登記されていない家は、そのままでは住宅ローンを使う買主に売れません。銀行が融資するには建物に抵当権を設定する必要があり、抵当権は登記のない建物には付けられないからです。買える相手が現金客と買取業者に限られれば、売値はその分下がります。
直すのに要るのは、建物表題登記と所有権保存登記の2つ。表題登記に登録免許税はかからず、保存登記は固定資産税評価額の0.4%です(国税庁の税額表)。評価額600万円の建物なら24,000円。税金よりずっと大きいのは土地家屋調査士と司法書士の報酬ですが、こちらは自由報酬で公的な相場表がありません。つまり見積もりを取るまで総額は誰にも分からない——これがこの手続きの正体です。
先に結論
- 未登記でも売れる。ただし建物を残して売るなら、表題登記+所有権保存登記が先
- 解体して土地として売るなら建物の登記は不要。先に登記を発注すると、その費用は丸ごと消える
- 税金は表題登記0円+保存登記0.4%。読めないのは調査士・司法書士の報酬なので2〜3件から見積もりを取る
- 自分の家が未登記かは、固定資産税の課税明細書の「家屋番号」欄で当たりがつく
- 期限は表題登記が取得から1か月以内、相続登記が3年以内。どちらも怠れば10万円以下の過料
未登記だと何が起きるか——買主が住宅ローンを使えない
未登記の建物でも、売買契約そのものは結べます。詰まるのはお金の出どころです。
買主が住宅ローンを使う場合、銀行は土地と建物の両方に抵当権を設定します。ところが登記のない建物には抵当権を付けられません。担保に取れない建物のために融資を出す銀行は、まずありません。結果として買える相手は、現金で買える人か買取業者に絞られます。値段が下がる原因は「未登記」という言葉そのものではなく、買主の数が減ることです。
売れないのではなく、売れる相手が減る——ここを分けて考えると、判断が楽になります。減った買主を戻すために登記費用を払う価値があるかどうか、という費用対効果の問題に変わるからです。
もうひとつ実務で起きるのが、土地だけ売って建物が残るパターンです。土地の名義は買主に移ったのに、未登記の建物は売主のものとして地上に残る。あとから撤去費でもめるのはこの形です。登記して一緒に売るか、解体して土地だけにするか、どちらかに寄せてください。
判断の材料になるのは、まずその土地がいくらで売れるのかという数字です。かんたん相場検索なら、住所を入れるだけで国の成約データにもとづく実際の取引価格を無料で確認できます。登記に何万円かけるかを決める前に、上限になる金額を先に見ておいてください。
自分の家が未登記かどうか、今日30分で確かめる3ステップ
「登記がないですね」と言われて初めて知る人がほとんどです。人に言われる前に、自分で確認できます。
① 固定資産税の課税明細書で「家屋番号」を見る
毎年春に届く固定資産税の納税通知書には、課税明細書が付いています。家屋の欄に家屋番号が印字されていれば登記されている建物、空欄や「未登記」となっていれば登記のない建物、というのが最初の当たりです。
様式は自治体ごとに違い、家屋番号の欄が無い明細書もあります。見当たらなければ、市区町村の資産税課に電話で「この家屋は登記家屋ですか、未登記家屋ですか」と聞くのが早いです。無料で、その場で答えが返ってきます。
② 名寄帳を取って、家屋の抜けを探す
名寄帳は、その市区町村内で同じ人が持っている不動産を一覧にした帳簿です。相続人であれば取得でき、手数料は数百円程度(金額は自治体により異なります)。
ここで見るのは、母屋以外の建物です。離れ、車庫、増築した部屋——親が自分で建てた付属建物は登記から漏れていることがあります。母屋は登記済みなのに増築部分だけ未登記、というケースも同じように扱われます。
③ 法務局で登記事項証明書を請求する
最終確認は法務局です。建物の登記事項証明書を請求して、出てくれば登記済み、「該当なし」と言われれば未登記が確定します。
手数料は窓口・郵送での書面請求が600円、オンライン請求なら窓口交付490円・郵送520円です(法務局の公表額)。土地の登記事項証明書も一緒に取っておくと、次の相続登記の準備がそのまま進みます。
未登記の家を売れる状態にするまで、いくらかかるか
建物を残して売ると決めた場合にかかるお金を、支払先ごとに並べます。
| 費目 | 金額 | 支払先 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 600円 | 法務局 | オンライン請求は窓口交付490円/郵送520円 |
| 建物表題登記の登録免許税 | 0円 | — | 国税庁の税額表に表示に関する登記の掲載なし |
| 土地家屋調査士の報酬 | 事務所ごとに幅がある | 土地家屋調査士 | 現地調査・図面作成を含む。見積もりで確認する |
| 所有権保存登記の登録免許税 | 評価額の0.4% | 国(法務局) | 評価額600万円なら24,000円 |
| 土地の相続登記の登録免許税 | 評価額の0.4% | 国(法務局) | 評価額1,200万円なら48,000円 |
| 司法書士の報酬 | 事務所ごとに幅がある | 司法書士 | 自由報酬。戸籍収集を任せるかで変わる |
税金の部分だけを取り出すと、この例では24,000円+48,000円=72,000円。ここは評価額さえ分かれば自分で計算できます。固定資産税の課税明細書に載っている評価額に0.004を掛けるだけです。
新築住宅で使える軽減税率(保存登記0.15%)は、新築または建築後未使用の住宅を自分の住まいとして取得し、1年以内に登記する場合の制度です。相続した築古の家では使えないものとして、0.4%で見ておいてください。
読めないのは報酬の方
土地家屋調査士・司法書士の報酬に、公的な相場表はありません。報酬は自由化されていて、各事務所が自分で決めるからです。現地調査が要る表題登記は建物の形と現地の状況で手間が変わり、相続登記は相続人の人数と戸籍の集めやすさで変わります。条件が違えば金額が違って当然です。
