形の悪い土地が安いのは、形が悪いからだ。そう思って値引き分を計算していると、買うときも売るときも金額を読み違えます。国土交通省が公表している実際の取引価格を79,980件数えたところ、その安さの約2割は、形とはまったく関係のない「広さ」のぶんでした。
面積をそろえずに数えると、不整形地の坪単価は整形地を100として67.5です。3割以上安い。ところが面積を100〜200㎡にそろえて、同じ188市区町村で数え直すと74.2まで戻ります。差の6.7ポイントは、形ではなく「不整形の土地のほうがそもそも広い」ことで生まれていました。
先に断っておくと、よく見かける「整形地より2〜3割安い」という目安は、この74.2とぶつかりません。目安の水準そのものは合っています。合っていないのは、その内訳のほうです。
先に結論
- 面積を100〜200㎡にそろえると、不整形地の坪単価は整形地を100として74.2(188市区町村の中央値)
- 面積をそろえないと67.5。差の6.7ポイントは「不整形の土地のほうが広い」ぶんで、形とは関係がない
- 形そのものによる下落は25.8ポイント。不整形の面積中央値は340㎡、長方形は200㎡
- 不整形は全国79,980件中12,948件(16.2%)。6件に1件はこの形で、珍しい土地ではない
- 兵庫では西宮76・明石80・姫路80。加古川市だけは119で、不整形のほうが高く売れている
自分の市区町村で実際にいくらで売れているかは、当サイトのかんたん相場検索で確認できます。坪単価と1区画の総額がずれる仕組みは宝塚の土地は尼崎より坪17%安いのに、1区画では340万円高くつきますで先に書いていて、この記事の「安さの2割は広さ」と同じ話です。
不整形地とはどんな形か。取引データの6件に1件がこの形です
国土交通省の不動産取引価格情報には、土地の形が9種類で登録されています。正方形・ほぼ正方形・長方形・ほぼ長方形・ほぼ整形・台形・ほぼ台形・不整形・袋地等の9つです。この記事では、上から5つを「整形」としてひとまとめにし、台形とほぼ台形を「台形系」として扱いました。

79,980件の内訳はこうなります。
- 整形(正方形・ほぼ正方形・長方形・ほぼ長方形・ほぼ整形)56,041件/70.1%
- 台形系(台形・ほぼ台形)9,813件/12.3%
- 不整形 12,948件/16.2%
- 袋地等 1,178件/1.5%
不整形は12,948件で、取引の6件に1件がこの形です。不動産の広告では「変形地」と書かれることもあります。呼び名は変わっても中身は同じで、件数で見れば珍しくありません。三角地、L字、奥が広がる形、道路に対して斜めに入っている土地。住宅地を歩けばいくらでもあります。
ここでひとつ、この記事の限界を先に書いておきます。この9区分に「旗竿地」という項目はありません。竿のついた敷地が「不整形」で登録されているのか「袋地等」なのかは、公表されているデータからは分けられません。あとで出てくる74.2は不整形の数字であって、旗竿地だけを取り出した数字ではない、と読んでください。
不整形地は整形地の何割で売れているか。全国188市区町村で74.2でした
面積を100〜200㎡にそろえ、市区町村ごとに「その形の坪単価の中央値 ÷ 整形地の坪単価の中央値」を出し、その比の中央値を全国値としました。整形地を100とした結果です。

- 台形系 92.1(186市区町村・1,729件)
- 不整形 74.2(188市区町村・1,478件)
- 袋地等 75.9(17市区町村・122件)
台形系の92.1が、この表でいちばん実感と合う数字かもしれません。台形は「斜めになっているだけ」で、建物の配置はそれほど困りません。落ちても1割弱です。
袋地等の75.9は、不整形の74.2より高く出ています。ただし袋地等は17市区町村・122件しかありません。比べられる市区町村が不整形の10分の1以下なので、この記事では参考値として扱い、結論には使いません。
主役は不整形の74.2です。整形地が坪50万円で売れている街なら、同じ広さの不整形地は坪37万円前後。40坪なら約520万円の差になります。
不整形地は何割安いのか。面積をそろえると、答えが6.7ポイント変わります
ここからがこの記事の芯です。同じ188市区町村で、面積の条件だけを外して数え直しました。
| 条件 | 不整形(整形地=100) |
|---|---|
| 面積100〜200㎡にそろえた | 74.2 |
| 面積をそろえない(全件) | 67.5 |
同じ市区町村、同じデータ、同じ計算です。違うのは面積の条件だけ。それだけで6.7ポイント動きました。
理由は形状別の面積中央値を見ると分かります。
| 形状 | 面積の中央値 |
|---|---|
| 長方形 | 200㎡ |
| ほぼ長方形 | 210㎡ |
| 台形 | 240㎡ |
| ほぼ整形 | 290㎡ |
| 不整形 | 340㎡ |
不整形の面積中央値は340㎡で、長方形の200㎡より140㎡広い。土地は広くなるほど坪単価が下がります。総額が上がって買える人が減るからです。つまり面積をそろえずに不整形と整形を並べると、「形が悪いぶん」と「広いぶん」が混ざったまま1つの数字になります。
