🗨️「がけの近くの土地を見つけた。家を建てるには何メートル離せばいいの?」
答えは都道府県で変わります。勾配30度を超える高さちょうど3メートルのがけの下に、居室のある家を建てる場合、千葉県は上端から6メートル、兵庫県は4.5メートル。ところが横浜市と福岡市は入口が「3メートルを超える」なので、ちょうど3.0メートルなら条例の対象にすらなりません。東京都と埼玉県は距離ではなく「高さ2メートルを超える擁壁を設けよ」と書いています。どのサイトにも載っている「2メートル・30度・2倍」は、県境をまたぐと崩れます。
[不動産] この記事の要点
2026年9月21日 発表
- 入口のがけの高さは、千葉・愛知・東京・埼玉が2メートル超、横浜市・福岡市が3メートル超、神戸市は高低差1メートル超
- 倍率も一律ではない。千葉はがけ上1.5倍・がけ下2倍、広島県は1.7倍、兵庫県は1.5倍(2メートル以下なら1倍)
- 東京都と埼玉県は離隔距離ではなく擁壁の設置を求める条文で、大阪府の施行条例には「がけ」という語が1か所も出てこない
「がけ条例」という名前の法律はありません
まず、探しても見つからないものの話をします。「がけ条例」という名前の法律も条例も、存在しません。俗称です。
大元にあたる建築基準法第19条第4項は、全部でこれだけです。
建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。
建築基準法 第19条第4項(e-Gov法令検索・2026年9月21日取得)
距離も、角度も、高さも、1文字も書いてありません。「2メートル」「30度」「2倍」という、どの解説サイトにも載っている数字は、全部が都道府県や市の条例側にあります。だから県境をまたぐと変わります。
じゃあ、うちの県は何メートル離せばいいんですか
それが記事の本題です。同じ高さのがけでも、0メートルから6メートルまで割れます
同じ3メートルのがけで、千葉は6メートル、福岡は0メートル
条件をそろえて比べます。勾配が30度を超える、高さちょうど3.0メートルのがけ。その下に、居室のある住宅を建てるとします。
| 都道府県・市 | 条例 | 規制が始まる高さ | 3.0メートルのがけ下で必要な距離 |
|---|---|---|---|
| 千葉県 | 建築基準法施行条例 第4条 | 2メートル超 | 6.0メートル(上端から2倍) |
| 愛知県 | 建築基準条例 第8条 | 2メートル超 | 6.0メートル(上端から2倍) |
| 兵庫県 | 建築基準条例 第2条 | 高さの下限なし | 4.5メートル(表面の中心線から1.5倍) |
| 神戸市 | 建築物の安全性の確保等に関する条例 第20条 | 高低差1メートル超 | 4.5メートル(中心から1.5倍) |
| 東京都 | 建築安全条例 第6条 | がけ高2メートル超 | 距離ではなく高さ2メートル超の擁壁 |
| 埼玉県 | 建築基準法施行条例 第6条 | がけ高2メートル超 | 距離ではなく高さ2メートル超の擁壁 |
| 横浜市 | 建築基準条例 第3条 | 3メートル超 | 0メートル(3.0メートルは対象外) |
| 福岡市 | 建築基準法施行条例 第5条 | 3メートル超 | 0メートル(3.0メートルは対象外) |
| 広島県 | 建築基準法施行条例 第4条の2 | がけ下は5メートル以上 | 0メートル(3.0メートルは対象外) |
| 大阪府 | 建築基準法施行条例 | 「がけ」の規定が無い | 災害危険区域の指定で規制する |
出典:各自治体の例規データベースで条文を確認(2026年9月21日取得)。確認できたのはこの10都府県・市で、47都道府県すべてではありません。神奈川県・静岡県は原文を取れなかったため表から外しています
同じ高さのがけを前にして、千葉なら6メートル下がる必要があり、福岡なら1センチも下がらなくてよい。土地の使える面積が、これだけで何十平方メートルも変わります。
地図で調べたあと、家に置いておくもの
