすまでの1か月以上、1階では暮らせないことがあります。そのあいだは仮住まいや2階での生活になるかもしれない、と手引きは書いています。マンションの場合はマンションの1階は浸水したら住めない?に分けて書きました。
直す範囲は深さだけでは決まりません。深さ別の修理費の目安と、直すか手放すかの決め方は床上浸水と床下浸水の違い/修理費用の目安は4倍にまとめています。
国交省の訪問調査には「柱が腐るかもしれないが、予算がないのでそのままにしている」という家もありました。
私は、急いで決めるのは「乾かす」までで、「どこまで直すか」は乾かしたあとに決めても遅くないと考えています。国の調査でも、本人は床の反りや柱のヒビを見落としていました。はがして乾かしてみるまで、どこが傷んでいるかは持ち主にも業者にも見えません。
写真は、手引きが「罹災証明書の申請に写真は必要ありません」と書く一方、千葉市は8月13日の大雨の案内(9月22日更新)で「罹災証明書・被災証明書の申請に必要な可能性があるため、家屋等の洗浄前に撮影してください」としています。撮り方と期限は家が浸水したらまず何をするの?、水災補償の条件は水災補償の45cm・30%基準にあります。
次の雨の前に、家の浸水の想定を調べておく
一度浸かった家は、乾かして直すまでに1か月以上、傷みが出きるまでに年単位の時間がかかります。そのあいだにもう一度浸かると、乾かす工程を最初からやり直すことになります。住所で浸水想定区域に入っているかを確かめ、入っていれば家電を2階へ上げる高さや、分電盤の位置を考える材料にしてください。
出典
- 国土交通省 河川事業の評価手法に関する研究会 第3回 資料3「家屋の浸水深別被害率の更新について」
- 国土交通省「家庭での被災想定」
- 厚生労働省「浸水した家屋の感染症対策」
- 震災がつなぐ全国ネットワーク『水害にあったときに 浸水被害からの生活再建の手引き』WEB公開版(2025年7月)
- 一般財団法人 家電製品協会「家電製品の災害時の注意点」
- 消費者庁 停電復旧時の通電火災に関する注意喚起(2023年8月29日)
- NITE「浸水した家電製品から発火」
- 千葉市 大雨に関する情報(2026年9月22日更新)
- ITmedia NEWS「浸水した家電の使用で火災の恐れ――経産省が千葉の記録的豪雨で注意喚起」(2026年8月14日)
- Yahoo!知恵袋(家電の水没についての質問・2013年)
- Yahoo!不動産 知恵袋(浸水と感電についての質問・2017年)
2026年9月24日時点で公開されている資料にもとづいています。罹災証明の写真の扱いや災害ごみの出し方は自治体ごとに違います。住んでいる市区町村の案内を確認してください。
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