🗨️「家の擁壁にひび割れを見つけた。これは放っておいていいものなの?」
国土交通省の「我が家の擁壁チェックシート」は、ひび割れを幅1ミリ以上から数えると決めています。ところが横浜市が配っている様式は幅5ミリ以上です。点数表も合格ラインも同じなのに、拾う幅だけが5倍ちがいます。さらに国の様式は、水抜き穴が1つも無くても点が2.0にしかならず、判定は「○ほぼ安定」のまま出ます。その状態は、宅地造成及び特定盛土等規制法施行令が求める「壁面3平方メートル以内ごとに1個」を満たしていません。
[不動産] この記事の要点
2026年9月21日 発表
- 国の様式は変状の項目が全22個あるが、その項目1つだけで9.0点=「×危険性が高い」に届くのは練石積みの「前傾+折損」1項目だけ
- 水抜き穴が1つも無い状態でも国の様式ではA=2.0点にしかならず、変状がなければ総評点は2.0=「○」で止まる
- 横浜市の様式は擁壁の種類そのものに点を付け、増積みが2メートル以上あるだけで9.0点=「×」になる
ひび割れは「幅1ミリ以上」から数えます
擁壁のひびを見つけたとき、多くの人は「大きいか小さいか」で判断しようとします。ところが国は、そこに数字の線を引いています。
国土交通省が公開している「我が家の擁壁チェックシート(案)」は、変状をチェックする各ページの下に同じ一文を置いています。
クラック(ひび割れ)は幅1mm以上のものとする。
国土交通省「我が家の擁壁チェックシート(案)」11・13・15ページ
幅1ミリ未満のひびは、国の様式では数に入りません。逆に言えば、1ミリを超えたところから採点が始まります。定規を当てて測れる話なので、専門家を呼ぶ前に自分で分かります。
このチェックシートは、高さ1メートル以下の擁壁を最初から外しています。「ここでは擁壁の高さが1m以下の宅地は、ほぼ安全なものが多いので、チェックの対象外としました」と本文に書かれています。
うちのひびは0.5ミリくらい。じゃあ気にしなくていいんですね
国の様式ではそうなります。ただし、同じ形式の様式を配っている市が、別の数字を使っていることがあります
横浜市の様式は「幅5ミリ以上」です
横浜市建築局が配っている「あなたの擁壁は安全ですか?=石積み・ブロック積み擁壁のチェックシート=」を開くと、ひび割れの項目にこう書かれています。
①ひび割れについて( ひび割れは幅 5mm 以上のものとする)
横浜市建築局「あなたの擁壁は安全ですか?」5ページ
合格ラインは国とまったく同じです。両方とも5.0点未満なら○、5.0点以上9.0点未満なら△、9.0点以上なら×。点の刻みかたもよく似ています。それでも、拾うひびの幅だけが5倍ちがいます。
| 項目 | 国(我が家の擁壁チェックシート案) | 横浜市(石積み・ブロック積み擁壁) |
|---|---|---|
| ひび割れの下限 | 幅1ミリ以上 | 幅5ミリ以上 |
| 対象にする擁壁 | 練石積み・コンクリートブロック積み/重力式/鉄筋コンクリート | 間知石積(練積み)/玉石積(空積み)/増積擁壁/大谷石積/ガンタ積 |
| 空積み・増積み | 対象外(専門家へ相談と明記) | 点数を付けて対象に含める |
| コンクリート擁壁 | 対象 | 対象外 |
| 擁壁の種類そのものへの点 | 付けない | 付ける(玉石積5.0/増積み最大9.0/大谷石積4.0/ガンタ積5.0) |
| 高さの足切り | 1メートル以下は対象外 | 記載なし |
| 判定 | 5.0点未満○/5.0点以上9.0点未満△/9.0点以上×(同じ) | |
出典:国土交通省「我が家の擁壁チェックシート(案)」、横浜市建築局「あなたの擁壁は安全ですか?」(いずれも2026年9月21日にPDF本体を取得)