色がついていても、白でも、家に置くものは変わりません。自治体の備蓄は数日分が前提なので、最初の3日をしのぐ分は各家庭で持っておくものとされています。
一から集めると抜けが出ます。まずセットで用意して、家族の人数分と常備薬だけ足すのが早いです。
飲料水は1人1日3L。4人家族の1週間分で84L=2Lボトル42本なので、6本入りだと7ケースぶんです。5年保存タイプなら入れ替えの手間が減ります。
断水で最初に困るのがトイレです。備蓄で見落とされやすい一方、代用が効きません。
※ 本記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。紹介している商品は、記事の内容に関連するものを編集方針にもとづいて選んでいます。Amazonのアソシエイトとして、おかあさんのおうちは適格販売により収入を得ています。
入口の高さも、かける倍率も、一律ではありません
表を横に見ると、ばらけているのは距離だけではないと分かります。
入口の高さは2メートル超が多数派ですが、横浜市と福岡市は3メートル超です。福岡市の条文はこうなっています。
がけ(地表面が水平面に対し30度を超える傾斜度をなす土地をいう。以下同じ。)の高さ(がけの上端と下端との垂直距離をいう。以下同じ。)が3メートルを超える場合においては、当該がけの上にあっては当該がけの下端から、下にあっては当該がけの上端から水平距離が当該がけの高さの2倍に相当する距離以内の位置及び当該がけには、居室を有する建築物を建築してはならない。
福岡市建築基準法施行条例 第5条(福岡市例規・2026年9月21日取得)
逆の方向に外れているのが神戸市です。神戸市は市の条例で、がけの角度が30度を超え、かつ高低差が1メートルを超える場合を対象にしています。兵庫県の条例には高さの下限がなく、2メートル以下なら倍率が1倍に下がる書き方です。「2メートル以下なら関係ない」が通じない地域があります。
倍率も一律ではありません。千葉県はがけの上なら1.5倍、がけの下なら2倍と、上下で違う数字を使っています。広島県は上も下も1.7倍という、ほかであまり見ない数字です。
しかも広島県は、がけ上は「2メートルを超える」、がけ下は「5メートル以上」と、入口の高さまで上下で変えています。同じ敷地の上と下で、判定が別々に走るということです。
東京都と埼玉県は「離せ」と言っていません
ここがいちばん誤解されるところだと思います。東京都建築安全条例の第6条第2項は、距離の義務を課す条文ではありません。

高さ二メートルを超えるがけの下端からの水平距離ががけ高の二倍以内のところに建築物を建築し、又は建築敷地を造成する場合は、高さ二メートルを超える擁壁を設けなければならない。
東京都建築安全条例 第6条第2項(東京都例規集・2026年9月21日取得)
読み方はこうです。「2倍以内に建てるなら擁壁を造れ」。下がることでは免除されず、離れるか造るかの二択ですらありません。埼玉県の施行条例第6条はほぼ同じ文で、首都圏では千葉県だけが距離を課す型になっています。
つまり同じ関東でも、千葉で土地を探していた人が埼玉に移ると、質問そのものが「何メートル離すか」から「いくらで擁壁を造るか」に変わります。擁壁は造ったあとも自分で維持するものなので、そこから先の話は擁壁 ひび割れ/国は1mm、横浜市は5mmにまとめました。
測る起点が違うので、単純に比べられません
もうひとつ、表の数字だけでは見えない差があります。どこから測るかです。
| 自治体 | 距離を測る起点 | がけの高さの測り方 |
|---|---|---|
| 千葉県・愛知県・福岡市・横浜市 | がけの上端または下端 | 上端と下端の垂直距離 |
| 兵庫県 | がけの表面の中心線 | 30度を超える土地 |
| 神戸市 | がけの中心 | 高低差 |
| 東京都・埼玉県 | がけの下端 | 2分の1こう配の斜線を超える部分の高さ |
出典:各自治体の例規データベース(2026年9月21日取得)
兵庫県が使う「がけの表面の中心線」は、上端でも下端でもありません。がけの斜面のまん中です。同じ4.5メートルでも、測り始める場所が違えば建物の置ける位置が変わります。
