マンションと戸建てで迷っているなら、先に金額の話をします。全国449市区町村の実際の成約価格を並べると、中古マンションの中央値は2,300万円、中古戸建ては2,250万円でした。差は50万円です。ところが手に入る広さは70m²と105m²で、こちらは1.5倍ちがいます。
「同じ金額なら戸建てのほうが広い」——ここまでは、たいていの比較記事にも書いてあります。この記事で書くのはその先です。広さの差は、維持費と、20年後に一緒に修繕を決める相手と、住宅ローン控除の面積要件で、少しずつ返済されていきます。
先に結論
- 総額はほぼ同じ。床1坪あたりの単価は、マンションが戸建ての1.48倍
- マンションのほうが坪単価が高い市区町村は91%。逆転する40市区町村のうち20が愛知県
- 国が修繕費の目安を出しているのはマンションだけ。戸建ての目安は存在しない
- 昭和59年以前に建ったマンションは、世帯主の55.9%が70歳以上
- 住宅ローン控除の「50m²以上」は登記の面積で判定する。マンションは広告の面積より小さく出る
買うと決めたあとの話は別に書いています。戸建てなら新築と中古で坪単価が半分になる街とほとんど変わらない街があること、マンションなら築20年を過ぎても10年ごとに落ち続けることのほうが、種別選びより金額に効きます。
「マンションは管理費がもったいない」——戸建ての修繕費には、国の目安すら存在しません
Yahoo!知恵袋に「一戸建てを買って大後悔」という質問があります。書いたのは、その一戸建てを買った本人です。
「防犯のため砂利にした部分の雑草抜きは大変だし人工ウッドデッキなんか全然使わない割にたまに洗わなきゃいけない 家の周りの蜘蛛対策もしなきゃならない 隣の家は柵が壊れてて、古くてなんか汚い 一戸建ては自分には手に負えない物件でした。この辺の管理をお金で解決できるマンションにすれば良かったです。」
同じ質問に、戸建てを売ってマンションへ移った人がこう答えています。
「そんなに広い戸建てではないですがシニアになり、これこらのことも考え売却してマンションに移りうちは大正解だったと感じています。特に成長の早い木を何本か植えてしまったのが一番の後悔でした。」
マンションの管理費と修繕積立金は、毎月きっちり引き落とされます。戸建てにその引き落としはありません。それで「戸建てのほうが維持費が安い」と読むと、順番が逆になります。
国土交通省は、マンションについて修繕積立金に関するガイドラインを出しています。366件の長期修繕計画を集めて、専有面積1m²あたり月いくら積むべきかを数字で示したものです。
| マンションの規模 | 平均値 | 事例の3分の2が収まる幅 |
|---|---|---|
| 20階未満・延床5,000m²未満 | 335円/m²・月 | 235〜430円 |
| 20階未満・5,000〜10,000m² | 252円/m²・月 | 170〜320円 |
| 20階未満・10,000〜20,000m² | 271円/m²・月 | 200〜330円 |
| 20階以上 | 338円/m²・月 | 240〜410円 |
70m²の部屋なら、真ん中あたりの規模で月17,600円、年に21万円です。20階以上のタワーだと月23,700円になります。機械式駐車場があると、その分が上に乗ります。
戸建てには、これに当たるものが国から出ていません。探した範囲では、長期優良住宅の認定を取った家に「30年間、10年以内の間隔で点検する」という義務があるだけで、金額の目安は示されていません。ネット上には「戸建ての修繕費は30年で1,000万円」という数字が大量にありますが、出どころはリフォーム会社や不動産会社の自社推計で、国の統計ではありません。この記事では引きません。
私はこれを「マンションのほうが維持費が高い」ではなく、マンションだけ値札が貼ってあると見ています。屋根も外壁も給湯器も、戸建てでも同じように傷みます。違うのは、毎月引き落とされるか、10年後に一括で請求されるかです。上の知恵袋の一言は、その請求書を受け取ったあとに書かれたものだと読めます。
同じ2,300万円で、手に入る広さは70m²と105m²でした