どちらが正しいという話ではありません。国の様式はコンクリート擁壁まで含めて広く見るぶん細かく、横浜市の様式は石積みに的を絞って粗く速く見る、という設計の違いです。ただ、自分の市の様式だけで「○」が出たからといって、国の様式でも○になるとは限らない、ということは知っておくに越したことはありません。
地図で調べたあと、家に置いておくもの
色がついていても、白でも、家に置くものは変わりません。自治体の備蓄は数日分が前提なので、最初の3日をしのぐ分は各家庭で持っておくものとされています。
一から集めると抜けが出ます。まずセットで用意して、家族の人数分と常備薬だけ足すのが早いです。
飲料水は1人1日3L。4人家族の1週間分で84L=2Lボトル42本なので、6本入りだと7ケースぶんです。5年保存タイプなら入れ替えの手間が減ります。
断水で最初に困るのがトイレです。備蓄で見落とされやすい一方、代用が効きません。
※ 本記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。紹介している商品は、記事の内容に関連するものを編集方針にもとづいて選んでいます。Amazonのアソシエイトとして、おかあさんのおうちは適格販売により収入を得ています。
22項目のうち、それ1つで「×」に届くのは1つだけ
国の様式は、擁壁のタイプごとに変状の項目を並べています。練石積み・コンクリートブロック積みに8項目、重力式コンクリートに6項目、鉄筋コンクリートに8項目で、合わせて22項目。そのうち最大点を1つだけ選んでBとします。
| 変状(その項目の最重の状態) | 練石積み・CB積み | 重力式コンクリート | 鉄筋コンクリート |
|---|---|---|---|
| 横クラック | 6.5 | 6.0 | 5.5 |
| 縦・斜めクラック | 5.0 | 4.5 | 4.0 |
| 出隅部のクラック | 5.5 | 5.0 | 4.5 |
| 水平移動(目地部に2センチ以上のずれ) | 6.0 | 5.5 | 5.0 |
| 不同沈下(目地部に2センチ以上のずれ・開き) | 7.0 | 6.5 | 6.0 |
| 出隅部の開き | 7.0 | ― | 6.0 |
| ふくらみ(積石の抜け落ち) | 8.0 | ― | ― |
| 傾斜・折損(明らかに前傾し、途中に折損) | 9.0 | 8.5 | 8.0 |
| 鉄筋の腐食(かぶりの剥離と腐食) | ― | ― | 8.0 |
出典:国土交通省「我が家の擁壁チェックシート(案)」11〜15ページ(2026年9月21日取得)
表を縦に見ると分かります。9.0点に届いている枠は、練石積みの「傾斜・折損」ひとつだけです。ほかはどれも8.5点以下で、それ単独では「×危険性が高い」に到達しません。
つまり国の様式で一発退場になるのは、擁壁全体が明らかに前に傾いていて、しかも途中で折れているという状態です。そこまで行くと、たいていの人は測る前に気づきます。
私はこの配点を、素人が測って迷わないように作られていると見ています。ひびの幅と目地のずれという、ものさし1本で数えられるものに点が振ってあり、判断が要る項目ほど点が抑えてある。専門家に渡す前の「目安」として設計された様式です。
水抜き穴がゼロでも判定は「○」。でも基準は満たしていません
もうひとつ、点数と法令がずれる場所があります。水抜き穴です。
国の様式の周辺環境条件(A)は、水抜き穴・水のしみ出し・排水施設の3項目のうち最大点だけをAとします。合計しません。そして水抜き穴の最悪の状態でも2.0点です。
水抜き穴が設置されていない。(または水抜き穴が3m2に1ヶ所以上・水抜き穴の内径 75mm 以上を満たしていない状況にある。)……2.0
国土交通省「我が家の擁壁チェックシート(案)」5ページ
ここから先が本題です。A=2.0点で、擁壁にひびも傾きも無ければB=0.0点。総評点は2.0点で、判定は「○現状でほぼ安定した宅地擁壁です」と出ます。
