神戸市西区で土地を買うつもりなら、地価公示の坪22.5万円で予算を組むと足が出ます。西区で実際に成約した土地の坪単価の中央値は34.7万円。公示価格との差は54.0%あります。
先に断っておくと、これは「西区が値上がりしている」とか「西区は割高だ」という話ではありません。地価公示は国が選んだ標準地を鑑定した価格で、対象は住宅地に限られます。成約価格のほうは実際に売買が成立した土地の値段で、条件のよい土地も悪い土地も混ざっています。数えている集団が違うものを引き算した結果が54.0%であって、この数字が街の値動きを表しているわけではありません。
それでも読者が困るのは、毎年ニュースで流れてくるのが公示価格のほうだ、という点です。手に入りやすい数字を予算の土台にすると、売り出しを見に行った時点で資金計画を組み直すことになります。この記事では、西区で成約した土地81件と住宅地の公示37地点を並べて、どこがどうずれるのかを見ます。
先に結論
- 西区の土地の成約中央値は坪34.7万円(81件)。地価公示(住宅地37地点)の中央値22.5万円との差は54.0%です
- この差は値動きではありません。公示は住宅地の標準地だけ、成約には条件のよい土地も悪い土地も混ざります
- 1区画の面積の中央値は195㎡(59.0坪)。土地だけの概算総額は2,047.5万円です
- 町別は、取引5件以上の枝吉と伊川谷町で1.5倍。3件の町まで入れると4.8倍まで開きます
- 建物付きなら中古戸建てが坪107.9万円、新築戸建てが坪122.3万円(いずれも延床)
西区の町別の坪単価。枝吉と伊川谷町で1.5倍
取引が3件以上あった9つの町を、坪単価の高い順に並べました。西区全体の成約の中央値と、地価公示(住宅地)の中央値も、比較用に同じ縮尺で入れています。
神戸市西区の宅地成約価格(坪単価の中央値・2024年4Q〜2025年4Q・取引3件以上の9町)と、地価公示(住宅地37地点)の中央値
自分の町の相場を調べる
この記事の数字は区全体の中央値です。町ごとの相場は住所を入れるとその場で出ます。公示価格ではなく成約価格ベースの数字です。
このツールは農地や山林が混ざった極端な取引も除かずに集計します。そのため市全体の数字はこの記事より低く出ます。町ごとの傾向を見るのに使ってください。
いちばん高い枝吉は坪52.9万円で6件、いちばん安い櫨谷町は坪5.3万円で3件です。ただし、この端どうしを比べた数字は住まい探しの役に立ちません。
櫨谷町の5.3万円は、西区の中央値の4分の1を下回る水準です。市街化調整区域や農地・山林が混ざっている可能性があります。ここを「西区でいちばん安い町」として候補に入れると、そもそも家を建てられない土地を見に行くことになります。
住宅地とみられる町どうしなら、枝吉(6件)と富士見が丘(3件)で4.8倍。ただし富士見が丘は3件しかなく、1件の外れ値で中央値が動きます。取引が5件以上ある町どうし、枝吉(6件)と伊川谷町(9件)で比べると1.5倍です。西区で予算を左右するのは、こちらの1.5倍のほうです。
件数が多い町を拾うと、玉津町が10件で坪36.4万円、伊川谷町が9件で34.7万円。どちらも西区全体の中央値34.7万円のすぐ近くに座っています。池上は5件で39.7万円、宮下は4件で34.7万円。月が丘(3件・18.8万円)と桜が丘東町(3件・16.9万円)は下側に離れますが、いずれも3件なので順位は幅を持って読んでください。
地価公示と成約価格がずれる理由
地価公示は、国が選んだ標準地を不動産鑑定士が評価して毎年公表する価格です。西区の住宅地は37地点あり、その中央値が坪22.5万円。一方の成約価格は、2024年第4四半期から2025年第4四半期までに実際に売れた81件です(坪単価が極端な7件は集計から外しています)。
違いは2つあります。1つは、公示の37地点が住宅地に限られていること。もう1つは、成約の81件には条件のよい土地も悪い土地も混ざっていることです。西区の成約の坪単価は4.0万円から86.0万円まで散らばっています。公示価格と成約価格は、同じ土地を別の角度から測った数字ではなく、別の集団を測った数字です。
事実として、公示の中央値は坪22.5万円、成約の中央値は坪34.7万円、その差は54.0%です。そのうえで私は、この54.0%を街の評価ではなく集計対象の違いとして読むべきだと考えています。値上がりが理由なら公示を下回る成約はほとんど無いはずですが、町別に見ると月が丘18.8万円、桜が丘東町16.9万円、富士見が丘10.9万円と、公示の22.5万円より低い町が並んでいるからです。上に外れる取引と下に外れる取引の両方が、同じ81件の中に入っています。
読者が持ち帰るべきなのは、西区が高いか安いかではありません。公示価格を予算の出発点に置かない、という一点です。
1区画は59坪。土地だけで概算2,047.5万円
西区で成約した土地1区画の面積の中央値は195㎡、坪に直すと59.0坪です。坪単価の中央値34.7万円と掛け合わせると、概算で2,047.5万円になります。
これはあくまで概算です。59.0坪と34.7万円は別々に取った中央値なので、この値段で売れた1件が実在するわけではありません。桁を確かめるための数字として使ってください。ここに仲介手数料と登記費用が乗り、建物の代金は別に必要です。