安さ32.5ポイントのうち、6.7ポイントは形ではなく広さのぶんでした。割合にすると約2割です。形そのもので落ちているのは25.8ポイント。だから「2〜3割安い」という目安は当たっています。当たっているのに、その理由の2割は形の話ではなかった、というのがこの集計で出たことです。
これは売る側にも買う側にも効きます。300㎡を超える不整形地を売るとき、「形が悪いから4割落ちますね」と言われたら、その4割のうち一定部分は面積のぶんです。同じ市内の同じくらいの広さの土地が、整形でいくらで売れたのかを確かめてください。
「整形地の8割の価値だとすれば」と書いた人がいます。数えたら74.2でした
2022年1月、Yahoo!知恵袋にこんな相談が投稿されました。
「旗竿地のことをよく知らないまま契約してしまい後悔しています。自分が住む分には前の整形地よりも気に入って契約したのですが…土地としての価値は厳しいようですね。」「その場合、旗竿地はどれくらいの価値で考えておけばいいものでしょうか」
契約したあとに、値段のことを調べてしまった人です。この質問に付いたベストアンサーが、この記事でいちばん紹介したかった回答でした。
「旗竿地の方が、固定資産税は安いみたいですよ。それはともかく、整形地との比較でいえば、あまり変わらないのでは?現在、あなたの土地が整形地の8割の価値だとすれば、10年後もその時の整形地の8割の価値になるように思います。」
出どころはデータではありません。体感です。その体感が言った「8割」と、188市区町村の実際の取引から出た74.2は、ほとんど同じところを指しています。知恵袋の回答者が経験から言った8割を、取引で数え直したら74.2でした。
同じ回答は、そのあとに損得の構造を4行で言い切っています。
「なので、旗竿地は、①安く買って②割高な工事をして③安く売るということになるのかな。なので、整形地との損得が発生するなら②の分かと。気に入った土地なら、その分は出す価値あるのかな」
①と③は、この記事の74.2がそのまま当てはまります。買うときに74.2で買い、売るときも74.2で売る。比率が変わらないなら、そこで損得は発生しません。残るのは②です。
私は、ここが不整形地の判断でいちばん見落とされる場所だと見ています。値引き分は契約書に金額で出ますが、②の工事費は見積もりを取るまで金額になりません。値引き分をそのまま得だと思って先に判断すると、②の金額が出てきたときに順番が逆になります。土地の値引き額と、工事の見積もりを、同じ紙の上で見比べてから決めてください。
不整形地のほうが高く売れた市区町村が6つあります
全国値は74.2ですが、市区町村まで下ろすと向きが変わる場所があります。サンプルの厚い72市区町村(整形15件以上・不整形8件以上)で見ると、6つの市区で不整形のほうが高く売れていました。
| 市区町村 | 整形の坪単価 | 不整形の坪単価 | 整形=100 |
|---|---|---|---|
| 高松市 | 16.5万円 | 25.3万円 | 153 |
| 足立区 | 135.5万円 | 175.2万円 | 129 |
| 富士市 | 17.9万円 | 22.1万円 | 124 |
| 富山市 | 16.9万円 | 20.5万円 | 122 |
| 加古川市 | 26.0万円 | 30.9万円 | 119 |
| 静岡市葵区 | 49.6万円 | 52.9万円 | 107 |
加古川市は整形26.0万円に対して不整形30.9万円。坪あたり4.9万円、不整形のほうが高く売れています。兵庫県内のほかの市は、西宮市76・明石市80・姫路市80と全国並みなので、加古川だけが逆を向いていることになります。
先ほどの知恵袋には、2023年8月に投稿された別の質問もありました。
「旗竿地って、惨めですか? すごく安いので購入を検討していますが、20メートルの直線の通路を通らないと家にたどり着きません。その通路の両脇には、整形地の大きなお家が建っていて、挟まれてる感じです。その通路を通るたびに、惨めな気持ちになりますか?」
これに付いたベストアンサーが、上の6市区と同じことを経験から言っています。
「物件によると思います。周りの環境。大手のある程度のランクの建売の場合、旗竿地も値段はそう変わらないです。そうなる理由は、両サイドの家、アプローチ部分のサイドの家との距離がしっかりとってある。そうすると、価値を下げる要素はほぼないです。」
ただし、市区町村ごとの不整形の件数は8〜19件しかありません。この6市区の数字は「そういう街もある」という例として読むもので、全国値の代わりにはなりません。数字の主役は74.2のほうです。
相続税の評価はいくら下がるか。かげ地10%なら0.98で終わります
「不整形地 価格」で検索すると、相続税の評価の解説が並びます。売買の値段の話を探していた人が、税額の話に迷い込みやすい言葉です。ここも数字を出しておきます。
国税庁が公表している調整率表(平成31年1月分以降用)の不整形地補正率表によると、補正率の幅は0.60から1.00です。減額の大きさは「かげ地割合」——その土地を囲む長方形のうち、土地になっていない部分の割合——で決まります。
