引っ越しでクラスの数が変わるかどうかは、学校に伝える日ではなく、その学年に何人いるかだけで決まります。学級の数を決めている法律の全文を検索しても、「五月一日」という言葉は一度も出てきません。
この記事でわかること
- ✓ クラスの数が動くのは35人・70人・105人ちょうどの学年だけ。ほかは5人出ていっても10人来ても同じ
- ✓ 神戸市立小学校の946学年のうち、その線の上にいるのは47学年=20学年に1つ
- ✓ 2026年4月から中学1年も35人に。中2・中3は40人のままで、いま同じ校舎に線が2本ある
引っ越すと、その学年は41人の1クラスになる

13年前、Yahoo!知恵袋にこんな相談が出ていました。閲覧は2,947回、回答は5件付いています。
今、子どもが通っている学年は児童数が少なく1クラス21名で2クラスあります。
ウチの子が引越したら
その学年は41名の1クラスになるらしく、他の保護者さん達はそれを望んでいません。
21人ずつの2クラスから、41人の1クラスへ。うちが抜けるせいで、残る子たちの教室が変わってしまう。そう受け取った質問者が考えたのは、引っ越しそのものではなく伝え方でした。
学校に引越しの報告をするタイミングを遅めにする事で、せめて来年一年間だけでも2クラスのままに出来たらと考えてます。
読者
報告を遅らせたら、本当にクラスは保てるんですか?
保てません。というより、報告の日はクラスの数と関係がないんです。関係があるのは人数だけです。
回答した人たちは、そろって「基準日はいつか」を論じた
回答5件のうち、中身のある3件を並べます。
ベストアンサーに選ばれたのは、担任の経験がある人でした。
私の時は、
5月1日の在籍数によっていろいろ変わりました。
5月1日に41人だったらずっと1クラス。あなたが伝えていなかったら、教員(講師)一人引き上げです。
続けて「これは県によって少し違うと思います。」と書いています。
2人目は、法律の名前を挙げて反論しました。
まず原則から言えば「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」によって一学級40人が上限ですから、41人以上の学級は理論上は存在しません。
そのうえで、こう結論づけています。
学校側(行政側)にとって大切なのは5/1時点で在籍しているかどうかで、報告のタイミングではありません。
3人目は、調査の回数を数えました。「何度か調査がはいって、4/1現在、始業式現在、5/1現在の3回あったかな。」そして「最後まで行政は少なめにカウントしようとします。」と書いています。
3人の答えは、41人の学級があり得るかどうかで真っ向から食い違っています。それでも、ひとつだけ全員が同じでした。どの日で切るかという話しかしていません。その日付がどの法令に書いてあるのかを確かめた人は、ひとりもいませんでした。
学級の数を決める法律に、5月1日は一度も出てこない
2人目の回答者が挙げた法律を、そのまま開いてみます。正式には「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」、昭和33年の法律です。
e-Gov法令検索から全文を取って数えたところ、「五月一日」は0回、「基準日」も0回、「学年の初め」も0回でした。学級をいつ数えるかを決めた条文が、この法律には無いということです。
むしろ第5条は、途中で変わることを前提にしています。
市町村の教育委員会は、毎学年、当該市町村の設置する義務教育諸学校に係る前条第一項の学級編制を行つたときは、遅滞なく、都道府県の教育委員会に届け出なければならない。届け出た学級編制を変更したときも、同様とする。
「変更したときも、同様とする」と書いてあります。年度の途中で編制が変わることを、条文のほうが想定しています。
では3人が口をそろえた5月1日はどこにあるのか。学校基本調査規則という別の省令の、第4条でした。「学校基本調査は、学校、卒業者及び不就学の学齢児童生徒について次の区分及び時期によつて行う。 一 学校調査 毎年五月一日現在」。統計法にもとづく基幹統計をつくるための、調査の期日です。
読者
じゃあ5月1日は関係なかったということですか?
学級をどう作るかには出てきません。学級を国が数える日として決まっています。作る話と数える話が、同じ日付でつながって見えていたわけです。
私は、3人が同時に日付の話へ流れたのは知識の不足ではなく、役所はどこかの日で線を引いているはずだ、という前提が先に立ったからだと考えています。そして探せば、その日付は本当にありました。ただし学級を作る側ではなく、数える側の省令に。
条文は2026年8月時点のe-Gov法令検索の本文で確認しています
クラスが動くのは、決まった人数の線の上だけ
同じ法律の第3条第2項に、表があります。ここが学級の数を決めている場所です。