ここからは実際の成約価格です。国土交通省の不動産情報ライブラリから、2024年4〜6月期から2026年1〜3月期までの2年分を取り、市区町村ごとに中古マンションと中古戸建ての中央値を出しました。どちらも1982年以降に建ち、取引の時点で築3年以上のものだけです。

総額の差は、449市区町村の中央値でちょうど0円でした。戸建てのほうが高い街が223、マンションのほうが高い街が226です。金額はきれいに割れているのに、床の広さは1.5倍ちがいます。戸建てにはさらに土地が135m²付いてきます。
裏返すと、床1坪あたりの単価はマンションのほうが高いということです。マンション108.8万円、戸建て69.6万円で、倍率は1.48倍。ここで戸建て側の坪単価には、土地代がまるごと乗っていることに触れておきます。土地代込みで計算しても、なお戸建てのほうが1坪あたりは安いという意味です。
兵庫県姫路市がわかりやすい例です。中古マンションは70m²で1,300万円(191件)。同じ街の中古戸建ては105m²で1,100万円(192件)。200万円安いほうが、35m²広い。坪単価にすると66万円と33万円で、ちょうど倍です。
91%の街でマンションが高い。逆転する40市区町村のうち20が愛知県でした
449市区町村のうち、マンションのほうが坪単価が高いのは407(91%)。残る40では戸建てのほうが高く出ました。この40の内訳を見て、手が止まりました。

20が愛知県でした。逆転のちょうど半分が、1つの県に集まっています。愛知県で両方の数字がそろった43市区町村のうち、20で戸建てのほうが坪単価が高く、県全体の倍率は1.008倍。全国の1.48倍とはまるで別の数字です。愛知を除くと406市区町村で逆転は20しかありません。
愛知の中身も他県と違います。マンションの専有面積の中央値が75m²(全国は70m²)、戸建ての土地が155m²(全国は135m²)。広いマンションが、広い戸建てと同じ坪単価で売られている状態です。逆転している街は東郷町0.73倍、尾張旭市0.80倍、知多市0.77倍、豊川市0.77倍、西尾市0.77倍と名古屋市の外周に並び、名古屋市緑区・守山区・港区も1を切っています。
私はこれを、車で動く前提の街では戸建ての土地に値段が付き、マンションの駅近という価値が効きにくいからだと見ています。ただしこれは数字から導いた解釈で、統計で裏を取ったものではありません。確かなのは、愛知で家を探している人が全国平均の「マンションは坪単価が5割高い」を前提に予算を組むと、実際の売り出し価格と合わないということです。
反対の端は茨城県で2.29倍。広島県1.95倍、大阪府1.55倍と続きます。関西と首都圏は1.4倍前後で、兵庫県は1.38倍でした。
| 市区町村 | 中古マンション | 中古戸建て | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 神戸市中央区 | 4,000万円/65m² | 3,400万円/90m² | 1.84 |
| 尼崎市 | 3,000万円/65m² | 2,800万円/100m² | 1.62 |
| 西宮市 | 3,600万円/70m² | 3,750万円/105m² | 1.40 |
| 神戸市灘区 | 3,400万円/65m² | 3,500万円/95m² | 1.37 |
| 神戸市東灘区 | 3,200万円/70m² | 4,200万円/105m² | 1.12 |
| 明石市 | 1,700万円/65m² | 2,400万円/100m² | 1.11 |
| 姫路市 | 1,300万円/70m² | 1,100万円/105m² | 2.00 |
同じ兵庫県で1.11倍から2.00倍まで開きます。県の平均を見ても、自分の街の答えにはなりません。
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都道府県名と市区町村名を入れると、土地・戸建て・マンションの実際の取引価格が出ます
値下がりの速さは、マンションか戸建てかより、どの街かで決まります
「資産価値が落ちにくいのはどっちか」も、同じデータで計算できます。市区町村ごとに築3〜10年の坪単価を100として、築年数帯ごとの指数を出し、その中央値を取りました。マンションと戸建ての両方がそろった市区町村だけで比べています。
| 築年数 | マンション | 戸建て | 差 |
