🗨️「大雨のあと水が引きにくいのは、どういう土地?」
低い土地ではなく、平らな土地です。全国134市区町村を測ると、1km進んでも数cmしか下がらない平野が各地にありました。千葉県大網白里市(1kmで93cm)より、ずっと平らです。
[災害] この記事の要点
2026年8月の千葉の豪雨で大網白里市の水が引かなかった理由が「平野の傾きの小ささ」だったため、同じ形の土地が全国にどれだけあるかを実測した。低地のある284市区町村に630m間隔・24kmの断面を引き、134市区町村で平らな区間を測定。1km進んだときの下がり幅は、北海道石狩市が23.9kmでほぼ0m、大阪市北区が23.9kmで0.2m、熊本県八代市が12.0kmで0.2m、三重県木曽岬町が17.0kmで0.3mだった。大網白里市は10.7kmで10.0m(1kmあたり93cm)で、上位はその10分の1から100分の1の傾きだった。
2026年8月20日 発表
- 三角州・干拓地・埋立地など、川や海がつくった平野に住んでいる人
- その地域で土地や中古住宅を探している人
- 洪水ハザードマップに色が付いていないので大丈夫だと思っている人
この記事でわかること
- 低地のある284市区町村に同じ方法で断面を引き、134市区町村で「平らな区間」を測れました
- 大網白里市は1km進むと93cm下がります。上位は1km進んでも数cmしか下がりません
- 北海道石狩市は23.9km先の標高がほぼ同じ。大阪市北区も23.9kmで20cmでした
1km進んで4cm 全国134市区町村を測った結果
「低い土地は水が出やすい」。半分は当たっていますが、半分は違いました。大事なのは低さではなく、そこから先が下がっているかどうかです。
低地のある284市区町村に、同じ方法で24kmの断面を引きました。そのうち平らな区間を測れたのが134市区町村です。数字は「1km進むと何cm下がるか」。この値が小さいほど、水はその場から出ていきません。
| # | 市区町村 | 1kmあたり | 平らな区間 | 最低標高 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 北海道 石狩市 | ほぼ0cm | 23.9kmで0.0m | 3.4m |
| 2 | 大阪府 大阪市北区 | 0.8cm | 23.9kmで0.2m | −0.6m |
| 3 | 熊本県 八代市 | 1.7cm | 12.0kmで0.2m | 1.9m |
| 4 | 三重県 木曽岬町 | 1.8cm | 17.0kmで0.3m | −1.2m |
| 5 | 埼玉県 三郷市 | 3.4cm | 17.6kmで0.6m | 1.7m |
| 6 | 茨城県 神栖市 | 4.1cm | 17.0kmで0.7m | 2.7m |
| 7 | 東京都 墨田区 | 4.4cm | 15.8kmで0.7m | −1.0m |
| 8 | 大阪府 大阪市西淀川区 | 4.5cm | 17.6kmで0.8m | −1.6m |
| 9 | 千葉県 浦安市 | 4.8cm | 14.5kmで0.7m | 0.4m |
| 10 | 宮城県 多賀城市 | 7.2cm | 13.9kmで1.0m | 2.4m |
| 11 | 大阪府 門真市 | 8.2cm | 17.0kmで1.4m | 1.0m |
| 12 | 兵庫県 尼崎市 | 8.6cm | 15.1kmで1.3m | −1.4m |
| 13 | 山口県 山陽小野田市 | 8.8cm | 5.7kmで0.5m | 0.7m |
| 14 | 新潟県 新潟市中央区 | 9.0cm | 14.5kmで1.3m | −0.6m |
| 15 | 愛知県 蟹江町 | 9.6cm | 20.8kmで2.0m | −1.6m |
| (参考) | 千葉県 大網白里市 | 93.4cm | 10.7kmで10.0m | 2.2m |
2026年8月の豪雨で水が引かなかった大網白里市は、1km進むと93cm下がります。上の15市区町村は、その10分の1から100分の1です。北海道石狩市にいたっては、23.9km先の標高がほとんど変わりません。
なぜ「低さ」ではなく「傾き」を見るのか
「うちは標高5mあるから大丈夫」。この考え方が通じないのが、こういう土地です。
標高5mの土地でも、そこから海へ向かって土地が下がっていれば水は流れ出ます。逆に標高5mでも、10km先がまだ標高4mなら、水は行き場をほとんど持ちません。水を動かすのは高さではなく、高さの差です。
この記事の前に、同じデータで「どれだけ低いか」を調べた記事も出しています。低さと傾きは別の話なので、両方見てください。
上位に並ぶのは、どれも同じでき方の土地です
顔ぶれを見ると、共通点があります。
石狩市は石狩川の河口、八代市は球磨川の河口、木曽岬町と蟹江町は木曽三川の下流、三郷市は中川・江戸川に挟まれた低地、神栖市は利根川の河口、墨田区・西淀川区・尼崎市・新潟市中央区は大きな川がつくった三角州の上、浦安市は埋立地です。
