近所に新しい住宅地ができると聞いて心配になるのは、うちの子の教室が足りるかどうかです。神戸市の小学校を2010年と2026年で1校ずつ突き合わせたところ、児童が増えたのは154校のうち34校で、残る119校は減っていました。
この記事でわかること
- ✓ 神戸市で16年のあいだに児童が増えた小学校は154校中34校。区の単位で増えたのは灘区だけ
- ✓ 新しい住宅地にできた舞多聞小学校は、開校7年目の1,609人が頂点で、いまは1,446人
- ✓ 開発する人に学校との協議を義務づける国の線は、戸数ではなく面積20ヘクタール
4人が答えて、誰も教室の数を確かめなかった
Yahoo!知恵袋に、2010年10月16日の相談があります。閲覧は1,552件、回答は4件つきました。
近所のつぶれた工場跡地に新興住宅地が出来る予定があります。
比較的規模は大きいので、うちの子の通う小学校にもたくさん転校生が来るのかな?と思います。
でも、新興住宅地のある学校は荒れやすいと聞いたことがあるのですが・・・本当でしょうか?
Yahoo!知恵袋 q1048751390(2010年10月16日)
回答は4件。ベストアンサーは「全く心配されるようなことはないと思います。」、3件目は「元々そういう学年はありますよ。」、4件目は「新興住宅地の家庭は核家族が多いです。」。4件のうち3件が、人が入れ替わると学校が荒れるかどうかの話で、校舎の話をしたのは2件目だけでした。
ウチの方は、マンションがすごく増えました。世帯数にして、1500以上です。
転入生が増えても学校が荒れたりはしませんでしたが、人数が激増して普通教室が足りなくなりました。特別教室を普通教室に改装しています。
Yahoo!知恵袋 q1048751390 への回答(2010年10月16日)
ただ、これは自分の学校で起きたことの報告です。新しい住宅地が決まった時点で学校の側に話が行くのかを確かめた回答は、4件に1件もありません。
この相談から16年たちました。その16年は、いま数え直せます。
神戸市の小学校 16年で児童が増えたのは34校
神戸市教育委員会は、市立の学校園の学級数と児童生徒数を毎年5月1日現在で公表しています。2004年からの分がそろっているので、2010年と2026年を取って区名と校名で1校ずつ突き合わせました。

両方の年に同じ区・同じ校名で載っているのは154校でした。そのうち児童が増えたのは34校、減ったのは119校、同じが1校です。市全体では80,136人から65,076人へ、15,060人(18.8%)減りました。
区の単位で増えたのは灘区だけです。
| 区 | 2010年 | 2026年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 灘区 | 5,948人 | 6,245人 | +5.0% |
| 垂水区 | 11,585人 | 10,621人 | −8.3% |
| 兵庫区 | 4,164人 | 3,657人 | −12.2% |
| 中央区 | 5,242人 | 4,561人 | −13.0% |
| 東灘区 | 11,924人 | 10,322人 | −13.4% |
| 須磨区 | 8,769人 | 7,057人 | −19.5% |
| 長田区 | 3,999人 | 3,079人 | −23.0% |
| 北区 | 13,172人 | 9,253人 | −29.8% |
| 西区 | 15,333人 | 10,281人 | −32.9% |
いちばん減ったのは、神戸市でいちばん住宅地を造成した西区と北区でした。この2区は16年で3割減りました。新しい住宅地ができることと、その学校の児童が増え続けることは、別のことです。
読者
増えた34校は、どういう学校だったんですか?