|---|---|---|---|
| 築3〜10年 | 100 | 100 | — |
| 築11〜20年 | 78.5 | 83.6 | 5.1 |
| 築21〜30年 | 60.0 | 67.3 | 7.3 |
| 築31〜40年 | 41.2 | 48.0 | 6.8 |
数字の上ではマンションのほうが速く落ちています。ただし差は5〜7ポイントしかありません。同じ築21〜30年で街ごとの散らばりを見ると、マンションは46から76、戸建ては47から84まで開いていました。種別の差が7ポイント、街の差が30ポイント以上。どちらを買うかより、どこで買うかのほうが4倍以上効いています。
この表の読み方をひとつ補っておきます。これは同じ時点で築年数別に並べた価格差であって、いま買う家がこれから下がる幅ではありません。ここ数年の新築マンションの値上がりで、分母にあたる築3〜10年帯が膨らんでいる分、マンションの下落率は実際より大きい側にぶれます。
買うときに聞いた修繕積立金は「初期額」。国が枠を決めたのは2024年です
マンションの修繕積立金には、二通りの集め方があります。計画期間中ずっと同じ額を集める均等積立方式と、最初を安くして段階的に上げていく段階増額積立方式です。分譲時のパンフレットに月8,000円と書いてあるとき、それが後者なら、その金額は入口の値段です。
2024年6月7日、国土交通省がガイドラインを改定して、段階増額のときの引き上げ方に枠を設けました。報道発表の原文です。
「段階増額積立方式における月あたりの徴収金額は、均等積立方式とした場合の月あたりの金額を基準額とした場合、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、計画の最終額は基準額の1.1倍以内とする。」
初期額を基準額の0.6倍より下げてはいけない、最終額は1.1倍までにする。この2つを守っても、入口から出口までで積立金は1.8倍まで上がる計算になります。そして国交省がこの枠を作った理由は、同じ発表に書いてあります。「計画期間中の修繕積立金の水準が大幅に上昇している例があり、予定通りの引上げができず修繕積立金の不足につながるおそれがあります」。
実際どうなっているかは、5年に1度のマンション総合調査でわかります。令和5年度調査では、計画上の積立額に対して現在の積立額が不足しているマンションが36.6%。前回調査より1.8ポイント増えています。3棟に1棟は、計画に届いていません。
戸建てにこの問題はありません。代わりに、積み立てそのものを誰も強制しません。
昭和59年以前に建ったマンションは、世帯主の55.9%が70歳以上です
同じ令和5年度マンション総合調査に、もうひとつ数字があります。国交省がこの調査結果に付けた見出しは「高経年マンションに居住する70歳以上の世帯主が半数以上に」でした。
- 区分所有者のうち70歳以上の割合は25.9%(前回より+3.7ポイント)
- 昭和59年(1984年)以前に完成したマンションでは、その割合が55.9%
- 「永住するつもりである」と答えた人は60.4%(前回より−2.4ポイント)
- 空室があるマンションは34.0%。完成年次が古いほど空室がある割合が高い
いま築40年のマンションを買うと、大規模修繕の決議を取る相手の半数以上が70代です。これは高齢者が悪いという話ではありません。工事の費用を出す期間と、住み続ける期間が合わなくなる人が管理組合の過半を占める、という構造の話です。修繕積立金の値上げに賛成する動機が、人によって違ってきます。
戸建ては、この決議がいりません。屋根を直すかどうかは自分で決められます。言い換えると、誰も代わりに決めてくれません。先ほどの知恵袋の質問者は、その自由を手にしたあとで、雑草と蜘蛛の巣とウッドデッキの洗浄が全部自分の予定表に乗ることに気づいています。
タワーマンションを検討しているなら、階数と暮らしの関係も見ておくと、この年齢構成の話がもう少し具体的になります。
住宅ローン控除の「50m²以上」は、マンションだけ広告の面積では通りません
制度上、マンションと戸建てで扱いがはっきり違うところが1つあります。住宅ローン控除の床面積要件です。