川が土砂を運んで、その土砂が海の手前で積もってできた土地です。川は河口に近づくほど流れが遅くなり、運べる土砂が細かくなるので、堆積した地面もどこまでも平らになります。平らだからこそ水田に向き、水が引けるから街になり、いま人が住んでいます。
これは「昔の人が失敗した」という話ではありません。平らで水が使える土地に住むのは合理的な選択でした。ただ、その同じ性質が、記録的な大雨のときには水の抜けにくさとして出てくる、というだけのことです。
この数字で言えないこと
ここは正直に書きます。測ったのは地形であって、浸水の想定ではありません。
- 断面は市区町村の外へはみ出します。24kmの線を引いているので、「その市区町村の平野」ではなく「その市区町村の低地を含む平野」の値です
- 上流と下流の区別は付けていません。方位を標準地から決めているため、市区町村によっては向きが反転します(熊本県八代市で実際に反転していました)。平らさの測定そのものは向きに関係しないので、そこだけを使っています
- 標準地の位置での値であり、市区町村内すべての土地を表すものではありません
- 実際の排水は、下水道やポンプ場の能力にも左右されます。地形だけで決まるものではありません
順位が上だから危ない、下だから安全、という読み方はしないでください。実際の浸水のおそれは、お住まいの自治体が公表しているハザードマップで確かめるのが先です。
自分の土地がどちらかを、無料で確かめる
この記事と同じことが、誰でも5分でできます。
- 国土地理院の「地理院地図」を開き、住所で検索して自宅をクリックします。画面の下に標高が出ます。
- 次に、そこから3〜5km離れた地点を、水が流れていく方向(近くの川の下流側、または海の側)に取ってクリックします。
- 2つの標高を引き算します。差が数十cmしかなければ、この記事の上位と同じ形の土地です。
そうと分かったときにやることは、引っ越しではありません。水が出たときにどこへ上がるか、車をどこへ動かすかを、家族で1回決めておくことです。
この記事の集計条件
国土数値情報「地価公示」2026年のうち用途が住宅の標準地17,613地点について、国土地理院の標高API(5メートルメッシュのレーザ測量による標高データ)で標高を取得しました(取得成功17,612地点)。このうち最低標高5m未満・標高の中央値10m未満・標準地3地点以上の284市区町村を対象に、各市区町村でもっとも標高の低い住宅地標準地を起点として、630メートル間隔で24キロメートル(両側12キロメートルずつ)の断面を引きました。
断面のうち、標高が「起点+10メートル」を超えない連続区間で最長のものを平らな区間とみなし、その両端の標高差を区間の長さで割ったものが「1kmあたり」の値です。断面が成立したのは195市区町村、うち区間内の高低差が12メートルを超えるもの9件(尾根や谷を横切っているため)と、区間が5キロメートル未満のもの52件を順位から外し、134市区町村を掲載しました。
生活・仕事にどう効くか
- 大雨のあと:傾きが小さいほど、降った水がその場から出ていくのに時間がかかる。上位の市区町村では、10km以上先まで土地がほとんど下がっていない。
- 家探し・土地探し:標高の数値そのものより「そこから先が下がっているか」を見る。地理院地図で自宅と、そこから数km離れた地点の標高を比べれば、素人でも確かめられる。
- ハザードマップの確認:洪水(川があふれる水)と内水(下水や水路からあふれる水)は別々の地図になっている。洪水ハザードマップが白くても、内水ハザードマップがあるかを自治体のサイトで確かめる。
結局どうすればよいか
- 国土地理院の「地理院地図」で、自宅と、そこから3〜5km離れた地点の標高を比べる
- 洪水ハザードマップとは別に、市区町村の内水ハザードマップ(雨水出水浸水想定区域図)があるかを確認する
- 同じ地図で「土地条件図」を重ね、三角州・干拓地・埋立地かどうかを見る
あわせて読む・調べる
くわしく知る(保存版の記事)
- 水が引かなかったのは大網白里だけ? 九十九里10市町のうち8つはもっと平らでした
- 海面より低い住宅地は全国190地点 標高は同じ−1.4mなのに値段は8倍でした
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- 不動産相場検索 — 市区町村ごとの土地・戸建て・マンション相場を見る
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- 住所まるごとチェック — 住所の表記ゆれ・実在をまとめて確認する
公式出典
更新履歴
- 2026年8月20日 初版を公開
※本記事は2026年8月20日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。


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