同学年の児童で編制する学級は35人。この数で割って、余りが出たらもう1クラスです。34人でも35人でも1クラス、36人になった瞬間に2クラス。69人でも70人でも2クラス、71人で3クラス。
つまり1人の出入りでクラスの数が動くのは、35人・70人・105人・140人という線の真上に立っている学年だけです。そこから2人でも離れていれば、5人出ていっても10人入ってきても、クラスの数は変わりません。
表の数は「標準」であって、超えてはいけない上限とは書かれていません。第4条第2項では、政令指定都市の学級編制は都道府県ではなく市の教育委員会が行うと定めています。神戸市の場合、決めているのは兵庫県ではなく神戸市教育委員会です。
読者
特別支援学級の子は、この35人に入るんですか?
入りません。同じ表で1学級8人と別枠になっています。学年の人数を数えるときは、そこを引いてから割ります。
神戸の小学校で、線の上に立っている学年はどれくらいか
神戸市は毎年、市立学校の学年別の学級数と児童数を公表しています。2026年5月1日現在の表が2026年8月27日に出たので、小学校162校の全学年を1つずつ数えました。

対象は946学年。このうち、あと1人増えるとクラスが1つ増える学年が26、あと1人減るとクラスが1つ減る学年が21。合わせて47学年で、割合にすると5.0%でした。20学年に1つです。残る899学年は、1人や2人ではびくともしません。
増える側の例では、北区の泉台小学校の1年生が35人ちょうどで1クラス。1人転入すれば2クラスになります。減る側では、北区の箕谷小学校の3年生が36人で2クラス。1人転出すれば1クラスに戻る位置です。
区で見ると、いちばん多いのが長田区で78学年中10(13%)。いちばん少ないのが中央区で54学年中1(2%)でした。
この数字は市が公表した2026年5月1日時点のもので、いま現在の在籍数ではありません。特定の学校が来年クラスを減らすという予告ではありません
中学1年だけ、今年から線が動いた
知恵袋の質問は2013年のものです。当時、小学校で35人だったのは1年生だけで、2年生から上は40人でした。「41人の1クラス」を心配する土台があったのは、そのためです。
その線は、13年のあいだに動きました。令和3年の法改正で小学校が学年ごとに35人へ切り替わり、2025年度に6年生まで届いています。そして2026年4月1日、中学校の番が来ました。

神戸市立中学校85校の数字を、去年と今年で並べました。中学1年は1学級あたりの平均が34.2人から30.2人へ。いちばん人数の多い学級は40.0人から35.0人になりました。生徒は352人減ったのに、学級は304から332へ28増えています。
中学2年は34.2人から33.7人、中学3年は34.6人から33.8人で、どちらもいちばん多い学級は40人のままです。同じ校舎の中で、1年生だけ別の線で区切られている状態です。
文部科学省の法律案の概要には、切り替えの計画表が載っています。令和8年度が中1、令和9年度が中2、令和10年度が中3。対象の学年は毎年度の政令で定めるとされているので、この表は現時点の計画です。
読者
いま中2の子は、来年35人になるということですか?
計画ではそうなります。ただ学年ごとに繰り上がるので、いま中2の子は来年中3です。自分の子が何年生のときにどの線に当たるかは、学年を1つずつ進めて数えてください。
上限が下がると動きにくくなる、という見立ては外れました
35人になれば、クラスの数はどっしり構えて動きにくくなる。書きながらそう思ったので、確かめました。結果は逆でした。
計算上は、上限が小さいほど線の本数が増えます。40人なら80人、120人、160人と40刻みですが、35人なら70人、105人、140人と35刻み。同じ人数の分布なら、線に当たる学年の割合は2÷40の5.0%から2÷35の5.7%へ、むしろ上がるはずです。
ところが神戸の実データではそこまで差が出ませんでした。中学校252学年を3通りで数えると、全学年40人として9学年、いまの混在(中1が35人・中2と中3が40人)で9学年、全学年35人になったとして10学年。どれも1学年しか違いません。小学校の5.0%とも横並びです。
上限が35人に下がっても、線の上に立つ学年の割合はほとんど変わりません。変わったのは1クラスあたりの人数のほうで、クラスの数が動きやすいかどうかではありませんでした。
引っ越し先を決める前に、確かめられること