- 普通住宅・500㎡未満で、かげ地10%以上なら0.98。2%しか下がりません
- 同じ条件で、かげ地30%以上なら0.90
- 同じ条件で、かげ地50%以上なら0.79
- 同じ条件で、かげ地65%以上なら0.60。ここが最大の40%減です
きれいな長方形から少しだけ欠けている程度の土地は、0.98で終わります。40%下がるのは、囲む長方形の3分の2近くが土地になっていない場合だけです。「不整形地は相続税が安くなる」と聞いて期待していた人ほど、実際の補正率を見て拍子抜けするはずです。
なお売買の値段(この記事の74.2)と、相続税の評価額は別の計算です。片方の数字をもう片方に持ち込まないでください。
旗竿地は建て替えできるのか。竿の幅が2m未満だと話が変わります
形の話の中で1つだけ、値段の何割という次元ではなくなるものがあります。建て替えができるかどうかです。
小平市や兵庫県の解説ページによると、建築基準法43条1項は建物の敷地が「道路」に2メートル以上接することを求めています。ここでいう「道路」は原則として幅員4メートル以上のもので、その定義は同じ法律の42条にあります。43条が幅員4メートルを定めている、という書き方をしている解説を見かけますが、条番号としては別です。
旗竿地でいえば、竿にあたる路地状部分の幅が2メートル未満だと、この2メートル以上という条件を満たしません。道路にまったく接していない袋地も同じです。この場合は形が悪いのではなく、建て替えができない土地になります。74.2という比率の外側の話です。
兵庫県のページには、43条2項2号の許可について「本来、その敷地が古くから宅地として使用され、やむを得ず建築せざるを得ない場合に適用される制度」と書かれています。買ってから許可を取ればいい、と当てにできる制度ではありません。
道路の幅そのものについてはお盆に実家へ帰ったら、前の道の幅を測ってください|道幅4m未満の土地は、駅から遠い地域ほど3割安いで、実際の取引価格つきで書いています。接道が気になった人はそちらへどうぞ。
自分の土地が今いくらか、3ステップで調べる
74.2は全国の中央値です。自分の土地に当てはめるには、その街の整形地がいくらで売れているかが要ります。手順は3つです。
- その市区町村の土地の坪単価を調べる。かんたん相場検索に住所を入れると、実際に売れた価格の中央値が出ます。市名だけだと別の県の同じ地名に当たるので、都道府県名から入力してください
- 自分の土地の面積を、㎡から坪に直す(㎡ × 0.3025)。坪単価 × 坪数が、整形地だったときのおおよその金額です
- 形の補正をかける。台形なら約0.92、不整形なら約0.74。300㎡を超える広い土地なら、坪単価そのものがもう少し下がる方向に働きます
3で出るのは目安であって査定額ではありません。同じ「不整形」でも、間口が広く奥に少し出っ張っているだけの土地と、三角形で建物が入りにくい土地では話が違います。実際に売るときは、その形で建物が何坪入るかを見た金額になります。
売るかどうかを考えている段階なら、街ごとの差のほうが形の差より大きいこともあります。神戸市内で区によって坪単価が7倍違う話は神戸市の土地の坪単価は区で7倍違う|相続した実家の「売り方」が変わる境目にまとめました。買う側で迷っている人には、同じ予算で戸建てとマンションのどちらが広いかを数えたマンションと戸建て、買うならどっち|値段はほぼ同じなのに、広さは1.5倍ちがいましたもあります。
自分の市区町村の土地の坪単価を見る ▶
前の道の幅も測っておく(道幅4m未満の土地の話)
全国1,525市区町村の実際の成約価格を、住所を入れるだけで表示します。
この記事の数字の出どころ
- 取引価格:国土交通省「不動産情報ライブラリ」の不動産取引価格情報(取引種類は宅地)。取引時期の範囲は自治体ごとに異なり、大半は2024年10-12月期から2025年10-12月期です。集計日は2026年8月20日
- 全国値の出し方:面積100〜200㎡の取引だけを使い、自治体内で整形地10件以上・対象形状5件以上ある自治体を対象に「対象形状の坪単価の中央値 ÷ 整形地の坪単価の中央値」を計算し、その比の中央値を全国値としました
- 「整形」は正方形・ほぼ正方形・長方形・ほぼ長方形・ほぼ整形の5区分をまとめたものです
- 市区町村別の表は、整形15件以上・不整形8件以上の72市区町村を抜き出したものです。市区町村ごとの不整形は8〜19件しかないため、全国値の代わりには使えません。72市区町村の比の中央値は75.0でした
- 袋地等は17市区町村・122件のみのため参考値です
- 不整形地補正率:国税庁「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成31年1月分以降用)」⑤不整形地補正率表 https://www.rosenka.nta.go.jp/docs/h31_thyousei.pdf
- 接道義務:小平市/兵庫県の公式ページの記載によります
- 読者の声:Yahoo!知恵袋(2022年1月13日投稿)/同(2023年8月23日投稿)。引用は投稿された文章のままです