ところがその状態は、宅地造成及び特定盛土等規制法施行令の第12条を満たしていません。
(擁壁の水抜穴)第十二条 ……擁壁には、その裏面の排水を良くするため、壁面の面積三平方メートル以内ごとに少なくとも一個の内径が七・五センチメートル以上の陶管その他これに類する耐水性の材料を用いた水抜穴を設け、かつ、擁壁の裏面の水抜穴の周辺その他必要な場所には、砂利その他の資材を用いて透水層を設けなければならない。
宅地造成及び特定盛土等規制法施行令 第12条(e-Gov法令検索・2026年9月21日取得)
チェックシートの「○」と、法令の基準を満たしていない状態は、同時に成り立ちます。チェックシートは今ぐらついているかを見る道具で、法令は造るときの技術基準だからです。横浜市の様式も、そこを最後にはっきり断っています。
このチェックシートによる結果で「○現状でほぼ安定した擁壁です」と評価された擁壁であっても法律に基づく基準で造られていない場合は、家を建て替えるときなどに、指導を受けることがあります。
横浜市建築局「あなたの擁壁は安全ですか?」7ページ
水抜き穴の必要な数は、その場で数えられます
第12条は「壁面の面積三平方メートル以内ごとに少なくとも一個」と書いています。面積で割るだけなので、自分の壁で計算できます。
| 擁壁の高さ×幅 | 壁面の面積 | 3平方メートルで割ると | 必要な水抜き穴 |
|---|---|---|---|
| 1.5m × 6m | 9平方メートル | 9 ÷ 3 = 3.0 | 3個以上 |
| 2m × 10m | 20平方メートル | 20 ÷ 3 = 6.67 | 7個以上 |
| 2.5m × 12m | 30平方メートル | 30 ÷ 3 = 10.0 | 10個以上 |
| 3m × 20m | 60平方メートル | 60 ÷ 3 = 20.0 | 20個以上 |
出典:宅地造成及び特定盛土等規制法施行令第12条(3平方メートル以内ごとに1個以上・内径7.5センチメートル以上)から計算
内径7.5センチは、おおよそ500ミリリットルのペットボトルの胴まわりより少し太いくらいです。穴の数と太さは、外から数えられます。
条文がもうひとつ求めているのは透水層です。穴の裏側に砂利などを入れて、土だけが残って水が抜ける状態にしておく、という決まりです。次の話につながります。
「令和に造った擁壁なのに、水抜き穴から砂が出る」
Yahoo!知恵袋に、擁壁のある土地を買うかどうかで迷っている人の投稿があります。
擁壁がある土地を購入するか本当に悩んでいます。……どちらの擁壁も令和以降に作られた新しいもので、検査済証などはあります。最低限安全かとは思うのですが、擁壁にいくつか気になる点があります。
1.ブロック擁壁の表面に白いモヤモヤしたものがかなり出ていること
2.水抜き穴から砂が出ている部分がある
3.水抜き穴以外のブロックの間から、水が染み出している部分がある
4.ブロックとブロックの間に隙間がある部分があるYahoo!知恵袋の質問より(2026年9月21日に本文を確認)
回答者は1を「白華現象」、2を「吸出し防止材等での土砂流出防止措置を行っていない」と答えています。水抜き穴から出ているのは、穴の裏にあるはずの土です。透水層が機能していれば水だけが出ます。砂が出ているということは、壁の裏の土が少しずつ抜けている、ということになります。
この投稿でいちばん重いのは、令和に造られた新しい擁壁で、検査済証まであるのにこうなっているという点です。築年数と検査済証は、今の状態を保証するものではありません。
擁壁の付いた土地が相場より安く見えることがあるのは、こうした造り替えの費用が先に読めないからです。値段のほうの理由は安い土地には理由があるにまとめてあります。
この住所は浸水しやすい場所ですか?