質問者が心配した「41名の1クラス」は、いまの公立小学校では起きません。41人なら必ず2クラスです。線が40人から35人へ下がったので、あの相談の前提そのものが消えました。
残っているのは、線の上に立つ学年が20に1つあるという事実のほうです。自分の子がそこに当たるかどうかは、引っ越し先が決まる前に3つの手順で確かめられます。
1つめは、住所から通う学校を特定すること。同じ町名でも番地で学校が分かれる地域があります。
2つめは、その学校の学年別の学級数を見ること。神戸市は「神戸市立学校園 学級数・児童生徒数等」というページで毎年公表していて、学年ごとの児童数と学級数が1校ずつ載っています。児童数から特別支援学級の児童数を引いて35で割れば、その学年が線からどれくらい離れているかが出ます。
3つめは、区が変われば家の値段も変わることを織り込むこと。学校の事情で候補の区を動かすと、同じ予算で買える広さが変わります。
引っ越しの報告をいつにするかは、この3つのどれにも効きません。13年前の相談者が悩んだ「せめて来年一年間だけでも」は、日付ではなく人数のほうを見ていれば、最初から答えの出る問いでした。
学級の数を数える日は、たしかに5月1日です。ただしそれは、できあがった学級を国が数えにくる日です。学級をつくる日ではありません。
よくある質問
引っ越しを学校に伝える時期をずらせば、クラスの数は保てますか
保てません。学級編制を定めた法律に日付の規定は無く、決まるのはその学年の人数だけです。5月1日は学校基本調査規則が定めた統計調査の期日で、学級のつくり方を決めるものではありません。
小学校は何人からクラスが2つになりますか
36人からです。同学年の児童で編制する学級の標準は35人なので、35人までが1クラス、36人で2クラスになります。71人で3クラス、106人で4クラスと35人ごとに増えます。特別支援学級の児童は別枠(1学級8人)で数えます。
中学校の35人学級はいつからですか
2026年4月1日に法律が施行され、まず中学1年から始まっています。文部科学省の計画では令和9年度に中学2年、令和10年度に中学3年へ広がります。神戸市立中学校の2026年5月1日時点の実数でも、1学級あたりの最大は中1が35人、中2と中3は40人でした。
神戸市で、1人の転出入でクラス数が変わる学年はどれくらいありますか
市立小学校162校の946学年のうち47学年(5.0%)です。内訳は、1人増えるとクラスが増える学年が26、1人減るとクラスが減る学年が21。区別では長田区が13%でいちばん多く、中央区が2%でいちばん少なくなっています(2026年5月1日現在)。
出典
- 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(昭和33年法律第116号)第3条・第4条・第5条、附則(令和3年法律第14号/令和8年法律第7号):e-Gov法令検索
- 学校基本調査規則(昭和27年文部省令第4号)第4条:e-Gov法令検索
- 文部科学省「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案の概要」:PDF/成立の告知(2026年3月31日)
- 神戸市「神戸市立学校園 学級数・児童生徒数等」令和8年5月1日現在・令和7年5月1日現在:神戸市(学年別の児童生徒数から特別支援学級の児童生徒数(再掲)を引いて集計)
- Yahoo!知恵袋 q13112600218「小学校のクラス人数によるクラス数増減の質問です。」(2013年8月29日)
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