同じ59.0坪を公示価格の坪22.5万円で見積もれば、当然これより安い額が出ます。その差を土地代の側で吸収できなければ、削る先は建物になります。
建物付きで買うか、土地を買って建てるか
西区の他の種別も並べておきます。
| 種別 | 成約価格(中央値) | 件数 |
|---|---|---|
| 宅地(土地) | 34.7万円/坪 | 81件 |
| 中古戸建て | 107.9万円/坪(延床) | 59件 |
| 新築戸建て | 122.3万円/坪(延床) | 34件 |
| 中古マンション | 31.0万円/㎡ | 100件 |
| 賃貸 | 1,629円/㎡ | 23,960件 |
新築戸建ては坪122.3万円で34件。真ん中の半分は坪108.1万円から151.2万円の間に入っています。中古戸建ては坪107.9万円で59件、こちらは81.9万円から132.2万円です。戸建ての坪単価は建物の延床坪数で割った値なので、土地の坪単価34.7万円からそのまま引き算はできません。
土地を買って家を建てる場合、土地の予算がずれたぶんは建物から削ることになります。土地代は交渉の幅が小さく、後から動かせるのは建物側だからです。西区の新築戸建ての坪単価が108.1万円から151.2万円まで広がっているのは、この配分の違いも混ざった結果だと私は見ています。土地を見に行く前に、土地といくら、建物にいくらを先に決めておくと、後から削る作業が減ります。
土地と建物の配分を先に決めておくと、土地を見たあとで削る作業が減ります
中古マンションは築年数で価格が動く
西区の中古マンションは100件、中央値は1㎡あたり31.0万円です。築年帯で分けると次のようになります。
| 築年帯 | 件数 | 中央値 |
|---|---|---|
| 築0〜10年 | 6件 | 50.3万円/㎡ |
| 築11〜20年 | 12件 | 45.6万円/㎡ |
| 築21〜30年 | 21件 | 40.0万円/㎡ |
| 築31〜40年 | 59件 | 23.2万円/㎡ |
100件のうち59件が築31〜40年です。西区で流通している中古マンションの本体はこの帯で、1㎡あたり23.2万円。1つ上の築21〜30年は40.0万円なので、帯をまたぐと単価が大きく変わります。築年帯は2026年を基準に数えていて、築21〜30年は1996年から2005年に建った物件、築31〜40年は1986年から1995年に建った物件です。1982年より前の物件は元のデータから外れているので、この表には入っていません。
面積帯で分けると別の傾向が出ます。
| 面積帯 | 件数 | 中央値 |
|---|---|---|
| 50〜70㎡ | 19件 | 33.3万円/㎡ |
| 70〜90㎡ | 52件 | 31.6万円/㎡ |
| 90㎡以上 | 25件 | 24.2万円/㎡ |
広い部屋ほど1㎡あたりは下がります。90㎡以上は24.2万円で、50〜70㎡の33.3万円より安い単価です。100件のうち52件が70〜90㎡に集まっていて、西区のマンション市場の中心はこの広さです。
予算を決める前にやる3つのこと
1. 公示価格を予算の基準に使わない。 西区では成約の中央値との差が54.0%あります。ニュースで見た坪22.5万円ではなく、成約側の34.7万円で組んでください。
2. 町名を絞ってから金額を出す。 区の中央値34.7万円は、枝吉の52.9万円では足りず、月が丘の18.8万円では余ります。候補を2つか3つに絞ってから計算したほうが早く終わります。
3. 安すぎる町は理由を確かめる。 櫨谷町の坪5.3万円のように区の中央値を大きく下回る町は、市街化調整区域や農地・山林が混ざっている可能性があります。値段だけで候補にせず、家を建てられる土地かどうかを先に確認してください。
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神戸市9区をまとめた数字は神戸市の中古戸建てが実際いくらで売れたかの定点観測に、西区に隣接する市の同じ集計は明石市の町別の土地相場に置いています。
この記事の数字の出どころ
- 成約価格:国土交通省「不動産情報ライブラリ」の不動産取引価格情報。集計期間は2024年第4四半期から2025年第4四半期。宅地81件(坪単価が極端な7件を除外)、中古戸建て59件、新築戸建て34件、中古マンション100件、賃貸23,960件
- 地価公示:国土交通省の地価公示。神戸市西区内の住宅地37地点の中央値
- 地価公示は鑑定評価に基づく価格で、成約価格とは性質の違う数字です。この記事では値動きの比較ではなく、予算の基準として使えるかどうかを見ています
- 町別の集計は取引3件以上の9町のみ。3件の町の中央値は1件の取引の影響を受けやすいので、順位は幅を持って読んでください
- 戸建ての坪単価は、取引総額を建物の延床坪数で割った値です。土地の坪単価とは分母が違うので、そのまま引き算はできません
- 中古マンションは1982年以降に建てられた物件に限定。築年数は2026年を基準に数えています(築21〜30年は1996年から2005年築、築31〜40年は1986年から1995年築)
- 1区画の概算総額は、坪単価の中央値と面積の中央値を掛けた値です。別々に取った中央値なので、実在する1件の価格ではありません


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