「芦屋は家賃が高い」。月々いくら払うかで見れば、これは当たっています。芦屋市の借家の家賃は1か月あたり83,613円で、今回並べた兵庫の18市区でいちばん高い金額でした。ところが同じ調査を1㎡あたりに割り直すと1,361円になり、尼崎市の1,400円を下回ります。同じ広さの部屋を借りるなら、尼崎より芦屋のほうが安く済む計算です。
数字はすべて総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査から取りました。不動産ポータルが出している「募集中の物件の平均」ではなく、実際にその街に住んでいる世帯が払っている家賃です。
先に結論
- 芦屋市の家賃は1か月83,613円で兵庫18市区の1位。ところが1㎡あたりでは1,361円で7位まで下がる
- 尼崎市は1,400円、西宮市は1,431円。どちらも1㎡あたりでは芦屋より高い
- 兵庫で1㎡あたりがいちばん高いのは神戸市灘区の1,721円
- 芦屋の借家(共同住宅)は1住宅あたり56.48㎡で、18市区でいちばん広い
- 同じ50㎡を借りるなら灘区が約86,050円、芦屋が約68,050円。月18,000円の差になる
芦屋の家賃は月83,613円で、兵庫でいちばん高い
まず、よく知られているほうの数字から確かめます。借家に住んでいる世帯が1か月に払っている家賃は、芦屋市が83,613円。神戸市東灘区の69,707円、西宮市の69,590円を1万4,000円ほど上回っていて、今回調べた18市区のなかで単独の1位でした。神戸市中央区は66,116円、尼崎市は57,509円です。
賃貸サイトで芦屋の部屋を眺めていて、表示された相場が15万円台だったのでそっとタブを閉じた、という経験をした人はいると思います。ポータルが出している平均家賃は募集中の物件を平均したもので、広い部屋や新しい部屋が多く並ぶ街ほど高く出ます。芦屋の「高い」は、この意味では確かに高い。
ただし、この数字は「1か月にいくら出ていくか」しか教えてくれません。同じ83,613円で借りられる部屋の広さが街ごとに違うことは、月額だけを見ていても分かりません。
住む街を絞り込む段階なら、家賃と同じくらい通学先も気になるはずです。市区町村ごとの通学区域は全国の学区がわかるページにまとめてあるので、候補の街が決まったらそちらも見てみてください。
1㎡あたりに割ると、芦屋は尼崎より安い
同じ調査には、延べ面積1㎡あたりの家賃という項目があります。共同住宅(アパート・マンション)に絞って並べたのが次の図です。

芦屋市は1,361円。尼崎市の1,400円、西宮市の1,431円より下で、全国平均の1,458円も下回っています。月額では18市区の1位だった街が、1㎡あたりでは7位まで下がりました。
兵庫県全体の平均は1,304円なので、芦屋は県平均をわずかに上回る程度の水準です。逆にいちばん低いのは神戸市北区の1,013円と垂水区の1,014円で、灘区とは1.7倍の開きがあります。
兵庫でいちばん高いのは芦屋ではなく神戸市灘区
1㎡あたりの1位は神戸市灘区の1,721円でした。2位が神戸市中央区の1,704円、3位が東灘区の1,572円と続きます。芦屋市の1,361円と比べると、灘区は26%高い。
灘区の借家の家賃は月63,914円で、芦屋より約2万円安い街です。それでも1㎡あたりでは芦屋を上回ります。月々の支払額の順位と、1㎡あたりの順位は別物だということが、この2つの街だけでもはっきり出ています。
同時に起きているのは「借りている部屋の広さ」の違い
なぜ順位が入れ替わるのか。同じ調査で、借家(共同住宅)の1住宅あたり延べ面積を見ると分かります。

芦屋市は56.48㎡で、18市区のなかで最も広い数字です。尼崎市は41.06㎡、灘区は37.58㎡。芦屋と灘区では19㎡、畳にしておよそ12畳ぶんの差があります。
広い部屋が多い街では、1㎡あたりの家賃は下がりやすくなります。設備や共用部にかかる費用は部屋の広さに比例して増えるわけではないので、面積で割ったときの数字は薄まるからです。逆に単身者向けの狭い部屋が多い街では、1㎡あたりが高く出ます。
ここで断定を1つ避けておきます。この調査から言えるのは「1㎡あたりが安いことと、借りている部屋が広いことが同じ街で同時に起きている」までです。広いから安くなったという因果関係までは、この統計では確かめられません。
同じ50㎡を借りると、神戸市内でも月35,400円ちがう
1㎡あたりの数字は、広さをそろえて街を比べるときに使えます。仮に50㎡の部屋を借りるとして、1㎡あたりの家賃を50倍した目安が次の表です。
| 市区 | 1㎡あたり | 50㎡の目安 |
|---|---|---|
| 神戸市灘区 | 1,721円 | 86,050円 |
| 神戸市中央区 | 1,704円 | 85,200円 |
| 神戸市東灘区 | 1,572円 | 78,600円 |
| 西宮市 | 1,431円 | 71,550円 |