東京都と埼玉県の「2分の1こう配」も見落としやすいところです。これは角度でいうと約26.6度で、よく言われる30度ではありません。その斜線を超えてはみ出した部分だけを「がけ高」として数えます。30度を基準に自分で判定して「うちは対象外」と思い込むと、取り違えます。
大阪府の条例には「がけ」が1度も出てきません
検索すると「崖条例 大阪府」という組み合わせがよく打たれています。ところが大阪府建築基準法施行条例の本文を最初から最後まで見ても、「がけ」「崖」という語が1か所もありません(2026年9月21日時点の例規本文で確認)。
代わりに置かれているのが、区域の指定です。第3条が災害危険区域を「急傾斜地崩壊危険区域及び急傾斜地崩壊危険区域以外の区域で急傾斜地の崩壊による危険の著しい区域として知事が指定するもの」と定め、第4条がそこでの建築を止めています。
第四条 災害危険区域のうち、急傾斜地崩壊危険区域及び災害防止のため特に必要があると認めて知事が指定する区域(以下これらを「第一種地区」という。)内においては、住居の用に供する建築物を建築してはならない。
大阪府建築基準法施行条例 第4条第1項(大阪府例規・2026年9月21日取得)
やり方が違います。がけから何メートルという線で引くのではなく、危ない場所を先に区域として指定して、そこでの建築を止める方式です。だから大阪で土地を見るときに調べるものは、がけの高さではなく区域の指定図になります。
区域で規制する方式は、土砂災害警戒区域も同じ考え方です。区域に入っているかどうかで何が変わるかは土砂災害警戒区域とは?家は建てられる?で、イエローとレッドの違いから整理しています。
この住所は浸水しやすい場所ですか?
住所を入れるだけ。ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さが5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。
10センチ違うと、6.2メートルの帯ができます
条例の入口は「2メートルを超える」「3メートルを超える」という書き方です。超えるかどうかの一点で、規制が丸ごと立ち上がります。
| 測ったがけの高さ | 福岡市の場合 | 兵庫県の場合 |
|---|---|---|
| 2.00メートル | 対象外 | 中心線から2.0メートル(1倍) |
| 2.01メートル | 対象外 | 中心線から3.015メートル(1.5倍) |
| 3.00メートル | 対象外 | 中心線から4.5メートル |
| 3.10メートル | 上端から6.2メートルが居室のある建物の禁止区間 | 中心線から4.65メートル |
出典:福岡市建築基準法施行条例第5条、兵庫県建築基準条例第2条から計算(2026年9月21日取得)
福岡市では、たった10センチで6.2メートルぶんの帯が生まれます。兵庫県では1センチで必要な距離が約1メートル増えます。
買ってから分かったとき、誰が払うのか
土地を買ったあとでがけ条例に当たると分かる、という相談は実際にあります。全日本不動産協会の法律相談に、こういう質問が載っています。
敷地の一部ががけとなっている中古住宅を購入しましたが、購入後、がけ条例に違反しているため、防護壁設置工事が必要であることが判明しました。仲介業者からは説明を受けていません。仲介業者に工事費用を請求できるでしょうか。
全日本不動産協会 法律相談(2026年9月21日確認)
回答は「請求することができます」です。理由として、仲介業者にはがけ条例に違反していることを説明すべき義務があり、それを説明しなかったために工事が必要になったから、と書かれています。同じページで挙げられている裁判例では、購入価格6,400万円に対し、工事費用は約2,082万円でした。
私は、この金額の大きさが「がけ条例は建築の話であって、買うときの話ではない」という感覚を壊すのに十分だと考えます。距離の数字は建てるときに効きますが、効くと分かっていなかった費用は、買ったあとに全部が自分のところへ来ます。