いちばん増えたのは須磨区の妙法寺(390人→786人)、次が東灘区の向洋(545人→847人)。中央区では山の手・こうべ・湊の3校が230人以上増えました。駅前や海側に住戸が積み上がった場所です。
新しい住宅地の学校は7年で頂点を打った
増えた学校のなかに、名前ごと新しくできた学校があります。垂水区の舞多聞小学校です。

舞多聞小学校が市の表に初めて載るのは2016年で、683人です。同じ年、隣の本多聞小学校が733人から235人に落ちています。1つの学校が2つに分かれました。
そこから増え続け、2023年に1,609人で頂点を打ちます。2026年は1,446人。3年で163人減りましたが、48学級で今も市内最多です。
一方、分かれたもとの本多聞は2020年に182人まで減り、2022年の表を最後に消えます。同じ年に多聞南も消え、2023年の表には多聞の丘小学校が305人で現れました。2026年は279人です。
数字はすべて神戸市教育委員会が公表している各年5月1日現在の表から取りました。統合の日付ではなく、表に載っているかどうかで追っています。
新しい住宅地の学校は7年で頂点を打ち、その横でもとからあった2校が消えました。転校生が来たあとの話のほうが、長かったことになります。
子どもが減っても、教室は空かなかった
市全体で児童が18.8%減ったのなら、教室はその分だけ空いたはずです。数えると、そうなっていませんでした。

学級数の合計は2,848から2,805へ、43しか減っていません。率にして1.5%です。児童は18.8%減ったのに、教室の数はほとんど動いていない。
内訳を分けると理由が出ます。通常の学級は2,559から2,269へ290減り、その横で特別支援学級が279から524へ増えました。1.88倍です。在籍する児童は889人から2,437人へ2.74倍。154校のうち127校で増えています。
ここが、1つ前の節の「減った119校」と、16年前の回答にあった「普通教室が足りなくなりました」をつなぐところです。児童が減っていても、使える部屋が同じだけ余っているとは限りません。
読者
では、新しい住宅地の子が来たら、すぐ教室が足りなくなるんでしょうか。
それは学校ごとに違います。ただ「この学校は子どもが減っているから大丈夫」という見当は、当たらないことがある、とは言えます。

学校の規模は小学校のクラス数は、住む街でどれだけ違う?に、1学年の人数がクラス数に変わる線は引っ越しでクラスが減るのは、35人ちょうどの学年だけですに書いています。
開発が決まったとき、学校に話は行くのか
新しい住宅地の計画が出たとき、学校の側にその話が行く仕組みはあります。ただし、その入口は戸数ではありませんでした。
都市計画法施行令第23条です。
開発区域の面積が二十ヘクタール以上の開発行為について開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、次に掲げる者(開発区域の面積が四十ヘクタール未満の開発行為にあつては、第三号及び第四号に掲げる者を除く。)と協議しなければならない。
一 当該開発区域内に居住することとなる者に関係がある義務教育施設の設置義務者
都市計画法施行令(昭和44年政令第158号)第23条
「義務教育施設の設置義務者」は市町村です。学校教育法第38条が「市町村は、その区域内にある学齢児童を就学させるに必要な小学校を設置しなければならない。」と定めているためです。
線は20ヘクタール、20万平方メートルです。神戸市が自分の条例で「大規模開発事業」と呼ぶのは5ヘクタール以上なので、市が大規模と呼ぶものの4倍ないとこの条文は動きません。同じ政令の第27条も同じ線で、教育施設などを配置しなければならないのは「主として住宅の建築の用に供する目的で行なう二十ヘクタール以上の開発行為」です。
ここに、ひとつ逆さまなことがあります。子どもがいちばん多く増えるのは、敷地の狭いところに住戸を積み上げる建て方です。16年前の回答者が書いた1,500世帯のマンション群がそれにあたります。戸数が多い建て方ほど、面積で引かれた線からは遠ざかります。
都市計画法第13条第1項第11号は、住居系の用途地域について「義務教育施設をも定めるものとする」と定めています。計画の段階には学校が入っています。ここで言う協議は、その先で事業者が市と話す場面の話です。
ごみ置き場は20戸、学校は8,000人
国の線が20ヘクタールだと、ふつうの規模の開発では学校に話が行きません。その穴は、市の条例が埋めています。神戸市の場合は「神戸市開発事業の手続及び基準に関する条例」(平成29年条例第1号)です。
この条例の第12条は、開発をする人が協議すべき相手を10個並べています。道路から始まってごみ等の集積施設まで来たあと、10番目が学校です。対象は40戸以上の共同住宅や、開発許可が要る開発事業です。
ところが、同じ条例のなかで線の単位がそろっていません。
| 何を | 条 | 線 |
|---|---|---|
| ごみ等の集積施設を設置する | 第37条 | 20戸以上(ワンルームは10戸以上) |
| 集会所を設置する | 第36条 | 計画戸数200戸以上 |
| 学校の配置を市と協議する | 第35条 | 計画人口8,000人以上 |
第35条 計画人口が8,000人以上の開発行為を行う開発事業者は、法第33条第1項第6号に基づく学校の配置を、市と協議の上で定めるものとする。ただし、周辺の状況により必要がないと市長が認めるときは、この限りでない。
神戸市開発事業の手続及び基準に関する条例 第35条
ごみ置き場と集会所は戸数なのに、学校だけが人数で書かれています。しかも8,000人です。1戸あたり3人と置けば2,600戸あまりで、集会所の200戸の10倍を超えます。
児童が急に増えそうな地区の条文もありますが、書き方が違います。第15条第4項は、市長は協力を「求めることができる」、事業者は「これに協力するよう努める」。設置しなければならない、とは書かれていません。
読者
市が厳しくしないのは、手を抜いているということですか?