| 尼崎市 | 1,400円 | 70,000円 |
| 芦屋市 | 1,361円 | 68,050円 |
| 明石市 | 1,302円 | 65,100円 |
| 神戸市垂水区 | 1,014円 | 50,700円 |
| 神戸市北区 | 1,013円 | 50,650円 |
灘区と北区の差は月35,400円。1年で42万4,800円、2年住めば85万円近くになります。神戸市内の話だけで、これだけの幅があります。
※ 1㎡あたりの家賃を単純に50倍した目安です。実際の募集家賃は築年数・駅からの距離・設備で動きます。
東京23区でも、世田谷区は豊島区より1㎡が安い
芦屋で起きていることは、兵庫だけの話ではありません。同じ調査を東京23区で並べると、こうなります。
| 区 | 1㎡あたり | 部屋の広さ | 1か月の家賃 |
|---|---|---|---|
| 港区 | 4,076円 | 48.74㎡ | 196,160円 |
| 渋谷区 | 3,418円 | 40.14㎡ | 130,960円 |
| 豊島区 | 2,762円 | 33.82㎡ | 91,320円 |
| 中野区 | 2,672円 | 33.20㎡ | 86,553円 |
| 杉並区 | 2,624円 | 34.05㎡ | 88,047円 |
| 世田谷区 | 2,533円 | 39.36㎡ | 100,331円 |
| 大田区 | 2,356円 | 36.01㎡ | 84,489円 |
| 足立区 | 1,746円 | 38.69㎡ | 67,017円 |
世田谷区の1㎡あたりは2,533円で、豊島区の2,762円より安い。それでも1か月の家賃は世田谷区が100,331円、豊島区が91,320円で逆転します。世田谷区の部屋は39.36㎡、豊島区は33.82㎡でした。芦屋と灘区の関係とまったく同じ形です。
部屋を探すときに1㎡あたりをどう使うか
使いどころは2つあります。1つは街を比べるとき。「A市は8万円、B市は7万円」と月額だけを並べても、部屋の広さが違えば比べたことになりません。候補が2つ3つに絞れたら、面積で割った数字を並べ直すと順位が変わることがあります。
もう1つは、見つけた部屋が割安かどうかを判断するとき。45㎡で7万円の部屋なら1㎡あたり1,555円です。その街の数字が1,400円なら1割ほど高い、1,700円なら安いほうだと当たりがつきます。間取りの表記だけを見ていると、この比較はできません。
私は、不動産ポータルが出している「平均家賃15.3万円」のような数字は、街を比べる用途には向いていないと考えています。募集中の物件だけを集めた平均なので、その時期にたまたま広い部屋が多く出ていれば上がりますし、統計として何をそろえているのかが読み手に見えません。街どうしを比べたいなら、面積をそろえた数字を自分で作るほうが早いというのが結論です。
買うときにも同じ考え方が使えます。売買の相場も1㎡あたりや1坪あたりで比べると、街ごとの差がはっきりします。
全国1,525市区町村の実際の取引価格から表示します
この記事の数字の出どころ
すべて総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」です。e-Stat(政府統計の総合窓口)のAPIから2026年8月20日に取得しました。
- 1㎡あたりの家賃:表0004021493「住宅の建て方(4区分)、構造(2区分)別延べ面積1平方メートル当たり家賃(借家(専用住宅))」。建て方は共同住宅、構造は総数、家賃0円を含まない値を使いました
- 1住宅あたり延べ面積:表0004021424「住宅の規模」。専用住宅・借家・共同住宅の値です
- 1か月あたりの家賃:表0004021480「住宅の種類(2区分)別借家の住宅の1か月当たり家賃」。専用住宅・家賃0円を含まない値で、こちらは建て方の区分がないため一戸建の借家も含みます
1㎡あたりの家賃と延べ面積は共同住宅だけ、1か月あたりの家賃は借家全体という違いがあるため、この2つを割り算して面積を逆算することはしていません。また、この調査は世帯が実際に払っている家賃を集めたもので、いま募集されている物件の家賃とは別のものです。
よくある質問
芦屋市の家賃は結局高いのですか、安いのですか。
1か月に払う金額では兵庫でいちばん高く、1㎡あたりでは尼崎市より安い、というのが両方とも正しい答えです。芦屋の借家は1住宅あたり56.48㎡と広いので、月々の総額が大きくなります。
1㎡あたりの家賃はどこで調べられますか。
総務省統計局の住宅・土地統計調査で、市区町村ごとに公表されています。e-Statの表0004021493で、建て方や構造を選んで見ることができます。
この数字は今の募集家賃と同じですか。
別のものです。この調査は2023年10月時点で実際に住んでいる世帯が払っている家賃を集めたもので、長く住んでいる人の古い契約も含まれます。今の募集家賃はこれより高く出ることがあります。