なお、重要事項説明でどこまで説明されるかは項目によって違います。ハザードマップのように「示す義務はあるが中身を説明する義務はない」ものもあるので、線引きは重説 ハザードマップ/中身の説明は義務ではないにまとめてあります。
結局どうすればよいか
順番は3つです。
- がけの上端と下端の垂直距離を測る。条例の入口が2メートル超か3メートル超かで、対象かどうかが決まる
- 県ではなく、その土地を所管する特定行政庁の条例を見る。神戸市のように、県より厳しい市の条例が別にあることがある
- 距離を課す型か、擁壁を課す型かを先に見分ける。東京都・埼玉県では、下がっても解決しない
この記事で条文を確認できたのは10都府県・市です。それでも入口の高さが1メートル・2メートル・3メートル・5メートルに割れ、倍率が1倍・1.5倍・1.7倍・2倍に割れました。「2メートル・30度・2倍」は、多数派ではあっても共通の基準ではありません。
その土地が崖や盛土の上にあるかどうかは、住所からまとめて確認できます。下のフォームに住所を入れると、浸水と土砂と地盤を一度に見られます。
生活・仕事にどう効くか
- がけの近くの土地を買おうか迷っている人:まず調べるのは相場ではなく、その市を所管する特定行政庁の条例です。同じ高さのがけでも、県が変われば必要な距離が0メートルにも6メートルにもなります
- すでに土地を持っていて、建て替えを考えている人:条例の入口は「2メートルを超える」「3メートルを超える」という書き方なので、境目のがけは測り方で結論が変わります。福岡市なら3.00メートルは対象外、3.10メートルなら上端から6.2メートルが禁止区間になります
- 買ってからがけ条例に当たると分かった人:全日本不動産協会の法律相談では、がけ条例違反を説明しなかった仲介業者に防護壁の工事費を請求できると回答されています
結局どうすればよいか
- がけの上端と下端の垂直距離を実際に測り、条例の入口(2メートル超か3メートル超か)のどちら側かを確かめる
- 県ではなく、その土地を所管する特定行政庁(政令市・中核市は市)の条例を見る
- 距離を課す型か、擁壁を課す型かを先に見分ける。東京都・埼玉県は距離では解決しない
公式出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第19条第4項(2026-09-21取得発表)
- 千葉県「わが家を建てるための法律知識-がけについて」(建築基準法施行条例第4条)(2026-09-21取得発表)
- 福岡市建築基準法施行条例 第5条(2026-09-21取得発表)
- 横浜市建築基準条例 第3条(2026-09-21取得発表)
- 東京都建築安全条例 第6条・第6条の2(2026-09-21取得発表)
- 大阪府建築基準法施行条例(第3条 災害危険区域・第4条 建築に関する制限)(2026-09-21取得発表)
- 広島県「広島県建築基準法施行条例第4条の2について」(2026-09-21確認発表)
- 神戸市「がけに近接した建築物の制限(神戸市建築物の安全性の確保等に関する条例第20条)」(2026-09-21確認発表)
- 名古屋市「『がけ条例』(愛知県建築基準条例第8条)について」(2026-09-21確認発表)
- 全日本不動産協会 法律相談「がけ条例違反の説明義務」(2026-09-21確認発表)
- アイキャッチ写真 Pexels(2026-09-21取得発表)
更新履歴
- 2026年9月21日 初版を公開(e-Gov法令検索と各自治体の例規データベースで条文を原文確認したもの)
※本記事は2026年9月21日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
Googleで「おかあさんのおうち」の新着を優先表示する
災害・道路・住まいの新しい記事がGoogleのトップニュースに出やすくなります。ボタン1回で登録できます。










コメント