借入限度額そのものには種別の差はありません。省エネ性能と新築か既存かで決まります(この表は新築と中古の戸建てを比べた記事にあります)。差が出るのは、面積の測り方のほうです。
国税庁は、判定に使う面積をこう決めています。
「床面積は、『登記事項証明書』に表示されている床面積により判断します。」
「マンションの場合は、階段や通路など共同で使用している部分(共有部分)については床面積に含めず、登記事項証明書上の専有部分の床面積で判断します。」
そして登記の面積の測り方は、不動産登記規則にこう書いてあります。
「壁その他の区画の中心線(区分建物にあっては、壁その他の区画の内側線)で囲まれた部分の水平投影面積により」
戸建ては壁の中心線、マンションは壁の内側線。つまりマンションの登記面積は、壁の厚みの分だけ小さくなります。一方でチラシやポータルサイトに載る専有面積は、完成前でも計算できる壁芯(壁の中心)で書かれるのが通例です。
結果として、広告で50.2m²と書かれた部屋の登記面積が48m²台になり、控除が受けられないことが起こります。戸建てにこのズレはありません。50m²前後の部屋を候補に入れているなら、見るのは広告ではなく登記事項証明書の面積です。
結局、どちらを選ぶか
数字で言えることと、言えないことを分けます。
数字が支持するのはこの3つです。同じ予算なら戸建てのほうが4割ほど広い。坪単価は9割の街でマンションのほうが高い。値下がりの速さは種別より街で決まる。
数字が決めてくれないのは、その広さを自分で維持できるかどうかです。上の知恵袋の2人は、金額の計算を間違えたのではなく、自分の手間の見積もりを間違えています。
この記事の材料からは、こう分かれます。
- 戸建てが向く——愛知県のように坪単価が逆転している街で探している/土地を持つこと自体に意味がある/修繕の時期と金額を自分で決めたい/庭と外構の手入れを自分の予定に組み込める
- マンションが向く——手入れを固定費に変えたい/単身か2人で70m²あれば足りる/駅からの距離を優先する/将来売るまでの年数がはっきりしている
- どちらでも、先に調べること——その市区町村の実際の成約価格。県の平均は使えません。兵庫県だけで1.11倍から2.00倍まで開きます
そして買う側に回ったら、次に効いてくるのは築年数です。マンションの築年数と値落ち、戸建ての新築と中古の差を先に見ておくと、同じ予算で選べる幅が変わります。売るときの話は媒介契約の記事にまとめています。
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この記事の数字の出どころ
- 価格:国土交通省「不動産情報ライブラリ」の不動産取引価格情報。2024年4〜6月期〜2026年1〜3月期の8四半期
- 中古の定義:取引した年から建築年を引いて3年以上。建築年が1982年以降(新耐震基準の目安)のものだけ
- マンションは「中古マンション等」の専有50〜100m²、戸建ては「宅地(土地と建物)」で用途に住宅を含み共同住宅を含まない延床70〜150m²。坪単価はどちらも「取引総額 ÷ 建物の広さ」で、戸建て側には土地代が含まれます
- 集計対象:マンションと戸建てがそれぞれ10件以上あった449市区町村。全1,525市区町村を比べた数字ではありません
- 面積帯をそろえたのは、そろえないと比較が壊れるからです。投資用のワンルームが中古マンションの取引に占める割合は全国の中央値で3.7%ですが、大阪市浪速区は79.9%、東京都大田区は54.4%、神戸市兵庫区は51.5%。面積を指定せずに集計すると、この単価が「マンションの相場」として出てきます
- 修繕積立金の目安:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(平成23年4月・令和6年6月改定)。366事例から算出されたもの
- 段階増額の考え方:同ガイドラインおよび令和6年6月7日 国土交通省報道発表
- 高齢化・積立金不足:令和5年度マンション総合調査結果(国土交通省・令和6年6月公表)
- 住宅ローン控除の床面積:国税庁 No.1211-1/登記の測り方は不動産登記規則第115条
- 読者の声:Yahoo!知恵袋「一戸建てを買って大後悔」の質問文とベストアンサー。誤字を含めて原文のまま引いています
- 集計日:2026年8月19日