私はそうは見ていません。順番の問題だと考えています。
私は、この3本の線がそろっていないことを、制度の手抜きではなく順番の問題だと見ています。ごみ置き場も集会所もその住宅地の中に作れば終わりますが、学校は住宅地の外にすでに建っているものです。だから戸数では線を引けず、人数が積み上がってからでないと協議にならない。ただ、その順番でいちばん待たされるのは先に住んでいる側です。
新しい住宅地の話を聞いたら、確かめる順番
計画が出た段階で、その学校が何年後にどうなるかを教えてくれる資料はありません。それでも、先に確かめると空振りしないものが3つあります。
1つめは、新しい住宅地がどの小学校の区域に入るかです。町名が同じでも番地で分かれる地域があります。調べ方は学区の調べ方 投票所は手がかりになりませんにまとめました。
2つめは、いまの学校の学年ごとのクラス数です。市区町村の教育委員会が学級数と児童数の表を出しています。学校全体の合計ではなく、自分の子の学年を見ます。
3つめは、その市の開発の条例に学校が入っているかです。神戸市のように協議先に学校を並べている市もあれば、そうでない市もあります。市の名前と「開発事業 条例」で出てきます。
先に住んでいる側が意見を出せる場は、都市計画の縦覧と意見書のほうにあります。開発の協議は事業者と市のあいだの話で、そこに住民が入る形にはなっていません。
まとめ
「たくさん転校生が来るのかな?」という16年前の心配は、神戸市の154校のうち120校では起きませんでした。増えたのは34校で、区の単位で増えたのは灘区だけです。
増えた場所では、たしかに大きく増えました。舞多聞小学校は開校から7年で1,609人まで伸び、そこから3年で163人減っています。
その学校に部屋が足りるかを開発の段階で確かめる国の仕組みは、面積20ヘクタールという線の上にしかありません。神戸市は条例でそこを下げていますが、学校の配置まで協議するのは計画人口8,000人からです。ごみ置き場の20戸とは、単位から違っています。
よくある質問
新しい住宅地ができると、小学校の児童は増えますか
増える学校もありますが、多数ではありません。神戸市立小学校154校を2010年5月1日と2026年5月1日で比べると、児童が増えたのは34校、減ったのは119校、同じが1校でした。区の単位で増えたのは灘区(+5.0%)だけで、市内で最も住宅地を造成した西区(−32.9%)と北区(−29.8%)が最も減っています。
新しい住宅地の学校は、いつまで増え続けますか
神戸市垂水区の舞多聞小学校の例では、7年でした。2016年に683人で市の表に載り、2023年に1,609人で頂点を打ち、2026年は1,446人です。同じ時期に、分かれるもとになった本多聞小学校と隣の多聞南小学校は表から消え、多聞の丘小学校になりました。
子どもが減った学校では、教室が余っていますか
減った分だけ余るとは限りません。神戸市立小学校の合計でみると、児童は16年で18.8%減ったのに、学級数の合計は2,848から2,805へ1.5%しか減っていません。通常の学級が290減った一方で、特別支援学級が279から524へ増えたためです。154校のうち127校で特別支援学級が増えました。
開発する会社は、学校が足りるかを市に相談しないのですか
国の政令で協議が義務づけられるのは、開発区域の面積が20ヘクタール以上のときです(都市計画法施行令第23条第1号)。それより小さい開発については、市町村の条例によります。神戸市の条例は第12条で学校を協議先の1つに挙げていますが、学校の配置まで市と協議して定めるのは計画人口8,000人以上の開発行為です(第35条)。
出典: 神戸市教育委員会「神戸市立学校園 学級数・児童生徒数等」各年5月1日現在(2026年分は令和8年8月27日作成)/都市計画法・同施行令・学校教育法(e-Gov法令検索)/神戸市開発事業の手続及び基準に関する条例(平成29年4月3日条例第1号)。2026年9月15日時点の内容です。
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