だから正解は、相場を調べることではなく2〜3件から見積もりを取ることです。「相続した未登記の建物です。表題登記と保存登記、土地の相続登記をまとめて頼んだ場合の見積もりをください」と電話で伝えれば、書面で出してくれます。無料相談の窓口も使えます。
自分で動く時間がない、相続人が多くて戸籍集めから難航している——という場合は、申告から登記までまとめて代行してもらう選択肢もあります。初回相談は無料ですが、依頼する場合の料金は68万円〜(税込)。自分で見積もりを取って動けるなら、上のやり方の方が確実に安く済みます。対応エリアは東京・神奈川・大阪・京都・兵庫に限られます。
相続手続きの丸投げ代行を無料相談する(68万円〜・5都府県)
「未登記の建物がある」と最初に伝えると、話が早く進みます
2024年4月に義務化された相続登記と、未登記建物の「1か月」
期限は2種類あり、どちらを守るべきかは建物が登記されているかで変わります。
登記されている不動産を相続したときは、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります(2024年4月1日施行)。それ以前に相続を知っていた場合は2027年3月31日が期限です。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります。
一方、未登記の建物には登記名義人が存在しません。そのため相続登記ではなく、表題登記がない建物の所有権を取得した者として、取得の日から1か月以内に建物表題登記を申請する義務が問題になります(不動産登記法47条1項)。こちらを怠った場合も、同じ条文で10万円以下の過料の対象です(同法164条1項)。
土地は登記されていて建物だけ未登記、という組み合わせが実際にはよくあります。この場合、土地には3年以内の相続登記義務がかかり、建物には表題登記の話が乗ります。片方だけ済ませて安心しないようにしてください。
売却まで見据えるなら、相続の手続きと売却の準備は並行して進めた方が早く終わります。売り出し価格の当たりをつけるところから始めてください。
登記費用をかける価値があるかは、売値の当たりが付いてから判断できます
登記していないのに固定資産税が来る理由
「毎年きちんと固定資産税を払ってきたのに、登記がないと言われた」——ここでつまずく人が多いので、仕組みを書いておきます。
固定資産税の課税台帳は2種類あります。登記されている家屋は家屋課税台帳に、登記されていない家屋は家屋補充課税台帳に登録され、どちらも課税対象です(地方税法381条)。市区町村は登記の有無にかかわらず、現地の家屋調査で課税します。
つまり税金を払っている=登記されている、ではありません。市区町村の課税と、法務局の登記は別々に動いています。納税通知書は所有権を証明する書類でもありません。
未登記のまま解体したら、市区町村に届け出る
登記されている建物を壊したときは法務局へ建物滅失登記を出しますが、未登記の建物には登記が無いのでその手続きがありません。代わりに、市区町村の資産税課へ取り壊した旨を届け出ます(届出書の名称と様式は自治体により異なります)。
これを出さないと家屋補充課税台帳に載ったままになり、建っていない家の固定資産税を払い続けることになりかねません。解体業者に任せて終わりにせず、解体後に自分で窓口へ確認してください。
登記が先か、査定が先か——順番で手残りが変わる
ここがこの記事で一番言いたいところです。
未登記の実家、売り方は3つ
① 建物を登記して、家として売る:表題登記+所有権保存登記が必要。買主が住宅ローンを使えるようになり、買える人の数が戻る。建物にまだ住める価値があるならこれ
② 解体して、土地として売る:建物の登記は不要。かかるのは解体費と、市区町村への取り壊しの届出。傷みが激しい家はこちら
③ 現況のまま買取業者に売る:未登記のまま業者が引き取る形。手間はかからないが、価格は市場価格より下がる。仲介の査定と並べて差額で判断する
②を選ぶ人が、先に表題登記と保存登記を済ませていたら、その費用は何も生みません。壊す建物に登記を入れたことになるからです。登記を発注する前に、査定と解体見積もりを取る——これだけで数万円から十数万円の無駄を避けられます。
手数料や税金を引いた最終的な手残りは売却手取りシミュレーターで試算できます。相続した実家をどうするかの全体の流れは、実家じまい完全ガイド|相続した家をどうするか、順番に整理するにまとめています。
まとめ|未登記は直せる。決めるのは順番と金額
- 未登記の建物は売れないのではなく、買主が住宅ローンを使えないぶん買える相手が減る。値下がりの原因はそこ
- 自分の家が未登記かは、固定資産税の課税明細書の家屋番号欄→市区町村の資産税課→法務局の登記事項証明書(600円)の順で確認できる
- 税金は表題登記0円、所有権保存登記が評価額の0.4%(評価額600万円で24,000円)。相続した築古の家に0.15%の軽減は使えない前提で見る
- 読めないのは調査士・司法書士の報酬。公的な相場表がないので、2〜3件から見積もりを取るのが唯一の方法
- 期限は表題登記が取得から1か月以内、相続登記が3年以内(2024年4月1日施行)。いずれも正当な理由なく怠れば10万円以下の過料
- 解体して土地で売るなら建物の登記は要らない。登記を発注する前に、査定と解体見積もりを取る
※ 本記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれる場合があります。紹介している商品・サービスは、記事の内容に関連するものを編集方針にもとづいて選んでいます。
※ 本記事は法令・公的機関の公表資料をもとにした解説です。登記の要否・過料の判断・税額は個別の事情により変わります。実際の手続きは管轄の法務局、司法書士・土地家屋調査士、市区町村の資産税課にご確認ください。


コメント