住所を入れるだけ。ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さが5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。

古い擁壁だから放っておいてよい、にはなりません
「うちの擁壁は昔からあるものだから、今の基準は関係ない」という理解はよく聞きます。法律の側は、そう書いていません。
宅地造成等工事規制区域内の土地の所有者、管理者又は占有者は、宅地造成等(宅地造成等工事規制区域の指定前に行われたものを含む。次項及び次条第一項において同じ。)に伴う災害が生じないよう、その土地を常時安全な状態に維持するように努めなければならない。
宅地造成及び特定盛土等規制法 第22条第1項(e-Gov法令検索・2026年9月21日取得)
括弧書きが効いています。区域に指定されるより前に造られた擁壁も、この条文の対象です。同じ条の第2項で知事は必要な措置を勧告でき、第23条第1項では相当の猶予期限を付けて工事を行うよう命ずることもできます。
費用を誰が持つのかも、条文に出口があります。第23条第2項は、土地所有者以外の者の不完全な工事によって危険が生じたことが明らかで、その者に工事をさせるのが相当で、かつ土地所有者に異議がないとき、その行為をした者に命ずることができると定めています。3つの条件がそろったときだけの道です。
高さ2メートルを超える擁壁は「工作物」です
直すにしても造り替えるにしても、手続きが先に来ることがあります。建築基準法施行令第138条第1項は、確認申請などの規定がかかる工作物を並べていて、その第5号が「高さが二メートルを超える擁壁」です。
2メートルという線は、この記事で出てきた数字のなかでもっとも生活に近いところにあります。宅地の擁壁は2メートル前後のものが多く、そこをまたぐかどうかで手続きの有無が変わります。土地を見に行ったときに、まず測るとよい寸法です。
擁壁そのものではなく、その擁壁が支えているがけの側に規制がかかることもあります。何メートル離して家を建てるかは都道府県の条例で決まっていて、同じ高さのがけでも答えが変わります。がけそのものが区域に指定されている場合の扱いは土砂災害警戒区域とは?家は建てられる?にまとめてあります。
結局どうすればよいか
やることは3つです。
- ひびの幅をものさしで測る。国の様式は1ミリ以上、横浜市の様式は5ミリ以上から数える。横に走るひびは配点が重い
- 壁の高さ×幅を3で割った数と、実際の水抜き穴の数を数え比べる。穴から砂が出ていないかも見る
- 「○」が出ても、造り替えや建て替えのときに指導を受けることがあると、横浜市の様式が断っている。今の安定と、法令の基準は別と覚えておく
そのうえで、△や×が出たときの相談先は最寄りの自治体です。国のチェックシートも最後にそう書いています。
自分の土地がそもそも崖や盛土の上にあるのかは、住所からまとめて確認できます。下のフォームに住所を入れると、浸水と土砂と地盤をひとまとめに見られます。
生活・仕事にどう効くか
- 自分の家の擁壁にひびを見つけた人:まず幅をものさしで測ります。1ミリ未満なら国の様式では数えません。横に走るひび(横クラック)は練石積みで最大6.5点と、変状のなかでも重いほうに位置づけられています
- 擁壁のある土地を買おうか迷っている人:検査済証があっても、白い粉が出る・水抜き穴から砂が出るといった状態は起きます。高さ2メートルを超える擁壁は建築基準法上の工作物なので、造り替えには確認申請が要ります
- 古い擁壁をそのまま使っている人:盛土規制法第22条第1項は、規制区域の指定より前に造られたものも対象だと括弧書きで明記しています。所有者には常時安全な状態に保つ努力義務があり、知事の勧告・改善命令の対象になります
結局どうすればよいか
- ひび割れの幅をものさしで測り、国の様式(1ミリ以上)と自分の市の様式の両方で数えてみる
- 壁面の面積を高さ×幅で出し、3で割った数と、実際の水抜き穴の数を数え比べる
- ○が出ても、造り替えや建て替えのときに指導を受けることがあると横浜市が明記している点を覚えておく
公式出典
- 国土交通省「我が家の擁壁チェックシート(案)」(PDF・全17ページ)(2026-09-21取得発表)
- 国土交通省 盛土・宅地防災「我が家の擁壁チェックシート(案)」(2026-09-21確認発表)
- 横浜市建築局「あなたの擁壁は安全ですか?=石積み・ブロック積み擁壁のチェックシート=」(PDF・全7ページ)(2026-09-21取得発表)
- 宅地造成及び特定盛土等規制法施行令(昭和37年政令第16号)第10条・第12条(2026-09-21取得発表)
- 宅地造成及び特定盛土等規制法(昭和36年法律第191号)第22条・第23条(2026-09-21取得発表)
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第138条第1項第5号(2026-09-21取得発表)
- Yahoo!知恵袋「擁壁がある土地を購入するか本当に悩んでいます」(2026-09-21確認発表)
- アイキャッチ写真 Pexels(2026-09-21取得発表)
更新履歴
- 2026年9月21日 初版を公開(国交省・横浜市のチェックシートPDFとe-Gov法令検索の条文を原文で確認したもの)
※本記事は2026年9月21日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
Googleで「おかあさんのおうち」の新着を優先表示する
災害・道路・住まいの新しい記事がGoogleのトップニュースに出やすくなります。ボタン1回で登録できます。










コメント